カテゴリ:実( 37 )
クロガネモチ(黒鉄黐)
 クロガネモチ(黒鉄黐)は、モチノキ科モチノキ属の常緑高木です。日本、中国、台湾からインドシナ半島北部にかけてが原産地です。日本では関東以西の暖地に分布します。名の由来は、葉柄や若枝が紫褐色で黒鉄に似て、葉が乾燥すると鉄色になる事からと言われています。英名は、クロガネ・ホーリー(kurogane holly)。

 モチノキ科(Aquifoliaceae Bercht. & J.Presl (1825))は、世界に4属450種程が知られていて、日本にはモチノキ属(Ilex L. (1753))のみの23種があります。セイヨウヒイラギ (西洋柊)と同じ仲間です。

 山野の明るいところに多く見られます。樹皮は滑らかで灰白色をしています。葉は濃緑で、革質で光沢があります。5~8cm程の楕円形全縁の葉を互生します。葉柄(ようへい・葉の柄の部分)は1~2cmで、やや紫色を帯びます。春に一斉に葉を落とします。

 5月から6月にかけて、葉腋(ようえき・葉が茎に付着する部分)から出た短い花柄(かへい・個々の花をつけている柄の部分)に、小さな目立たない淡紫色の花を集散花序に付けます。花弁は通常6枚ですが4~7枚の範囲にばらつきます。雌雄異株です。雌花の雄しべは退化して小さく、雄株は逆に目立ちます。果実は広楕円形で、6mm内外の赤い実を10月以降に付けます。この目立つ赤い果実が庭木としての価値を持ちます。冬の赤い実と言えば幾つかが挙げられますが、その筆頭といえます。果実は鳥が食べて種子を散布します。

 性質は強健ですが、寒さに弱いところがあります。街路樹や庭木に利用されます。果実を付けるのは雌株なので、植栽されるのは雌株が多いようです。繁殖は種まきか挿し木によります。

Japanese common name : Kurogane-moti
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Ilex rotunda Thunb.


クロガネモチ(黒鉄黐)
学名:Ilex rotunda Thunb.
モチノキ科モチノキ属
花期:5月~6月 常緑高木 樹高:5~18m 花径:5mm 果期:10~1月 実径:5~8mm

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【学名解説】
Ilex : holly(西洋柊)のラテン語古名/モチノキ属
rotunda : rotundus(円形の・丸味ある)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)

撮影地:静岡県静岡市
葵区西ヶ谷/西ヶ谷総合運動場(植栽) 2005.11.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 01 February 2006
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by pianix | 2006-02-01 00:00 | | Trackback | Comments(0)
レモン(lemon/檸檬)
 レモン(檸檬)は、ミカン科ミカン属の常緑低木です。原産地はインド北部で、現在では地中海沿岸地方、アメリカ合衆国が主な産地となっています。日本には明治時代に導入されました。中国名で檸檬(níng méng)。クエン酸は、別名のクエン(枸櫞)が由来。

 ミカン科(Rutaceae Juss. (1789))は、150属をかかえる大きな科で、約900種が知られています。ミカン属(Citrus L. (1753))は、約159種があります。

 枝には短い棘があり、葉は互生し、楕円形で先端が尖り鋸歯があります。 蕾は淡紫色で、花は白色もしくはピンクの5裂する花弁があり、香りがあります。両性花です。外果皮に油室があります。

 果実は、多肉果のひとつである、蜜柑状果です。蜜柑状果は、中果皮はパルプ状、内果皮は毛状となり、果汁を蓄えた果実を言います。潮風への耐性があるので海岸沿いでも栽培は可能です。他の柑橘類との混在栽培も行われます。収穫は、一般的には10~12月ですが、果実が大きくなったらいつでもできます。無農薬栽培の果実を刻んで塩に漬けた塩レモンは、モロッコの調味料として知られています。

 果実は紡錘形の液果(水分の多い肉質の果皮をもつ・多肉果)で、エーテル性のオイル、蓚酸カルシウム(Calcium oxalate, CaC2O4)、イソキノリン系のアルカロイド(alkaloid)やクマリン(Coumarin, C9H6O2)が含まれます。レモン1個分のビタミンC標準含有量は20mgです。香りがあり強い酸味(pH2)があります。香りの成分はテルペン系炭化水素のd-リモネン (Limonene, C10H16)です。溶剤として使われます。また、含まれるポリフェノールの1種であるエリオシトリン(Eriocitrin, C27H32O15)は、活性酸素を押さえる抗酸化効果があることが分かっています。

参考:ミカン科ミカン属 ウンシュウミカン(温州蜜柑) ブンタン(文旦)

Japanese common name : Lemon
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Citrus limon (L.) Osbeck


レモン(lemon/檸檬)
別名:クエン(枸櫞)
ミカン科ミカン属
学名:Citrus limon (L.) Osbeck
花期:四季咲き性(主に5月) 常緑低木 樹高:3~6m 花径:4cm 果期:10~12月

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【学名解説】
Citrus : kitron(箱)、レモンの古名/ミカン属
limon : limosus(湿地帯生の)イタリアでの名
L. : Carl von Linne (1707-1778)
Osbeck : Pehr Osbeck (1723-1805)

撮影地:静岡県静岡市
葵区牛妻(植栽) 2006.01.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

25 January 2006, 23 May 2010
Last modified: 12 December 2016
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by pianix | 2006-01-25 00:00 | | Trackback | Comments(0)
シャリンバイ(車輪梅)/実
 シャリンバイ(車輪梅)は、バラ科シャリンバイ属の常緑低木です。本州宮城県以西から沖縄に至る海岸沿いに自生します。名の由来は、枝が車軸状に出る事と、花が梅に似ている事からです。最近では、シャリンバイ(車輪梅)、マルバシャリンバイ(丸葉車輪梅)、タチシャリンバイ(立車輪梅)は、同種の変異内としてまとめます。一般的には、葉の形態で判別し、マルバシャリンバイは、楕円形で僅かに鋸歯があり、タチシャリンバイは、細長く縁全体に鋸歯があるとされています。

 葉は、長さ4~8cmの倒卵形で互生し、輪生状に付きます。肉厚で光沢があり、浅い鋸歯があります。花は、枝先に円錐花序を出し、白色の花弁が5枚あります。果実は上向きに付きます。球形で、熟すと黒紫色になります。白い粉を被るので葡萄の実のようにも見えます。種子が2個入っています。

 公園や、街路樹として植栽されている他、生け垣、道路の分離帯等にも多く見られます。私は、土手沿いに植えられているシャリンバイの果実の色が変化していく様子を10月頃から観察していました。また、方言を含めて何と呼ばれているのか興味があって多くの人に尋ねてみたのですが、残念ながら名前を知っている方は一人もいませんでした。

参考:シャリンバイ(花)

Japanese common name : Syarin-bai
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Rhaphiolepis indica (L.) Lindl. var. umbellata (Thunb.) H.Ohashi


シャリンバイ(車輪梅)
別名:マルバシャリンバイ(丸葉車輪梅)/タチシャリンバイ(立車輪梅)
バラ科シャリンバイ属
学名:Rhaphiolepis indica (L.) Lindl. var. umbellata (Thunb.) H.Ohashi
花期:5月~6月 常緑低木/小高木 花径:10~15mm 樹高:200~400cm 果期:10~11月 実径:1cm

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【学名解説】
Rhaphiolepis : rhaphis(針)+lepis(鱗片)/シャリンバイ属
indica : インドの
L. : Carl von Linne (1707-1778)
Lindl. : John Lindley (1799-1865)
var. : varietas(変種)
umbellata : umbellatus(散形花序の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
H.Ohashi : 大橋広好 Hiroyoshi Ohashi (1936- )
---
ex : ~より (代わりに発表)
Ker : John Bellenden Ker Gawler (1764-1842)
Murray : Johan Andreas Murray (1740-1791)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から11.25km 左岸土手(植栽) 2006.01.05
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 21 January 2006
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by pianix | 2006-01-21 00:00 | | Trackback | Comments(0)
キンカン(金柑)
 キンカン(金柑)は、ミカン科ミカン属の常緑低木です。中国折江省温州(長江下流域)原産ですが、種小名には日本が原産と誤って付けられています。日本では関東以西の暖地に分布します。分類に関して諸説あり、ミカン属から、1915年にキンカン属に転属され、再度ミカン属に戻されるという混乱が起きています。5種が知られていて、ナガキンカン(長金柑)、マルキンカン(丸金柑)、マメキンカン(豆金柑)、ネイハキンカン(寧波金柑)、フクシュウキンカン(福州金柑)があります。

 名称の「金」は果実の色で、「柑」は蜜柑の古名です。中国名は金橘です。現在の静岡市清水区にある清水港へ入港した中国の商船員が、キンカンの砂糖漬けを持ってきた事がきっかけで種から繁殖させたという話が伝わっています。14世紀の室町時代初期までには渡来していたとも言われています。

 ミカン科(Rutaceae Juss. (1789))は、150属をかかえる大きな科で、約900種が知られています。ミカン属(Citrus L. (1753))は159種があります。日本には明治時代に導入されました。中国名で檸檬。クエン酸(citric acid)は、別名のクエン(枸櫞)が由来。

 葉は互生し、7cm程の長さの長楕円形をしていて、浅い鋸歯があります。やや内側に巻く性質があります。花は白色で、花弁は5枚、雌しべ1本、雄しべ20本があります。子房室は2~8、それぞれに2個の胚珠があります。果実は、2cm程の長楕円形で、当初は緑色ですが、熟すと黄色になります。自家結実します。

 嚢果(のうか)は5~6個。苦味と甘味が中果皮にあり、αGヘスペリジン(糖転移ビタミンP)が含まれています。柑橘類中では、グラム当たりのビタミンCとカルシウム含有率は最大です。ヘスペリジンはビタミンCの吸収を助けます。マルキンカン以外の果肉には強い酸味があります。果実は品種によって生食用、砂糖漬・蜂蜜漬・甘露煮などに加工した菓子に、あるいは金柑酒として利用されます。民間薬として咳止めに使われます。生垣や園芸の鉢植え、盆栽等にも利用されます。実生で繁殖させます。

Japanese common name : Kinkan
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Citrus japonica Thunb.


キンカン(金柑)
別名:マルミキンカン(丸実金柑)/マルキンカン(丸金柑)/ヒメタチバナ(姫橘)
ミカン科ミカン属
学名:Citrus japonica Thunb.
synonym : Fortunella japonica (Thunb.) Swingle var. margarita (Lour.) Makino
花期:5月~6月(不定期) 常緑低木 樹高:2~3m 果期:10~12月 実径:2cm

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【学名解説】
Citrus : Kitrom(箱)/ミカン属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
---
Fortunella : Robert Fortune (1812-1880)に因む/キンカン属
Swingle : Walter Tennyson Swingle (1871-1952)
var. : varietas(変種)
margarita : margaritae(真珠の)
Lour. : Joao de Loureiro (1717-1791)
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)

撮影地:静岡県静岡市
葵区賎機(植栽) 2006.01.05
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

18 January 2006
Last modified: 16 March 2015
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by pianix | 2006-01-18 00:00 | | Trackback | Comments(0)
トベラ(扉)
 トベラ(扉)は、トベラ科トベラ属の常緑低木です。本州(岩手県以南)から台湾、中国までの海岸沿いに分布します。名の由来は、節分に鬼払いの為に戸口に置いた事からで、扉木が訛ったものと言われています。漢名を、カイドウ(海桐花)と言います。トベラ科(Pittosporaceae)は9属約250種があります。耐潮性・耐風性・耐煙性に加え、乾燥に強い事から、公園や道路の緑化等にも使われています。

 葉は互生し、枝先に密集してつくので輪生に見えます。長楕円形(狭倒卵形または倒卵状長楕円形)で先端は丸みを帯び、光沢があります。全縁(鋸歯がない)で、長さは5~8cm程です。捻れる場合が多いようです。葉には殺菌成分が含まれるので患部の洗浄に使う事もできます。

 花は、4月から6月頃にかけて白色の小さな花を集散花序につけます。雌雄異株であり、へら形の花弁が5枚、卵形の萼片も5個あります。雄しべは5本ですが、雌花の雌しべは先端が3分岐しています。

 果実は球形の朔果です。黒褐色に熟すと3つに裂け、粘着力が強い赤色の種子(仮種皮)が現れます。鳥が運び散布しますが、そのまま落ちて葉に付く事もあります。この粘着力は昆虫を捕獲するほどです。この粘着する種子を、私は異様な感じで面白いと思います。また、幹の皮を剥がすと異臭がします。

Japanese common name : Tobera
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Pittosporum tobira (Thunb.) W.T.Aiton


トベラ(扉)
別名:トビラノキ(扉の木)
トベラ科トベラ属
学名:Pittosporum tobira (Thunb.) W.T.Aiton
synonym : Pittosporum tobira (Thunb. ex Murray) Aiton
花期:4月~6月 常緑低木 樹高:2~3m 花径:1~2cm 果期:11~12月 実径:10~15mm

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【学名解説】
Pittosporum : pitta(ピッチ)+spora(種子)/トベラ属
tobira : 扉(日本語)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
W.T.Aiton : William Townsend Aiton (1766-1849)
---
ex : ~による
Murray : Johan Andreas Murray (1740-1791)
Aiton : William Aiton (1731-1793)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から5.25km 左岸(植栽) 2006.01.11
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

August 12, 2008
Last modified: 23 September 2015
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by pianix | 2006-01-14 00:00 | | Trackback | Comments(0)
クサギ(臭木)/実
 クサギの果実が干からびた状態になっているのを見ました。そこで、鮮やかだった頃の果実を思い浮かべました。紅色と黒紫色のコントラストがはっきりとした果実でした。花は良い香りがするのに、全体が独特の臭気を発するので嫌う人もいます。でも、花も果実も独特の装いをした面白い樹木であるのは間違いないと思うのです。そのゆえに、欧米では観賞用に栽培もされています。

 クサギ(臭木)は、シソ科クサギ属の落葉低木です。日本全国のほか、中国や台湾にも分布します。シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。オドリコソウ属Lamiumに由来する名です。保留名である新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。旧科名のクマツヅラ科(Verbenaceae Jaume Saint-Hilaire, 1805)は、南半球に約100属3000種が分布します。クサギ属(Clerodendrum L. (1753))は約100種が知られています。

 日当たりの良いところに生育します。種小名trichotomumの通りに、枝は三分岐し集散花序を出します。花冠は細長い筒状で、5裂した裂片は白色で平開します。雄しべ4本、雌しべ1本があり、花冠から長く突き出ます。萼は紅紫色をしています。葉は対生し、枝と共に臭いを発しています。

 果実は藍色で、中には種子が4個入っています。受粉は虫に、種子散布は鳥によって行われます。花びらに見える赤い部分は萼です。これを正月の羽根突きの羽根に見立てる人もいれば、小型の茹でタコに見る人もいます。クサギは、染色に使われます。果実は草木染めで空色に、萼は鉄媒染で灰色に染まるそうです。花色が紅色をしているのはベニバナクサギ (紅花臭木)です。

参考:クサギ(臭木) ボタンクサギ(牡丹臭木)

Japanese common name : Kusagi
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Clerodendrum trichotomum Thunb.
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2006.01.09


クサギ(臭木)
別名:ヤマウツギ(山空木)/クサギリ(臭桐)/クサギナ(臭木菜)
漢名:シュウゴリュウ(臭梧桐)
シソ科クサギ属
学名:Clerodendrum trichotomum Thunb.
花期:8月~9月 落葉低木 樹高:3~5m 花径:20~25mm 果期:10~11月 果実:6~7mm

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【学名解説】
Clerodendrum : cleros(運命)+dendron(樹木)=Clerodendron/クサギ属
trichotomum : trichotomus(三分岐の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川河口から11.75km/右岸河川敷 2005.11.01
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: June 10, 2008
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by pianix | 2006-01-13 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ヒメガマ(姫蒲)-3/種子の自然散布
 ヒメガマ(姫蒲)は、ガマ科ガマ属の多年草です。温帯から熱帯に広く分布し、日本でも北海道から西南諸島の水辺に多く生育する水生植物です。それらは湿性植物・抽水植物・浮葉植物・沈水植物・浮漂植物などに別れます。ヒメガマは抽水植物で、挺水植物とも言います。根が水に浸かった地に張り、茎や葉の一部が水上に出る植物の事です。当然ながら根は水没しているわけで、根に酸素を供給する必要があるため、茎には通気組織があります。これらの抽水植物は、近年の環境変化により、多くが消滅の一途を辿っています。

 その昔は、安倍川流域にもたくさんのガマやヒメガマが存在していましたが、現在は激減し、探し出すのが難しい状態です。細々と小さな群生をしている箇所でヒメガマを採取して屋内で保存していました。それがある日、爆発したような状態で種子が飛び出してきたので驚いた事があります。生育地で実際に種子を出している所を見た事がありませんでしたから、何度も観察に出かけました。そしてついに、それを見る事ができました。綿毛の付いた種子が北風に乗って舞い立つ姿を見たのです。誇らしげなヒメガマの姿でした。

 ヒメガマは、ガマと草丈が同じくらい(150~200cm)です。異なるのは、ガマに比べて葉の幅が狭く6~10mm程しかないことです。男性的なガマに対比させて、ほっそりしている形態から女性的と例え、「姫」が冠せられました。雄花穂と雌花穂がつきますが、ガマが接触するのに対し、ヒメガマは5cm程離れています。雄花穂が先に脱落しますが、穂があった部分の茎色が変色していますから、ガマかヒメガマかを区別できます。

 なお、園芸店でヒメガマと称して出回っているのは、ティファ・ミニマ(Typha minima)という草丈80cm程の小型種である場合が多いようです。

参考ヒメガマ(姫蒲)-1 ヒメガマ(姫蒲)-2/種子の室内散布

Japanese common name : Hime-gama
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Typha domingensis Pers.


ヒメガマ(姫蒲)
英名:narrow-leaved cattail
ガマ科ガマ属
学名:Typha domingensis Pers.
花期:6月~8月 多年草 草丈:150~200cm

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【学名解説】
Typha : tiphos(沼)/ガマ属
domingensis : domingo+ensis(中米サンドミンゴの)
Pers. : Christiaan Hendrik Persoon (1761-1836)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から9km 右岸河川敷 2006.01.09
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

11 January 2006
Last modified: June 11, 2008
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by pianix | 2006-01-11 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ノイバラ(野茨)
 ノイバラ(野茨)は、バラ科バラ属の落葉低木です。北海道の西南部から九州にかけての低地や山地に普通に見られます。2n=14の染色体をもつ野生種です。日本には11種と3変種の野生種が存在します。これを大別して、花柱(雄しべの軸)が離れているか合着しているかで区別される2節があります。園芸種のもととなった原種は8種のみで、中近東のロサ・フォエティダ、ロサ・ダマスケナ、ロサ・ガリカ、ヨーロッパのロサ・アルバ、ロサ・センチフォリア、中国のコウシンバラ、日本のノイバラ、テリハノイバラです。

 ノイバラはノバラ(野薔薇)であって、野にある薔薇という意味ですが、茨は棘のある低木を指します。棘のある植物を有棘植物と言い、その棘により衣服を引っ掻き破くばかりか、怪我をしてしまう事もあります。ストラスブールの大学生だった21歳のゲーテは、牧師の娘フリーデリーケに恋し、失恋しました。これをもとにしたと言われる「野薔薇」は寓意的ですが、折られる事に抵抗するバラの棘は、生存競争の戦略武器です。この棘は葉が変形してできたものです。キリストが処刑される時に被されたイバラ(ヘブライ語でアタード)は、クロウメモドキ科のトゲハマナツメ(Zizyphus spina-christi L.)との説があり、ノイバラとは関係なさそうです。

 葉は互生し、奇数羽状複葉で小葉は5~9枚、浅い鋸歯を持ち先が尖ります。葉に光沢があり地を這うのはテリハノイバラ(照葉野薔薇)です。花は5弁の白色。地方により変種が存在し、関東・近畿・四国にはフジイバラ(富士茨)、中部以西・四国・九州にミヤコイバラ(都茨)、四国・九州にツクシイバラ(筑紫茨)、近畿地方以西にヤブイバラ(藪茨)が分布します。秋に赤く熟した果実(偽果)を乾燥させたものを、生薬(日本薬局方)のエイジツ(営実)として用います。ローズヒップ・ティーとしての利用もあります。挿し木で繁殖でき、園芸種の台木としても使われます。

Japanese common name : No-ibara
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Rosa multiflora Thunb.


ノイバラ(野茨)
別名:ノバラ(野薔薇)
バラ科バラ属
学名:Rosa multiflora Thunb.
花期:5月~6月 落葉低木 樹高:1~2m 花径:2cm 果期:9~11月

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【学名解説】
Rosa : ギリシャ語のrhodon(バラ)、ケルト語のrhodd(赤色)に由来/バラ属
multiflora : multiflorus(多花の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から9.75km 左岸河川敷 2006.01.04
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: June 11, 2008
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by pianix | 2006-01-10 00:00 | | Trackback | Comments(2)
ハナミズキ(花水木)/実
 ハナミズキ(花水木)は、ミズキ科ミズキ属(旧ヤマボウシ属)の落葉小高木です。北アメリカ原産で、明治中期に渡来しました。大正時代にワシントンのポトマック河畔に植栽された桜(ソメイヨシノ)の返礼として、1912年にアメリカから贈られた事があります。在来種のヤマボウシ(山法師)に対する呼び方として、アメリカヤマボウシ(亜米利加山法師)が使われてきました。ヤマボウシの名は、白い総苞を山法師の頭巾に見立てたものです。英名のdagwoodは短剣の木との意味で、古語のdagge(短剣、鋭く尖った物)に由来します。

 ミズキ科(Cornaceae Bercht. & J. Presl, 1825)は、北半球の温帯から熱帯に約14属100種、ミズキ属(Cornus L. (1753)) はアジア、アメリカの温帯に約60種が分布し、日本には5種が自生します。

 春の花は、葉が出る前に咲きます。花弁に見えるのは4枚の総苞片で、先端が窪んでいるところがヤマボウシと異なります。総苞片の中央に本当の花の集まりである花序があり、4枚の花弁と雄しべ4本があります。受精すると脱落しますが、総苞片は長い期間残る事になります。対生する葉は全縁で、明瞭な側脈があり、裏面には白色の毛があります。秋の紅葉も風情があります。実は核果で、赤色をしています。街路樹や庭木として植栽され、静岡市の花木にもなっています。

 花木としては強い性質を持っていますが、強風に弱く、潮風には特に弱いので浜辺の近くでは不向きです。通常は切り接ぎで繁殖させますが、種子捲きの場合は秋か春にします。種子の赤い果肉を取り除き乾燥させないように保存する必要があります。長雨時のウドンコ病には注意を要します。

 紅色種のベニバナハナミズキ(紅花花水木)があり、白花種とコントラストを付けて植栽されている場合があります。'Alba Plena' は八重咲き白花、'Cherokee Sunset' は斑入りの赤花、'Cherokee Chief' は濃紅色花、'Cherokee Princess' は白花、'Cloud Nine' は白色多花性、'Junior Miss' は淡紅色花、 'Red Giant' は紅花大輪、'Rainbow' は葉に黄色の斑入り、'Pendula' は枝が強く垂れる品種です。他に次のような品種があります。
'Apple Blossom' 'Cherokee Brave' 'Daybreak' 'Green Glow' 'Pink Flame'
'Purple Glory' 'Royal Red' 'Spring White' 'Sweetwater Red' 'World's Fair' 等。

参考:ハナミズキ(花水木)/花

Japanese common name : Amerika-yamabousi
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Cornus florida L.


ハナミズキ(花水木)
和名:アメリカヤマボウシ(亜米利加山法師)
ミズキ科ミズキ属
学名:Cornus florida L.
synonym : Benthamidia florida (L.) Spach
花期:4月~5月 落葉小高木 樹高:3~12m 花(総苞片)径:8~9cm 果期:10~11月

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【学名解説】
Cornus : cornu(角)に由来/ミズキ属
florida : floridus(花の目立つ・花の充満した)
L. : Carl von Linne (1707-1778)
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Benthamidia : George Bentham (1800-1884)に因む/ヤマボウシ属
Spach : Edouard Spach (1801-1879)

撮影地:静岡県静岡市
静岡市西ヶ谷総合運動場(植栽) 2005.11.10
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: June 11, 2008
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by pianix | 2006-01-08 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ブンタン(文旦)
 昨年の年末に、宅配便で小荷物が送られてきました。発送人に心当たりが無く、配達人に尋ねたら「ブンタンさんからです」との事。住所を見ると高知県らしい。ますます心当たりが無く不安一杯で受け取りました。包みを開けると、果実のブンタンでした。応募していたのをすっかり忘れていましたが、当選して、高知県園芸連から送られてきました。箱には「温室文旦」と書かれていました。

☆  ☆  ☆

 ブンタン(文旦)は、ミカン科ミカン属の常緑小高木です。アジア南部が原産です。名の由来は4つほど伝承されていますが、一般的に中国籍船長の謝文旦に因んだとされ、17世紀(江戸時代初期)頃に伝わったと言われています。ボンタンと発音すると「ボンタン飴」を思い出します。ザボンはポルトガル語で、砂糖漬けである「ザボン漬け」として知られています。これら全ては同じ物です。土佐ブンタンは、元々は鹿児島県姶良郡加治木町にあった老木のようです。高知農事試(現在の高知県農業技術センター果樹試験場)に移植されていた苗木が出されて栽培され始め、昭和34年に「土佐ブンタン」の名称に統一されたとされています。

 ミカン科(Rutaceae Juss. (1789))は、150属をかかえる大きな科で、約900種が知られています。ミカン属(Citrus L. (1753))は159種があります。日本には明治時代に導入されました。中国名で檸檬。クエン酸は、別名のクエン(枸櫞)が由来。

 大型の柑橘類で思い出すのがナツミカンで、ブンタンは食べた記憶がありません。なかなかの味で、家族に好評でした。良い香りだと言っていましたが、私には皮が少し蝋臭く感じました。ビタミンC・P等を多く含むため、昔から高血圧の薬と言われていたようです。上品な甘さでした。ブンタンは柑橘の黄色系で果糖を含み、お馴染みのウンシュウミカンに代表される赤色系は蔗糖なのだそうです。

参考:ミカン科ミカン属 ウンシュウミカン(温州蜜柑) レモン(lemon/檸檬)

Japanese common name : Zabon
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Citrus maxima (Burm.) Merr.
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葉柄には翼がある


ブンタン(文旦)
和名:ザボン(朱欒)zamboa/別名:ボンタン(文旦)
ミカン科ミカン属
学名:Citrus maxima (Burm.) Merr.
synonym : Citrus grandis (L.) Osbeck
花期:5月 常緑小高木 樹高:3m 果期:10月~12月 実径:15~25cm

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【学名解説】
Citrus : kitron(箱)、レモンの古名/ミカン属
maxima : maximos(最大の)
Burm. : Johannes Burman (1706-1779)
Merr. : Elmer Drew Merrill (1876-1956)
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grandis : 大形の
L. : Carl von Linne (1707-1778)
Osbeck : Pehr Osbeck (1723-1805)
f. : forma(品種)
Tosabuntan : 土佐文旦

撮影地:静岡県静岡市
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

4 January 2006, 11 June 2008, 23 May 2010
Last modified: 23 September 2015
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by pianix | 2006-01-04 00:00 | | Trackback | Comments(1)