アカボシゴマダラ(赤星胡麻斑)名義タイプ亜種は、タテハチョウ科ゴマダラチョウ属のチョウです。ベトナム北部から中国、台湾、朝鮮半島に分布する広域分布種です。日本では、1998年に神奈川県で繁殖が確認されて以降、各地に分布を広げている外来種です。人為的放蝶と考えられていて、生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。名の由来は、後翅外縁に赤い斑紋があるゴマダラチョウである事から。ただし、春型は斑紋が無いものがあります。中国名は、黑脉蛱蝶・黑脈蛺蝶(hēi mài jiá dié)。英名は、Red ring skirt。
タテハチョウ科(Nymphalidae Rafinesque, 1815)は南極を除く世界の大陸に約6,000種が分布し、日本には約52種が生息すると言われています。タテハチョウ科の特徴は、翅の斑紋が裏表で異なり、前脚が退化して短くなっている事です。後翅の中室は開き、触覚に鱗粉があります。ゴマダラチョウ属(Hestina Westwood, 1850)は、日本にはゴマダラチョウ(胡麻斑蝶)とアカボシゴマダラ奄美大島亜種の2種があります。近年、アカボシゴマダラ名義タイプ亜種の分布が拡大しています。 成虫は5月から8月頃に、公園や雑木林の周辺に現れます。暖地では9月~10月にも現れる事があります。年2~3回発生します。前翅長は、40~53mm。雌のほうが大きく開張は、♂60~70mm、♀80~90mm。翅は黒地に白色の斑紋があり筋模様になります。後翅外縁に鮮やかな赤色の斑紋があります。退化した前肢と、中肢、後肢の、それぞれ1対があります。クヌギ等の樹液や、腐果、獣糞を吸汁します。口吻は淡黄色。複眼は、黒色、あるいは黄色。緩やかに飛びます。 美大島亜種と異なる形状上の区別点は、夏型成虫の後翅外縁にある赤い斑紋の形状が完全なリング型になりにくい事と、低温期発生の春型は白化する事です。また、在来種のゴマダラチョウには、赤い斑紋がありません。 完全変態(卵・幼虫・蛹・成虫)をします。エノキの葉に産卵します。卵は大きさ1mm程の縦縞が入った球形。幼虫は体色が緑色で、頭部に一対の枝状に分岐した角があります。背中に2対4列の突起があり、3列目が大きくなります。尾端は、オオムラサキやゴマダラチョウが二股に開裂するのに対し、アカボシゴマダラは開裂しません。体長は約20mm。 エノキ(榎)を食草とします。国蝶のオオムラサキやゴマダラチョウと食草が同じ事から競合による在来種の影響が懸念されています。幼虫(4~5齢)で越冬します。越冬場所は、エノキの幹や葉裏です。時期が来ると逆さにぶら下がる垂蛹型の蛹となり、羽化します。 神奈川県では県域全体で定着。静岡での生息域は、2010年に熱海市、小山町、富士宮市に至っています。繁殖力が強く、西に分布の拡大を図っています。 ※亜種(あしゅ・subspecies=ssp.):分類上の区分で、属・種の次に記載される分類単位。種に分類するには変異が少ないが「地域隔離によって相違に差がある」場合に適用される。植物の場合は、変種(varietas=var.)・品種(forma=f.)も用いられ、動物の場合は、亜種の下位区分は国際命名規約に無いが品種が使われる場合がある。基準にした亜種を、名義タイプ(原名)亜種(nominotypical subspecies)と言う。亜種同士は種が異なるわけでは無いので交雑による繁殖が行われる事がある。 参考文献: 猪又敏男・植村好延・矢後勝也・神保宇嗣・上田恭一郎 (2010-2013) 日本産蝶類和名学名便覧 報道: 朝日新聞2010年10月30日「美しいが害蝶 県内全市町村でアカボシゴマダラ確認」 千葉日報(2011年8月2日)「分布拡大、館山でも 在来種減少の懸念 外来種のアカボシゴマダラ」 日本自然保護協会(2012年3月31日)「自然しらべ2011チョウの分布 今・昔 報告書」 毎日新聞(2016年9月22日)「外来チョウ、生息域北上 大田原、那須塩原へ」(栃木版) 日本経済新聞(2017年2月24日)外来生物14種の飼育禁止 桜枯れる被害で環境省 Japanese common name : Akaboshi-gomadara アカボシゴマダラ名義タイプ亜種(大陸亜種) チョウ目(鱗翅目)タテハチョウ科ゴマダラチョウ属 学名:Hestina assimilis assimilis (Linnaeus, 1758) 体長:(前翅長)40~53mm/(開張)♂60~70mm、♀80~90mm 出現期:5月~10月/年2~3回 食草:エノキ属 【学名解説】 Hestia : ギリシア神話の炉の女神Hestiā/ゴマダラチョウ属 assimilis : ~に似た、同様の、関係ある Linnaeus : Carl von Linné (1707-1778) 撮影地:静岡県静岡市 賤機山 (Alt.171m) 2017.09.01, 2017.09.11, 2020.05.15, 2020.07.28 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 19 October 2017, 19 May 2020 Last modified: 1 August 2020
by pianix
| 2017-10-19 00:00
| 虫
|
Comments(0)
|
by pianix カテゴリ
タグ
白色系(136)
紫色系(80) 黄色系(75) 赤色系(67) キク科(64) チョウ目(鱗翅目)(50) シソ科(33) マメ科(23) バラ科(22) 赤い実(22) カメムシ目(半翅目)(18) 緑色系(16) 茶色系(14) アオイ科(14) ナス科(13) タテハチョウ科(13) ユリ科(11) ヒガンバナ科(11) ヒルガオ科(11) 多色系(10) 記事ランキング
Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 1月末日現在) 合計677,147人 (前年同月比 -5,763人) 男:329,734人 女:347,413人 世帯数324,434戸 (前年同月比 +1.576戸) 最新のコメント
以前の記事
2023年 11月
2023年 06月 2022年 12月 2022年 08月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 05月 2020年 07月 2020年 04月 2020年 01月 more...
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||