カテゴリ:花( 374 )
ミヤマキケマン(深山黄華鬘)
 ミヤマキケマン(深山黄華鬘)は、ケシ科キケマン属の越年草です。本州(近畿地方以東)に分布する在来種です。名の由来は、フウロケマン(風露華鬘)1)の変種で、山に生えるキケマン(黄華鬘)2)であることから。華鬘は、仏教で使われる透かし彫りの飾り。

 APG体系、新エングラー体系ではケシ科(Papaveraceae Adans., 1763)に分類されます。北半球に43種820種が分布します。日本には7種20種、日本固有種は1属4種3変種があるとされています。クロンキスト体系では、ケマンソウ科(Fumariaceae A.P. de Candolle, 1821)に分類され、世界に約16属450種が分布します。キケマン属(Corydalis A.P. de Candolle, in Lamarck & A.P. de Candolle, 1805)は、世界に約200種、日本では約20種が分布します。

 山地の林縁に自生します。茎は叢生し、斜上させて草丈20~45cmになります。褐色で無毛、軟弱で多汁質。折ると汁を出し、悪臭を放ちます。葉は、互生します。1~2回羽状複葉3)で、小葉は羽状に深く裂けます。ただし、発芽時の葉は切れ込みが深くはなく、褐色を帯びる事があります。

 花期は4月から6月。茎の先に、長さ4~10cmの総状花序を出します。花序に8~30個ほどの花を付けます。花柄は長さ5~12mm。苞は広披針形。萼片は2個で小さい。花は、花弁4の筒状で黄色、長さ20~23mm。先端が唇状、後部に緩やかに屈曲した距があります。母種であるフウロケマンの距は長くて大きく屈曲します。花弁は外側に2個、内側に2個あります。外側花弁は上下にあり(上下弁)、花弁先端は緑色で、やがて褐色を帯びて反り返ります。内側花弁は側面にあり(側弁)、先端で外側花弁から出て合着します。両性花です。雄しべ2本で、平形の花糸先端が3裂して1本につき3個の葯をつけます。虫媒花です。

 果実は蒴果です。弓なりになった線形で、長さ2~3cmの波打った数珠状。熟すと二裂して10前後の種子を出します。種子は1.5~1.7mmで小突起が多数あり、黒色。エライオソーム(Elaiosome)が付着していて、蟻によって運ばれます。

 全草にアルカロイド4)を含む毒草です。主成分はプロトピン5)で、誤食によって、嘔吐、麻痺が起こります。食べてはいけません。また、茎を折ったりした時に悪臭がしますが、これを吸い込むと人によっては気持ちが悪くなったりします。臭いを強く吸い込んではいけません。

★  ★  ★

 花の観察のために再訪すると跡形もなく消えているという事が時たまあります。里山では、キンラン(金襴)やササユリ(笹百合)がそれでした。ササユリの場合、翌年に見に行くと1本もありませんでした。それでも山頂に数本あり、誰かが添え木までしてくれてあったので楽しみは残りました。やがてつぼみを持ち開花という時期、山頂へあがって驚きました。掘り返した跡があり一つ残らず消えていました。よくよく見ると、イノシシが荒らし回ったようでした。これにはがっかりしました。

 そして今年、ミヤマキケマンを撮り直そうと出かけたら、これも消えていました。一瞬、時期を間違えたかと思いました。登り口付近にたくさんあったのに、今は草ぼうぼうとして以前と比べて荒れ果てています。おかしいと思い、しばらく登って行きましたが見つからず、雨が降りそうな天候だったので、あきらめて下りました。小川を隔ててカモシカが、じっと動かずこちらを伺っていました。付近の山肌では伐採工事が行われて雰囲気が変わっていました。

 いつも咲く花が今年も咲くという保証はありません。山の道でさえ、倒木1本で道筋が変わり、崩落して廃道となります。それでなくても人が入らなくなった山道は消えてしまいます。それを復活させるには並々ならぬ努力が必要となります。話を生物に戻せば、ありふれた人なつこいアホウドリしかり、トキしかり。例え人為的でなくても自然界は流動していることを実感させられました。失って初めて大切さが分かるものです。

 ※ササユリは、少し離れた場所で咲きました。2012.06.13に確認、翌日、蕾を持つものも見つかりました。「お前達、よく生きていたな」と思いながら撮影しました。何となく、「山に生きる私たちは、そんなにヤワじゃないわ」と聞こえてくるようでした。

1)フウロケマン(風露華鬘):Corydalis pallida (Thunb.) Pers. var. pallida
2)キケマン(黄華鬘):Corydalis heterocarpa Siebold et Zucc. var. japonica (Franch. et Sav.) Ohwi
3)羽状複葉(うじょうふくよう):葉の軸から小葉が左右に鳥の羽のように並ぶ葉の形態。pinnate compound leaf。二回羽状複葉は、再複葉(decompound leaf)のひとつで、羽状複葉の小葉が羽状になっているもの。bipinnate compound leaf。
4)アルカロイド(alkaloid):窒素原子を分子内に含む塩基性成分の総称。植物毒のひとつで、薬用として用いられるものもある。
5)プロトピン(protopine):C20H19NO5
 ミヤマキケマンの成分:protopine, capauridine, capaurimine, capaurine, l-tetrahydropalmatine(以上、フウロケマンと同じ), sanguinarine (金子・成戸 1970) 。

Japanese common name : Miyama-ki-keman
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Corydalis pallida (Thunb.) Pers. var. tenuis Yatabe
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先端が唇状、後部に緩やかに屈曲した距がある黄色花

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咲き始めは上向きに花を密集させる。

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褐色で無毛、軟弱で多汁質の茎。茎先に総状花序をつける。

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左:葉は、1~2回羽状複葉で、小葉は羽状に深く裂ける。 右:茎は叢生する。


ミヤマキケマン(深山黄華鬘)
ケシ科キケマン属
学名:Corydalis pallida (Thunb.) Pers. var. tenuis Yatabe
花期:4月~6月 越年草 草丈:20~45cm 花冠長:20~23mm 花序長:4~10cm

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【学名解説】
Corydalis : Korydallis(雲雀)/キケマン属
pallida : pallidus(淡白色の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Pers. : Christiaan Hendrik Persoon (1761-1836)
var. : varietas(変種)
tenuis : 軟質の
Yatabe : 矢田部良吉 Ryokichi Yatabe (1851-1899)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.716.9m) 2008.03.29
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 22 June 2012
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by pianix | 2012-06-16 00:00 | | Trackback | Comments(6)
コアジサイ(小紫陽花)
 コアジサイ(小紫陽花)は、ユキノシタ科アジサイ属の落葉低木です。関東以西の本州から九州にかけて分布する日本固有種です。名の由来は、装飾花を持たない小型の花序を付けるアジサイである事から。アジサイは、古語で集真藍(あづさあい〉であって、青い小さな花が集まって咲くからと言われています。漢字表記の紫陽花は中国の別の花からとった当て字です。別名のシバアジサイ(柴紫陽花)は、山野の小雑木を表す柴を冠したアジサイとの意味から。

 ユキノシタ科(Saxifragaceae Juss. (1789))は、温帯から寒帯にかけて約17属500種があります。以前は約80属1200種が属する大きな科でしたが、近年に幾つかの科が分離され減少しました。アジサイ属(Hydrangea L. 1753)は、東アジアとアメリカに約40種が分布し、日本には約10数種が分布します。

 山地の林内に自生します。落葉低木で、樹高100~150cmになります。枝は紫褐色で毛がまばらにあります。葉は、対生します。長さ1~4cmの葉柄があり、葉身は長さ4~8cm、幅3~5cmの広卵形。葉先4分の3~3分の2に大きめの鋸歯があり、先は鋭尖頭。葉の表裏に毛がまばらにあり、特に葉脈に沿って多くあります。

 花期は6月から7月頃です。分岐した枝先に径5~8cm程の散房花序を出します。芳香があります。装飾花はありません。小花は径3~5mmで淡青色や白色[1]があります。花弁は5個で長楕円形。両性花です。雄しべは10本で長さ3mm、葯は乳白色。雌しべは3~4本。萼片は5個で裂片は卵状三角形。子房半上位。果実は朔果です。残存花柱がある径2mmの球形で、花柱部分を含めると長さ3mm。種子は淡褐色の長卵形で長さ約0.5mm。染色体数は、2n=36。

★  ★  ★

 5月の終わり頃、里山へ入るとコアジサイが迎えてくれます。一面に咲いている場所もあり、甘い香りがあたりに漂います。初夏であることを香りで実感し、同時に過去のでき事も脳裏によみがえらせます。息を弾ませながら、汗を流して一歩一歩登る私をなごませてくれるのです。飾り気が無く、どこにでも咲いているありふれたアジサイの仲間ですが、私はコアジサイが一番好きです。

Japanese common name : Ko-ajisai
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Hydrangea hirta (Thunb.) Siebold et Zucc.
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2012.05.30 安倍城跡
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2012.06.08 安倍城跡

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小花は径3~4mmで、淡青色や白色がある。淡碧色の花糸。

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左:枝は分岐し、毛がある。 右:シロバナコアジサイ(白花小紫陽花)[1]

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葉は対生して鋸歯がある。左:葉表 右:葉裏 葉脈上に毛が多い
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果実は残存花柱がある朔果


コアジサイ(小紫陽花)
別名:シバアジサイ(柴紫陽花)
ユキノシタ科アジサイ属
学名:Hydrangea hirta (Thunb.) Siebold et Zucc.
花期:6月~7月 落葉低木 樹高:100~150cm 花径:5mm 果期:9~10月

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【学名解説】
Hydrangea : hydro(水)+angeion(容器)/アジサイ属
hirta : hirtus(短い剛毛のある)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&に同じ)
Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848)
---
[1]シロバナコアジサイ(白花小紫陽花)
学名:Hydrangea hirta (Thunb.) Siebold et Zucc. f. albiflora (Honda) Okuyama
【学名解説】
f. : forma(品種)
albiflora : albiflorus(白花の)
Honda : 本田正次 Masaji Honda (1897-1984)
Okuyama : 奥山春季 Shunki Okuyama (1909-1998)

撮影地:静岡県静岡市
安倍城跡(Alt.435m) 2008.05.20, 2012.05.30, 2012.06.08
牛ヶ峰(Alt.717m) 2008.05.28, 2008.06.06
ダイラボウ(Alt.561m) 2010.06.02
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

9 May 2012, 13 June 2012
Last modified: 11 December 2015
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by pianix | 2012-06-09 00:00 | | Trackback | Comments(5)
ユキノシタ(雪の下)
 ユキノシタ(雪の下)は、ユキノシタ科ユキノシタ属の多年草です。日本、中国に分布し、日本では本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、冬の雪下で枯れずに残るからとか、白い花を雪に見立てて下に葉があるから(牧野富太郎)等の諸説があります。中国名の虎耳草(こじそう)は、葉が虎の耳に似ている事から。

 ユキノシタ科(Saxifragaceae Juss. (1789))は、世界に約110属、1200種が分布します。ユキノシタ属(Saxifraga L. (1753))は、北半球に約300種が分布し、日本には16種が分布します。日本固有種は6種1)があります。

 山地の半日陰や岩場などで自生します。また、民間薬や山菜として用いられてきた事もあり、植栽も多くみられます。紅紫色で糸状の長い匍匐枝2)を出し、栄養繁殖します。草丈は20~50cm。茎、葉、萼の全体に毛が密生しています。葉は根生します。腎円形で、浅い鋸歯があり、基部は心形で、長さ3~6cm、幅3~9cm。5~13cmの長い葉柄があります。アントシアン色素による赤味を帯びた緑色で、葉脈に沿って白色の筋があります。葉裏は赤紫色。

 花期は、5月から7月頃。花茎の先に円錐状集散花序をつけます。花は白色で、左右相称の離弁花です。花弁は5枚。上側3枚は卵形で先端が尖り、長さ3.5~5.5mm。紅色の斑点があり、基部には黄色の斑点があります。下側2枚は白色の披針形で、長さ12~20mm、幅4~8mm。花冠全体は、長さ20~28mm、幅15~25mm。萼は5裂し、腺毛があります。

 両性花です。雄しべは10本で、葯色は紅色。花弁に沿って放射状に平開し、やがて前方に立ち上がり花粉を放出します。その後、元の位置に戻ります。雌しべ花柱は2本。雄しべ基部に子房を覆う黄色の花盤(蜜腺)が半円状にあります。

 果実は蒴果です。先端が2裂した、くちばし状で長さ約4mm。種子は0.5mm程の広卵形で、細かい突起があります。染色体数は、2n=30(Ma et al.,1990)、2n=30,36,54。

 漢方薬として、乾燥葉を虎耳草(こじそう)として用います。民間薬として、解熱、鎮咳、消炎、解毒、利尿、止血等の広範囲に用いられてきました。主要成分は、硝酸カリウム(potassium nitrate)、塩化カリウム(potassium chloride)、ベルゲニン(Bergenin)。硝酸カリウムは毒性が強い食品添加物として知られています。山菜として、葉を天ぷらなどにします。

1)日本の固有種
エゾノクモマグサ(蝦夷の雲間草)Saxifraga nishidae Miyabe et Kudô
エチゼンダイモンジソウ(越前大文字草)Saxifraga acerifolia Wakabayashi et Satomi
ハルユキノシタ(春雪の下)Saxifraga nipponica Makino
フキユキノシタ(蕗雪の下)Micranthes japonica (H.Boissieu) S.Akiyama et H.Ohba
ジンジソウ(人字草)Saxifraga cortusaefolia Siebold et Zucc.
センダイソウ(仙台草)Saxifraga sendaica Maxim.

2)匍匐枝(ほふくし):主茎基部から地上近くを水平に這って伸びる茎で、植物体になる芽をつけるもの。栄養繁殖集合体を形成して栄養繁殖する。(匍匐茎:ほふくけい|stolon)。

Japanese common name : Yuki-no-sita
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Saxifraga stolonifera Curtis

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崖の法面に、驚くほど密生したユキノシタ。

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花中央に見える黄色の部分は花盤で、半円状につく。花茎や萼には毛が密生する。

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円錐状集散花序。葉は基部が心形の腎円形。
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雄しべ10本、雌しべ2本。半円状に付く黄色の花盤から蜜を出す。


ユキノシタ(雪の下)
学名:Saxifraga stolonifera Curtis
ユキノシタ科ユキノシタ属
花期:5月~7月 多年草 草丈:20~50cm 花冠長:20~28mm

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【学名解説】
Saxifraga : saxum(石)+ frangere(砕く)/ユキノシタ属
stolonifera : stolonifer(匍枝を持った)
Curtis : William Curtis (1746-1799)
---
Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
L. : Carl von Linne (1707-1778)

撮影地:静岡県静岡市
葵区牧ヶ谷(Alt. 34m) 2008.05.27
高山(牛ヶ峰 Alt.716.9m) 2008.05.28
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

30 March 2012
Last modified: 20 November 2016
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by pianix | 2012-03-30 00:00 | | Trackback | Comments(4)
マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡)
 マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡)は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草です。日本、台湾、中国等に分布し、日本では関東以西から四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、ヤマゴボウ(山牛蒡 Phytolacca acinosa Roxb.)に対して、分果を作らない球果(丸い実)である事から。

 ヤマゴボウ科(Phytolaccaceae R.Br. (1818))は、世界に22属120種が分布し、日本にはヤマゴボウ属の1属があります。ヤマゴボウ属(Phytolacca L. (1753))は、熱帯・亜熱帯に約35種が分布します。日本には2種1)が自生し、1種2)が帰化しています。

 山地の林縁に自生します。根は太く塊根状。茎は丸く緑色で、100~150cmに直立します。葉は互生します。長い柄があり、長さ10~15cm、幅5~10cmの長楕円形から卵状長楕円形で、全縁、鋭尖頭、無毛。

 花期は6月から9月。円錐花序を直立してつけます。ヨウシュヤマゴボウと異なり、花序は果期にも下垂しません。花序長は10~20cm。花茎は薄緑で、果期には濃紅色になります。1~3cmの柄の先に花を多数付けます。花は花弁はなく5個の萼片のみで、径約8mm。白から淡紅色で、やがて濃紅色になります。両性花。心皮3)は7~10個で合生(ヤマゴボウは離生)します。葯色は白色です。

 果実は液果です。多心皮の雌しべ7~10個が合着した扁平な球形で、径約8mm。熟すと黒紫色になります。種子は約3mmの腎臓形で光沢がある黒色、同心円状の細い横条線があります。染色体数は、2n=72。

 生薬名をショウリク(商陸)と言い、民間療法で乾燥根を利尿に用います。根には硝酸カリウム(potassium nitrate / KNO3)が含まれます。

1)日本のヤマゴボウ属
ヤマゴボウ(山牛蒡) Phytolacca acinosa Roxb.
synonym : Phytolacca esculenta Van Houtte
マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡) Phytolacca japonica Makino
2)日本に帰化したヤマゴボウ属
ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡) Phytolacca americana L.
3)心皮 (carpel):雌しべ(pistil)を構成する特殊な葉。複数の雌しべの集合体。
多心皮の雌しべ:不特定多数の心皮で作られる

参考:ゴボウ(牛蒡)

Japanese common name : Marumino-yamagobou
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Phytolacca japonica Makino

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【開花前】 蕾

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【花期】 円錐花序に淡紅色萼片5の花を多数付ける。 2008.05.28

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【果期】 萼片の色が濃くなる。 2008.07.22

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【成熟期】 果実は液果で、熟すと黒紫色になる。 2008.08.08


マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡)
ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属
学名:Phytolacca japonica Makino
花期:6月~9月 多年草 草丈:100~150cm 花径:約8mm

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【学名解説】
Phytolacca : phyton(植物)+lacca(深紅色の顔料)/ヤマゴボウ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.716.9m) 2008.05.28, 2008.07.22, 2008.08.08
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 17 March 2012
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by pianix | 2012-03-17 00:00 | | Trackback | Comments(2)
ヤブミョウガ(藪茗荷)
 ヤブミョウガ(藪茗荷)は、ツユクサ科ヤブミョウガ属の多年草です。日本、中国、朝鮮、台湾、インドシナに分布します。日本では、関東以西に分布する在来種です。名の由来は、藪に生え、葉が茗荷に似ている事から。茗荷の名は付いてもショウガ科ではなくツユクサ科で、葉の付き方も2列互生ではありません。

 ツユクサ科(Commelinaceae Mirb. (1804))は、熱帯から温帯にかけて約40属650種が分布し、日本には4属が分布します。ヤブミョウガ属(Pollia Thunberg (1781))は、約26種があり、日本には約8種が分布します。

 山地の林縁に自生します。白色で細い地下茎を伸ばして栄養繁殖し、細毛がある茎を50~90cmに立ち上げます。茎の中間に葉を密生して互生します。葉表は細毛がありざらつきます。基部は鞘状で茎を巻き、狭長楕円形で、長さ15~30cm、幅3~7cm、鋭尖頭。

 花期は8月から9月。茎の先に20~30cmの円錐花序を付けます。5~6段の輪生状に枝を出して花を付け、下部から咲かせます。一枝の先に10前後の花を順に咲かせていきます。花弁は白色の倒卵円形で、花の径は7~10mm。萼片3個、花被片3個。

 同じ株に両性花と雄性花が混在します。両性花は花柱が長く、雄性花は雌しべが退化して短く、子房も退化、雌しべよりも長い6個の雄しべがあります。葯色は黄色。一日花です。子房上位。果実は液果です。5~6mmの球形で黒紫色。種子は、長さ1.5~2.5mmの不定多角形でイボ状突起があります。染色体数は、2n=32,40。

 その他に同じ属で南方系の、鹿児島県以南に分布しヤブミョウガよりも小型の、コヤブミョウガ(小藪茗荷) Pollia miranda (H.Lev.) H.Hara、石垣島に分布し絶滅危惧II類のザルゾコミョウガ(ナンゴクヤブミョウガ) Pollia secundiflora (Blume) Bakh.f. があります。

 
染色体核型:
K=2n=32=4Am+4Bsm+4Cm+4Dm+4Esm+4Fsm+4Gst+4Hm
K=2n=40=4Asm1+2csAsm2+4Ast3+6Bsm1+2Bst2+2Csm1+6Cm2+10Dsm1+2tDm2+2Dm3
[Karyological Studies in Commelinaceae II, Hirosumi FUJISHIMA]

参考:ハナミョウガ(花茗荷)

Japanese common name : Yabu-Myouga
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Pollia japonica Thunb.

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葉を密生して互生するが輪生しているように見える。茎には下向きの短毛がある。

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花がつき始めた若い花序。背後の黒い影は虫。

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萼片、花被片、共に3個。両性花と雄性花が混在する。両性花は花柱が長い。

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午後には花弁と雄しべが萎れる。雌しべ1、雄しべ6で葯色は黄色。子房は緑白色。

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輪生状に枝を数段に出す。 果実は熟すごとに色が変わり、黒紫色になる。


ヤブミョウガ(藪茗荷)
ツユクサ科ヤブミョウガ属
学名:Pollia japonica Thunb.
花期:8月~9月 多年草 草丈:50~90cm 花径:7~10mm 花序長:20~30cm

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【学名解説】
Pollia : Jan van der Poll(1726-1781)に因む/ヤブミョウガ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)

撮影地:静岡県静岡市
内牧川(安倍川水系) 2006.08.22, 2007.07.31
安倍川/河口から12.50km 左岸土手 2007.07.03, 2007.09.18
賤機山 2009.08.12, 2011.08.08
徳願寺山 2011.08.12
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 03 March 2012
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by pianix | 2012-03-03 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ハナミョウガ(花茗荷)
 ハナミョウガ(花茗荷)は、ショウガ科ハナミョウガ属の多年草です。中国、台湾、日本に分布します。日本では、関東以西から九州に分布する在来種です。名の由来は、葉が茗荷に似て目立つ花を咲かせる事から。

 ショウガ科(Zingiberaceae Martinov (1820))は、熱帯から亜熱帯にかけて約47属1400種が分布します。ハナミョウガ属(Alpinia Roxburgh (1810))は、東アジアから太平洋諸島にかけて約250種が分布します。

 山地の林縁に自生します。根茎から叢生1)し、細毛のある緑色の偽茎2)を40~60cmに斜上させます。葉は広披針形で、長さ15~40cm、幅5~8cm。葉表は無毛、裏面は短毛が密生します。花期は5月から6月頃です。偽茎の先に穂状花序3)を出します。花序は10~15cmで、多数の蘭に似た唇弁花を付けます。花弁の長さは約25mm。先端が3裂する唇弁は白地に赤い縞模様が入ります。萼(外花被)は白色の筒状で先端が赤くなります。

 雌雄異熟の両性花です。中裂片の内側に雄しべ1、雌しべ1が立ち上がります。雄性先熟で花柱の位置運動が行われます。子房下位。果実は蒴果4)です。はじめは緑色で熟すと赤色。広楕円形で、長さ12~18mm。細毛があり、残存萼5)が先端にあります。種子は白い仮種皮に包まれ、4~5mm。染色体数は、2n=48。

 生薬名は伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)で、芳香性健胃薬として用いられます。乾燥種子を粉末にした物です。外国産の縮砂(日本薬局方収載生薬)Amomum xanthioides Wallichの代用品として用いられてきました。縮砂の主要成分は、d-camphor、d-borneol、bornylacetate、linalool、 nerolidol、liquiritin、glucovanillic acid等で、漢方薬の「安中散」等に配合されています。

 品種に、果実が黄色の、キミノハナミョウガ(黄実の花茗荷)Alpinia japonica (Thunb.) Miq. f. xanthocarpa Yamasiro et M.Maeda があります。

◎  ◎  ◎

 冬の里山などで「この赤い実は何?」と良く聞かれます。赤い実を付ける植物は結構多く、目立つからです。しかし、ハナミョウガは多くの方が名を知らないようです。特に花を見た事がないと言われる方が圧倒的です。暖地の山地では、ありふれた植物の一つです。

1) 叢生(そうせい):=束生(そくせい)。群がって束になって生える事。
2) 偽茎(ぎけい): 地下茎から出た多数の葉鞘(葉の基部で茎を取り巻いている部分)が重なり茎に見えるもの。
3) 穂状花序(すいじょうかじょ):花序軸に柄のない花が並ぶ形状。
4) 蒴果(さくか):裂開果の一つで、果実が成熟すると心皮と同数の裂片に裂けて種子を散布するもの。
5) 残存萼(ざんぞんがく):果実になる時期にも残る萼。

参考:ヤブミョウガ(藪茗荷)

Japanese common name : Hana-myouga
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Alpinia japonica (Thunb.) Miq.

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左:膜質の苞(左)に包まれていた穂状花序。右:白色で紅色の条がある唇弁花

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左:葉表 右:葉裏は短毛が密生する

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左:葉と花 右:地下茎と叢生する偽茎
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果実

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果実は鳥などに食べられる
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左にある突起が残存萼の一部
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種子は白い仮種皮に包まれている
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一個の果実に含まれていた種子


ハナミョウガ(花茗荷)
ショウガ科ハナミョウガ属
学名:Alpinia japonica (Thunb.) Miq.
花期5月~6月 多年草 草丈:40~60cm 花冠長:約2.5cm 花序長:10~15cm

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【学名解説】
Alpinia : Prospero Alpinio (1553-1617)に因む/ハナミョウガ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Alt.226m) 2007.06.04(花)
安倍城跡(Alt.435m) 2008.05.20(蕾)/2008.06.07(花)/2012.02.21(実)/2012.02.24(根)
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 26 February 2012
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by pianix | 2012-02-26 00:00 | | Trackback | Comments(2)
センブリ(千振)
 センブリ(千振)は、リンドウ科センブリ属の二年草です。日本、中国、朝鮮半島に分布し、日本では北海道、本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、千回振り出し(=煎じ)ても苦みが残ると言われる事から。三大民間薬1)の一つです。

 リンドウ科(Gentianaceae Juss. (1789))は、世界に約80属1000種が分布し、日本には10属約30種が分布します。センブリ属(Swertia L. (1753))は、世界に約80種、日本には9種あります。

 日当たりの良い山野に自生します。根は黄褐色の毛状根。1年目は根生葉を車輪状に出し、2年目に茎を立ち上げます。茎は紫褐色で直立し、4稜(四角)で径1~2mm。草丈15~20cmになり、上部で分岐します。葉は対生します。線状披針形で、幅2.5mm、長さ10~42mmの全縁、尖頭、無柄。

 花期は8月から11月頃。茎先や葉腋から緑色の長柄を出し、先端に花をつけて円錐花序を形成します。花冠は白色で紫色の条線が入った4~5深裂の合弁花。裂片は狭長楕円形で長さ10~15mm。萼は裂片数と同数で線形。裂片基部に楕円形の蜜腺2個と白い線毛があります。雄しべは5本。果実は蒴果です。披針形で、2裂して種子を出します。種子は径約0.4mmで多数。染色体数は、2n=18,20,24。

 生薬名は当薬(とうやく)で、苦味(くみ)配糖体であるスウェルチアマリン等2)を有する苦味健胃剤(食欲増進、胃液分泌促進等)として用いられます。

1) 三大民間薬:
ドクダミ(毒溜)Houttuynia cordata Thunb.
 日本薬局方「ジュウヤク」(十薬)
センブリ(千振)Swertia japonica (Schult.) Makino
 日本薬局方「センブリ」(当薬)
ゲンノショウコ(現の証拠)Geranium thunbergii Siebold ex Lindl. et Paxton
 日本薬局方「ゲンノショウコ」

2) 含有成分(Swertiae Herba):
スウェルチアマリン(Swertiamarin)、スウェロシド(Sweroside)、アマロゲンチン(Amarogentin)、ゲンチオピクロシド(Gentiopicroside)、ベリジホリン(Bellidifolin)

類似種:
ムラサキセンブリ(紫千振)
Swertia pseudochinensis H.Hara 《準絶滅危惧(NT)》
イヌセンブリ(犬千振)
Swertia tosaensis Makino 《絶滅危惧Ⅱ類(VU)》
(Swertia diluta (Turcz.) Benth. et Hook.f. var. tosaensis (Makino) H.Hara)

Japanese common name : Sen-buri
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Swertia japonica (Schult.) Makino

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花冠は合弁花で、裏は紫色を帯び、内側は紫色の条線がある。葉は細く、対生する。

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左:雄しべ5。 右:乾燥した花冠(2012.02.07)。果実は蒴果で2裂する。


センブリ(千振)
リンドウ科センブリ属
学名:Swertia japonica (Schult.) Makino
花期:8月~11月 2年草 草丈:15~20cm 花径:2~3cm

【学名解説】
Swertia : Emanuel Sweert (1552-1612)*に因む/センブリ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Schult. : Josef (Joseph) August Schultes (1773-1831)
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
*オランダの園芸家、画家

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撮影地:静岡県静岡市
ダイラボウ(Alt.560.8m) 2011.10.27
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 09 February 2012
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by pianix | 2012-02-09 00:00 | | Trackback | Comments(0)
カナビキソウ(鉄引草)
 カナビキソウ(鉄引草)は、ビャクダン科カナビキソウ属の多年草で、半寄生植物です。半寄生植物は、自ら光合成を行いながら他の植物から養分を吸収します。シベリア、中国、朝鮮半島、日本に分布します。国内では、北海道南部から沖縄にかけて分布する在来種です。名の由来は、不明です。中国名は、百蕊草(ヒャクズイソウ[bǎi ruǐ cǎo])。

 ビャクダン科(Santalaceae R.Brown, 1810)は、世界に約35属400種(APG分類体系では45属約1000種)があり、半寄生植物。日本には2属[1]が分布します。カナビキソウ属(Thesium L. (1753))は、日本にはカナビキソウ、カマヤリソウ(鎌槍草)の2種が分布します。

 田畑や土手、日当たりの良い荒れ地に自生します。細い寄生根(parasitic root)があり、宿主に半寄生して養分を吸い取ります。茎は細く稜があり無毛、緑色で、やや粉白色を帯びます。下部で分枝し、草丈は10~25cmになります。葉は互生します。短い葉柄があり、全縁、鋭頭で長さ2~5cm、幅1~3mmの線形。葉緑素を持ち光合成をします。

 花期は4月から6月。葉腋に4mm程の短い花柄を出し、花を単生します。筒状花で、萼先端が4~5中裂し、先が尖ります。萼は外側が淡緑色、内側が白色。萼裂片が花弁の様に見えます。花径は4~6mm。小苞は萼の下に付き、線形披針形で2枚、長さ3~4mm。両性花で、雄しべは萼裂片と同数の4~5本。裂片の基部に付き、葯色は黄色。子房下位。果実は楕円状壺形で、長さ2~2.5mm、くちばし状の閉じた萼裂片(宿存萼)が先端に付きます。熟すと網状の脈が現れ、種子1個を出します。

 本種は、ツチカメムシ科シロヘリツチカメムシCanthophorus niveimarginatus (Scott, 1874)の食草として知られています。

[1]日本に分布するビャクダン科の2属3種
カナビキソウ属:
 カナビキソウ(鉄引草)Thesium chinense Turcz.
 カマヤリソウ(鎌槍草)Thesium refractum C.A.Mey.
ツクバネ属:
 ツクバネ(衝羽根)Buckleya lanceolata (Siebold et Zucc.) Miq.

Japanese common name : Kanabiki-sou
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Thesium chinense Turcz.

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左:葉腋に花が単生。花径4~6mm。右:先端が5裂した萼片。雄しべは萼裂片と同数。

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左:萼は外側が淡緑色、内側先端が白色。花下に2枚の小苞。右:宿存萼が付く果実。


カナビキソウ(鉄引草)
ビャクダン科カナビキソウ属
学名:Thesium chinense Turcz.
花期:4月~6月 多年草(半寄生) 草丈:10~25cm 花径:4~6mm

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【学名解説】
Thesium : theseion(ギリシャのヘファイストス神殿)に由来する/カナビキソウ属
chinense : chinensis(中国の)
Turcz. : Porphir Kiril Nicolas Stepanovich Turczaninow (1796-1864)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から11~13.5km、左岸土手 2005.04.15, 2006.04.20-21, 2009.04.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 27 September 2011
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by pianix | 2011-09-27 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ヤブレガサ(破れ傘)
 ヤブレガサ(破れ傘)は、キク科ヤブレガサ属の多年草です。朝鮮半島と日本に分布し、国内では本州・四国・九州に分布する在来種です。名の由来は、芽吹きの時、白絹毛に覆われた葉の形状が破れた傘のように見える事から。英名は、Palmate Shredded Umbrella Plant。中国名は、兎児傘(トジサン|兔儿伞[tùérsăn])。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布し、日本には約70属360種があります。ヤブレガサ属(Syneilesis Maximowicz, 1859)は、東アジアに5種、日本には3種2変種(内、絶滅1)1)が分布します。

 山地の林内に自生します。双子葉植物2)ですが子葉(根出葉)は1枚であることが特徴です。芽出の若葉は白絹毛に覆われ、傘をつぼめた状態で、草丈は10cm内外。この時期の葉は、山菜として用いられることがあります。やがてを傘を広げるように展開します。花茎は分岐せずに直立して50~120cmになります。葉は互生します。柄の先に茎葉を2~3枚つけます。下部の葉の基部は茎を取り巻き合着します。葉は掌状に7~9深裂(掌状深裂3))し、欠刻や粗い鋸歯があり、無毛。円形に平開して30~50cmになります。

 花期は7~8月。茎の先に円錐花序を出し、小花が7~13個集まる頭花を多数つけます。小花は、花冠が5裂する管状花(筒状花)4)のみで構成され、舌状花はありません。花色は白色か薄紅色をおび、頭花径は8~10mm。両性花です。小花を束ねる総苞は、筒状で長さ9~10mm、薄緑白色。総苞片は5枚で、内側に冠毛があります。雄しべは茶褐色の鞘状で花粉は黄色。雌しべ柱頭は白色で先端が2裂し、外側に反り返って巻きます。果実は約4mmで、約7mmの冠毛が付きます。染色体数は、2n=52。

 タケウチケブカミバエ(竹内毛深実蠅 Paratephritis takeuchii Ito. 1950)に寄生され、紡錘状に肥大した虫コブを葉柄基部に付ける事があります。ヤブレガサクキフクレズイフシ(破れ傘茎膨れ髄節)と呼ばれています。

 よく似た種に、葉が紅葉状に裂け円錐花序に頭花を付ける、キク科コウモリソウ(蝙蝠草)属のモミジガサ(紅葉傘)Parasenecio delphiniifolius (Siebold et Zucc.) H.Koyamaがあります。また、モミジガサに酷似した種に、葉裏の葉脈が網目状になる、テバコモミジガサ(手箱紅葉傘)Parasenecio tebakoensis (Makino) H.Koyama(synonym : Cacalia delphiniifolia Siebold et Zucc.)があります。

【食べてみました】
静岡市では山菜として食される習慣がありません。そこでどんな味か試す事にしました。まだ葉が広がっていない、白絹毛に覆われた芽出の若葉を見つけて、茎の下部から折り採取しました。これを1時間ほど水に浸してから天ぷらにしました。天ぷらにすると苦みなどが感じられず、春の山菜としてはインパクトがない味になりました。苦みを味わいたい人は、おひたしにすると良いかもしれません。(2013年3月記)

1) 国内のヤブレガサ属3種
・ホソバヤブレガサ(細葉破れ傘)Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim.
 (変種)タンバヤブレガサ(丹波破れ傘)Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim. var. longilepis Kitam.(絶滅(EX))
・ヤブレガサ(破れ傘))Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
・ヤブレガサモドキ(破れ傘擬き)Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam.
 (変種)ヒロハヤブレガサモドキ(広葉破れ傘擬き)Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. var. latifolia H.Koyama
2) 双子葉植物:子葉が2枚である種子植物。例外として子葉が1枚であるセツブンソウ(節分草)、ニリンソウ(二輪草)、コマクサ(駒草)、ヤブレガサ等がある。
3) 掌状裂(しょうじょうれつ)は、掌状脈を持った葉が手のひら状に裂けるもので、切れ込みの浅いものから順に、掌状浅裂(~せんれつ)、掌状中裂(~ちゅうれつ)、掌状全裂(~ぜんれつ)、掌状深裂(~しんれつ[palmatipartite])に分類される。
4) 管状花(かんじょうか)[tubular corolla]:合弁花の一つで、花びらが管状になるもの。筒状花(とうじょうか)と同じ。

Japanese common name : Yaburegasa
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Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.

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若葉は白絹毛に覆われている。2007.04.06

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茎を徒長させながら葉が展開する頃、白絹毛は無くなってくる。2007.03.21

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左:花期。2008.07.11 左:蝶が介在している。

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花冠が5裂する管状花で、雌しべ柱頭は先端が2裂し、外側に反り返って巻く

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左:花の終わり。2008.07.29 右:2011.09.14

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冠毛が目立つようになった頭花。頭花は管状花の集まり。2011.09.14
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ヤブレガサクキフクレズイフシ(破れ傘茎膨れ髄節)
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モミジガサ(紅葉傘)
Parasenecio delphiniifolius (Siebold et Zucc.) H.Koyama


ヤブレガサ(破れ傘)
キク科ヤブレガサ属
学名:Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
synonym : Cacalia thunbergii Nakai
花期:7月~8月 多年草 草丈:50~120cm 花径:8~10mm

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【学名解説】
Syneilesis : 合着して巻いた子葉を持つの意/ヤブレガサ属
palmata : palmatus(掌状の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Maxim. : Carl Johann Maximowicz (1827-1891)
---
Parasenecio : para(異なった)+senex(老人)/コウモリソウ属
delphiniifolius : delphinii+folius(オオヒエンソウ属(Delphinium)のような葉の)
H.Koyama : 小山博滋 Hiroshige Koyama (1937- )

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Alt.226) 2007.03.21
安倍城跡(Alt.435m) 2008.07.11, 2008.7.29, 2011.09.14(モミジガサ)
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 29 March 2013
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by pianix | 2011-09-16 00:00 | | Trackback | Comments(2)
スズメノヤリ(雀の槍)
 スズメノヤリ(雀の槍)は、イグサ科スズメノヤリ属の多年草です。日本から東南アジア、東シベリアにかけて分布します。日本では全国に分布する在来種です。名の由来は、頭花の形状が大名行列で使われた毛槍に似る事から。毛槍は、先端に鳥毛の飾りをつけた儀仗用の槍で、大名行列の先頭などで振り歩く時に使われました。スズメは、小さなという意味。中国名は、地楊梅。

 イグサ科(Juncaceae Juss. (1789))は、世界の寒帯から温帯に、7属約430種類が分布します。スズメノヤリ属(Luzula DC. 1805)は、世界の温帯から亜寒帯にかけて約80種が分布し、日本には約10種があります。

 日当たりの良い草地に生育します。地下茎は小さな塊状。この事からシバイモ(芝薯)の別名を持ちます。スズメノヒエ(雀の稗)はイネ科に異種同名があるため混同される恐れがあります。茎は1mm程で細く、叢生[1]して草丈10~30cmになります。葉は根生葉で、長さ7~15cm、幅2~3mmの線形で扁平、葉の縁に白色の長軟毛が多生します。花茎に茎葉が2~3枚付きます。

 花期は、4月から5月頃。茎頂に赤褐色で卵球形の頭花を1個、まれに2~3個つけます。花被片は6枚あり、長さ2.5~3mmの長楕円状披針形で全縁、紫褐色。両性花で雌雄異熟花の雌性先熟[2]です。雌しべは線形で、花柱先端を3裂させて柱頭となります。雄しべは6個で、短い花糸の先に2mm程の線状長楕円形で黄色の葯をつけます。風媒花。

 果実は朔果です。褐色をした倒卵形で花被片と同長の2.5~3mm。2mm弱の種子が3個入っていて、白色の種沈(caruncle)が基部に付いています。この種沈はエライオソーム(Elaiosome)で、蟻を誘因する化学物質(脂肪酸、アミノ酸、糖)からなり、蟻によって運ばれて食べられ、残った種子が発芽する事で生息域を広げます。染色体(分散型動原体[3])数は、2n=12。

 スズメノケヤリ(雀の毛槍)は、ワタスゲ(綿菅)[4]の別名で本種とは異なります。よく似た種に、ヤマスズメノヒエ(山雀の稗)Luzula multiflora Lejeuneがあり、近縁種として、オカスズメノヒエ(丘雀の稗)L. pallidula Kirschner、ヌカボシソウ(糠星草)L. plumosa E.Meyer等があります。

[1] 叢生(そうせい|簇生):群がり生えること。
[2] 雌性先熟 : 雌しべが先に熟して受粉し(雌性期)、後で雄しべが花粉の散布を行う(雄性期)。
[3] 高等真核生物の場合は通常、各染色体に1つずつ1次狭窄の位置に動原体をもっているが、次狭窄が存在せず、染色体全体が動原体として機能するものを分散型動原体(diffuse centromere)と言う。植物では、スゲ属、カヤツリグサ属、スズメノヤリ属、モウセンゴケ属、動物ではチョウやガ、カメムシにある。
[4] ワタスゲ(綿菅) : カヤツリグサ科ワタスゲ属
学名 : Eriophorum vaginatum L. subsp. fauriei (E.G.Camus) A. et D.Love

Japanese common name : Suzume-no-yari
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Luzula capitata (Miq.) Miq. ex Kom.
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日当たりの良い草地に叢生する。葉の縁の長い白毛が目立つ。2011.03.27

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雌性期。花被片の隙間から雌しべを出す。

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雄性期の始まり頃。花被片を広げて葯が伸びてくる。

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左:茎葉は2~3枚で茎を抱く。右:雌しべは細く柱頭は3裂する。雄しべは太い黄色。

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左:果実は朔果。 右:散布後。

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2mm弱の種子が3個入っていて、白色の種沈(caruncle)が基部に付いている。

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草丈は10~30cm。根生葉は、長さ7~15cm、幅2~3mmの線形。根はごく細い。


スズメノヤリ(雀の槍)
別名:シバイモ(芝薯)/スズメノヒエ(雀の稗)
イグサ科スズメノヤリ属
学名:Luzula capitata (Miq.) Miq. ex Kom.
花期:4月~5月 多年草 草丈:10~30cm 頭花径:8~13mm 花径:4mm

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【学名解説】
Luzula : lux(光)縮小形/スズメノヤリ属
capitata : capitatus(頭状の・頭状花序の)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
ex : ~による
Kom. : Vladimir Leontjevich Komarov (1869-1945)
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Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
DC. : Augustin Pyramus de Candolle (1778-1841)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川(河川敷・土手) 2006.4.18 - 2011.6.22. 2017.05.08
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

14 August 2011
Last modified: 8 May 2017
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by pianix | 2011-08-14 00:00 | | Trackback | Comments(2)