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ハナミョウガ(花茗荷)
 ハナミョウガ(花茗荷)は、ショウガ科ハナミョウガ属の多年草です。中国、台湾、日本に分布します。日本では、関東以西から九州に分布する在来種です。名の由来は、葉がミョウガ(茗荷)に似て目立つ花を咲かせる事から。ミョウガ1)はショウガ属で本種とは異なります。中国名は、山薑(shān jiāng)。

 ショウガ科(Zingiberaceae Martinov (1820))は、熱帯から亜熱帯にかけて約47属1400種が分布します。ハナミョウガ属(Alpinia Roxburgh (1810))は、東アジアから太平洋諸島にかけて約250種が分布します。

 山地の林縁に自生します。根茎から叢生2)し、細毛のある緑色の偽茎3)を40~60cmに斜上させます。葉は広披針形で、長さ15~40cm、幅5~8cm。葉表は無毛、裏面は短毛が密生します。

 花期は5月から6月頃です。偽茎の先に穂状花序4)を出します。花序は10~15cmで、多数の蘭に似た唇弁花を付けます。花弁の長さは約25mm。先端が3裂する唇弁は白地に赤い縞模様が入ります。萼(外花被)は白色の筒状で先端が赤くなります。

 雌雄異熟の両性花です。中裂片の内側に雄しべ1、雌しべ1が立ち上がります。雄性先熟で花柱の位置運動が行われます。子房下位。

 果実は蒴果5)です。はじめは緑色で熟すと赤色。広楕円形で、長さ12~18mm。細毛があり、残存萼6)が先端にあります。種子は白い仮種皮に包まれ、4~5mm。染色体数は、2n=48。

 生薬名は伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)で、芳香性健胃薬として用いられます。乾燥種子を粉末にした物です。外国産の縮砂(日本薬局方収載生薬)Amomum xanthioides Wallichの代用品として用いられてきました。縮砂の主要成分は、d-camphor、d-borneol、bornylacetate、linalool、 nerolidol、liquiritin、glucovanillic acid等で、漢方薬の「安中散」等に配合されています。

 品種に、果実が黄色の、キミノハナミョウガ(黄実の花茗荷)Alpinia japonica (Thunb.) Miq. f. xanthocarpa Yamasiro et M.Maeda があります。

◎  ◎  ◎

 冬の里山などで「この赤い実は何?」と良く聞かれます。赤い実を付ける植物は結構多く、目立つからです。しかし、ハナミョウガは多くの方が名を知らないようです。特に花を見た事がないと言われる方が圧倒的です。暖地の山地では、ありふれた植物の一つです。

脚注:
1) ミョウガ(茗荷)Zingiber mioga (Thunb.) Roscoe
2) 叢生(そうせい):=束生(そくせい)。群がって束になって生える事。
3) 偽茎(ぎけい): 地下茎から出た多数の葉鞘(葉の基部で茎を取り巻いている部分)が重なり茎に見えるもの。
4) 穂状花序(すいじょうかじょ):花序軸に柄のない花が並ぶ形状。
5) 蒴果(さくか):裂開果の一つで、果実が成熟すると心皮と同数の裂片に裂けて種子を散布するもの。
6) 残存萼(ざんぞんがく):果実になる時期にも残る萼。

参考:ヤブミョウガ(藪茗荷)

Japanese common name : Hana-myouga
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Alpinia japonica (Thunb.) Miq.

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左:膜質の苞(左側)に包まれていた穂状花序。右:白色で紅色の条がある唇弁花

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左:偽茎 右:葉裏は短毛が密生する

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左:葉と花 右:地下茎と叢生する偽茎
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果実

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果実は鳥などに食べられる

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左:先端に残存萼がある果実 右:種子は白い仮種皮に包まれている
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一個の果実に含まれていた種子


ハナミョウガ(花茗荷)
ショウガ科ハナミョウガ属
学名:Alpinia japonica (Thunb.) Miq.
花期5月~6月 多年草 草丈:40~60cm 花冠長:約2.5cm 花序長:10~15cm

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【学名解説】
Alpinia : Prospero Alpinio (1553-1617)に因む/ハナミョウガ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Alt.226m) 2007.06.04(花)
安倍城跡(Alt.435m) 2008.05.20(蕾)/2008.06.07(花)/2012.02.21(実)/2012.02.24(根)
帆掛山 2019.02.07
林道慈悲尾線 2022.05.20
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

26 February 2012
Last modified: 23 May 2022
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by pianix | 2012-02-26 00:00 | | Comments(2)
Commented by 多摩NTの住人 at 2012-02-26 13:50 x
こんにちは。
ハナミョウガは見たことがありません。
面白い形の実ができるんですね。
一度見てみたいものです。
Commented by pianix at 2012-02-26 18:24
多摩NTの住人さん、こんにちは。
いつもコメントを頂きありがとうございます。
暖地へ出向くといつでも見られると思います。
「ヤブミョウガ」と勘違いする人も多いですが……
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