タマゴタケ(卵茸)は、テングタケ科テングタケ属のキノコです。アジアやロシア、北アメリカ東部に分布します。日本では全国に分布します。名の由来は、卵のような幼菌があるキノコ(茸)であることから。キノコは、木陰や朽ち木から発生する場合が多いので「木の子」と呼ばれるようになったと言われています。キノコは子実体を指しますが、俗称であって明確な定義や基準があるわけではありません。
ハラタケ科(Agaricaceae Chevall. (1826)) は、85属1340種が分布すると言われています。テングタケ属(Amanita Pers. (1797))は、テングタケ亜属とマツカサモドキ亜属があり、タマゴタケはテングタケ亜属タマゴタケ節に含まれます。 キノコの生活史は、主に2つに区分されます。栄養成長世代と生殖成長世代です。栄養成長世代とは、胞子1)から菌糸2)集合体を形成し、私たちが目にするキノコである「子実体」が現れるまでを言います。胞子の発芽(一次菌糸)があり、接合や交配を行い、菌糸に瘤状のクランプ(かすがい連結)を作り(二次菌糸)、菌糸が集まって菌糸集合体を形成します。そこから子実体を発生させます。 生殖成長世代とは、子実体のヒダ3)にある担子器4)で胞子を形成する「成熟子実体」までを言います。担子菌は核融合を行い、減数分裂を2度経て胞子を形成します。この先は、生殖成長世代へ移行します。キノコについては解明されていないことが非常に多くあります。 山野の広葉樹、針葉樹の林下に自生します。外生菌根菌で、樹木と共生関係にあります。9月から10月頃、子実体が現れます。幼菌は白色外被膜に覆われた卵形で、長さ約3cm。先端部を破って艶のある赤色の成菌が出てきます。初めは赤い楕円形で、やがて中央部が盛り上がった傘5)を開きます。傘は中心生6)で周縁部に条線(平行な筋)があり、径5~18cm。 柄7)は淡黄色で長さ7~17cm、幅6~15mm。黄色と橙色のだんだら8)模様があり、中空。傘の下には赤橙色で膜質のツバが垂れ下がります。柄の基部に、内側が淡黄色の外被膜が残り、壺(脚苞)となります。傘内側は淡黄色で離性9)のヒダが密生します。胞子紋10)は白色。胞子は無色の楕円形か円形。老菌になると傘の赤色が退色して茶色になります。培養困難なキノコとしても知られています。 タマゴタケは食用菌です。鮮やかな赤色であるため毒キノコの様相ですが、食べられます。キノコ類の採取に関しては、生半可な知識により誤食事故が多発していますから細心の注意を必要とします。傘が赤色で白色のイボが付着するベニテングタケ11)(紅天狗茸)は毒キノコです。タマゴタケモドキ12)(卵茸擬)は似ていますが、黄色でヒダが白色、縁に条線が無い形状の猛毒キノコです。 脚注: 1)胞子:シダやコケ植物、藻類、菌類・原生生物の変形菌などが形成する生殖細胞。 2)菌糸:菌類の体を構成する糸状の構造。生殖菌糸・骨格菌糸・結合菌糸・汁管菌糸などの機能別菌糸がある。 3)ひだ:傘裏側に形成される刃状の器官。 4)担子器:担子菌類の菌糸の末端にある担子胞子をつくる細胞。 5)傘:キノコ上部に付く帽子のような部位。傘を持たないキノコは頭部と呼ばれる。 6)中心生(ちゅうしんせい):傘の中心に柄が付着すること。他に、偏心生・有柄側生・無柄がある。 7)柄:傘を支えている円筒状の部位。 8)だんだら(段だら):幾つもの段があること。 9)離生(りせい):柄の上端とひだの末端とが離れていること。他に、直生・上生・垂生・湾生・隔生がある。 10)胞子紋:キノコの胞子を紙などに落下させて転写した模様。 11)ベニテングタケ(紅天狗茸)Amanita muscaria (L. : Fr.) Pers. 12)タマゴタケモドキ(卵茸擬)Amanita subjunquillea Imai Japanese common name : Tamago-take タマゴタケ(卵茸) ハラタケ目テングタケ科テングタケ属 学名:Amanita caesareoides Lj.N.Vassilieva synonym : Amanita hemibapha (Berk. et Broome) Sacc. 子実体発生期:9月~10月 外生菌根菌 傘径:6~18cm 柄長:7~17cm 【学名解説】 Amanita : トルコ南部Amanus山脈の/テングタケ属 caesareoides : caesare(皇帝)+oides(のような) Lj.N.Vassiljeva : Ljubov Nikolaevna Vassiljeva (1901-1985) --- hemibapha : 半分染めた Berk. : Miles Joseph Berkeley (1803-1889) et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ) Broome : Christopher Edmund Broome (1812-1886) Sacc. : Pier Andrea Saccardo (1845-1920) 撮影地:静岡県静岡市 梶原山(Alt. 279m) 2016.09.26 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] Last modified: 01 December 2016
by pianix
| 2016-12-01 00:00
| 菌類
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「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 1月末日現在) 合計677,147人 (前年同月比 -5,763人) 男:329,734人 女:347,413人 世帯数324,434戸 (前年同月比 +1.576戸) 最新のコメント
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