<   2005年 09月 ( 28 )   > この月の画像一覧
メハジキ(目弾)
 メハジキ(目弾)は、シソ科メハジキ属の2年草です。茎は四角形、上下で全く様相の異なる葉1)をつけるのが特徴で、高さは60~100cmになります。寒さに弱い越年性の二年草で、シソ科らしい唇形の花をつけます。花冠の長さは10~13mm、萼は6~7mm。

 野草は、色々な場面で役に立っています。メハジキ(目弾)は、昔の子供の遊び道具でした。茎を瞼の間に挟み、閉じる勢いで弾き飛ばす遊びです。野性味あふれる昔の子供ならではの遊びで、今時の子供には流行りません。

 このメハジキは、養命酒にも入っています。14種の生薬の内のヤクモソウ(益母草)と記載されているのがこれです。根、茎、花、葉、実の全体が使われ、婦人薬(産前産後に用いる)として古来から使われてきました。英名のMother wort(母の草)は、近似種のLeonurus cardiacaを指しますが、洋の東西を問わず似たような意味合いの名前が付けられています。

☆  ☆  ☆

 京大のグループが植物の開花指令を出す仕組みを8月(2005年)の米科学誌サイエンスに発表しました。1937年に開花伝達に関わる花成ホルモン「フロリゲン(Florigen)」がチャイラヒャン(M.Kh.Chailakhyan 1902-1991)氏によって提唱されて以来、もっとも重要な解明の一つではないでしょうか。タンパク質「FT」が、そのフロリゲンではないかという論文です。

 一般的には、花を咲かせる仕組みが未だに分かっていなかったのかと驚かれるかもしれません。その通りで、分からない事はたくさんあります。大体が、人間が生物を根源から作った事は一度もありません。その意味でも、身近な植物であっても謎だらけと言えるのではないでしょうか。この研究で使われたのはアブラナ科のシロイヌナズナ(白犬薺)Arabidopsis thaliana (L.) Heynh.。今や植物分子生物学の最先端を行く野草として有名になりました。

1)※葉の形状
(上)茎頂(けいちょう)=切れ込みがなく、披針形(ひしんけい)か線状。
(中)茎生葉(けいせいよう)=下部は対生で、長柄があり、3深裂し羽状に切れ込む。
(下)根出葉(こんしゅつよう)=長柄があり、卵形、葉縁は小波状。

Japanese common name : Mehajiki
e0038990_9594348.jpg
Leonurus japonicus Houtt.


メハジキ(目弾)
別名:ヤクモソウ(益母草)
シソ科メハジキ属
学名:Leonurus japonicus Houtt.
花期:7月~10月 2年草 草丈:60~100cm 花径:6~7mm

e0038990_2163229.gif

【学名解説】
Leonurus : leon(ライオン)+ oura(尾)/メハジキ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Houtt. : Maarten (Martin) Houttuyn (1720-1798)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から5.75km 右岸河川敷 2005.09.29
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 30 September 2005
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-30 00:00 | | Trackback | Comments(4)
フサフジウツギ(房藤空木)
 先日、タイのアマチュア無線局HS1PDYのKonok氏からQSLカード(交信証明書)が届きました。カードには、アユタヤの遺跡らしき石仏の前で記念撮影された写真がありました。石仏と氏は似ています。首に掛けている一眼レフ・カメラは私と同じ物でした。そして石仏の後ろに、やや大きめの葉が見えています。これは何の木の葉だろうと興味を持ちました。すぐに、そんな事を調べはじめたら切りがないと思いを打ち消しました。興味がつのりタイまで足を運ぶような事になってはたまりません。

 しかし、日本にある木は自生種ばかりではありません。外来種が多くあります。フサフジウツギも、その一つです。藤のような花が房になって咲き、葉が空木のようであることから、その名前が付いています。学名のブッドレアが、そのまま流通名になっていて、その方が通りがよいかもしれません。英名は、butterfly bush。蝶や蜂が好んで集まるような良い香りがする木として知られています。中国原産で園芸種が野生化したと言われています。チチブフジウツギ(秩父藤空木)とも呼ばれています。在来種のフジウツギ(藤空木)は、この種より花序が疎で、葉は大きめです。サポニンが含まれている有毒植物です。

Japanese common name : Fusafuji-utugi
e0038990_10505951.jpg
Buddleja davidii Franch.


フサフジウツギ(房藤空木)
別名:ブッドレア(Buddleja)/チチブフジウツギ(秩父藤空木)
フジウツギ科フジウツギ属
学名:Buddleja davidii Franch.
花期:7月~10月 落葉低木 樹高:100~350cm 円錐花序:10~20cm 花径:8mm

e0038990_12135938.gif

【学名解説】
Buddleja : (Buddleia) Adam Buddle(1660~1715)に因む/フジウツギ属
davidii : Armand David (1826-1900)の
Franch. : Adrien Rene Franchet (1834-1900)

撮影地:静岡県静岡市
葵区新田 2005.09.19
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 29 September 2005
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-29 00:00 | | Trackback | Comments(0)
キンエノコロ(金狗尾)
 秋の風情を醸し出すエノコログサの仲間は幾つかあります。エノコログサ(狗尾草)、アキノエノコログサ(秋の狗尾草)、キンエノコロ(金狗尾)です。キンエノコロと思いながら、写真を見て花穂(かすい)の垂れ下がり方が気になりはじめました。その時に採取してくれば問題は無かったのです。再度確認に出かける事になりました。

 撮影地点へ行くと、そこにはエノコログサの形跡がありません。草刈りされたのかと驚きました。しばらくしてから撮影ポイントが若干ずれていた事に気が付き、無事探し当てる事ができました。

 草丈の実測をしました。86cmありました。色からしてキンエノコロだと思ったのですが、花穂が垂れ下がるのはアキノエノコログサです。二つを比べてみると、アキノエノコログサの花穂のほうが大きく、比べものにならないほど垂れて湾曲しています。葉は似たような長さでしたが、幅がアキノエノコログサのほうが広いのが明らかです。面白い事に、葉表を撫でると、どちらも付け根方向に滑りません。細かな逆毛があるようです。

 キンエノコロで良かったようです。逆光で撮影すると、よく分からなくなる事があるので、確認を怠らないようにする必要がありまが、その失敗例でした。エノコログサに似ていますが、枝分かれが少なく、花穂には黄金色の剛毛が密生しています。花穂の向きは、ほぼ直立か湾曲が僅かにある程度です。

 近くにはチカラシバ(力芝)も咲いていました。チカラシバは形状は似ていますがイネ科チカラシバ属です。採取してきた幾つかを眺め、小穂を接眼鏡で観察するなどしました。ありふれたエノコログサの仲間ですが、ずいぶんと楽しめました。それにしても気温が下がって肌寒くなっているこの頃です。急に秋が来た感じがします。

 類似種に、コツブキンエノコロ(小粒金狗尾)Setaria pallidefusca (Schumach.) Stapf et C.E.Hubb. があります。

【イネ科】
参考:スズメノカタビラ(雀の帷子) ジュズダマ(数珠玉)

Japanese common name : Kin-enokoro
e0038990_10531317.jpg
Setaria pumila (Poir.) Roem. et Schult.


キンエノコロ(金狗尾)
イネ科エノコログサ属
学名:Setaria pumila (Poir.) Roem. et Schult.
synonym : Setaria glauca (L.) P.Beauv.
花期:8月~10月 1年草 草丈:50~90cm 花穂長:3~10cm 花径:2~3mm

e0038990_2163229.gif

【学名解説】
Setaria : seta(剛毛)/エノコログサ属
pumila : pumilus(小さい)
Poir. : Jean Louis Marie Poiret (1755-1834)
Roem. : Johann Jacob Roemer (1763-1819)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Schult. : Josef August Schultes (1773-1831)
---
glauca : glaucus(白粉を被ったような)
L. : Carl von Linne(1707-1778)
P.Beauv. : Ambroise Marie Francois Joseph Palisot de Beauvois(1752-1820)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から5.75km 右岸河川敷 2005.09.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

28 September 2005
Last modified: 24 June 2016
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-28 00:00 | | Trackback | Comments(4)
ハッカ(薄荷)
 ハッカ(薄荷)は、シソ科ハッカ属の多年草です。日本、中国、サハリン等に分布します。秘本では北海道から九州に分布する在来種です。名の由来は、中国名の薄荷(bòhé)から。語源の詳細は不明です。英名は、Japanese mint。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。ハッカ属(Mentha L. (1753))は、北半球の温帯に約40種が分布し、日本には2種が自生します。

 地下茎によって繁殖します。草丈は20~60cm。茎は四角。葉は対生します。葉柄があり、長楕円形で鋭頭、鋸歯があります。葉裏は腺点が目立ちます。花期は、8月から10月頃。葉腋に偽輪生の輪散花序(仮輪)を数段に付けます。花は、白から淡紫色で花径2~5mm。花冠は筒状の唇形花で上裂片は2裂、下裂片は3裂します。雄性期と雌性期があります。雄しべは約5mmで、花冠から飛び出して目立ちます。萼は筒状。萼歯裂片は先が尖った狭三角状。果実は、分果です。染色体数は、2n=96。

 主成分は、メントール (Menthol、薄荷脳) 、メントン(Menthone) 、α-ピネン(α-Pinene)、リモネン(Limonene)等です。生薬として、乾燥地上部を薄荷、葉を薄荷葉として用いられます。効能は、解熱、清涼、健胃です。

 1817(文化14)年、岡山県で栽培が始められ、明治に北海道で栽培が拡大し、精油が輸出されていました。戦前までは世界生産量の7割を占めるほどでしたが、戦後にメントール(Menthol,C10H20O)の化学合成ができるようになってから急速に栽培が衰退しました。現在は北海道で10ha程度栽培(昭和14年には北海道で2.2万ha栽培)されているだけのようです。ハッカが中国から日本に伝えられたのは西暦600年頃と推定されています。

 ハッカの記述は聖書にもあります。『律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。薄荷いのんど茴香の十分の一は献げるが、律法の中で最も重要な正義、慈悲、誠実はないがしろにしているからだ。これこそ行うべきことである。もとより、十分の一の献げ物もないがしろにしてはならないが。』(マタイによる福音書23章23節・新共同訳)。

 およそ2000年前の記事ですが、神に十分の一を献げる重要なことに使われている事から、大切な香辛料だったことが知られます。ちなみに、イノンド(Anethum graveolens Linn.)は、その種からディル(dill)が採れます。茴香は、ウイキョウ(Foeniculum vulgare Miller)と読み、別名フェンネル(Fennel)の事で、どちらも香辛料です。

 この場合のハッカは、ペパーミント(胡椒薄荷)Mentha x piperita L. で、他にスペアミント(緑薄荷)Mentha spicata L. があります。日本のハッカは和種薄荷とも呼ばれ、万葉の時代には、めぐさ(目草)と言われていたようです。

☆  ☆  ☆

 《写真の背景》 少年野球をやっている河川敷を歩くと、その傍らから香りがしてきました。振り返ると、そこにハッカ(薄荷)が咲いていました。辺り一面に香りを振りまいているものの、野球関係の親御さん達は一向に興味を示す様子がありませんでした。

参考:マルバハッカ(丸葉薄荷) ヤマハッカ(山薄荷)

Japanese common name : hakka
e0038990_7565164.jpg
Mentha canadensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara


ハッカ(薄荷)
別名:ニホンハッカ(日本薄荷)
シソ科ハッカ属
学名:Mentha canadensis L. var. piperascens (Malinv. ex Holmes) H.Hara
花期:8月~10月 多年草 草丈:20~60cm 花径:2~5mm

e0038990_2163229.gif

【学名解説】
Mentha : Menthe(ギリシャ神話の女神の名)に因む/ハッカ属
canadensis : カナダの
L. : Carl von Linne (1707-1778)
var. : varietas(変種)
piperascens : コショウ(Piper)のような
Malinv. : Louis Jules Ernst Malinvaud (1836-1913)
ex : ~による
Holmes : Edward Morell Holmes (1843-1930)
H.Hara : 原 寛 Hiroshi Hara (1911-1986)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から5.75km 右岸河川敷 2005.09.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

27 September 2005, 03 February 2015
Last modified: 17 August 2016
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-27 00:00 | | Trackback | Comments(5)
オオブタクサ(大豚草)
 オオブタクサ(大豚草)は、キク科ブタクサ属の1年草です。オオブタクサは、ブタクサの大型版で、1952年に静岡県清水港で最初に発見された、北アメリカ原産の帰化植物です。現在は日本全土に分布します。生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。名の由来は、現地名hogweed(hog豚+weed雑草)の直訳から。詳細は不明で、豚しか食べない草との説があります。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。Asteraceaeは、aster(星)の意味。保留名のCompositae Giseke, 1792は、「合成された」との意味から。ブタクサ属(Ambrosia L. (1753))は、約25種あり、日本には帰化種のみで自生種はありません。

 草丈は100~300cmになります。葉は対生し、20~30cmの大形で、掌状に3~5裂して、鋸歯があります。ブタクサの葉は細かく切れ込んだ複葉で、ヨモギの葉に似ているのに対し、オオブタクサはクワに似ています。別名クワモドキ(桑擬き)の名はここから来ています。

 花期は8月~9月頃で、花径は3~4mmです。雌雄同株で、上部に雄花、下に雌花があります。舌状花や花弁はありません。果実は偽果です。突起が6個ある総苞に包まれ、中に長さ7mm程の1個の痩果があります。染色体数は、2n=24。

 風媒花であるので、ブタクサ同様、大量に花粉を飛ばす花粉アレルギーの原因植物です。花期には、キク科植物のアレルギー患者が増えます。その人達にとっては、ブタクサ・オオブタクサは目の敵となっている事でしょう。近くへ寄って葉の形状を確認するなど、とてもできない事かもしれません。また、名前を聞いただけで耐えられないという人がいるかもしれませんが、くれぐれも、セイタカアワダチソウ(背高泡立草)と間違えないようにして下さい。

Japanese common name : Oo-butakusa
e0038990_17135578.jpg
Ambrosia trifida L.

e0038990_1714846.jpge0038990_17141878.jpg
茎は分岐しながら3m程になり、上部に雄花、下に雌花をつける。葉腋に偽果をつける。

e0038990_17143010.jpge0038990_1714409.jpg
茎から枝分かれして葉腋部から花序を出す。葉は対生し掌状に3~5裂する。


オオブタクサ(大豚草)
別名:クワモドキ(桑擬き)
キク科ブタクサ属
学名:Ambrosia trifida L.
花期:8月~9月 1年草 草丈:100~300cm 花径:3~4mm

e0038990_1095350.gif

【学名解説】
Ambrosia : (神の食物)/ブタクサ属
trifida : trifidus(三中裂の)
L. : Carolus Linnaeus(1707-1778)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から0km 左岸河川敷 2005.09.14
安倍川/河口から6.5km 左岸河川敷 2015.10.06
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

26 September 2005, 7 October 2015
Last modified: 16 August 2016
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-26 00:00 | | Trackback | Comments(4)
ウスオエダシャク(薄尾枝尺)
 しばらくの間、名前が分からなかった蛾の一つです。全体の形状、色具合、模様から同定する事になります。それが名札代わりだからです。実は、思い起こしてみると、この蛾の写真を見た事があったのですが、気が付きませんでした。原因は、模様は個体によって変異があることでした。また、似ている蛾が数多く存在します。私の頭の中に無数の蛾が飛び交い、早く名前を判明させて追い出したいと知恵熱を出していました。

 植物の世界でも同様です。例えば、外来種のアメリカタカサブロウ(亜米利加高三郎)と在来種のタカサブロウ(高三郎)は見分けが困難で、結局の所、痩果に翼の部分がある無しの相違で区別します。あるのはタカサブロウ。セリとドクゼリは、大きくならないと見分けが困難です。その前の時期には根を掘って調べる必要があります。

 小さな蛾です。4本の横線があり、点模様が10程あります。形は整っていて、翅後部がフリルのようで可愛い感じもします。

Japanese common name : Usuo-edasyaku
e0038990_84876.jpg
Chiasmia hebesata (Walker, 1861)


ウスオエダシャク(薄尾枝尺)
チョウ目(鱗翅目)シャクガ科エダシャク亜科
学名:Chiasmia hebesata (Walker, 1861)

体長:(前翅長)12~13mm/(開張)21~23mm
分布:本州・四国・九州・沖縄
出現期:5月~9月
食草:マメ科(ヤマハギ、メドハギ、ヤハズソウ、マルバハギ)

e0038990_2163229.gif

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から8.5km 左岸河川敷 2005.08.31
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 25 September 2005
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-25 00:00 | | Trackback | Comments(2)
ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)
 ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)は、ヒユ科イノコズチ属の多年草です。中国、日本に分布します。日本では北海道の一部、本州、四国、九州に分布します。 「猪子槌」の名は、茎の節の膨らんだところが「猪の膝頭」に似ているという事なのですが、現代人にとって猪自体を詳しく観察した事は無いのではと思うと、理解しにくい名前かもしれません。別名の、フシダカ(節高)やコマノヒザ(駒の膝)も同じ所に着目した名前です。土突きの道具である胴突の一種、蛸胴突が語源ではないかとの説(垰田 2009)もあります。

 ヒユ科(Amaranthaceae Juss. 1789)は、世界に約70属800種程(APG分類体系では約163属1,800種)があり、日本には5属程があります。

 環境省自然環境局生物多様性センター「自然環境保全基礎調査」によると、静岡県の「ひっつき虫」は次の割合になっています(1996年)。コセンダングサ43%、ヒナタイノコズチ21%、オオオナモミ11%、その他25%。コセンダングサ(小栴檀草)には思い知らされているので納得ですが、ヒナタイノコズチが、これほどまでに多いとは知りませんでした。分布域は今まで知られていたよりも北進しているようです。

 やっかいな「ひっつき虫」ですが、逆手にとって子供は遊びに使います。漢方薬としても利用されます。乾燥根を生薬ゴシツ(牛膝)と言い、利尿、通経、強壮薬の「牛膝散」「牛車腎気丸」などの処方に配合されます。そのような活躍をされると、迷惑な害草だから無くなった方が良いという理屈は通りにくくなります。どんな人間も動物も草も、存在する事に意義があります。土中の細菌が無ければ植物は生きられませんし、植物がなければ動物は生きられません。一見不必要と思われたものの多くは、実は大切な働きをしているという場合が多いという事です。害草等も、心理学で言う「昇華」の如く、役立つ方向に変えられる事例は多いのだと思います。

 染色体数は、2n=42。

Japanese common name : Hinata-inokozuti
e0038990_863282.jpg
Achyranthes bidentata Blume var. fauriei (H.Lev. et Vaniot)

e0038990_871442.jpge0038990_872739.jpg
穂状花序に5花被の花をつける


ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)
別名:フシダカ(節高)/コマノヒザ(駒の膝)
ヒユ科イノコヅチ属
学名:Achyranthes bidentata Blume var. fauriei (H.Lev. et Vaniot)
synonym : Achyranthes bidentata Blume var. tomentosa (Honda) Hara
花期:8月~9月 多年草 草丈:50~100cm 花径:3~4mm

e0038990_2163229.gife0038990_21123919.gif


【学名解説】
Achyanthes : achyron(籾殻)+anthos(花)/イノコヅチ属
bidentata : bidentatus(二歯の)
var. : varietas(変種)
Blume : Carl Ludwig von Blume(1828~1851)
fauriei : Urbain Jean Faurie (1847-1915)の
H.Lev. : Augustin Abel Hector Leveille (1863-1918)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Vaniot : Eugene Vaniot ( -1913)
---
tomentosa : tomentosus(密に細綿毛のある)
Honda : 本田正次 Masaji Honda (1897-1984)
Hara : 原 松次 Hara Matuji (1917-1995)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から0.5km 左岸河川敷 2005.09.14 - 09.23
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

24 September 2005
Last modified: 17 January 2015
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-24 00:00 | | Trackback | Comments(4)
ナカグロクチバ(中黒朽葉)
 曇り空で野草撮影には困りものの暗さでした。虫ばかりが目立ちます。土手斜面で変な蛾を見つけたので追いかけて行きました。真っ先に思うのは、正三角形。そして、くっきりとした黒と白のライン。上から見る眼は昔の漫画のケムンパスみたいです。愛嬌のある眼をしているので、これは恐くなさそうだと思い撮影させて頂きました。

 でも、名前が分からないのです。日本で記録されている蛾の総数は5500種を超えるとの事。科を絞っても、なおかつ膨大な数。しかもよく似ています。中には不明種も多くあるようです。虫嫌いの私の頭の中に盛大に蛾が舞い踊り、疲れ果てました。ご教授願って判明しました。ナカグロクチバ(中黒朽葉)でした。同定者は、蛾LOVE氏、和田勉之氏。漢字表記すると、どうなるのでしょうね。「腹黒口先」は私の事。

 分布は本州までで、北限記録は群馬県との事。南方系の蛾なのですね。会えただけラッキーです。

Japanese common name : Nakaguro-kutiba
e0038990_822583.jpg
Grammodes geometrica (Fabricius, 1775)


ナカグロクチバ(中黒朽葉)
チョウ目(鱗翅目)ヤガ科シタバガ亜科
学名:Grammodes geometrica (Fabricius, 1775)

e0038990_2163229.gif

体長:(開張)41~44mm
分布:本州・四国・九州・沖縄
出現期:7月~8月/9月~10月
食草:タデ科・トウダイグサ科・ミソハギ科・ザクロ科

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から9.0km 左岸土手 2005.09.20
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 22 September 2005
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-22 00:00 | | Trackback(1) | Comments(2)
オオオナモミ(大葈耳/大雄生揉)
 昨年、子供達にオオオナモミ(大雄生揉)の実が欲しいと言われ、採取してきた事がありました。遊びに使うためです。ある子に、「大きな雄のナモミ」の意味だと説明したら、「では、メナモミ(雌生揉)もあるんだ」と賢い答えを返してきました。あるけど、あまり似ていません。生揉(なもみ)の意味は、葉を揉んで傷口に付けて痛みを和らげるために使ったことから、との説があります。オナモミよりも大きいからオオオナモミですが、圧倒的にオオオナモミの勢力が強いようです。

 なんと言っても、実に特徴があります。多分、俗称ひっつき虫の中では一番大きな種子かもしれません。実長径は20~25mm程。4~6mmの刺先端が鉤状に曲がり衣服に着くような形状で、このデザインはどうして生まれたのか不思議なほどです。マジックテープ考案の元にもなっています。雌雄同株。雌花は目立たない小さなものですから、ほとんどの場合、気付かずに終わってしまいます。染色体数は、2n=36。

 実を乾燥させたものは、蒼耳子(ソウジシ)として解熱・発汗・頭痛・神経痛に、茎と葉を乾燥させたものは、蒼耳(ソウジ)として湿疹・疥癬・虫刺されに利用されます。種子はリノール酸を60%~65%含み、中国では食用油の採取にも使われているそうです。

 北米原産の帰化植物で、岡山で1929年に発見され、その後勢力が広まりました。ただ、東北より以北は、まばらな分布です。簡単に駆除したい場合は、花期前の8月上旬頃までに茎を根本付近で切り落とすようにします。生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。日本の侵略的外来種ワースト100。英名はOriental cocklebur。

メナモミ(雌生揉)Siegesbeckia orientalis L. subsp. pubescens (Makino) Kitam.

Japanese common name : Oo-onamomi
e0038990_8292599.jpg
Xanthium orientale L. subsp. orientale

e0038990_11452772.jpge0038990_11454077.jpg
左:雄花と雌花 右:雄花

e0038990_11461781.jpge0038990_11462767.jpg
左:果苞は刺の先端が鉤状に曲がる。右:果苞には2つの胚珠が含まれる


オオオナモミ(大葈耳/大雄生揉)
キク科オナモミ属
学名:Xanthium orientale L. subsp. orientale
synonym : Xanthium occidentale Bertol.
synonym : Xanthium canadense auct. non Mill.
花期:8月~10月 1年草 草丈:50~200cm 雌花序:2~3cm 花径:5~10mm

e0038990_1095350.gife0038990_21123919.gif


【学名解説】
Xanthium : xanthos(黄)/オナモミ属
orientale : orientalis 東方の、(中近東)東部の
L. : Carl von Linne (1707-1778)
subsp. : subspecies(亜種)
---
occidentale : occidentalis(西方の、西部の)
Bertol. : Antonio Bertoloni (1775-1869)
---
canadense : canadensis(カナダの)
auct. : auctorum(著者らの)/auct.+non:誤って命名された名称
Mill. : Philip Miller (1691-1771)/英国の園芸家

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から0.5km 左岸河川敷 2005.09.14, 2006.10.12, 2006.10.21
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

21 September 2005
Last modified: 15 November 2016
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-21 00:00 | | Trackback | Comments(2)
アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)
 アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)は、キク科センダングサ属の1年草です。北アメリカ原産で、大正時代に日本に入ってきたと言われていて、非意図的移入とされています。現在は日本各地に分布します。名の由来は、センダン(栴檀)に葉の形状が似ていてアメリカ原産である事から。タウコギ(田五加木)よりも背が高いことから別名を、セイタカタウコギ(背高田五加木)。生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。

 荒地や畑地に自生します。草丈は、100~150cm。茎は4稜があり暗紫色。葉は対生します。小葉は3~8枚で、鋸歯があります。花期は9月から10月頃。黄色の頭状花を付けます。総苞片は6~12個で花冠より長く、コセンダングサとの明瞭な相違点となります。花径は、約7mm。筒状花と小さい舌状花からなります。両性花です。果実は痩果です。扁平で、2本の鉤状突起があります。染色体数は、2n=48。

 毎年お世話になる、俗称ひっつき虫は幾つかあります。初夏にヤブジラミ(藪虱)。小さな実がびっしりと取り付くと始末に負えません。秋になるとオオオナモミ(大雄生揉)。大きい実なので取り払うには楽ですが痛いです。ヒナタイノコズチ(日向猪の子槌)は小さい実です。アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)は薄いので剥がすのがやっかいです。そしてお馴染み、2本のトゲを持った細い実のセンダングサ。私の住んでいる近辺では、ほとんどがコセンダングサ(小栴檀草)で、アメリカセンダングサは珍しい方に入ります(2005年当時)。

 草藪に入らなければ別に被害に遭う事もないと思います。もし取り付かれたら、その場で払い落とすようにしています。拡散させないためです。また、この時期は実が付かないような素材の衣服を使用するようにしています。

※アメリカセンダングサの命名者は、中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)。
※セイタカウコギの命名者は、牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)。

Japanese common name : Amerika-sendan-gusa
e0038990_8385076.jpg
Bidens frondosa L.


アメリカセンダングサ(亜米利加栴檀草)
別名:セイタカタウコギ(背高田五加木)
キク科センダングサ属
学名:Bidens frondosa L.
花期:9月~10月 1年草 草丈:100~150cm 花径:7mm

e0038990_1095350.gife0038990_21123919.gif


【学名解説】
Bidens : bi(2)+dens(歯)/センダングサ属
frondosa : 葉面の広い
L. : Carl von Linne (1707-1778)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から9.75km右岸河川敷 2005.09.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 20 September 2005
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2005-09-20 00:00 | | Trackback | Comments(4)