クロッカス(Crocus)
 ロシア国民楽派の作曲家である、ムソルグスキー1)様。あなたが1867年に作った「禿山の一夜」等は、私の好きな曲です。しかし奇才のあなたは窮乏し、友人関係から孤独感を強め、酒におぼれ、絶望の内に42歳で亡くなりました。もし私が同時代に生まれていたのなら、このような結果にはさせなかったと目頭が熱くなります。

 『なぜ、衣服のことで思い悩むのか。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことではないか、信仰の薄い者たちよ。』マタイによる福音書6章28~30節(新共同訳聖書)

 私の野草観察テーマは、「なぜ野草は生き続けるのか」です。絶滅しそうな野草であっても、健気に咲きます。相手がいないのに、なおかつ花粉を作ります。植物は幾多の地球上の危機を乗り越えて繁栄してきました。生存の戦略は巧みです。ですから馬鹿だから絶滅していく種があるとは考えにくい事です。人間は悩みから自分を窮地へ追いやる事があるのに、野草は実に従順に生きているように思うのです。そして、誰も立ち入らないような河川敷の荒れた一角に、今年もクロッカスが花を咲かせていました。たった二株しか野生していないので淋しそうです。しかし、そこには人間ではなく、花粉を運んでくれる昆虫がいました。

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 クロッカス(Crocus)は、アアヤメ科クロッカス属の多年草です。アアヤメ科(Iridaceae Juss. 1789)は、全世界に分布し、約92属1800種があります。クロッカス属(Crocus L. 1753)は、地中海沿岸から小アジアにかけて分布し、約80種があります。

 日本には、観賞用として明治の初めに渡来しています。クロッカスは属名で、crokeは糸を意味します。雌しべの先が糸状になる事に由来しています。一般的に、春咲き種をクロッカス、紫色で秋咲きの種をサフラン(Saffron) Crocus sativus L.と呼び区別します。クロッカスは園芸用、サフランは薬用・香料・染料として利用されてきました。

 サフランの花色が紫色の一色に対し、クロッカスは園芸用として改良され、白色・黄色・紫色・藍色があります。白や紫の絞り品種もあります。12月に開花するレウィガーツス・フォンティネィーは、淡い菫色で外側に紫色の線が入ります。寒咲きクロッカスの別名を持つシーベリは多花性、澄んだ藤青色のトマシニアヌス。濃黄色のアンキイレンシス、多花性で多くの品種があるクリサントス、黄金色のアウレウス、一般的に一番よく知られているヴェルヌスなどがあります。クロッカスには、サフランのような赤く長い雌しべはありません。

 球茎は25mm程の扁平球形です。葉は細い線形で、中央に白色の筋がある根出葉です。花に先立ち伸び、花後も20cm程に成長して黄変します。地上に伸びる茎はなく、短縮肥大した球茎があります。花茎は薄い筒状のさやになります。筒状の花冠となり、6つに深く切れ込みます。花は早朝に開き夜閉じます。これは温度変化の刺激によって起こる温度傾性によるもので、陽が当たって温度が上がると花弁の内側が伸びて開く事になります。光の刺激を受けて平開するものを光傾性、陽の当たる側の茎が縮み傾斜するようなものを光屈性と言います。他に、重力屈性、接触屈性、水分屈性があります。

1) Modest Petrovich Mussorgsky (1839-1881)

Japanese common name : Hana-safuran
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Crocus vernus (L.) J. Hill
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クロッカス(Crocus)
和名:ハナサフラン(花泊夫蘭)/別名:ハルサフラン(春泊夫蘭)
アヤメ科クロッカス属
学名:Crocus vernus (L.) J.Hill
花期:3月~4月 多年草 草丈:5~10cm 花径:4~5cm

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【学名解説】
Crocus : crokos(サフラン)| croke(糸)/クロッカス属
vernus : 春咲きの
L. : Carl von Linne (1707-1778)
J.Hill : John Hill (1716-1775)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から8.5km 左岸河川敷 2006.03.03
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 6 March 2006
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by pianix | 2006-03-06 00:00 | | Trackback | Comments(0)
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