ヒトリシズカ(一人静)
 ヒトリシズカ(一人静)は、センリョウ科チャラン属の多年草です。東アジアの温帯に分布し、国内では北海道から九州にかけて分布します。名の由来は、1本の花穂を磯禅師の娘で源義経の愛妾である静御前(Ca.1165-1211)が一人で舞う姿に見立てたもの。別名のヨシノシズカ(吉野静)は吉野山で舞う静御前の事で、マユハキソウ(眉掃草)は花穂の形状を白粉をつけたあとで眉を払う化粧道具のブラシに見立てたものです。中国名はギンセンソウ(銀線草、yín xiàn cǎo)。

 センリョウ科 (Chloranthaceae R.Br. ex Sims, 1820) は、熱帯地方を中心に5属約60種が分布します。日本には1属4種があります。花被が無い、雄しべ1~3個と雌しべ1個の花を付けます。チャラン属(Chloranthus Swartz)は、日本には3種1)があります。

 山地の林内に自生します。茎は直立して叢生し、高さ20~30cmになります。紫褐色で節があり、節に鱗片状の葉がつきます。葉は、茎の先端に対生し、4枚を輪生状につけます。この様に、葉の節間が短縮して輪生に見えるものを偽輪生(false verticillate)と言います。濃緑色で光沢があり、長さ6~10cmの楕円形から卵状楕円形で、先端は尖り、周囲には細かな鋸歯があります。

 花期は、4月から5月頃。茎頂に1個の穂状花序をつけます。花序の長さは1~3cm程度です。花は萼片や花弁は無く、雌しべと雄しべだけがあります。雌しべは短く柱頭は透明感があります。雄しべは長さ3~5mmで、雌しべの根元下方に付きます。白色の糸状で3分岐し、中央を除いた外側の雄しべ花糸(かし・filament)基部に黄色の葯(やく・anther)を1個ずつ計2個付けます。葯は、花粉をつくる袋状の器官です。花糸先端に付くものが多い中、本種は根元につきます。夏以降に、茎の節から細い花序を出し閉鎖花をつけます。果実は核果です。緑色の広倒卵形で長さは3mm程。染色体数は2n=30。

 類似種に、絶滅危惧II類(VU)に指定されているキビヒトリシズカ(吉備一人静)があります。花糸がヒトリシズカよりも長く、葯が花糸の基部中央に2個、両外側に1個ずつの計4個をつけます。

1)日本のチャラン属3種
キビヒトリシズカ(吉備一人静)Chloranthus fortunei (A.Gray) Solms
ヒトリシズカ(一人静)Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama
フタリシズカ
(二人静)Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult.

Japanese common name : Hitori-shizuka
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Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama

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左:輪生状に付く葉と穂状花序。 右:白い雄しべ花糸の基部に黄色の葯が付く

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左:葉には鋭い鋸歯がある 右:茎の節には鱗片状の葉が付く
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果実は核果


ヒトリシズカ(一人静)
別名:ヨシノシズカ(吉野静)/マユハキソウ(眉掃草)
センリョウ科チャラン属
学名:Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama
synonym : Chloranthus japonicus Siebold
花期:4月~5月 多年草 草丈:20~30cm 花穂長:1~3cm

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【学名解説】
Chloranthus : chloros(黄緑)+ anthos(花)/チャラン(茶蘭)属
quadrifolius : 四葉の
A.Gray : Asa Gray (1810-1888)
H.Ohba : 大場秀章 Hideaki Ohba (1943- )
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
S.Akiyama : 秋山 忍 Shinobu Akiyama (1957- )
---
synonym : (シノニム) 同意語、異名
japonicus : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
---
fortunei : Robert Fortune (1812-1880)の
Solms : Hermann Maximilian Carl Ludwig Friedrich zu Solms-Laubach (1842-1915)
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ca. : circa(約、およそ)

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Sendai-yama, Alt.226m) 2007.04.04 / 04.05 / 04.06 / 04.26
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

20 April 2007
Last modified: 15 July 2015 (Scientific name update)
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by pianix | 2007-04-20 00:00 | | Trackback | Comments(4)
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Commented by nenemu8921 at 2007-04-21 18:34
こんにちわ。namihei氏のリンクからお邪魔しました。
すばらしい画像に息を呑みました。
トップの画像は環境も立派にしかも美しく入れてあって、脱帽です。
解説も専門的ですね。
数日前に撮った我がヒトリシズカとは雲泥の差です。
私は宮沢賢治作品に登場する植物や鳥の画像を展開しています。
しかし、ヒトリシズカには、宮沢賢治は言及していませんのでアップせずにいて、よかった…。
エキサイトですので、よかったらリンクさせてください。

Commented by pianix at 2007-04-23 15:22
nenemu8921さん

こんにちは、初めまして。
namihei博士の所からおいで頂いたとは光栄です。
写真は悩みの種です。全然美しく撮れないからです。
nenemu8921さんの「イーハトーブ・ガーデン」は素晴らしいですね。
文学と花が一体となって、違った世界へ誘ってくれます。
今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by namiheiii at 2007-04-25 22:40
見事な群落ですね。写真も実に見事できっちり一分の隙もないという感じですね。清水には三年住んで山もほどほどに歩いたのですがこんな素晴らしい野草があるとは・・・
Commented by pianix at 2007-05-16 20:38
namiheiiiさん
ヒトリシズカは女性に人気があるようですね。ネーミングに引かれるのでしょうか。
花の時期は短く、その後は葉が太り?はじめて見る人もいなくなります。
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