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バショウ(芭蕉)
 バショウ(芭蕉)は、バショウ科バショウ属の多年草です。温帯地域を中心に自生分布しています。中国経由で平安時代初期には日本に入って来ていたと考えられています。日本では、本州中部以南、四国、九州で観賞用として露地栽培されています。名の由来は、詳細不明です。中国でバナナを芭蕉(bā jiāo)と当て字し、日本では漢名を音読みしたもの。漢名の一説に、芭は葉の形状が腹ばいに横たわっている状態を表し、蕉は焦がすの意味で黒色を表しているとされています。語源として南方系の言語からとの説もあります。英名は、Japanese Fiber banana、Hardy banana。

 バショウ科(Musaceae Juss. (1789))は、熱帯を中心に3属約50種が分布します。バショウ属(Musa L. (1753))は、約40~50種が分布します。

 澱粉を含む塊状で宿根性の塊茎(Rhizome)があり、新しい塊茎を側生して繁殖します。茎は葉鞘(Sheath)が発達した偽茎(Pseudostem)で、径約20~25cm。中心部に花茎があり径約4cm、高さ2~5m程になります。偽茎から繊維を取り出し、芭蕉布(ばしょうふ/バシャギン)が作られます。

 長さ1~3m、幅30~80cm程になる広楕円形の葉を互生してつけます。葉柄は30cm程、葉先は鈍頭です。主脈がU字形に深く湾曲して溝となり、裏面へと隆起します。強風にあおられると支脈に沿って裂けますが、風の抵抗を減らす為と考えられています。冬季に枯れ、3月後半頃から新葉を展開します。円筒形に巻いた葉を直立させた後、ほぐしながら左右に広げます。枯れると黒褐色となります。乾燥させた葉を、生薬「芭蕉」として用います。

 花期は7月から9月頃。葉心から果軸(Peduncle)を伸ばして下垂し、黄緑色の苞(Bract)をつけます。黄色で卵状形の苞を次々に開き、果軸の先に花穂を出して薄黄色で唇形の花冠をつけます。先端に雄花,基部に雌花が出ます。花冠は、上唇の外花被3個,内花被2個からなります。下唇は卵形で蜜腺があります。雌雄異花で雌性先熟(Protogyny)。自家受粉を避ける為、初めに雌花をつけ、時期を遅らせてから、雄花をつけます。

 雌花花序は螺旋状につく果房(Cluster)の先端に出します。多くは不稔性で偽果ですが、希に結実して長さ6cm程の四稜があるバナナ状の果実を付けます。果実は液果(漿果)。種子は暗褐色。

 果軸先端で苞を開き、雄花序を段状に出します。花は筒状唇状で、雄しべは長さ約5cm。苞は径約8cm。染色体数は、2n=22(x=11)。

◆ ◆ ◆

 安倍城跡(Alt.435.2m)の西ヶ谷登り口付近に、何本かのバショウが植えられています。訪れた人はバナナだと思って実をつけるのを楽しみにしているようです。多分、実が成ったらよじ登って食べる気でいるからなのでしょう。ところが、いつの時期も実ったバナナを目にする事はありません。たまに実を付けても大変小さく、いつ大きくなるだろうと思って待っていても、そのままで終わってしまいます。このバナナは実を付けない駄目なバナナだと、ののしられる結果となります。・・・だから、バナナ(実芭蕉)ではないって。大変可哀想なバショウです。

参考:ミズバショウ(水芭蕉) 芭蕉の名が付けられているが異なる科属

Japanese common name : basyou
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Musa basjoo Siebold ex Iinuma
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台風15号通過後 2011.09.23
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台風によって痛んだ葉 2011.09.23
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苞 2012.05.16

バショウ(芭蕉)_e0038990_952407.jpgバショウ(芭蕉)_e0038990_2247314.jpg
左:2012.02.28 黒化した果実 2012.06.08 新しい果実

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左:2008.07.11 《先端の苞が開いて雄花が出てくる》 右:2012.09.20
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雄花 2012.09.13

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円筒形に巻いた状態で新しい葉が出てくる。 2012.06.24

バショウ(芭蕉)_e0038990_22545795.jpgバショウ(芭蕉)_e0038990_22551120.jpg
左:2012.09.13  《葉は互生する》  右:2012.09.20

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左:葉表          右:葉裏
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葉の主脈が裏面にU字形に隆起し、羽状の支脈が平行に並ぶ。 2012.12.27



 ある秋の日、このバショウのほとんどが切り倒されました。70歳代の地主に話を伺うと、このバショウは先代からあったようです。偽茎に鋸を半分ほど入れれば簡単に倒す事ができ、またすぐに生えてくると話してくれました。巨大な「草」が伸びてくるのを心待ちにしました。
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伐採後の切り株 2012.12.27

バショウ(芭蕉)_e0038990_231147.jpgバショウ(芭蕉)_e0038990_2312235.jpg
左:偽茎切り株、中心部に花茎 2013.01.05   右:葉柄の断面2012.12.27
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【成長の過程】切口から花茎が伸びてきた 2013.03.21
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【成長の過程】葉を展開して大きくなった。2013.06.04


バショウ(芭蕉)
バショウ科バショウ属
学名:Musa basjoo Siebold ex Iinuma
花期:7~9月 草丈:4~5m 多年草 雄しべ長:約5cm

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【学名解説】
Musa : バナナのアラビア名(mawza)/ローマのアウグスト大帝の侍医Antonio Musaに因む/バショウ属
basjoo : バショウ
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
ex : ~による
Iinuma : 飯沼慾斎 Yokusai Iinuma (1782-1865)
---
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848)

撮影地:静岡県静岡市葵区
安倍城跡(Alt.435m) 2008.07.11 - 2013.06.04
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 30 March 2013
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by pianix | 2013-03-30 00:00 | | Comments(2)
Commented by 多摩NTの住人 at 2013-05-01 08:54 x
こんにちは。
お久し振りですね。
バショウは近くの大学の雑木林にありますが、こうして花を観察したことがありませんでした。花は秋なんですね。できれば見てみたいですね。勉強になりました。有り難うございました。
Commented by pianix at 2013-05-02 11:23
多摩NTの住人さん、こんにちは。
ご覧頂いてありがとうございます。
忙しい毎日を送っています。かろうじて里山散歩はできていますが…

里山ではコガクウツギの臭いが漂い、シュロ(棕櫚)の花が咲き始めました。
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