カテゴリ:花( 376 )
ヤブレガサ(破れ傘)
 ヤブレガサ(破れ傘)は、キク科ヤブレガサ属の多年草です。朝鮮半島と日本に分布し、国内では本州・四国・九州に分布する在来種です。名の由来は、芽吹きの時、白絹毛に覆われた葉の形状が破れた傘のように見える事から。英名は、Palmate Shredded Umbrella Plant。中国名は、兎児傘(トジサン|兔儿伞[tùérsăn])。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布し、日本には約70属360種があります。ヤブレガサ属(Syneilesis Maximowicz, 1859)は、東アジアに5種、日本には3種2変種(内、絶滅1)1)が分布します。

 山地の林内に自生します。双子葉植物2)ですが子葉(根出葉)は1枚であることが特徴です。芽出の若葉は白絹毛に覆われ、傘をつぼめた状態で、草丈は10cm内外。この時期の葉は、山菜として用いられることがあります。やがてを傘を広げるように展開します。花茎は分岐せずに直立して50~120cmになります。葉は互生します。柄の先に茎葉を2~3枚つけます。下部の葉の基部は茎を取り巻き合着します。葉は掌状に7~9深裂(掌状深裂3))し、欠刻や粗い鋸歯があり、無毛。円形に平開して30~50cmになります。

 花期は7~8月。茎の先に円錐花序を出し、小花が7~13個集まる頭花を多数つけます。小花は、花冠が5裂する管状花(筒状花)4)のみで構成され、舌状花はありません。花色は白色か薄紅色をおび、頭花径は8~10mm。両性花です。小花を束ねる総苞は、筒状で長さ9~10mm、薄緑白色。総苞片は5枚で、内側に冠毛があります。雄しべは茶褐色の鞘状で花粉は黄色。雌しべ柱頭は白色で先端が2裂し、外側に反り返って巻きます。果実は約4mmで、約7mmの冠毛が付きます。染色体数は、2n=52。

 タケウチケブカミバエ(竹内毛深実蠅 Paratephritis takeuchii Ito. 1950)に寄生され、紡錘状に肥大した虫コブを葉柄基部に付ける事があります。ヤブレガサクキフクレズイフシ(破れ傘茎膨れ髄節)と呼ばれています。

 よく似た種に、葉が紅葉状に裂け円錐花序に頭花を付ける、キク科コウモリソウ(蝙蝠草)属のモミジガサ(紅葉傘)Parasenecio delphiniifolius (Siebold et Zucc.) H.Koyamaがあります。また、モミジガサに酷似した種に、葉裏の葉脈が網目状になる、テバコモミジガサ(手箱紅葉傘)Parasenecio tebakoensis (Makino) H.Koyama(synonym : Cacalia delphiniifolia Siebold et Zucc.)があります。

【食べてみました】
静岡市では山菜として食される習慣がありません。そこでどんな味か試す事にしました。まだ葉が広がっていない、白絹毛に覆われた芽出の若葉を見つけて、茎の下部から折り採取しました。これを1時間ほど水に浸してから天ぷらにしました。天ぷらにすると苦みなどが感じられず、春の山菜としてはインパクトがない味になりました。苦みを味わいたい人は、おひたしにすると良いかもしれません。(2013年3月記)

1) 国内のヤブレガサ属3種
・ホソバヤブレガサ(細葉破れ傘)Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim.
 (変種)タンバヤブレガサ(丹波破れ傘)Syneilesis aconitifolia (Bunge) Maxim. var. longilepis Kitam.(絶滅(EX))
・ヤブレガサ(破れ傘))Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
・ヤブレガサモドキ(破れ傘擬き)Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam.
 (変種)ヒロハヤブレガサモドキ(広葉破れ傘擬き)Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. var. latifolia H.Koyama
2) 双子葉植物:子葉が2枚である種子植物。例外として子葉が1枚であるセツブンソウ(節分草)、ニリンソウ(二輪草)、コマクサ(駒草)、ヤブレガサ等がある。
3) 掌状裂(しょうじょうれつ)は、掌状脈を持った葉が手のひら状に裂けるもので、切れ込みの浅いものから順に、掌状浅裂(~せんれつ)、掌状中裂(~ちゅうれつ)、掌状全裂(~ぜんれつ)、掌状深裂(~しんれつ[palmatipartite])に分類される。
4) 管状花(かんじょうか)[tubular corolla]:合弁花の一つで、花びらが管状になるもの。筒状花(とうじょうか)と同じ。

Japanese common name : Yaburegasa
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Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.

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若葉は白絹毛に覆われている。2007.04.06

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茎を徒長させながら葉が展開する頃、白絹毛は無くなってくる。2007.03.21

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左:花期。2008.07.11 左:蝶が介在している。

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花冠が5裂する管状花で、雌しべ柱頭は先端が2裂し、外側に反り返って巻く

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左:花の終わり。2008.07.29 右:2011.09.14

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冠毛が目立つようになった頭花。頭花は管状花の集まり。2011.09.14
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ヤブレガサクキフクレズイフシ(破れ傘茎膨れ髄節)
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モミジガサ(紅葉傘)
Parasenecio delphiniifolius (Siebold et Zucc.) H.Koyama


ヤブレガサ(破れ傘)
キク科ヤブレガサ属
学名:Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
synonym : Cacalia thunbergii Nakai
花期:7月~8月 多年草 草丈:50~120cm 花径:8~10mm

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【学名解説】
Syneilesis : 合着して巻いた子葉を持つの意/ヤブレガサ属
palmata : palmatus(掌状の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Maxim. : Carl Johann Maximowicz (1827-1891)
---
Parasenecio : para(異なった)+senex(老人)/コウモリソウ属
delphiniifolius : delphinii+folius(オオヒエンソウ属(Delphinium)のような葉の)
H.Koyama : 小山博滋 Hiroshige Koyama (1937- )

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Alt.226) 2007.03.21
安倍城跡(Alt.435m) 2008.07.11, 2008.7.29, 2011.09.14(モミジガサ)
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 29 March 2013
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by pianix | 2011-09-16 00:00 | | Trackback | Comments(2)
スズメノヤリ(雀の槍)
 スズメノヤリ(雀の槍)は、イグサ科スズメノヤリ属の多年草です。日本から東南アジア、東シベリアにかけて分布します。日本では全国に分布する在来種です。名の由来は、頭花の形状が大名行列で使われた毛槍に似る事から。毛槍は、先端に鳥毛の飾りをつけた儀仗用の槍で、大名行列の先頭などで振り歩く時に使われました。スズメは、小さなという意味。中国名は、地楊梅。

 イグサ科(Juncaceae Juss. (1789))は、世界の寒帯から温帯に、7属約430種類が分布します。スズメノヤリ属(Luzula DC. 1805)は、世界の温帯から亜寒帯にかけて約80種が分布し、日本には約10種があります。

 日当たりの良い草地に生育します。地下茎は小さな塊状。この事からシバイモ(芝薯)の別名を持ちます。スズメノヒエ(雀の稗)はイネ科に異種同名があるため混同される恐れがあります。茎は1mm程で細く、叢生[1]して草丈10~30cmになります。葉は根生葉で、長さ7~15cm、幅2~3mmの線形で扁平、葉の縁に白色の長軟毛が多生します。花茎に茎葉が2~3枚付きます。

 花期は、4月から5月頃。茎頂に赤褐色で卵球形の頭花を1個、まれに2~3個つけます。花被片は6枚あり、長さ2.5~3mmの長楕円状披針形で全縁、紫褐色。両性花で雌雄異熟花の雌性先熟[2]です。雌しべは線形で、花柱先端を3裂させて柱頭となります。雄しべは6個で、短い花糸の先に2mm程の線状長楕円形で黄色の葯をつけます。風媒花。

 果実は朔果です。褐色をした倒卵形で花被片と同長の2.5~3mm。2mm弱の種子が3個入っていて、白色の種沈(caruncle)が基部に付いています。この種沈はエライオソーム(Elaiosome)で、蟻を誘因する化学物質(脂肪酸、アミノ酸、糖)からなり、蟻によって運ばれて食べられ、残った種子が発芽する事で生息域を広げます。染色体(分散型動原体[3])数は、2n=12。

 スズメノケヤリ(雀の毛槍)は、ワタスゲ(綿菅)[4]の別名で本種とは異なります。よく似た種に、ヤマスズメノヒエ(山雀の稗)Luzula multiflora Lejeuneがあり、近縁種として、オカスズメノヒエ(丘雀の稗)L. pallidula Kirschner、ヌカボシソウ(糠星草)L. plumosa E.Meyer等があります。

[1] 叢生(そうせい|簇生):群がり生えること。
[2] 雌性先熟 : 雌しべが先に熟して受粉し(雌性期)、後で雄しべが花粉の散布を行う(雄性期)。
[3] 高等真核生物の場合は通常、各染色体に1つずつ1次狭窄の位置に動原体をもっているが、次狭窄が存在せず、染色体全体が動原体として機能するものを分散型動原体(diffuse centromere)と言う。植物では、スゲ属、カヤツリグサ属、スズメノヤリ属、モウセンゴケ属、動物ではチョウやガ、カメムシにある。
[4] ワタスゲ(綿菅) : カヤツリグサ科ワタスゲ属
学名 : Eriophorum vaginatum L. subsp. fauriei (E.G.Camus) A. et D.Love

Japanese common name : Suzume-no-yari
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Luzula capitata (Miq.) Miq. ex Kom.
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日当たりの良い草地に叢生する。葉の縁の長い白毛が目立つ。2011.03.27

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雌性期。花被片の隙間から雌しべを出す。

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雄性期の始まり頃。花被片を広げて葯が伸びてくる。

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左:茎葉は2~3枚で茎を抱く。右:雌しべは細く柱頭は3裂する。雄しべは太い黄色。

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左:果実は朔果。 右:散布後。

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2mm弱の種子が3個入っていて、白色の種沈(caruncle)が基部に付いている。

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草丈は10~30cm。根生葉は、長さ7~15cm、幅2~3mmの線形。根はごく細い。


スズメノヤリ(雀の槍)
別名:シバイモ(芝薯)/スズメノヒエ(雀の稗)
イグサ科スズメノヤリ属
学名:Luzula capitata (Miq.) Miq. ex Kom.
花期:4月~5月 多年草 草丈:10~30cm 頭花径:8~13mm 花径:4mm

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【学名解説】
Luzula : lux(光)縮小形/スズメノヤリ属
capitata : capitatus(頭状の・頭状花序の)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
ex : ~による
Kom. : Vladimir Leontjevich Komarov (1869-1945)
---
Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
DC. : Augustin Pyramus de Candolle (1778-1841)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川(河川敷・土手) 2006.4.18 - 2011.6.22. 2017.05.08
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

14 August 2011
Last modified: 8 May 2017
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by pianix | 2011-08-14 00:00 | | Trackback | Comments(2)
シモバシラ(霜柱)
 シモバシラ(霜柱)は、シソ科シモバシラ属の多年草です。関東以西の本州から九州にかけて分布する日本固有種です。名の由来は、初冬に枯れた茎の根元から染み出た水分が凍り、氷柱ができるのを霜柱と見立てたもの。別名のユキヨセソウ(雪寄草)も同様に、氷柱を雪に見立てたものです。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。保留名である新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。シモバシラ属(Keiskea Miquel, 1865)は、1属2種で、中国に1種、日本にシモバシラの1種が分布します。

 山地の林下に自生します。茎はシソ科によく見られる4稜形(断面四角形)で、やや木質化し、上部で分枝して長さ40~90cmになります。葉は対生します。5~30mmの葉柄があり、長さ8~20cm、幅3~5.5cmの長楕円形で、先端は尖り、浅い鋸歯があります。表面の脈上には細毛があり、裏面には腺点があります。

 花期は9月から10月。上部の葉腋から総状花序を出します。花穂は長さ5~12cmで、一方向に偏って(偏側生)、短い柄の先に小花が横向きに多数付きます。萼片は長さ約3mmで5深裂し、果時には5~6mmになります。花冠は白色の唇形花で、長さ約7mm。上唇は浅く2裂し、下唇は3裂します。雄しべは長短2個ずつの4本で、先端が2裂した雌しべと共に花冠より突出します。子房は上位。果実は分離果(schizocarp)で1種子を含み、種子は1.5~2mmの球形です。染色体数は、2n=20。

 品種に、神奈川県に分布し花冠が薄紅色を帯びる、ウスベニシモバシラ(薄紅霜柱)Keiskea japonica Miq. f. rubra Kigawa があります。

 冷えた冬の朝に氷結現象を起こし、地表近くの枯れた茎に氷華を形成します。地上部のやや木質化した茎が枯れて残り、木部に二次的にできた水の通路(0.1~0.5mm)に毛細管現象で吸い上げられた水分が滲み出ます(犀川2007)。地表が急激に冷えると押し出してくる水で氷が鰭(うろこ)状にせり出し(前川1995)、氷の膨張によって表皮が破れます。幾つかの植物で同様の現象が起きます。シソ科ではヒキオコシセキヤノアキチョウジ、キク科ではカシワバハグマ、シロヨメナ等があります。

【参考文献】
SAIKAWA, M. : Secondary water path formation in frost column formation in the xylem of Keiskea japonica. Bull. Tokyo Gakugei Univ. Natur. Sci., 59: 55-59 (2007)
SAIKAWA, M. : Some new findings on frost column formation by Keiskea japonica. Bull. Tokyo Gakugei Univ. Natur. Sci., 58: 151-161 (2006)

Japanese common name : Shimo-bashira
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Keiskea japonica Miq.

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葉腋から総状花序を出し、花穂は長さ5~12cm 竜爪山2008.09.25 安倍城跡10.09

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花穂は一方向に偏って小花が横向きに多数付き、萼片は長さ約3mmで5裂する

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葉は対生し、長楕円形で先が尖る(千代山 2007.10.05)
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果実は分離果 2012.10.29



シモバシラの氷華

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左:表皮が破れて横に広がり、霜柱状になる 右:初期段階は氷柱となる

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竜爪山(Alt. 1051m) 2008.12.27


シモバシラ(霜柱)
別名:ユキヨセソウ(雪寄草)
シソ科シモバシラ属
学名:Keiskea japonica Miq.
花期:9月~10月 多年草 草丈:40~90cm 花冠長:約7mm

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【学名解説】
Keiskea : 伊藤圭介 Keisuke Ito (1803-1901)の名に因む/シモバシラ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
---
rubra : 赤色の

※伊藤圭介:シーボルトに師事、1888年(明治21)に日本初の理学博士。日本における近代植物学の祖で、「泰西本草名疏(たいせいほんぞうめいそ)1828-29」、「日本産物誌1873年(明治6)」などの著作がある。彼の名が付く植物には、シモバシラの他に、アシタバ(Angelica keiskei (Miq.) Koidz)、イワチドリ(Amitostigma keiskei Miq.)、スズラン(Convallaria keiskei Miq.)等がある。

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Alt. 226m) 2007.10.05
安倍城跡(Alt. 435m) 2008.09.27, 2008.10.09, 2012.10.29
竜爪山(Alt. 1051m) 2008.09.25, 2008.12.27
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

10 February 2011
Last modified: 20 December 2014
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by pianix | 2011-02-10 00:00 | | Trackback | Comments(2)
テイショウソウ(禎祥草)
 テイショウソウ(禎祥草)は、キク科モミジハグマ属の多年草です。本州の関東から近畿にかけてと四国に分布します。名の由来は、不明です。「禎祥草」と漢字表記しましたが語源が不明なため不確かです。禎祥は、良い前兆との意味です

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。モミジハグマ属(Ainsliaea A.P. de Candolle, 1838)は、日本や朝鮮、中国に約30種が分布します。

 山地の林下に自生します。細く長い根があり、褐紫色の茎を枝分かれせずに30~60cmに伸ばします。茎の下部に4~5枚の葉を輪生状に付けます。葉は卵状鉾形で、長さ10~15cm、長い葉柄があります。緑白の斑紋がありますが、まれに無い葉もあり、葉裏は暗紫色を帯びます。

 花期は9月から11月。花茎の上部に穂状花序を付けます。花柄は長さ2~3mmで、茎の一方向に花を出し横向きになります。頭花は3個の筒状花の集合体で、花冠径15~20mm程。小花は捻れた線状の裂片が5個あり白色、径10~13mm程。柱頭は花冠から突出して先端が2裂します。雄しべは糸状で、合着して花柱を囲みます。頭花全体では15枚の花びらと3本の雌しべがあるように見えます。総苞は筒状で、長さ10~15mm。総苞片は紫色を帯びた狭長楕円形。

 果実は痩果1)です。無毛で倒披針形。長さ約10mmの羽毛状冠毛がある風媒花です。染色体数は、2n=24。核型2)は、K=24=3Asm+3tB1sm+3B2st+3C1sm+3C2m+3D1sm+3D2tr+3Em.(Arano, 1957)。

 同属でよく似た花は多数ありますが、葉の形状が異なります。 葉に鋸歯がない、マルバテイショウソウ(丸葉禎祥草)Ainsliaea fragrans Champ. ex Benth.、変種で長楕円形や円形の葉の、ヒロハテイショウソウ(広葉禎祥草)Ainsliaea cordifolia Franch. et Sav. var. maruoi (Makino) Makino ex Kitam.があります。
 近畿地方以西に分布し、紅葉(モミジ)のような形状の葉をつける、モミジハグマ(紅葉白熊)Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. acerifolia 、亀甲状のキッコウハグマ(亀甲白熊)Ainsliaea apiculata Sch.Bip.、掌状で静岡県と愛知県に分布する、エンシュウハグマ(遠州白熊)Ainsliaea dissecta Franch. et Savat. 、変種で、紅葉(モミジ)のような形状の葉をつける、オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. subapoda Nakai 等があります。

1)痩果(そうか:achene):種子が堅い果皮に包まれ熟すと乾燥する果実。1室に1個の種子がある。
2)核型(かくけい):karyotype(カリオタイプ)、染色体の数と形状の類型

【参考文献】
Hisao ARANO : The karyotype analysis and its karyotaxonomic considerations in tha tribe Mutisieae. Jap. Jour. Genet. 32(1957):293-299

Japanese common name : Teishou-sou
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Ainsliaea cordifolia Franch. et Sav.
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卵状鉾形で緑白の斑紋がある葉を輪生状に付ける。2009.10.12
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2008.05.13

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2014.10.20


テイショウソウ(禎祥草)
キク科モミジハグマ属
学名:Ainsliaea cordifolia Franch. et Sav.
花期:9月~11月 多年草 草丈:30~60cm 花冠長:15~20mm

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【学名解説】
Ainsliaea : Whitelaw Ainslie (1767-1837)に因む/モミジハグマ属
cordifolia : cordifolius(心臓形葉の)
Franch. : Adrien Rene Franchet (1834-1900)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Sav. : Paul Amedee Ludovic Savatier (1830-1891)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.717m) 2008.05.13, 2009.10.12
安倍城跡(Alt. 435m) 2014.10.20
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

29 December 2010, 25 March 2011
Last modified: 21 October 2014
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by pianix | 2010-12-29 00:00 | | Trackback | Comments(0)
オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)
 オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)は、キク科モミジハグマ属の多年草です。本州と九州の北部に分布する在来種です。名の由来は、深山に咲き、葉を紅葉(もみじ)に、花の形をハグマ(白熊=ヤク1))の白い尾毛に例えたもの。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。モミジハグマ属(Ainsliaea DC. (1838))は、日本や朝鮮、中国に約30種が分布します。

 山地の林下に自生します。花茎は高さ30~80cm程に立ち上がり、毛がまばらにあります。葉は花軸の中程に5~13cmの葉柄を出し、4~7枚を輪生状に互生します。葉は腎心形または円心形で長さ6~12cm、幅6~18cm。掌状に浅く裂け、両面に軟毛があります。葉の切れ込みが深いのは本種の母種にあたる、モミジハグマ(紅葉白熊)Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. acerifoliaで、近畿地方以西に分布します。

 花期は、8月から10月。穂状に白色の頭花を横向きにつけます。花柄は約2mm、総苞は1.2~1.5mmで、総苞片が多数並んだ筒形。花冠の長さは12~15mm。頭花は筒状の小花3個の集まりで、小花の花冠は線状に5裂して捻れます。雌しべ1本が長く突き出します。従って頭花は、合計15の裂片と3本の雌しべがあります。果実は痩果2)です。長さ9~10mm、幅2mmの倒披針形3)で、約10mmの羽毛状冠毛があります。染色体数は、2n=24。

 同属でよく似た花は多数ありますが、葉の形状が異なります。近畿地方以西に分布し、紅葉(モミジ)のような形状の葉をつける、モミジハグマ(紅葉白熊)Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. acerifolia 、亀甲状のキッコウハグマ(亀甲白熊)Ainsliaea apiculata Sch.Bip. 、卵状鉾型のテイショウソウ(禎祥草)Ainsliaea cordifolia Franch. et Savat. や、掌状で静岡県と愛知県に分布する、エンシュウハグマ(遠州白熊)Ainsliaea dissecta Franch. et Savat. 等があります。

1)ヤク(Yak):ウシ科ウシ属の動物 Bos grunniens Linnaeus, 1766。ヤクの尾毛を兜や槍の装飾品とし、軍帽では色によって黒熊(こぐま)、白熊(はぐま)、赤熊(しゃぐま)がある。
2)痩果(そうか:achene):種子が堅い果皮に包まれ熟すと乾燥する果実。1室に1個の種子がある。
3)披針形(とうひしんけい):披針形を逆さにした形。細長く、基部よりも先端の方が広い形状。

Japanese common name : okumomiji-haguma
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Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. subapoda Nakai

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葉は花軸の中程から出し、掌状に浅く裂ける


オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)
キク科モミジハグマ属
学名:Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. subapoda Nakai
花期:8月~10月 多年草 草丈:30~80cm 花冠長:12~15mm

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【学名解説】
Ainsliaea : Whitelaw Ainslie (1767-1837)に因む/モミジハグマ属
acerifolius : カエデ属(Acner)の葉に似た(主に掌状)
Sch.Bip. : Carl (Karl) Heinrich Schultz Bipontinus (1805-1867)
var. : varietas(変種)
subapoda : sub(ほとんど)+apoda(無柄の)
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)

撮影地:静岡県静岡市
竜爪山(Alt. 1051m) 2008.09.25
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 24 December 2010
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by pianix | 2010-12-22 00:00 | | Trackback | Comments(0)
キッコウハグマ(亀甲白熊)
 キッコウハグマ(亀甲白熊)は、キク科モミジハグマ属の多年草です。日本、朝鮮半島に分布します。日本では、北海道、本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、葉の形が亀甲の形状で、花の形をハグマ(白熊=ヤク1))の白い尾毛に例えたもの。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。モミジハグマ属(Ainsliaea DC. (1838))は、日本や朝鮮、中国に約30種が分布します。

 山地の木陰に自生します。葉は根生して輪生状につきます。5角形の亀甲形状で、長さ1~3cm、幅1~2.5cm。葉柄は1~5cmで、葉の両面に毛があります。葉形変異があり、心臓形や腎臓形、卵形もあります。花茎は高さ10~30cm程になり、毛があります。

 花期は9月から10月。花茎頂に数個の頭花を総状につけます。頭花は、白色の小花3個の集合体です。小花は管状花で、5深裂します。裂片の幅は0.4~0.6mmで、先端は鉤状に巻いて右横に向き、全体で一輪状となります。頭花裂片の合計は15個で、花冠径は7~8mm。総包葉は長さ10~15mmの筒状。雄しべ先熟で、雄しべは合着して淡赤褐色の葯筒となり、雌しべ先端は2裂します。

 総苞片に包まれたままの閉鎖花をつけることがあり、閉鎖花は自家受粉します。果実は痩果2)です。倒披針形3)で、長さは4~5mm。長さ7~10mmの淡褐色で羽状の冠毛があります。風で種子散布する風媒花です。染色体数は、2n=24。核型4)は、K=24=3Asm+2B1tr+4B2st+3C1m+3C2sm+3D1tr+3D2m+3Em. (Arano, H. 1957)

 同属でよく似た花は多数ありますが、葉の形状が異なります。卵状鉾型の、テイショウソウ(禎祥草)Ainsliaea cordifolia Franch. et Savat. や、掌状で静岡県と愛知県に分布する、エンシュウハグマ(遠州白熊)Ainsliaea dissecta Franch. et Savat. 、変種で、紅葉(モミジ)のような形状の葉をつける、オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)Ainsliaea acerifolia Sch. Bip. var. subapoda Nakai 等があります。

1)ヤク(Yak):ウシ科ウシ属の動物。Bos grunniens Linnaeus, 1766。ヤクの尾毛を兜や槍の装飾品とした。軍帽では色によって黒熊(こぐま)、白熊(はぐま)、赤熊(しゃぐま)がある。
2)痩果(そうか:achene):種子が堅い果皮に包まれ熟すと乾燥する果実。1室に1個の種 子がある。
3)倒披針形(とうひしんけい):披針形を逆さにした形。細長く、基部よりも先端の方が広い形状。
4)核型(かくけい):karyotype(カリオタイプ)、染色体の数と形状の類型

【参考文献】
Hisao ARANO : The karyotype analysis and its karyotaxonomic considerations in tha tribe Mutisieae. Jap. Jour. Genet. 32(1957):293-299

Japanese common name : Kikkou-haguma
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Ainsliaea apiculata Sch.Bip.

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左:葉は根生して輪生状 右:雄蘂は合着して淡赤褐色の葯筒となり、雌蘂先端は2裂
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頭花は管状花が3個の集合体。裂片の先端は鉤状に巻いて右横に向く


キッコウハグマ(亀甲白熊)
キク科モミジハグマ属
学名:Ainsliaea apiculata Sch.Bip.
花期:9月~10月 多年草 草丈:10~30cm 花冠長:10~15mm 花冠径:7~9mm

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【学名解説】
Ainsliaea : Whitelaw Ainslie (1767-1837)に因む/モミジハグマ属
apiculata : apiculatus(短突起のある)
Sch.Bip. : Carl (Karl) Heinrich Schultz Bipontinus (1805-1867)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.717m) 2008.10.27 2014.10.30
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

Last modified: 15 December 2010, 19 November 2015
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by pianix | 2010-12-15 00:00 | | Trackback | Comments(2)
コウヤボウキ(高野箒)
 コウヤボウキ(高野箒)は、キク科コウヤボウキ属の落葉低木です。日本と朝鮮半島、中国に分布します。日本では、関東以西から九州に分布する在来種です。名の由来は、霊場である和歌山県の高野山で、枝を束ねて竹箒の代用としたことから。厠箒(かわやぼうき)の転訛したものとの説もあります。古名に、玉箒(多麻婆波伎=たまばはき/たまははき)があります。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。コウヤボウキ属((Pertya C.H. Schultz-Bip. (1862))は、約15種があります。

 山地の林縁に自生します。束生1)(叢生)し、枝分かれしながら樹高60~90cmになります。枝は細く短毛があります。葉は互生します。広卵形で長さ2~3cm、先尖、両面に毛があり、鋸歯がまばらにあります。2年目の枝には披針形の葉を3~5枚、束生します。

 花期は9月~10月。枝先に白色の頭花をつけます。筒状花が10~14個あり、長さ約10mm。花被は5深裂し、リボン状となって先端を巻きます。雄しべ(集葯雄ずい2))5個、雌しべ1個があり、花冠から突出します。総苞は狭卵形の総苞片が重なり合い円柱形。果実は痩果3)です。種子の長さは約5~6mmで、冠毛があり、風に舞って拡散する風媒花です。染色体数は、2n=24。核型4)は、K=24=2A1m+2A2sm+2tB1sm+4B2sm+4C1sm+6C2m+2Dsm+2Em. (Arano, 1957)

 仲間に、2年枝の葉が細く束生するナガバノコウヤボウキ(長葉の高野箒)Pertya glabrescens Sch.Bip. ex Nakai があります。

1)束生(そくせい:fascicled):葉のつく節間が詰まって複数の節から束状になって葉が出る様子。この場合の葉序(phyllotaxis)は、互生、対生、輪生がある。叢生(そうせい)ともいう。
2)集葯雄ずい(集葯雄蕊・しゅうやくゆうずい):雄しべが集合し、葯の部分が合着して管状となったもの。
3)痩果(そうか:achene):種子が堅い果皮に包まれ熟すと乾燥する果実。1室に1個の種子がある。
4)核型(かくけい):karyotype(カリオタイプ)、染色体の数と形状の類型

【参考文献】
Hisao ARANO : The karyotype analysis and its karyotaxonomic considerations in tha tribe Mutisieae. Jap. Jour. Genet. 32(1957):293-299

Japanese common name : kouya-bouki
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Pertya scandens (Thunb.) Sch.Bip.

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左:頭花は筒状花の集まり。右:総苞は円柱形で、総苞片が重なり合う。
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葉は互生し、広卵形


コウヤボウキ(高野箒)
キク科コウヤボウキ属
学名:Pertya scandens (Thunb.) Sch.Bip.
花期:9~11月 落葉低木 樹高:50~90cm 花冠径:約10mm 果期:11~12月

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【学名解説】
Pertya : Joseph Anton Maximillian Perty (1804-1884)に因む/コウヤボウキ属
scandens : よじ登る性質の
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Sch.Bip. : Carl (Karl) Heinrich Schultz Bipontinus (1805-1867)

撮影地:静岡県静岡市
大山(Alt. 986m)/突先山(Alt. 1021.7m) 2008.10.29
安倍城跡(Alt.435m) 2008.10.21, 2008.11.13
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

13 December 2010
Last modified: 5 September 2017
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by pianix | 2010-12-08 00:00 | | Trackback | Comments(2)
ヒガンバナ(彼岸花)
 ヒガンバナ(彼岸花)は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。日本と中国に分布します。日本では全国に分布し、中国から稲作と共に渡来した史前帰化植物と考えられています。名の由来は、秋の彼岸頃に開花する事から。別名のマンジュシャゲ(曼珠沙華)は古い呼び名で、古代インド梵語(サンスクリット語)manjusaka(マンジュシャケ)の音写です。如意花と訳し天界の花とされます。多数の別名があります。

 ヒガンバナ科(Amaryllidaceae Jaume Saint-Hilaire, 1805) は、世界の熱帯から温帯にかけて約59属860種が分布します。クロンキスト体系ではユリ科(Liliaceae Juss. (1789))に分類され、世界の熱帯と温帯に約280属4000種が分布します。ヒガンバナ属(Lycoris Herbert, 1821)は東南アジアに3属1)約30種が分布します。

 鱗茎及び全草共に有毒です。毒成分は、リコリン (lycorine, C16H17NO4)、ガランタミン(galantamine, C17H21NO3)です。ガランタミンはアルツハイマー病治療薬として用いられますが、現在は合成精製されたものを使用します。誤食した場合、睡眠作用、痙攣、吐き気、下痢の症状が現れます。飢餓の時に、水にさらして毒抜きをして食べた救荒作物としても知られています。民間療法で外用生薬・石蒜(せきさん)として肩こり、浮腫、乳腺炎の治療に用いられる場合があります。ヒガンバナアルカロイド(Amaryllidaceae alkaloids)は、鎮痛、抗ウイルス、抗マラリア、抗腫瘍、中枢神経作用などの薬理作用が報告されています。※危険なので素人は用いないようにする。

 田の畦道、土手、墓地等、人の生活圏内に自生します。広卵形で大きさ2~6cmの鱗茎があり、栄養繁殖(鱗茎の分球により増殖)します。埋没しても上方の地表下に移動する性質があります。鱗茎に含有するリコリンはアルカロイド系成長阻害物質でもあり、季節変動があるアレロパシー作用によって周囲の植物発生を制御します。花後の10月に葉を出します。葉は線形で長さ30~50cm、幅4~8mm。中央に薄緑色の筋が入ります。

 花期は9月。鱗茎から花茎を30~50cmに立ち上げ、茎先に1つの包をつけます。包から5~8個程の花を輪生状に横向きに出し、散形花序を形成します。花被は倒披針で6枚あり赤色、長さ約4cm、幅5~6mm。縮れていて外側に反り返ります。雄しべ6本、雌しべ1本で、花冠より突出します。子房下位。

 年間の生活形態は次の通りです。9月に花が咲き、10月に葉を出す。4月に葉が枯れ8月に至る。つまり、他の草木が生い茂る季節は葉を落とし、競合する相手が少ない冬に葉を伸ばし鱗茎に栄養を蓄えます。

 染色体数は、2n=3x=33(=33A)。3倍体の不稔性(sterility)であるため結実しません。中国産シナヒガンバナ(支那彼岸花)Lycoris radiata (L'Hér.) Herb. var. pumila Grey の染色体数は2n=22。稔性があり結実し、ヒガンバナの原種と言われています。日本産より早咲きですが、小ぶりなため、コヒガンバナ(小彼岸花)の別名があります。シロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華)=シロバナヒガンバナ(白花彼岸花)Lycoris x albiflora Koidz.の染色体数は2n=3x=17(=5M+1T+11A)で、ヒガンバナ同様に結実しません。シナヒガンバナ(支那彼岸花)とショウキズイセン(鍾馗水仙)Lycoris traubii W.Hayw. の自然交配種と考えられています。

1) ヒガンバナ属(Lycoris Herbert, 1821)、ハマオモト属(Crinum C. Linnaeus, 1753)、ハエマンサス属(Haemanthus C. Linnaeus, 1753)

参考文献:
ヒガンバナ科植物含有Lycorine型アルカロイドに関する化学的研究(Toriizuka, 2009)
ヒガンバナ自生地における雑草発生制御の実態(Takahashi, Ueki, 1982)
ヒガンバナの他感作用と作用物質リコリン・クリニンの同定(Fujii, Iqbal, Nakajima,1999)

Japanese common name : higan-bana
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Lycoris radiata (L'Hér.) Herb.

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左:雄しべ6本、雌しべ1本で花冠より突出する。*2 右:茎頂に花を輪生状につける。*2

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左:蕾と花。*2  右:子房下位。*3
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鱗茎(幅約23mm)。ヒガンバナアルカロイドのリコリンやガランタミンが含まれる。*4
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花後の10月頃から葉を出す。*6
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シロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華)*5
Lycoris x albiflora Koidz.


ヒガンバナ(彼岸花)
別名:マンジュシャゲ(曼珠沙華)
ヒガンバナ科ヒガンバナ属
学名:Lycoris radiata (L'Hér.) Herb.
花期:9月 多年草 草丈:30~50cm 花径:6~12cm

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【学名解説】
Lycoris : ギリシャ神話の海の女神Lycorisに因む/ヒガンバナ属
radiata : radiatus(放射状の)
L'Hér. : Luis Hernández Sandoval (1958- )
Herb. : William Herbert (1778-1847)
---
x : 二種間交配種
albiflora : albiflorus(白花の)
Koidz. : 小泉源一 Genichi Koidzumi (1883-1953)
---
pumila : pumilus(低い)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から12.75km 左岸河川敷 2005.09.30
*4 安倍川/河口から8.5km 左岸河川敷 2006.09.22
*3 安倍川/河口から5.75km 右岸河川敷 2007.09.27
*2 藁科川(安倍川水系)/河口から1.5km 左岸河川敷 2007.09.28
*5 内牧川(安倍川水系)/上流 2006.09.25
*6 賤機山 2010.11.08
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

8 November 2010, 12 November 2010
Last modified: 6 June 2014
Scientific name confirmed: 9 September 2015
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by pianix | 2010-11-08 00:00 | | Trackback | Comments(4)
キツネノカミソリ(狐の剃刀)
 キツネノカミソリ(狐の剃刀)は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。日本、朝鮮半島に分布し、日本では本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、葉を剃刀に見立てたもので、キツネは「劣る」の意味や、花色を狐火に例えた等の諸説があります。

 ヒガンバナ科1) (Amaryllidaceae J. Saint-Hilaire2), 1805) は、世界の熱帯から温帯にかけて約59属860種が分布します。クロンキスト3)体系ではユリ科(Liliaceae Juss. 4), (1789))に分類され、世界の熱帯と温帯に約280属4000種が分布します。ヒガンバナ属(Lycoris Herbert5), 1821)は、東南アジアに3属約30種が分布します。

 山野の明るい林縁に自生します。広卵形の鱗茎から、春に葉柄のある緑色の葉を2列に出します。葉は、長さ30~40cm、幅8~10mmの狭長状。花をつける夏に葉は枯れます。年間の生活形態は次の通りです。4月に葉が出て、5~6月に葉が枯れる。7月から茎が伸び始め、8月に花が咲く。9月に果期となり、冬越しをして3月に至る。

 鱗茎6)及び全草共に有毒です。有毒成分は、リコリン (lycorine, C16H17NO4)、ガランタミン(galantamine, C17H21NO3)です。ガランタミンはアルツハイマー病治療薬として用いられますが、現在は合成精製されたものを使用します。誤食した場合、睡眠作用、痙攣、吐き気、下痢の症状が現れます。

 花期は8~9月頃。花茎を上部で3~5本に枝分かれさせながら30~50cmに立ち上げ、花を茎先に散形状に付けます。花序基部に総苞片があり、長さ約4cmの披針形。花冠は漏斗型で、橙色の花弁6枚の花を咲かせます。花被片長は5~8cm。雄しべは6本で、先で上向きに反り返り、花被片とほぼ同長。雌雄同花。子房下位。染色体数は、2n=22(=22A)7)、2n=3X=32。2倍体と3倍体とがあり、3倍体は結実しません。果実は蒴果です。径約15mmの扁球形で内部は3室に別れ、中軸胎座8)。種子は黒色、径5~7mmの円形で扁平形。

 類似種に大型の、オオキツネノカミソリ(大狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. kiushiana T.Koyama9) があり、雄しべ、雌しべ共に花被片より長く突出しています。キツネノカミソリと共に白花品種10)があります。八重咲き品種のヤエキツネノカミソリ(八重狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea f. plena T.Yamaz. は、高尾山で発見されました。ムジナノカミソリ(狢の剃刀)Lycoris sanguinea var. koreana (Nakai) T.Koyamaは、野生絶滅(EW)とされています。

1) 新エングラー体系/Adolf Engler (1844-1930)
2) J. Saint-Hilaire : Jean Henri Jaume Saint-Hilaire (1772-1845)
3) Cronquist : Arthur John Cronquist (1919-1992)
4) Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
5) Herbert : William Herbert (1778-1847)
6) 鱗茎は、地下茎の一種で、葉の付け根が重なって肥大したもの。特徴として玉葱のようにむいていく事ができる。かけらになっても再生能力が高く、根によって鱗茎を地下に引込む能力もある。ヒガンバナ、ラッキョウ、チューリップなども鱗茎をもつ。
7) アクロセントリック染色体(acrocentric chromosome:A-type)
8) 中軸胎座【ちゅうじくたいざ】(axial placentation):胚珠が子房の中軸に付く。
9) synonym : Lycoris sanguinea Maxim. var. kiushiana (Makino) Makino ex Akasawa
10) シロバナキツネノカミソリ(白花狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea f. albiflora Honda、シロバナオオキツネノカミソリ(白花大狐の剃刀)Lycoris sanguinea Maxim. var. kiushiana T.Koyama f. albovirescens E.Doi ex Akasawa

Japanese common name : Kitune-no-kamisori
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Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea

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2008.08.08 / 2008.09.03 どちらも群生地ではなく山道脇に咲いていたもの。

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2014.07.30

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左:果実は蒴果(2014.09.23) 右:キツネノカミソリの葉(2008.03.27)


キツネノカミソリ(狐の剃刀)
ヒガンバナ科ヒガンバナ属
学名:Lycoris sanguinea Maxim. var. sanguinea
花期:8月~9月 多年草 草丈:30~50cm 花冠長:50~55mm

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【学名解説】
Lycoris : ギリシャ神話の海の女神Lycorisに因む/ヒガンバナ属
sanguinea : sanguineus(血紅色の)
Maxim. : Carl Johann Maximowicz (1827-1891)
var. : varietas(変種)
---
kiushiana : kiusianus(九州の)
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
ex : ~による
Akasawa : 赤澤 時之 Yoshyuki Akasawa (1915-2003)
---
f. : forma(品種)
albovirescens : albo(白)+virescens(淡緑色の)
albiflora : albiflorus(白花の)
plena : plenus(八重の)
Honda : 本田 政次 Masaji Honda (1887-1984)
T.Koyama : 小山 鐵夫 Tetsuo Michael Koyama (1933- )
T.Yamaz. : 山崎 敬 Takasi Yamazaki (1921-2007)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.717m)2008.03.27, 2008.08.08, 2008.09.03, 2014.09.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

31 October 2010, 3 November 2010, 24 September 2014
Last modified: 23 August 2015
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ツルニンジン(蔓人参)
 ツルニンジン(蔓人参)は、キキョウ科ツルニンジン属の多年草です。東アジアに分布し、日本では北海道、本州、四国、九州に分布します。名の由来は、蔓性であり、根が朝鮮人参に似ている事から。別名のジイソブ(爺蕎)は、バアソブ(婆蕎)に対して付けられ、花冠内側の斑点をお爺さんのソバカスに見立てたものです。ソブはソバカスの方言。

 キキョウ科(Campanulaceae Juss. (1789))は、Campanula(釣鐘)に由来し、温帯から熱帯に約60属2000種があります。ツルニンジン属(Codonopsis N.Wallich, in Roxburgh, 1824)は、東アジアに約55種ほど分布し、日本には2種が自生します。

 山野の林縁に自生します。髭根がある肥大した紡錘形の塊根があります。去痰効果があるとされています。蔓性で、草木に絡みつき200cm程になります。葉は、初め互生し、枝先で3~4枚の輪生となります。卵状楕円形で、長さ3~10cm、幅1.5~4cm、葉裏は白っぽい。根茎、茎、葉には白乳液があります。このことから中国では羊乳と呼ばれています。

 花期は8月~10月。側枝の先に花を下向きに付けます。萼片は大きく5裂し、裂片は20~25mmで平開します。花冠は釣鐘形で、先が浅く5裂して外側に開きます。花冠径は25~35mmで、外側は白緑色、内側には紫褐色の斑紋があります。花冠基部には蜜源である5つの距があります。

 雄しべは5本で、雄性先熟です。雌しべ柱頭は3~5裂します。子房半下位。果実は5角形の蒴果で、萼片につき約30mmで扁平、裂開して種子を散布します。種子は淡褐色で翼がある半月状、大きさは約5mm。染色体数は、2n=16。

 同属の類似種であるバアソブ(婆蕎)Codonopsis ussuriensis (Rupr. et Maxim.) Hemsley は、全体に白い毛があり、花冠外側は紫褐色、種子に翼が無く黒褐色であることが本種との区別点となります。

Japanese common name : Turu-ninjin
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Codonopsis lanceolata (Siebold et Zucc.) Trautv.

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花冠基部には蜜源である5つの距がある。葉は3~4枚が輪生する。

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花冠内側には紫褐色の斑紋がある。雄しべ5本が花冠側に倒れている。

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左:萼の開きはじめ。葉の裏面は粉白色。 右:萼が開き、距が見えるようになる。

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樹木に絡みつくと盛大に伸びる(2014.09.17 花沢山)

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左:果実は5角形の蒴果で萼が残る 右:種子は淡褐色で翼がある半月状


ツルニンジン(蔓人参)
別名:ジイソブ(爺蕎)
キキョウ科ツルニンジン属
学名:Codonopsis lanceolata (Siebold et Zucc.) Trautv.
花期:8月~10月 多年草 草丈:~200cm(蔓性) 花冠径:25~35mm

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【学名解説】
Codonopsis : codon(鐘)+opsis(似)/ツルニンジン属
lanceolata : lanceolatus(皮針形の)
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848)
Trautv. : Ernst Rudolf von Trautvetter (1809-1889)

撮影地:静岡県静岡市
竜爪山(Alt. 1051m) 2008.09.25
安倍城跡(Alt. 435m) 2008.09.27, 2008.10.03
花沢山(Alt. 449m) 石部コース 2014.09.17 <静岡市・焼津市>
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

21 October 2010, 24 September 2014
Last modified: 8 March 2015
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by pianix | 2010-10-21 00:00 | | Trackback | Comments(0)