ギンリョウソウ(銀竜草)
 ギンリョウソウ(銀竜草)は、ツツジ科ギンリョウソウ属の多年草です。日本、中国、朝鮮半島、台湾、インドシナ半島、サハリンなどに分布します。国内では全国に分布する在来種の菌寄生植物(菌従属栄養植物)です。名の由来は、鱗片葉がついた茎を胴体に、うつむき加減の花を頭に見立て、全体が白色である事から銀の竜に例えたもの。別名のユウレイタケ(幽霊茸)は、薄暗い雑木林に咲く白い妖艶な姿を白衣をまとった幽霊のようなキノコに例えたもの。ただしキノコの仲間ではありません。中国名は球果沙晶蘭。蘭とありますがランの仲間ではありません。

 APG分類体系では、ツツジ科(Ericaceae Juss. (1789))で、約125属4000があり、シャクジョウソウ*亜科(Monotropoideae)に、旧分類のシャクジョウソウ科やイチヤクソウ科がまとめられました 。クロンキスト体系では、シャクジョウソウ科(Monotropeae Dumort. (1829))で、北半球の温帯から熱帯にかけて約10属15種が分布します。新エングラー体系ではイチヤクソウ科(Pyrolaceae Dumortier (1829))ギンリョウソウ亜科とされます。ギンリョウソウ属(Monotropastrum H.Andres, in Handel-Mazzetti, 1936)は、2種があり、国内には1種が自生します。

 山地の落ち葉が積もった暗く湿った雑木林などに生える真菌寄生の植物です。短くて太く、鱗片が密集した茶色の地下茎があります。この地下茎に外生菌根(モノトロポイド菌根/monotropoid mycorryhiza)を形成し、ベニタケ属の菌類から有機物栄養を吸収します。葉緑素を持たない為、全体的に透明感がある白色ですが、内部に紫色の色素があります。草丈は10~20cmで、株を作り立ち上がります。

 花期は5月から8月頃。花茎は多肉質で水っぽく、上向きに鱗片葉が互生します。茎頂に、うつむき加減に花冠を1個付けます。鐘形の合弁花で、花冠裂片は3から5個。花冠の長さは、15~25mm。雄しべは10個内外で子房に取り巻くように付き、軟毛があり、葯色は黄色。雌しべ先端は、やや広がり暗紫色。果実は卵球形の液果で、熟すと黒褐色となります。種子は0.3mm内外で、約5000個が含まれると言われています。

 類似種に、ギンリョウソウモドキ(銀竜草擬)Monotropa uniflora L. があります。別名をアキノギンリョウソウ(秋の銀竜草)と言います。8月から10月にかけて咲く、ツツジ科シャクジョウソウ属の多年草です。ギンリョウソウの果実は下向きに付き、胚珠1)は側膜胎座2)ですが、ギンリョウソウモドキの果実は朔果であり、中軸胎座3)で、上向きになります。品種として、淡い紅色に色づく、ベニバナギンリョウソウ(紅花銀竜草)Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara f. roseum (Honda) Yonek.があります。

※シャクジョウソウ(錫杖草)

1)胚珠【はいしゅ】(ovule):子房内部にある粒で、種子になる部分。
2)側膜胎座【そくまくたいざ】(parietal placentation):子房の側壁に胚珠が付くもの。
3)中軸胎座【ちゅうじくたいざ】(axial placentation):子房の中軸に胚珠が付くもの。

Japanese common name : Ginryou-sou
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Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara

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2008.05.20 - 花冠の裂片は3~5個 - 2008.05.17

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左:雄しべと雌しべ(2014.04.16) 右:鱗片葉が互生する茎(2008.05.20)
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花冠裂片が脱落して子房が露出(2008.06.04)

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左:暗紫色部分が雌しべ柱頭、雄しべは10個内外で軟毛がある。右:子房側面。

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 子房断面。果実は液果

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▼右:果実表皮の一部が腐って内部が露出。
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▲左:枯れると全体が黒褐色になり地に倒れる。(2008.08.05)
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落ち葉が積もった暗く湿った雑木林などに生える真菌寄生の植物


ギンリョウソウ(銀竜草)
別名:マルミノギンリョウソウ(丸実の銀竜草)/コギンリョウソウ(小銀竜草)/ユウレイタケ(幽霊茸)
ツツジ科ギンリョウソウ属
学名:Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara
花期:5月~8月 多年草 草丈:8~20cm 花冠長:15~25mm

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【学名解説】
Monotropastrum : Monotropa(シャクジョウソウ属)+astrom(似る)/ギンリョウソウ属
※Monotropa : monos(一つ)+tropos(向く)/シャクジョウソウ属
humile : humilis(低い)
D.Don : David Don (1799-1841)
H.Hara : 原 寛 Hara Hiroshi (1911-1986)

撮影地:静岡県静岡市
安倍城跡(alt.435.2m) 2008.05.17 / 05.20 / 06.04, 2014.04.16
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

9 August 2008, 18 April 2014, 3 June 2014, 20 May 2016
Last modified: 8 November 2016
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by pianix | 2008-08-05 00:00 | | Trackback(1) | Comments(3)
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Tracked from 春来草自生 at 2009-05-15 23:17
タイトル : ギンリョウソウ(銀竜草)
いつものように散策をしている場所で見つけた植物です。 始めはビニール袋のゴミかと思いながら見ていましたが 近づくと植物だと分かりました。 半スケルトン状態で 花のようなものが付いていて 一つだけ抜いてみました。 するとやはり花のようでした。... more
Commented by なか at 2008-09-17 12:11 x
Blogの再開を喜んでいます。

詳細な説明(学名、別名、花期、草丈等)と種の特徴が解る複数の写真を興味深く拝見しています。

身近な雑草も研究者によって、調べつくされているということが、このブログを見るたびに感じます。

私もきれいな花の写真だけではなく、種の特徴が解る写真を撮ろうと思っています。
Commented by 月桂樹 at 2009-05-17 21:53 x
こんばんは。
始めまして、月桂樹と申します。
突然ですが、先日、万葉の散策路を歩いていて、ギンリョウソウを発見し、得体の知れない植物に戸惑い、いろいろ調べていました。
名前が分かり、更に検索していたところ、此方に辿り着きまして、興味ある内容でしたので、無断でリンクを貼らせていただきました。
事後報告で申し訳ありませんでした。
またトラックバックの掲載をして頂きましてありがとうございました。
Commented by pianix at 2009-05-23 22:06
月桂樹さん
「春来草自生」を拝見しました。
美しい写真満載ですね。
リンクを張って頂き、ありがとうございました。
無断とかまったく関係ないのでご安心下さい。
教えていただくことも多いかと思います。
これからもよろしくお願い致します。
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