キツネノカミソリ(狐の剃刀)
 キツネノカミソリ(狐の剃刀)は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。日本、朝鮮半島に分布し、日本では本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、葉を剃刀に見立てたもので、キツネは「劣る」の意味や、花色を狐火に例えた等の諸説があります。

 ヒガンバナ科1) (Amaryllidaceae J. Saint-Hilaire2), 1805) は、世界の熱帯から温帯にかけて約59属860種が分布します。クロンキスト3)体系ではユリ科(Liliaceae Juss. 4), (1789))に分類され、世界の熱帯と温帯に約280属4000種が分布します。ヒガンバナ属(Lycoris Herbert5), 1821)は、東南アジアに3属約30種が分布します。

 山野の明るい林縁に自生します。広卵形の鱗茎から、春に葉柄のある緑色の葉を2列に出します。葉は、長さ30~40cm、幅8~10mmの狭長状。花をつける夏に葉は枯れます。年間の生活形態は次の通りです。4月に葉が出て、5~6月に葉が枯れる。7月から茎が伸び始め、8月に花が咲く。9月に果期となり、冬越しをして3月に至る。

 鱗茎6)及び全草共に有毒です。有毒成分は、リコリン (lycorine, C16H17NO4)、ガランタミン(galantamine, C17H21NO3)です。ガランタミンはアルツハイマー病治療薬として用いられますが、現在は合成精製されたものを使用します。誤食した場合、睡眠作用、痙攣、吐き気、下痢の症状が現れます。

 花期は8~9月頃。花茎を上部で3~5本に枝分かれさせながら30~50cmに立ち上げ、花を茎先に散形状に付けます。花序基部に総苞片があり、長さ約4cmの披針形。花冠は漏斗型で、橙色の花弁6枚の花を咲かせます。花被片長は5~8cm。雄しべは6本で、先で上向きに反り返り、花被片とほぼ同長。雌雄同花。子房下位。染色体数は、2n=22(=22A)7)、2n=3X=32。2倍体と3倍体とがあり、3倍体は結実しません。果実は蒴果です。径約15mmの扁球形で内部は3室に別れ、中軸胎座8)。種子は黒色、径5~7mmの円形で扁平形。

 類似種に大型の、オオキツネノカミソリ(大狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. kiushiana T.Koyama9) があり、雄しべ、雌しべ共に花被片より長く突出しています。キツネノカミソリと共に白花品種10)があります。八重咲き品種のヤエキツネノカミソリ(八重狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea f. plena T.Yamaz. は、高尾山で発見されました。ムジナノカミソリ(狢の剃刀)Lycoris sanguinea var. koreana (Nakai) T.Koyamaは、野生絶滅(EW)とされています。

1) 新エングラー体系/Adolf Engler (1844-1930)
2) J. Saint-Hilaire : Jean Henri Jaume Saint-Hilaire (1772-1845)
3) Cronquist : Arthur John Cronquist (1919-1992)
4) Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
5) Herbert : William Herbert (1778-1847)
6) 鱗茎は、地下茎の一種で、葉の付け根が重なって肥大したもの。特徴として玉葱のようにむいていく事ができる。かけらになっても再生能力が高く、根によって鱗茎を地下に引込む能力もある。ヒガンバナ、ラッキョウ、チューリップなども鱗茎をもつ。
7) アクロセントリック染色体(acrocentric chromosome:A-type)
8) 中軸胎座【ちゅうじくたいざ】(axial placentation):胚珠が子房の中軸に付く。
9) synonym : Lycoris sanguinea Maxim. var. kiushiana (Makino) Makino ex Akasawa
10) シロバナキツネノカミソリ(白花狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea f. albiflora Honda、シロバナオオキツネノカミソリ(白花大狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. kiushiana T.Koyama f. albovirescens E.Doi ex Akasawa

Japanese common name : Kitune-no-kamisori
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Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea

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2008.08.08 / 2008.09.03 どちらも群生地ではなく山道脇に咲いていたもの。

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2014.07.30

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左:果実は蒴果(2014.09.23) 右:キツネノカミソリの葉(2008.03.27)


キツネノカミソリ(狐の剃刀)
ヒガンバナ科ヒガンバナ属
学名:Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea
花期:8月~9月 多年草 草丈:30~50cm 花冠長:50~55mm

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【学名解説】
Lycoris : ギリシャ神話の海の女神Lycorisに因む/ヒガンバナ属
sanguinea : sanguineus(血紅色の)
Maxim. : Carl Johann Maximowicz (1827-1891)
var. : varietas(変種)
---
kiushiana : kiusianus(九州の)
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
ex : ~による
Akasawa : 赤澤 時之 Yoshyuki Akasawa (1915-2003)
---
f. : forma(品種)
albovirescens : albo(白)+virescens(淡緑色の)
albiflora : albiflorus(白花の)
plena : plenus(八重の)
Honda : 本田 政次 Masaji Honda (1887-1984)
T.Koyama : 小山 鐵夫 Tetsuo Michael Koyama (1933- )
T.Yamaz. : 山崎 敬 Takasi Yamazaki (1921-2007)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.717m)2008.03.27, 2008.08.08, 2008.09.03, 2014.09.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

31 October 2010, 3 November 2010, 24 September 2014
Last modified: 23 August 2015
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by pianix | 2010-10-31 00:00 | | Trackback | Comments(0)
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