スルガテンナンショウ(駿河天南星)
 スルガテンナンショウ(駿河天南星)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、日本原産の在来種です。国内分布は、中部地方の太平洋側山地で、東海地方特産です。マムシグサ(蝮草)の仲間で、ムロウテンナンショウ(室生天南星)の亜種です。名の由来は、旧国名の駿河(静岡県)で見出されたテンナンショウであることから。天南星1)は漢名で、白色星を意味し、白色の球茎を見立てたものと言われています。英名は、Jack in the pulpit。

 サトイモ科(Araceae Juss. 1789)は、115属2000種以上が熱帯を中心に分布します。テンナンショウ属(Arisaema C.F.P. von Martius, 1831)は、東アジア、東南アジア、北米、メキシコ、アフリカ東部などの熱帯や温帯に約150種、日本には約30種が分布します。テンナンショウ属は12節に分類されます(Murata 1992)。

 山の林内に生えます。地下部に球茎があります。茎は直立し、高さは最小で15cm、普通は50cm程です。細い茎の回りを、1~2枚の葉鞘からなる偽茎が取り巻いています。偽茎にはマムシ(蝮)のような紫褐色のまだら模様があります。筒状の苞葉頂部から葉と花序を展開します。葉は2個つき、小葉は鳥足状複葉2)です。葉に斑が入る場合もあります。

 花期は3月から4月頃。仏炎苞3)は淡緑色で白い筋が先端に向かって走り、前方に折れ曲がって舌状の舷部となり附属体を覆います。仏炎苞の内側には乳状突起があります。ホソバテンナンショウ(細葉天南星)に外観が似ています。それらの附属体は棍棒状あるいは棒状ですが、本種の附属体は先端が膨らみ前方に傾斜するのが大きく異なる部分です。附属体の下に附属体の柄があり、花は附属体の柄の下にあります。肉穂花序で、花軸に密着してつきます。

 雌雄異株で、環境によって性転換します。性は地下にある球茎の重さによって決まります。テンナンショウの場合、球茎が4g以下が無性、21gまでが雄、それ以上は雌。球茎にはシュウ酸カルシウムが含まれていて有毒です。雄花と雌花の花被はありません。虫媒花で、媒体の多くはハエ類です。仏炎苞の形状によって虫を内部に閉じ込め、受粉確率を高めていると考えられています。雄性の仏炎苞には下部に開口部があり脱出できますが、雌性の仏炎苞では閉じこめられます。秋に仏炎苞が枯れて、朱赤色の果実(液果)が現れます。

1)竜骨座(Carina)のα星・カノープス(Canopus)
2)鳥足状複葉=とりあしじょうふくよう(pedately compound leaf):葉身が2個以上に全裂した小葉があり、柄が鳥の足のように分かれている
3)仏炎苞(spathe):肉穂花序(花軸に密集してつく小花)を囲むように発達した苞葉。形状が仏像の光背の炎形に似るため。

参考:ウラシマソウ(浦島草)

Japanese common name : Suruga-ten'nansyou
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Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata

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左:(1) マムシ模様の偽茎が立ち上がる。 右:(2) 葉が開く前。
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▲上から見た鳥足状複葉

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左:附属体は先端が膨らみ傾斜する。 右:仏炎苞合わせ目の一部が開いている雄株。

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左:雌株   右:雄株
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斑が入る葉もある

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左:果実は液果の集合果2007.10.05 右:冬に赤く熟した果実が脱落 2006.11.28


スルガテンナンショウ(駿河天南星)
サトイモ科テンナンショウ属
学名:Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata
花期:3月~4月 多年草 草丈:20~100cm 雌雄異株

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【学名解説】
Arisaema : Arum(植物名)の一種(aris)+haima(血)/テンナンショウ属
yamatense : ヤマトの
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)
subsp. : subspecies(亜種)
sugimotoi : 杉本順一 Junichi Sugimoto (1901-?) 杉本氏の
H.Ohashi : 大橋広好 Hiroyoshi Ohashi (1936- )
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&に同じ)
J.Murata : 邑田仁 Jin Murata (1952- )
---
Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
C.F.P. von Martius : Carl (Karl) Friedrich Philipp von Martius (1794-1868)

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Sendai-Yama, Alt.226m) 2007.03.07
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

First draft: 4 April 2007
Last modified: 8 April 2014
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by pianix | 2007-04-04 00:00 | | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 駿河木の家日記 at 2007-04-29 08:56
タイトル : スルガテンナンショウ(駿河天南星)orマムシグサ(蝮草)??
近くの山には、不思議な草が生えていました。私には、葉と花の区別が付かないのです。(涙)地元の植物に最も造詣が 深い「草花と自然Blog」さんが紹介されたスルガテンナンショウ(駿河天南星)のようにも見えます。頭に駿河と付い ただけで舞い上がり、それに決定!!しても良いのですが、念のため図鑑で調べてみました。                                                 (オマケ→Yahoo!・検索・・・「駿河」) 図鑑には、マムシグサ(蝮草)と記されていまし...... more
Commented by surugaki at 2007-04-29 08:55
勉強になります。私のブログ記事に、こちらの記事をリンクさせて頂きました。
(その記事をTBさせていただきました。)甚だ勝手ではございますが、よろしく
お願いいたします。私には、マムシグサとの違いが判りませんので、これから
スルガテンナンショウを探しに出かけます。
Commented by pianix at 2007-05-16 20:40
surugakiさん
リンク記事は拝見しました。その内の附属体先端が項垂れている物は、私にはスルガテンナンショウに見えました。
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