カワラハハコ(河原母子)は、キク科ヤマハハコ属の多年草です。北海道から九州に分布する日本固有亜種です。名の由来は、河原に咲き、ハハコグサに似る事から。
キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。Asteraceaeは、aster(星)の意味。保留名のCompositae Giseke, 1792は、「合成された」との意味から。ヤマハハコ属(Anaphalis DC. (1838)) は、ユーラシアに広く分布し約80種があります。東ヒマラヤで多様化し、西ヒマラヤ、東アジア、東南アジア、北米に分散した1)と考えられています。 河原などの撹乱を受ける砂礫地に自生する、撹乱依存種2)です。4月~6月頃に咲くハハコグサ(母子草)Pseudognaphalium affine (D.Don) Anderb. の巨大版とでも言う感じのカワラハハコです。全体に白い毛が密生しているので白っぽく見えます。束生し、茎は多数に分枝します。草丈は30~50cm。葉は互生します。無柄、線形で全縁、長さ3~6cm、幅1~2mm。綿毛が密生します。 花期は8月~10月。分枝3)した茎頂に頭花をつけます。鐘球形で、乾いた白い総苞片が周囲を囲み、中央に黄色の筒状花(管状花)があります。その為、ドライフラワーの印象があります。総苞径は、約7mm。雌雄異株。両性花と雌雄花があり、両性花は不稔4)。染色体数は、2n=4x=28。果実は痩果です。地下茎、及び種子で繁殖します。 同じ属で瓜二つである基本種のヤマハハコ(山母子)Anaphalis margaritacea (L.) Benth. et Hook.f. var. margaritaceaとは、生育地が異なり、ヤマハハコは分枝せず、カワラハハコは葉が細い事で区別が付きます。 今の季節、少し荒れた瓦礫質の河原にメドハギ(蓍萩)が大量に発生しています。その中で白いひとかたまりが点在しているように見えるのが、カワラハハコです。時に群生しています。東京都、大阪府では絶滅、幾つかの地域によっては絶滅危惧IA類に指定されていますが、静岡では多い感じがします。 脚注: 1)Nie Z-L, Funk V, Sun H, Deng T, Men Y, Wen J (2013) Molecular phylogeny of Anaphalis (Asteraceae, Gnaphalieae) with biogeographic implications in the Northern Hemisphere. J Plant Res 126:17-32 2)攪乱依存種(ruderal: Grime 1977):定期的な自然の攪乱を利用して繁殖の継続が行われる種。 3)分枝(ぶんし):生物学の用語で、根や茎、葉脈などが枝分かれする事。。 4)不稔(ふねん):花が咲いても種子のできない現象。原因として、生殖細胞の発育不全や不和合性がある。不和合性は、花粉を受粉しても受精しない事。 Japanese common name : Kawara-hahako カワラハハコ(河原母子) キク科ヤマハハコ属 学名:Anaphalis margaritacea (L.) Benth. et Hook.f. var. yedoensis (Franch. et Sav.) Ohwi synonym : Anaphalis margaritacea (L.) Benth. et Hook.f. subsp. yedoensis (Franch. et Sav.) Kitam. 花期:8月~10月 多年草 草丈:30~50cm 花径:7mm(総苞) 【学名解説】 Anaphalis : ギリシャ語ハハコグサGnaphaliumの並び替え造語anagram/ヤマハハコ属 margaritacea : margaritaceus(真珠のような) L. : Carl von Linne (1707-1778) Benth. : George Bentham (1800-1884) et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&に同じ) Hook.f. : Joseph Dalton Hooker (1817-1911) var. : varietas(変種) yedoensis : 江戸(東京の旧称)の Franch. : Adrien Rene Franchet (1834-1900) Sav. : Paul Amedee Ludovic Savatier (1830-1891) Ohwi : 大井次三郎 Jisaburo Ohwi (1905-1977) --- synonym : (シノニム)同物異名 subsp. : subspecies(亜種) Kitam. : 北村四郎 Shirō Kitamura (1906-2002) --- Pseudognaphalium : pseudos(偽)+Gnaphalium(一握りの尨毛=獣の毛)/ハハコグサ属 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から10.25km 右岸河川敷 2005.09.16 安倍川/河口から8.75km 左岸河川敷 2017.10.20, 2017.11.07 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 1 October 2005, 5 July 2014, 12 November 2017, 24 May 2018, 21 January 2019, 16 March 2019 Last modified: 7 October 2019
by pianix
| 2005-10-01 00:00
| 水辺の植物
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Comments(6)
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yamome516 at 2005-10-02 09:53
おはようございます。この花は、初めて見ました。
花びらが、貝殻草を連想させます。 生態系が変わって、絶滅の植物が多くなって来ました。 何とか、残して欲しいですね!
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pianix at 2005-10-02 13:56
おっしゃるとおり、貝殻草・ヘリクリサム・ペチオラレ(Helichrysum petiolare)に似ていますね。葉が全く異なるのですが、花はそっくりで、ドライフラワーに使われますね。
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uzura_egg_happy at 2005-10-02 16:21
こんにちは(^^)
ホント、ドライフラワーみたいですね。
母子草は知っていますが、この花は初めてです
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pianix at 2005-10-05 14:51
uzura_egg_happy様
イベントが凄いですね。森の専門家に見られると恥ずかしい気持ちです。
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pianix at 2005-10-05 14:57
mico様
先日は、領主様のmico様を「悪代官」様と勘違いしてごめんなさい、悪代官様。この頃、図書館へは行っていません。図書館へ行っても、本を読みません。牧野大先生の図鑑を手に取ると腹が痛くなります。 河原母子は河川敷にいっぱいあります。見ても何の感慨も無いのですが、いざ見えなくなると次の年を待ちわびたりします。いつまでもあるとおもうなハハコグサ……違うか。
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Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 1月末日現在) 合計677,147人 (前年同月比 -5,763人) 男:329,734人 女:347,413人 世帯数324,434戸 (前年同月比 +1.576戸) 最新のコメント
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