キュウリグサ(胡瓜草)は、ムラサキ科キュウリグサ属の越年草です。東アジアの各地に分布し、国内では全国に分布する在来種です。麦類と共に入ってきた史前帰化植物1)と考えられています。キュウリグサの名の由来は、葉を揉むとキュウリのような匂いがする事から。
ムラサキ科(Boraginaceae Juss. 1789)は、地中海沿岸などの温帯地域を中心に約154属2500種類が分布し、日本には14属28種が分布します。キュウリグサ属(Trigonotis Steven (1851))は、世界に約50種が知られ。日本には6種があります。 秋に発芽し、ロゼットを形成して越冬します。根生葉は、単葉の卵円形で長さ1~3cm。長い柄があり全縁。花期に枯れます。根元で3~5本に枝分かれ、草丈10~30cmになります。茎や葉、萼には白色の伏毛があります。上部の茎葉は互生します。長楕円形で無柄。 花期は3月から5月で、茎の先に渦巻き状の蠍形花序(さそりがたかじょ)を付けます。渦巻きの捩れを解きながら下から順に花を付けて花序を伸ばします。これはムラサキ科の特徴です。萼は5枚。花は淡い空色で、花径は約2mmで極小さく、花冠先端が5裂する合弁花です。 花筒に淡黄色で5つの副鱗片があり、その内側に雄しべが5本あります。ワスレナグサ(勿忘草)の超小型版のようです。果実は4分果です。種子は黒褐色の三角錐で幅約1mm。染色体数は、2n=40。 類似種にハナイバナ属のハナイバナ(葉内花)Bothriospermum zeylanicum (J.Jacq.) Druce.があります。 マクロ撮影をしていると人が寄ってくる事が良くあります。息を殺して伏せていたら、誰だって怪しいと思うのは無理からぬ事です。先日は、2名のご婦人に花の説明をしたら、「あんたは、天皇の家来だ」と言われてしまいました。『雑草という名の植物は無い』と言われた昭和天皇を持ち出して頂き光栄の至りでしたが、残念ながら師弟関係にはありませんでした。少々ひねくれ者の私は、もし新種を発見したら、Zasso japonicaという学名を付けるぞと冗談を飛ばしています。そうなれば、雑草という名の植物はある事になってしまいます。学名の正式記載はまだですが(2005年現在)、ハテナ(Hatena arenicola Okamoto & Inouye, 2005)と言う原生生物は、面白いネーミングだと感心しています。 脚注: 1)帰化植物は大別すると次のように分けられます。自然帰化植物、逸出帰化植物、仮住帰化植物、予備帰化植物、史前帰化植物です。自然帰化植物は、気が付かない内に侵入してきて帰化したもの。逸出帰化植物は、人為的帰化植物とも言われ、有用植物が栽培状態から脱して野生化したもの。仮住帰化植物は、侵入後発芽に成功するものの、気候風土になじまず短期間の内に消滅するもの。予備帰化植物は、準帰化植物とも言われ、一部地域に帰化したものの広域には拡大していないもの。史前帰化植物は、有史以前に稲作技術に伴って伝播してきたもので、文献などの記録が無い植物群の事です。 Japanese common name : Kyuuri-gusa キュウリグサ(胡瓜草) ムラサキ科キュウリグサ属 学名:Trigonotis peduncularis (Trevir.) F.B.Forbes et Hemsl. 花期:3月~5月 越年草 草丈:10~30cm 花径:2mm 果期:5~6月 【学名解説】 Trigonotis : trigonos(三角)+ous(耳)|種子の形による/キュウリグサ属 peduncularis : 花柄のある Trevir. : Ludolf Christian Treviranus (1779-1864) F.B.Forbes : Francis Blackwell Forbes (1839–1908) et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&に同じ) Hemsl. : William Botting Hemsley (1843-1924) 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から12km 左岸河川敷 2006.02.27 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 28 February 2006, 31 May 2014 Last modified: 1 July 2019
by pianix
| 2006-02-28 00:00
| 花
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Comments(3)
美しい写真ですね、いつも楽しみに拝見させていただいています。
キュウリより胡瓜草のほうが、はるかに先住民といった感じを受けます。 胡瓜草と呼ばれる前は、何とよばれていたのでしょうか。 史前帰化植物の定義をお教えください。ちなみに今晩は、胡瓜入り鰺の南蛮付けを、いただきます。
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pianix at 2006-03-05 23:15
JJ.Jさん
史前帰化植物に付いては、以下を参照してください。 簡単な要約です。 スズメノカタビラ(雀の帷子) http://pianix.exblog.jp/2665335/ あるいは、このページ内の[検索]に入力して見てください。 「日本帰化植物写真図鑑」をお持ちのようですが、 それには記載されていませんでしょうか。 また、キュウリグサの古名は何でしょうかね。タビラコは違いますし。 それよりも、「胡瓜入り鰺の南蛮付け」は、如何だったでしょう。 美味しそうな話です。花より団子。
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「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 1月末日現在) 合計677,147人 (前年同月比 -5,763人) 男:329,734人 女:347,413人 世帯数324,434戸 (前年同月比 +1.576戸) 最新のコメント
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