カキドオシ(垣通/籬通)
 カキドオシ(垣通/籬通)は、シソ科カキドオシ属の多年草です。アジア原産で、中国、シベリア東部、日本に分布します。国内では全国に分布する在来種です。名の由来は、花後に長く蔓が伸びて垣根を通り抜ける程になる事から。別名のカントリソウ(癇取草)は、民間薬として、子供の癇(神経が過敏で小さなことにもいらたち怒る事)に用いた事から。葉が銭形のように連がることから、生薬名でレンセンソウ(連銭草)とも。英名は、Alehoof。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。保留名である新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。カキドオシ属(Glechoma L. (1753))は北半球に広く分布し、日本には本種のみが自生します。

 茎は、シソ科の特徴である四角柱状です。初めは直立し草丈5~25cmになります。花後に倒れて蔓状となります。地面を這い、節から根を出しながら伸びます。葉は対生し、長い柄があります。腎円形で、鈍い鋸歯があり、長さ15~25mm程。縁に鈍い切れ込みがあります。茎と葉共に粗毛があります。

 花期は4月から5月で、葉腋に淡紫色で長さ15~25mmの唇形花を付けます。ムラサキサギゴケ(紫鷺苔)やトキワハゼ(常磐爆米)と異なり、下唇は3裂せず2裂します。萼は5裂します。花弁に蜜標1)である、濃い紫色の斑紋があります。

 雄しべは4本。雌しべに隣接した2本と、下側に付く2本があります。雌しべの柱頭は2裂します。種子は分果で、楕円形です。種子及び地下茎で繁殖します。染色体数は、2n=36,45,54。

 葉に斑が入った品種に、フイリカキドオシカキドオシ(斑入垣通)Glechoma hederacea L. subsp. grandis (A.Gray) H.Hara f. albovariegata H.Hara があり、花色が白色のシロバナカキドオシ(白花垣通)Glechoma hederacea L. subsp. grandis (A.Gray) H.Hara f. nivea Hiyama があります。ヨーロッパ原産の園芸種として、セイヨウカキドオシ(西洋籬通)Glechoma hederacea L. subsp. hederacea があります。

 民間薬として利尿、消炎薬として使われてきました。糖尿病・膀胱や尿路結石・黄疸・疳に用いられます。ヨーロッパでも古くから去痰・喘息に用いられてきました。最近は糖尿病に効き目がありそうだと期待されているようです。花期の全草を乾燥させたもの(連銭草)を使います。茶材や薬酒としても利用されています。

1)蜜標(みつひょう):昆虫に蜜の所在を示す標識(nector guide)

Japanese common name : Kakido'oshi
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Glechoma hederacea L. subsp. grandis (A.Gray) H.Hara

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雌しべ柱頭は2裂する


カキドオシ(垣通/籬通)
別名:カントリソウ(癇取草)
シソ科カキドオシ属
学名:Glechoma hederacea L. subsp. grandis (A.Gray) H.Hara
synonym : Glechoma grandis (A.Gray) Kuprian.
花期:4月~5月 多年草 草丈(蔓性):5~25cm 花長:15~25mm

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【学名解説】
Glechoma : ハッカの一種glechonに由来/カキドオシ属
hederacea : hederaceus(キズタ属(Hedera)に似た)
L. : Carl von Linne (1707-1778)
subsp. : subspecies(亜種)
grandis : 大形の
A. Gray : Asa Gray (1810-1888)
H.Hara : 原 寛 Hiroshi Hara (1911-1986)
---
var. : varietas(変種)
Kuprian. : Lyudmila Andreyeva (Andreevna) Kuprianova (1914-1987)
---
f. : forma(品種)
nivea : niveus(雪白色の)
Hiyama : 桧山庫三 Kozo Hiyama (1905-?)
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albovariegata : albi(o)(白)+variegatus(斑紋のある)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から12.50km 左岸土手 2006.04.20
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

First draft: 20 April 2006, 8 April 2014, 10 April 2015
Last modified: 2 May 2016
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by pianix | 2006-04-20 00:00 | | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 駿河木の家日記 at 2006-04-21 10:42
タイトル : 休耕地の観察・2006・・・カキドオシ(垣通し)
ブログを始める前は、こんな花が休耕地や道端に咲いているとは気付きもしませんでした。ところが、ブログを 始めてから、今まで気にも留めなかった物も気になったり、突然、目の前に現れる事もありました。 このカキドオシは、雑草の師匠でもある、ブログ・椅子と家具工房:雑記←この記事で知り、探していたのですが 見付かりませんでした。ところが、桜を見ていて、ふと足元に目をやりましたら、そこに咲いているではありませんか。 しかも、同じ日に別の場所でも見かけました。井上陽水の歌ではありませんが・・・探すのをや...... more
Commented by surugaki at 2006-04-21 10:41
ムラサキゴケとトキワハゼが区別がつかなかったのですが、よく理解できました。
しかもカキドオシまで、連載されて、とても勉強になりました。ありがとうございました。
私の記事もTBさせて頂きました。
Commented by pianix at 2006-04-21 18:42
surugakiさん
お久しぶりです。surugakiさんもお書きになっていたと思うので、
今さら何かなとは思ったのですが、目的は安倍川に咲く花を記録する
と言う事なので、恥ずかしながら掲載しました。
このカキドオシは、たくさん咲いていたのですが、最近の天候で
晴天とはいえ風が強く、まともに撮影できないのが悩みです。
で、私はこれらの形状をした花の「のどちんこ」に興味があり
撮りためています。(笑い)
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