カテゴリ:ひっつき虫( 8 )
チヂミザサ(縮み笹)
 チヂミザサ(縮み笹)は、イネ科チヂミザサ属の1年草です。世界に広く分布します。日本では全国に分布する在来種です。名の由来は、笹の葉に似ているが波打って縮んでいるように見える事から。中国名は、求米草。英名は、wavy-leaf basket grass。

 イネ科(Poaceae Barnhart (1895))は、世界に約600属9500種以上が分布する規模の大きな科で、野生種は日本に700種程が知られています。チヂミザサ属(Oplismenus P.Beauv. (1810))は、世界に10数種が分布します。

 チヂミザサ(縮み笹)は2変種に分類されます。花序軸や葉鞘に開出する毛が多いのがケチヂミザサ(毛縮み笹)で、少ないものはコチヂミザサ(小縮み笹)です。

 山地の林縁に自生します。茎は細く中空で、枝分かれしながら節から根を出して横に這います。途中で節から立ち上がり、高さ10~30cmになります。葉は互生します。狭卵形または広披針形で鋭頭、長さ3~7cm、幅10~15mm。葉の縁は波打ちます。基部は葉鞘となって茎を抱きます。

 花期は8月~9月。山地の林縁に自生します。茎の先に穂状花序をつけます。花序長は約10cm。花序枝から鱗状の苞葉である穎(えい)で狭卵形の小穂(しょうすい)を形成します。小穂は緑色の狭卵形で長さ3~3.8mm。総状花序が短縮した構造で、横向きにつけます。小穂の付け根にあるものが苞穎(ほうえい)、花を包むものが花穎(かえい)です。

 苞穎は2つあり、第一苞穎(外苞穎)は広披針形で長さ約3mm、第二苞穎(内苞穎)は狭卵形で長さ約2.5mmです。芒(のぎ)は第一苞穎に長さ12~20mm、第二苞穎に3~4mmがつきます。花穎は、外花頴(がいかえい)と内花頴(ないかえい)があります。外花頴は、約1.5mmの芒があり、葉腋部分に小花を持ち雄しべと雌しべがつきます。雄しべは花糸の先に薄黄色の葯を付け、雌しべは白や赤紫色のブラシ状です。内花頴は退化して不稔性。両性花で風媒花。

 果実が熟すと、苞頴に伸びる3本の芒に粘液を出し、動物に付着して種子の拡散をします。粘液を使って動物付着散布する仲間に、メナモミ、ヌマダイコン、ノブキ、タネツケバナ等があります。果実は穎果1)です。長さ約2mm。種子は楕円形。染色体数は、2n=54。

 仲間に、沖縄に多く分布し分枝して小穂をつけるエダウチチヂミザサ(枝打縮み笹)Oplismenus compositus (L.) P.Beauv. があります。

 ここで使用している用語は、他の呼び方もあるため参考に列挙します。
第一苞穎(fast Glume):外苞穎、外頴、第一護穎
第二苞穎(second Glume):内苞穎、内頴、第二護穎
外花頴(Lemma):護頴、花頴、外桴(がいふ)、外穎
内花頴(Palea):内頴、内桴(ないふ)

1)穎果(えいか):痩果のひとつで、乾燥した頴が種子と密着した果実。穀果とも。

Japanese common name :Tidimi-zasa
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ケチヂミザサ(毛縮み笹)
Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult. var. undulatifolius f. undulatifolius
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コチヂミザサ(小縮み笹)
Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult. var. undulatifolius f. japonicus (Steud.) T.Koyama ex W.T.Lee

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叢生する花期のコチヂミザサ
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第一苞穎の芒は長く(12~20mm)、第二苞穎の芒は短い(3~4mm)

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雄しべは花糸の先に薄黄色の葯を付け、雌しべは白や赤紫色のブラシ状

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左:基部は葉鞘となって茎を抱く 右:笹に似た葉で、縁がうねる
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粘液を出してストックに付いた果実



チヂミザサ(縮み笹)
イネ科チヂミザサ属
学名:Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult.

コチヂミザサ(小縮み笹)Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult. var. undulatifolius f. japonicus (Steud.) T.Koyama ex W.T.Lee
ケチヂミザサ(毛縮み笹)Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult. var. undulatifolius f. undulatifolius
花期:8月~10月 1年草 草丈:10~30cm 小穂長:3~3.8mm 果期:11月

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【学名解説】
Oplismenus : hoplismos(芒のある)/チヂミザサ属
undulatifolius : うねった葉の
Ard. : Pietro Arduino (1728-1805)
Roem. : Johann Jacob Roemer (1763-1819)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Schult. : Josef August Schultes (1773-1831)
var. : varietas(変種)
f. : forma(品種)
japonicus : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Steud. : Ernst Gottlieb von Steudel (1783-1856)
T.Koyama : 小山鐵夫 Tetsuo Michael Koyama (1933- )
ex : ~による
W.T.Lee : W.T.Lee (col.1924- )
---
compositus : 枝分かれした
L. : Carl von Linne (1707-1778)
P.Beauv. : Ambroise Marie Francois Joseph Palisot de Beauvois (1752-1820)

撮影地:静岡県静岡市
ダイラボウ(Alt.561m) 2008.11.05
高山(牛ヶ峰 Alt.717m) 2014.09.23
安倍城跡(Alt.435m) 2014.09.26, 2015.09.11, 09.15, 09.23, 09.28
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 11 September 2017
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by pianix | 2017-09-11 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(0)
メナモミ(雌なもみ/雌生揉)
 メナモミ(雌なもみ/雌生揉)は、キク科メナモミ属の1年草です。日本や朝鮮・中国に分布します。国内では、北海道から九州までに分布する在来種です。名の由来は、オナモミに対して女性的であるからとの説があります。ナモミについては諸説あり不明です。民間療法で葉を揉んで傷口に塗ったからとか、なずむが転訛したとの説があります。中国名は、キレンソウ([豕+希 Unicode:U+8C68]簽草)。生薬名はキレン。この漢字を充ててメナモミと表記する場合があります。

 キク科(Asteraceae Bercht. & J.Presl (1820))、 保留名(Compositae Giseke (1792))は、双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。Asteraceaeは、aster(星)の意味、保留名のCompositaeは、合成されたとの意味から。メナモミ属(Siegesbeckia Steud.)は、総苞片と花床の鱗片に腺毛が密生し粘液を出して粘るのが特徴です。

 山野の荒草地や潅木林に生育します。茎は直立し、途中で分枝して高さ60~120cmになります。茎の上部には、白色で長い開出毛(茎葉から直角に出る毛)が密生します。類似種のコメナモミは、伏毛になります。葉は対生します。長さ8~19cm、幅7~18cmの卵形か卵状三角形です。不規則な鋸歯があり、葉の裏面や葉脈に軟毛があります。葉柄には翼と腺があります。

 茎頂や葉腋から腺毛がある花柄を出し、頭花を散房状に付けます。コメナモミの場合、花柄に腺毛はありません。花色は黄色で約2cm、総苞片を含めて約3cm。周囲に雄性で先端が2~3裂した長さ3~3.5mmの舌状花が1列に並び、内側に長さ約1.5mmの両性である筒状花があります。この先端が3裂した舌状花は、ハキダメギクの形状に似ています。小花は緑色の鱗片に包まれます。総苞片は緑色で5個あり、細長い線形で、ヒトデ状に平開し、腺毛があって粘液を出します。子房下位。果実は痩果で、2.5~3.5mm。俗称ひっつき虫の一種で、動物などに付着して運ばれます。染色体数は、2n=30。

参考:オオオナモミ(大雄生揉)

Japanese common name : Me-namomi
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Sigesbeckia pubescens (Makino) Makino
頭花には舌状花と筒状花があり、腺毛があって粘液を出す5個の総苞片が広がる。

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左:頭花と鱗片 右:葉柄には翼がある

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左:長い開出毛が密生 右:全体の様子


メナモミ(雌なもみ/雌生揉)
キク科メナモミ属
学名:Sigesbeckia pubescens (Makino) Makino
synonym : Siegesbeckia orientalis L. subsp. pubescens (Makino) Kitam.
花期:9~10月 1年草 草丈:60~120cm 花径:2cm

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【学名解説】
Siegesbeckia : John Georg Siegebeck (1686-1755)に因む/メナモミ属
pubescens : 細軟毛ある
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
---
orientalis : 極東の
L. : Carl von Linne (1707-1778)
subsp. : subspecies(亜種)
Kitam. : 北村四郎 Shirō Kitamura (1906-2002)

撮影地:静岡県静岡市
内牧川(安倍川水系) 2006.10.16
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

19 October 2006
Last modified: 5 May 2014
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by pianix | 2006-10-19 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(0)
ヌマダイコン(沼大根)
 ヌマダイコン(沼大根)は、キク科ヌマダイコン属の多年草です。日本を含む東アジア、東南アジア(台湾・中国・インド・スリランカ)に分布します。日本では、本州の関東以西から四国・九州・沖縄に分布する在来種です。名の由来は、湿地に生え、大根の葉に手触りが似ている事から。英名は、Club-wort、あるいはkamanamana。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。ヌマダイコン属(Adenostemma J.R.Forst. & G.Forst. (1776))は、暖帯から熱帯に分布します。フジバカマ属と似ていますが、冠毛が棍棒状で粘液を出す事で区別されます。

 暖地の湿地に生育します。茎は上部で分枝し、高さ30~100cmになります。葉は対生します。卵形または卵状長楕円形で、長さ4~20cm、幅3~12cm、両面に短毛がまばらにあり、鈍鋸歯があります。葉柄は長さ1~6cm。

 花期は9月から11月頃。枝先に集合花である頭花を付けます。頭花は白色の約30本の筒状花のみで、舌状花はありません。両生花です。花柱は白色で2分し、先端は丸みを帯びます。総苞は半球形で、直径5~8mm。総苞片は2列あり同じ長さで、花後に反り返ります。

 果実は痩果です。倒皮針形で長さ約4mm。冠毛は棍棒状で4本あり、長さ約1mm。疣状小突起や腺点が密にあり粘液を出します。俗称、ひっつき虫の一種です。動物などに取り付き散布されます。染色体数は、2n=20。

※果実が疣状であるヌマダイコン(沼大根)Adenostemma lavenia (L.) Kuntze と、果実が平滑であるオカダイコン(岡大根)Adenostemma latifolium D.Don があります。

Japanese common name : Numa-daikon
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Adenostemma lavenia (L.) Kuntze

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左:花序    右:頭花。総苞片は2列同長

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左:2分した白色の花柱と薄桃色の筒状花    右:痩果

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先端に粘液を出す棍棒状の冠毛があり、疣状で腺点がある痩果。動物などに取り付く。


ヌマダイコン(沼大根)
キク科ヌマダイコン属
学名:Adenostemma lavenia (L.) Kuntze
花期:9月~11月 多年草 草丈:30~100cm 花径:5~8mm

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【学名解説】
Adenostemma : adenos(腺)+stemma(冠)/ヌマダイコン属
lavenia : Lāuīnĭa ローマ神話の王の娘
L. : Carl von Linne (1707-1778)
Kuntze : Carl Ernst Otto Kuntze (1843-1907)

撮影地:静岡県静岡市
内牧川(安倍川水系) 2006.09.25, 2006.10.18, 2006.10.20
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 17 October 2006
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by pianix | 2006-10-17 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(0)
アレチヌスビトハギ(荒れ地盗人萩)
 アレチヌスビトハギ(荒れ地盗人萩)は、マメ科ヌスビトハギ属の1年草です。北アメリカ原産で、日本では関東以西に多く分布します。1940(昭和15)年に大坂で確認された帰化植物です。名の由来は、実の形を盗人の足形に見立てたヌスビトハギ(盗人萩)があり、荒れ地でも育つ繁殖力を持つ種である事から。英名は、Panicledleaf tick-trefoil、あるいは Panicled tick-trefoil。

 マメ科(Fabaceae Lindl. (1836))は、世界に約650属18,000種があり、日本には70属198種、11亜種7変種17品種があり、41属100種が自生します。ヌスビトハギ属(Desmodium Desvaux, 1813)は約400種あり、日本には9種が自生します。

 茎は木質化し、開出毛が多くあり、分枝して高さ50~100cmになります。葉は3出複葉です。小葉は長さ5~8cm、幅1~4cmの狭卵形で先端は尖り、両面に伏毛があります。円錐花序に花を付けます。花は紅紫色の蝶形花(ちょうけいか)で、花冠の長さは7~8mm。蝶形花の花弁は5枚で、旗弁(flag)1枚、竜骨弁あるいは舟弁(keel)2枚、翼弁(wing)2枚で構成されています。旗弁は丸みを帯びて、薄緑色で長楕円形の斑紋が2つあります。雄しべ9個と雌しべは、訪虫されると竜骨弁から跳ね上がって飛び出しますが、出たままになり収納されません。

 果実は節果(せっか:loment)で、扁平で節毎にくびれます。節果とは、鞘に節があって分離されるものを言います。節毎を小節果と言います。長さ6~7mm前後の小節果が3~6個あります。熟すと節が茶色になり、節からちぎれて扁平の三角形状になります。小節果ひとつに種子が一つ入っていて、表面にある鉤状の毛によって動物に取り付き、散布されます。在来種のヌスビトハギに比べ、節果のくびれは大きくありません。花は可愛いけれど、果実には閉口させられます。染色体数は、2n=22。

Japanese common name : Areti-nusubito-hagi
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Desmodium paniculatum (L.) DC.
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▲全体の様子

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▲ 左:節果 右:葉


アレチヌスビトハギ(荒れ地盗人萩)
マメ科ヌスビトハギ属
学名:Desmodium paniculatum (L.) DC.
花期:8月~10月 1年草 草丈:50~100cm 花冠長:7~8mm

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【学名解説】
Desmodium : desmos(絆・鎖)+eidos(構造)/ヌスビトハギ属
paniculatum : paniculatus(円錐花序の)
L. : Carl von Linne (1707-1778)
DC. : Augustin Pyramus de Candolle (1778-1841)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から8.5km 左岸河川敷 2006.09.03 - 09.05
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 6 September 2006
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by pianix | 2006-09-06 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(2)
コセンダングサ(小栴檀草)
 コセンダングサ(小栴檀草)は、キク科センダングサ属の1年草です。世界の暖帯から熱帯に広く分布します。日本では、江戸時代に経路不明で移入されたと考えられている帰化植物です。本州中部以西に分布し、生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。センダングサ(栴檀草)は、センダン(栴檀)に葉が似ている事に由来し、そのセンダングサより果実が小型であることから。変種が多くあり、和名の混乱があります。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。センダングサ属(Bidens L. (1753))は、暖帯から熱帯に約200種が分布します。

 茎は多数に分岐します。草丈は、50~100cm。葉は鋸歯があり、下部で対生、上部で互生し、羽状に分裂します。卵形~長楕円形で鋭頭、鋸歯があります。花期は7月から11月頃。花は、径約10mm。黄色の筒状花だけで、稀に小さな舌状花が付いている事があります。全ての花に白い舌状花があるものは、変種のコシロノセンダングサ(小白の栴檀草)で、黄色の舌状花の場合は、センダングサです。

 果実は痩果です。長さ約15mmの線形で放射状に広がってつきます。アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)より細長く、先端には2~4本の棘状の物があり、これで動物などに付着します。ひっつき虫。染色体数は、2n=36,48,72。

☆  ☆  ☆

 寒気が入り込み、寒さが身に凍みるこの頃、河川敷は茶色に染まり、花の姿が見られません。それでも、時間さえあれば野草観察に出かけます。花がないのに観察とはどういう事なのかと問われそうです。それは、「花がない事を確認するため」です。ところが、例外はどの世界にもあるようで、季節外れの花を見かける事も多くあります。また、種子の採取も目的とします。

 コセンダングサは、あまり付き合いたくない花の一つです。しかし、毎年の如く、一番多く付き合ってしまう花になってしまいます。原因は、その種子にあります。衣服や靴紐に取り付くので、その場で払うようにしています。拡散させないためです。そのような事をやっていると、次の観察ポイントまでの移動が遅れる事になります。冬は日が落ちる時間が早いので、観察する時間も短縮されます。それをコセンダングサが邪魔をしてくれるのです。

 「私たち、友達だよね」とコセンダングサが語りかけてくるようです。「そんな訳、無いだろうが」「そんな冷たい事を言わないで、今日もたくさん実をあげるから」。撮影したい花を見つけても、コセンダングサが道を阻んでいる場合が多くあります。何とか通れそうな、細い道にあるコセンダングサを切り落とそうとすると、その最中にも大量の種子が付着します。今日は被害に遭わなかったと喜んで帰宅した日も、見えなかった部分にたくさん付いていたりします。悩ましいコセンダングサです。

 しかしよく考えると、コセンダングサが歩き回り種子を散布する訳ではありません。とすると、動物自体がコセンダングサに近づき自ら散布している事になります。植物が、動き回る動物がいると知り得たのは何故なのでしょう。

Japanese common name : Ko-sendan-gusa
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Bidens pilosa L. var. pilosa

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頭花は筒状花のみで舌状花は無い
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コシロノセンダングサ(小白の栴檀草)
Bidens pilosa L. var. minor Sherff


コセンダングサ(小栴檀草)
キク科センダングサ属
学名:Bidens pilosa L. var. pilosa
花期:7月~11月 1年草 草丈:50~100cm 花径:約10mm

コシロノセンダングサ(小白の栴檀草)
別名:シロノセンダングサ(白の栴檀草)/シロバナセンダングサ(白花栴檀草)
キク科センダングサ属
学名:Bidens pilosa L. var. minor (Blume) Sherff
花期:7月~11月 1年草 草丈:50~100cm 花径:約20mm

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【学名解説】
Bidens : bi(二)+dens(歯)/センダングサ属
pilosa : pilosus(軟毛がある)
L. : Carl von Linne (1707-1778)
var. : varietas(変種)
---
minor : minus(より小さい)
Blume : Carl Ludwig Blume (1789-1862)
Sherff : Earl Edward Sherff (1886-1966)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から12.75km 左岸河川敷 2005.12.06
ダイラボウ(Alt. 561.1m) 2008.11.25
帆掛山(Alt. 304m) 2015.10.13
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

15 December 2005
Last modified: 19 September 2017
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by pianix | 2005-12-15 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(2)
ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)
 ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)は、ヒユ科イノコズチ属の多年草です。中国、日本に分布します。日本では北海道の一部、本州、四国、九州に分布します。

 「猪子槌」の名は、茎の節の膨らんだところが「猪の膝頭」に似ているという事なのですが、現代人にとって猪自体を詳しく観察した事は無いのではと思うと、理解しにくい名前かもしれません。別名の、フシダカ(節高)やコマノヒザ(駒の膝)も同じ所に着目した名前です。土突きの道具である胴突の一種、蛸胴突が語源ではないかとの説(垰田 2009)もあります。

 ヒユ科(Amaranthaceae Juss. (1789))は、世界に約70属800種程(APG分類体系では約163属1,800種)があり、日本には5属程があります。イノコヅチ属(Achyranthes L. (1753))は熱帯から温帯に約8種が分布します。

 日当たりの良い荒れ地や山地に自生します。根は深くにはびこり、除草の抜き取りにはやっかいです。草丈は50~100cm。茎は四稜形(四角形)で、紅紫色。分枝部の節が膨らみます。葉は、対生します。楕円形で鋭頭、毛があり、長さ5~12cm。葉はよじれる場合があります。

 花期は、8月から9月。葉腋から穂状花序を出します。花軸に対して横向きに花を咲かせます。小花は緑色で径約6mm。花被片は先端が尖り5個。雄しべ5個、膜状の仮雄しべがあります。雌しべ1個。花後は花軸に沿って下向きになります。花被片の外側には2本の小苞があります。小苞の腋に半透明の膜状の付属体があり、イノコヅチ(猪子槌)1)の約半分である長さ0.3~0.5mm。

 果実は、胞果2)です。花被片に包まれ、長さ約5mm、幅約2mm。小苞が棘状になり衣服にとりついて拡散されます。種子は1果実に1種子。仮種皮に包まれ、長楕円形で長さ約3mm、幅約1.5mm。残存花柱があります。染色体数は、2n=7x=42。

 環境省自然環境局生物多様性センター「自然環境保全基礎調査」によると、静岡県の「ひっつき虫」は次の割合になっています(1996年)。コセンダングサ43%、ヒナタイノコズチ21%、オオオナモミ11%、その他25%。コセンダングサ(小栴檀草)には思い知らされているので納得ですが、ヒナタイノコズチが、これほどまでに多いとは知りませんでした。分布域は今まで知られていたよりも北進しているようです。

 やっかいな「ひっつき虫」ですが、逆手にとって子供は遊びに使います。漢方薬としても利用されます。乾燥根を生薬ゴシツ(牛膝)と言い、利尿、通経、強壮薬の「牛膝散」「牛車腎気丸」などの処方に配合されます。そのような活躍をされると、迷惑な害草だから無くなった方が良いという理屈は通りにくくなります。どんな人間も動物も草も、存在する事に意義があります。土中の細菌が無ければ植物は生きられませんし、植物がなければ動物は生きられません。一見不必要と思われたものの多くは、実は大切な働きをしているという場合が多いという事です。害草等も、心理学で言う「昇華」の如く、役立つ方向に変えられる事例は多いのだと思います。

1)イノコズチ(猪子槌)Achyranthes bidentata Blume var. japonica Miq.
2)胞果(utricule):閉果 (indehiscent fruit)の一つで、成熟しても裂開しない果実。複数の心皮からなり、1種子を含む。

Japanese common name : Hinata-inokoduti
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Achyranthes bidentata Blume var. fauriei (H.Lev. et Vaniot)

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穂状花序に5花被の花をつける

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分枝部の節が膨らむ

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左:果実は胞果で、小苞が棘状になる 右:種子は長楕円形で約3mm


ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)
別名:フシダカ(節高)/コマノヒザ(駒の膝)
ヒユ科イノコヅチ属
学名:Achyranthes bidentata Blume var. fauriei (H.Lev. et Vaniot)
synonym : Achyranthes bidentata Blume var. tomentosa (Honda) Hara
花期:8月~9月 多年草 草丈:50~100cm 花径:3~4mm

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【学名解説】
Achyanthes : achyron(籾殻)+anthos(花)/イノコヅチ属
bidentata : bidentatus(二歯の)
var. : varietas(変種)
Blume : Carl Ludwig von Blume(1828~1851)
fauriei : Urbain Jean Faurie (1847-1915)の
H.Lev. : Augustin Abel Hector Leveille (1863-1918)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Vaniot : Eugène Vaniot (1845-1913)
---
tomentosa : tomentosus(密に細綿毛のある)
Honda : 本田正次 Masaji Honda (1897-1984)
Hara : 原 松次 Hara Matuji (1917-1995)
---
イノコヅチ(猪子槌)/別名:ヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌)
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から0.5km 左岸河川敷 2005.09.14 - 09.23
賤機山(Shizuhata-yama) 2007.11.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

24 September 2005, 17 January 2015, 14 November 2017
Last modified: 20 November 2017
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by pianix | 2005-09-24 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(4)
オオオナモミ(大葈耳/大雄生揉)
 昨年、子供達にオオオナモミ(大雄生揉)の実が欲しいと言われ、採取してきた事がありました。遊びに使うためです。ある子に、「大きな雄のナモミ」の意味だと説明したら、「では、メナモミ(雌生揉)もあるんだ」と賢い答えを返してきました。あるけど、あまり似ていません。生揉(なもみ)の意味は、葉を揉んで傷口に付けて痛みを和らげるために使ったことから、との説があります。オナモミよりも大きいからオオオナモミですが、圧倒的にオオオナモミの勢力が強いようです。

 なんと言っても、実に特徴があります。多分、俗称ひっつき虫の中では一番大きな種子かもしれません。実長径は20~25mm程。4~6mmの刺先端が鉤状に曲がり衣服に着くような形状で、このデザインはどうして生まれたのか不思議なほどです。マジックテープ考案の元にもなっています。雌雄同株。雌花は目立たない小さなものですから、ほとんどの場合、気付かずに終わってしまいます。染色体数は、2n=36。

 実を乾燥させたものは、蒼耳子(ソウジシ)として解熱・発汗・頭痛・神経痛に、茎と葉を乾燥させたものは、蒼耳(ソウジ)として湿疹・疥癬・虫刺されに利用されます。種子はリノール酸を60%~65%含み、中国では食用油の採取にも使われているそうです。

 北米原産の帰化植物で、岡山で1929年に発見され、その後勢力が広まりました。ただ、東北より以北は、まばらな分布です。簡単に駆除したい場合は、花期前の8月上旬頃までに茎を根本付近で切り落とすようにします。生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。日本の侵略的外来種ワースト100。英名はOriental cocklebur。

メナモミ(雌生揉)Siegesbeckia orientalis L. subsp. pubescens (Makino) Kitam.

Japanese common name : Oo-onamomi
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Xanthium orientale L. subsp. orientale

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左:雄花と雌花 右:雄花

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左:果苞は刺の先端が鉤状に曲がる。右:果苞には2つの胚珠が含まれる


オオオナモミ(大葈耳/大雄生揉)
キク科オナモミ属
学名:Xanthium orientale L. subsp. orientale
synonym : Xanthium occidentale Bertol.
synonym : Xanthium canadense auct. non Mill.
花期:8月~10月 1年草 草丈:50~200cm 雌花序:2~3cm 花径:5~10mm

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【学名解説】
Xanthium : xanthos(黄)/オナモミ属
orientale : orientalis 東方の、(中近東)東部の
L. : Carl von Linne (1707-1778)
subsp. : subspecies(亜種)
---
occidentale : occidentalis(西方の、西部の)
Bertol. : Antonio Bertoloni (1775-1869)
---
canadense : canadensis(カナダの)
auct. : auctorum(著者らの)/auct.+non:誤って命名された名称
Mill. : Philip Miller (1691-1771)/英国の園芸家

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から0.5km 左岸河川敷 2005.09.14, 2006.10.12, 2006.10.21
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

21 September 2005
Last modified: 15 November 2016
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by pianix | 2005-09-21 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(2)
アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)
 アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)は、キク科センダングサ属の1年草です。北アメリカ原産で、大正時代に日本に入ってきたと言われていて、非意図的移入とされています。現在は日本各地に分布します。名の由来は、センダン(栴檀)に葉の形状が似ていてアメリカ原産である事から。タウコギ(田五加木)よりも背が高いことから別名を、セイタカタウコギ(背高田五加木)。生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。センダングサ属(Bidens L. (1753))は、暖帯から熱帯に約200種が分布します。

 荒地や畑地に自生します。草丈は、100~150cm。茎は4稜があり暗紫色。葉は対生します。小葉は3~8枚で、鋸歯があります。花期は9月から10月頃。枝先に黄色の頭状花を付けます。総苞片は6~12個で花冠より長く、コセンダングサとの明瞭な相違点となります。花径は、約7mm。頭花は、筒状花と小さい舌状花からなり、冠毛があります。両性花です。果実は痩果です。扁平で、2本の鉤状突起があります。染色体数は、2n=48。

 毎年お世話になる、俗称ひっつき虫は幾つかあります。初夏にヤブジラミ(藪虱)。小さな実がびっしりと取り付くと始末に負えません。秋になるとオオオナモミ(大雄生揉)。大きい実なので取り払うには楽ですが痛いです。ヒナタイノコヅチ(日向猪の子槌)は小さい実で、丁寧にはがさないと棘状の小苞が残ります。アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)は薄く、べったりと貼り付くので剥がすのがやっかいです。そしてお馴染み、2本のトゲを持った細い実のセンダングサ。私の住んでいる近辺では、ほとんどがコセンダングサ(小栴檀草)で、アメリカセンダングサは珍しい方に入ります(2005年当時)。→「ひっつき虫」をまとめて見る

 草藪に入らなければ別に被害に遭う事もないと思います。もし取り付かれたら、その場で払い落とすようにしています。拡散させないためです。また、この時期は実が付かないような素材の衣服を使用するようにしています。

※アメリカセンダングサの命名者は、中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)。
※セイタカウコギの命名者は、牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)。

Japanese common name : Amerika-sendan-gusa
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Bidens frondosa L.

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左:総苞片は6~12個で花冠より長い。 右:葉は対生し上部は3出複葉。


アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)
別名:セイタカタウコギ(背高田五加木)
キク科センダングサ属
学名:Bidens frondosa L.
花期:9月~10月 1年草 草丈:100~150cm 花径:7mm

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【学名解説】
Bidens : bi(2)+dens(歯)/センダングサ属
frondosa : 葉面の広い
L. : Carl von Linne (1707-1778)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から9.75km 右岸河川敷 2005.09.16, 2005.09.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

20 September 2005
Last modified: 22 November 2017
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by pianix | 2005-09-20 00:00 | ひっつき虫 | Trackback | Comments(4)