2017年 08月 28日 ( 1 )
ホオノキ(朴の木)
 ホオノキ(朴の木)は、モクレン科モクレン属の落葉高木です。北海道、本州、四国、九州に分布する日本固有種です。近縁種は、中国、朝鮮半島に分布します。名の由来は、包むとの意味からと言われています。中国名は、日本厚朴(rì bĕn hòu piáo)。英名は、Japanese Umbrella Tree。

 モクレン科(Magnoliaceae Juss. (1789))は、アジア、アフリカの温帯および亜熱帯に13属240種が分布します。属名のマグノリア(Magnolia L. (1753))は、フランスのモンペリエ植物園園長マニョール(Pierre Magnol)の名に因むもので、アジアとアメリカ大陸に約90種があります。日本にはモクレン属6種、オダマキ属1種が自生します。

 全国の山地に自生します。大きなものでは、高さ約30m、径約1.5mになります。樹皮は灰白色。他感作用(アレロパシー1))があり2)、周囲に他の植物は生育しにくくなります。葉は互生します。枝先に螺旋状に集まります。葉柄は長さ2~4cm。葉身は倒卵形で、全縁、長さ30~45cm、幅10~25cm。葉裏は軟毛があり白灰色。

 花期は、5月~6月。枝先に上向きに花をつけます。花は杯形で径20cm。離弁花です。花被片は9~12個あり、外側3枚は顎状となり短く、内側は花弁状。乳白色で強い芳香があります。香りは虫の誘引の為と言われています。虫媒花です。甲虫類(ハナアブやハナムグリ)が訪花します。

 両性花です。花床の上部に雌しべ、下部に雄しべが密生します。雄しべ花糸は約2cmで赤色、葯は黄白色。雌性先熟です。花弁が少し開いた時が雄しべ成熟期(雄性期)、平開した時が雌しべ成熟期(雌性期)で、その後、雄しべと花弁を脱落させます。個々の花は時期をずらして開花します。

 果期は、9~11月。果実は長楕円形の集合袋果(etaerio of follicles)です。100~150個の袋果3)がつきます。長さ10~15cmで、熟すと赤褐色となり、裂開して艶のある赤色の仮種皮4)に包まれた長さ約1cmの種子を出します。仮種皮の下には肉質内層があります。白い糸状の珠柄5)で袋果と種子がつながります。

 個々の袋果には、0~2個の種子があります。個体の他の花粉により自家受粉を起こす事があり、自家受粉果より他家受粉果のほうが2種子袋果の割合が高い6)との報告があります。種子は黒色。集合果は最終的に茶褐色になり落下します。染色体数は、2n=38。

 葉は抗菌作用7)があるため、食べ物の包材として利用されます。飛騨高山の郷土料理である朴葉味噌をはじめ、朴葉餅、朴葉寿司にも使われます。材は軽く柔らかで歪みや変形が少ないので、まな板、刀の鞘、版木、マッチの軸、鉛筆材、下駄の歯等に利用されます。

 日局「厚朴」8)は、本種の樹皮を乾燥させたもので、整腸、健胃、収斂、利尿、去痰作用があります。成分は、精油、アルカロイド (マグノクラリン、マグノフロリン等) 、ジフェニール化合物 (マグノロール、ホーノキオール等)。果実を「朴の実」と称し、民間薬(風邪、嘔吐、疝気)として使われていました。中国産と区別するために日本産を和厚朴、中国産を唐厚朴と言う場合があります。

1)アレロパシー(Allelopathy):植物が放出する天然の化学物質(生理活性物質)が他の生物に、阻害的あるいは促進的(共栄的)な作用を及ぼすこと。Hans Molisch (1856-1937)が晩年に提唱した用語。
2)森林におけるアレロパシー(1996) 小島康夫 北海道大学
3)袋果(たいか)follicle:裂開果の一種で、一枚の心皮子房が成熟して袋状になった果実。内縫線あるいは外縫線に沿って裂開する。
4)仮種皮(かしゅひ)aril:種子の表面を覆う付属物。胚珠や胎座の一部が発達したもの。種衣(しゅい)。
5)珠柄(しゅへい)funiculus:種子になる部分の胚珠を子房の胎座に付着させている柄。
6)健全なホオノキ種子の選び方、他殖種子をより多く採る方法 中村和子・石田清 森林総合研究所北海道支所 研究リポート No.35(1996)
7)ホオノキの葉成分の各種病原微生物に対する抗菌効果 環境感染 巻:23 号:Supplement ページ:311 2008 武井泰・永井慎・上平公子
・抗菌成分:eudesmol,magnolol,honokiol - Antifungal Constituents in the Bark of Magnolia obovata Thunb.Mitsunori MORI, Masakazu AOYAMA, Shuichi DOI
・ホオノキ葉の精油成分:α- and β-pinene, camphene, limonene, bornyl acetate, caryophyllene, caryophyllene epoxide, and chavicol. - YAKUGAKU ZASSHI Vol. 96 (1976) No. 2 P 218-222
8)第十七改正日本薬局方 「本品はホオノキMagnolia obovata Thunberg (Magnolia hypoleuca Siebold et Zuccarini), Magnolia officinalis Rehder et Wilson 又はMagnolia officinalis Rehder et Wilson var. biloba Rehder et Wilson (Magnoliaceae)の樹皮である。本品は定量するとき、マグノロール0.8%以上を含む」

Japanese common name : Hoo-no-ki
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Magnolia obovata Thunb.

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左:蕾。すでに受粉を終えたものもある 右:雄しべ成熟期の始まり

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左:雄しべが脱落する 右:赤色は雄しべ花糸

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左:雄しべが落ち、花冠も枯れる 右:果実のみになる

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左:熟して赤くなった集合果 右:枝先に大きな葉を輪生状に互生する

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左:樹皮は灰白色 右:全体


ホオノキ(朴の木)
モクレン科モクレン属
学名:Magnolia obovata Thunb.
synonym : Magnolia hypoleuca Siebold et Zucc.
花期:5月~6月 落葉高木 樹高:15~30m 花径:15~20cm 果期:9~11月

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【学名解説】
Magnolia : Pierre Magnol(1738-1815)に因む/モクレン属
obovata : obovatus(倒卵形の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
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synonym : Magnolia hypoleuca Siebold et Zucc.
hypoleuca : hypoleucus(下面が白色の)
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Zucc. : Gerhard Zuccarini (1790-1848)
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コウボク(厚朴)
Magnolia officinalis Rehder et E.H.Wilson
officinalis : 薬用の
Rehder : Alfred Rehder (1863-1949)
E.H.Wilson : Ernest Henry Wilson (1876-1930)
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オウヨウコウボク(凹葉厚朴)
Magnolia officinalis Rehder et E.H.Wilson var. biloba Rehder et E.H.Wilson
var. : varietas(変種)
biloba : bi(2つの)+lobus(耳たぶ)=bilobus(二浅裂の)

撮影地:静岡県静岡市
安倍城跡 (Alt.435m) 2012.05.16, 2013.06.04
ダイラボウ (Alt.561m) 2016.09.01, 2017.05.12
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

28 August 2017
Last modified: 29 August 2017
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by pianix | 2017-08-28 00:00 | | Trackback | Comments(0)