オシロイバナ(白粉花)は、オシロイバナ科オシロイバナ属の多年草です。中南米が原産の帰化植物です。日本全国に分布します。園芸用途で移入栽培され、1694年(元禄7年)に帰化が確認されました。オシロイバナの名付け親は、江戸時代の博物学者である貝原益軒(1630-1714)です。名の由来は、果実の乳胚を潰すと白い粉状になる事から。夕方4時頃に咲く事から英国では「four o'clock」と呼ばれ、日本でも「夕化粧」の別名があります。しかし、開花時刻は季節が進むと早まります。中国名は、紫茉莉(zǐ mò li)
オシロイバナ科(Nyctaginaceae Juss. (1789))は、亜熱帯から熱帯に約34属350種が分布します。 オシロイバナ属(Mirabilis L. (1753))は、約50種が分布します。 根は塊根で肥大します。茎は分枝しながら草丈30~100cmになります。葉は対生します。広卵形で全縁、葉脈に毛があり、長さ約9cm。斑入りもあります。 花期は7月から10月。夏期は午後に開花します。総苞5枚があり、そこから伸びた萼が筒状となり先端がラッパ状に5裂します。筒部は約5cm、花冠径は2~3cm。雄しべは5本。花色はベタレイン色素(Betalain Pigments)によるもので、基本色は黄色、赤色、白色。トランスポゾン1)によって発色が決まります。 果実は偽果である副生果2)です。総苞に包まれます。8~9mmの楕円形で黒色。未熟果実は、中に白色で白粉質の胚乳が含まれます。成熟果実は固くなり、種子は1個で、長さ約5mm。根茎と種子はトリゴネリン3)を多く含み、有毒です。 植物の受粉方法を区別すると、他家受粉4)、自家受粉5)、単為生殖、無性生殖があります。オシロイバナは両性花で他家受粉と自家受粉の両方を行います。他家受粉の送粉者はスズメガ。媒介する送粉者により受粉できなかった場合は、同花受粉(自家受粉)します。開花直後は雄しべ、雌しべとも真っ直ぐですが、暗くなると曲がり始め受粉します(両動同花受粉6))。そして花の中に潜ってしまいます。染色体数は、2n=(54),58。 類似種に、花筒部分が10cm程になる、ナガバナオシロイバナ(長花白粉花)Mirabilis longifolia L. があります。品種に、苞が着色して花弁のように見える、フタエオシロイバナ(二重白粉花)Mirabilis jalapa L. f. dichlamydomorpha (Makino) Hiyama があります。 花を探して河川敷を歩き回っていると、一人の男性がじっと何かを見据えていました。話しかけると、「この場所にオシロイバナの種を植えておいたので成長を見に来ている」との事でした。面白そうな花色の種を集めて植え、観察するというのは、立派な研究だと思いました。 一本の株から異なる色の花が咲くのは不思議な感じがします。昨年見た河川敷のオシロイバナは、茎の太さが8cm程もあり、まるで木本のようでした。掘り下げるとサツマイモのような根茎をしているのが分かります。従って、上部が切り取られても根強く生き残る事ができます。 脚注: 1)トランスポゾン(transposon):染色体(DNA)上を移動することができる遺伝子。動く遺伝子。転移因子。Barbara McClintock (1902-1992)による発見で、1983年にノーベル生理学・医学賞を受賞。 2)副生果(anthocarp):花被がひとつの種子を包み、果皮と合体した偽果。副生とは、副次的に生産されるもの。偽果は、子房以外の部分が生長して果実の主要部分となるもの。 3)トリゴネリン(trigonelline, C7H7NO2) :別名をカフェアリン、N-メチルニコチン酸。神経等に対する薬理作用が研究され、アルツハイマー型認知症予防の効果が期待されている。生薬として根を利尿や関節炎、葉を切り傷の治療等に利用される事がある。誤食により、嘔吐や腹痛、下痢を起こす。マメ科フェヌグリーク属のコロハ(胡廬巴)Trigonella foenum-graecum L.から初めて分離された成分である事から属名(Trigonella)が名の由来となった。 4)他家受粉(cross pollination):他個体の花粉で受粉する方法。 5)自家受粉(self pollination):同じ個体内で受粉する方法。同花受粉と隣花受粉に細分される。 6)両動同花受粉:雄しべと雌しべの両方が動いて同花受粉する方法。雌雄器官がそろっている両全花で、雌しべの柱頭に受粉する場合は同花受粉、同じ花序の他の花に受粉する場合は隣花受粉、同じ個体であっても異なった花に受粉する場合は同株他花受粉という。 Japanese common name : Osiroi-bana オシロイバナ(白粉花) 別名:ユウゲショウ(夕化粧)/フォーオクロック(four o'clock) オシロイバナ科オシロイバナ属 学名:Mirabilis jalapa L. 花期:7月~10月 多年草 草丈:60~100cm 花径:2~3cm 実径:8~9mm 【学名解説】 Mirabilis : 不思議な・素敵な/オシロイバナ属 jalapa : ヤラッパ(メキシコの町名) L. : Carl von Linne (1707-1778) 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から5.75km 左岸河川敷 2005.09.01, 2017.10.12 葵区福田ヶ谷 2006.11.21 安倍川/河口から14.0km 左岸河川敷 2007.07.26 自宅 2017.10.03, 2018.08.01, 2018.08.07 葵区南沼上 2018.07.27 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 16 September 2005, 30 May 2014, 9 July 2016, 4 August 2017, 11 August 2018 Last modified: 7 December 2023
by pianix
| 2005-09-16 00:00
| 花
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by pianix カテゴリ
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Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
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