ハッカ(薄荷)
 ハッカ(薄荷)は、シソ科ハッカ属の多年草です。日本、中国、サハリン等に分布します。秘本では北海道から九州に分布する在来種です。名の由来は、中国名の薄荷(bòhé)から。語源の詳細は不明です。英名は、Japanese mint。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。ハッカ属(Mentha L. (1753))は、北半球の温帯に約40種が分布し、日本には2種が自生します。

 地下茎によって繁殖します。草丈は20~60cm。茎は四角。葉は対生します。葉柄があり、長楕円形で鋭頭、鋸歯があります。葉裏は腺点が目立ちます。花期は、8月から10月頃。葉腋に偽輪生の輪散花序(仮輪)を数段に付けます。花は、白から淡紫色で花径2~5mm。花冠は筒状の唇形花で上裂片は2裂、下裂片は3裂します。雄性期と雌性期があります。雄しべは約5mmで、花冠から飛び出して目立ちます。萼は筒状。萼歯裂片は先が尖った狭三角状。果実は、分果です。染色体数は、2n=96。

 主成分は、メントール (Menthol、薄荷脳) 、メントン(Menthone) 、α-ピネン(α-Pinene)、リモネン(Limonene)等です。生薬として、乾燥地上部を薄荷、葉を薄荷葉として用いられます。効能は、解熱、清涼、健胃です。

 1817(文化14)年、岡山県で栽培が始められ、明治に北海道で栽培が拡大し、精油が輸出されていました。戦前までは世界生産量の7割を占めるほどでしたが、戦後にメントール(Menthol,C10H20O)の化学合成ができるようになってから急速に栽培が衰退しました。現在は北海道で10ha程度栽培(昭和14年には北海道で2.2万ha栽培)されているだけのようです。ハッカが中国から日本に伝えられたのは西暦600年頃と推定されています。

 ハッカの記述は聖書にもあります。『律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。薄荷いのんど茴香の十分の一は献げるが、律法の中で最も重要な正義、慈悲、誠実はないがしろにしているからだ。これこそ行うべきことである。もとより、十分の一の献げ物もないがしろにしてはならないが。』(マタイによる福音書23章23節・新共同訳)。

 およそ2000年前の記事ですが、神に十分の一を献げる重要なことに使われている事から、大切な香辛料だったことが知られます。ちなみに、イノンド(Anethum graveolens Linn.)は、その種からディル(dill)が採れます。茴香は、ウイキョウ(Foeniculum vulgare Miller)と読み、別名フェンネル(Fennel)の事で、どちらも香辛料です。

 この場合のハッカは、ペパーミント(胡椒薄荷)Mentha x piperita L. で、他にスペアミント(緑薄荷)Mentha spicata L. があります。日本のハッカは和種薄荷とも呼ばれ、万葉の時代には、めぐさ(目草)と言われていたようです。

☆  ☆  ☆

 《写真の背景》 少年野球をやっている河川敷を歩くと、その傍らから香りがしてきました。振り返ると、そこにハッカ(薄荷)が咲いていました。辺り一面に香りを振りまいているものの、野球関係の親御さん達は一向に興味を示す様子がありませんでした。

参考:マルバハッカ(丸葉薄荷) ヤマハッカ(山薄荷)

Japanese common name : hakka
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Mentha canadensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara


ハッカ(薄荷)
別名:ニホンハッカ(日本薄荷)
シソ科ハッカ属
学名:Mentha canadensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara
花期:8月~10月 多年草 草丈:20~60cm 花径:2~5mm

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【学名解説】
Mentha : Menthe(ギリシャ神話の女神の名)に因む/ハッカ属
canadensis : カナダの
L. : Carl von Linne (1707-1778)
var. : varietas(変種)
piperascens : コショウ(Piper)のような
Malinv. : Louis Jules Ernst Malinvaud (1836-1913)
ex : ~による
Holmes : Edward Morell Holmes (1843-1930)
H.Hara : 原 寛 Hiroshi Hara (1911-1986)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から5.75km 右岸河川敷 2005.09.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

27 September 2005, 03 February 2015
Last modified: 17 August 2016
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by pianix | 2005-09-27 00:00 | | Trackback | Comments(5)
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Commented by yamome516 at 2005-09-28 00:00
大変良くできたブログで、いつも感心しています。
それと、いい勉強になります。
これくらいの事が、盛り込まれていないと活けないですよね!
私は、名前も知らないような雑草を図鑑のようにまとめて見たいなどと思っていますが?
Commented by mico at 2005-09-28 14:24 x
名前の通り涼やかな花ですね
Commented by pianix at 2005-09-28 18:46
yamome516さん
私は知りたい事がいっぱいあります。でも、限られた時間しかありませんから、さわりだけ書いて終わり、消化不良に陥っています。
Commented by pianix at 2005-09-28 18:48
micoさん
写真の上部にぼやっと見えるのは、少年野球のご父兄です。
河川敷には、アップルミントやマルバハッカも咲いています。
Commented by pianix at 2005-10-02 00:03
すみません。文章がおかしかったです。
訂正:マルバハッカ(丸葉薄荷)は、英名:アップルミント(Apple mint)
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