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ハナイカダ(花筏)
 ハナイカダ(花筏)は、ハナイカダ科ハナイカダ属の落葉低木です。中国、朝鮮半島と日本に分布します。国内では、北海道南部から本州・四国・九州に自生します。名の由来は、花や実を乗せた葉を筏に見立てたもの。中国名は、青莢葉(せいきょうよう・qīngjiáyè)。英名は、Japan helwingia。

 APG植物分類体系では、ハナイカダ科(Helwingiaceae Decaisne, 1836)として独立させています。ハナイカダ科はハナイカダ属(Helwingia Willdenow, 1806)のみがあり、世界に4種、日本には1種が分布します。クロンキスト及びエングラー体系では、ミズキ科(Cornaceae Bercht. & J. Presl, 1825)で、北半球の温帯から熱帯に約14属100種が分布します。

 樹高1~3mになる雌雄異株の低木で、上部で分枝します。樹皮は緑褐色で滑らか。葉は互生します。長さ4~13cm、幅2~7cmの卵型あるいは広楕円形で、鋸歯があり鋭尖頭、葉表は緑色で光沢があります。葉裏は灰緑色で両面共に無毛。葉柄は長さ5~13mm、托葉は長さ4~6mmで繊維質。葉の中央あたりまで主脈が太く、その脈上に花をつけます。この奇異な形状は、花序の軸が葉の主脈部分に癒合している為と考えられています。

 花期は4月から6月頃。雄株には数個の雄花が付き、花の径は3~4mmで淡緑色。花弁は3から4枚。花柱は退化。雌株は1つの雌花を付けるのが普通で稀に2~3個付くことがあります。花の径は4~5mmで淡緑色。花弁は僅かに反り返り、三角卵形で3から4枚。花柱は3裂。子房下位。果実は液果です。7~11mmの偏球形で、初めは緑色、8月以降に熟して紫黒色となります。種子は1~4個あり、長さ5~7mmです。染色体数は、2n=114。

Japanese common name : Hana-ikada
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Helwingia japonica (Thunb.) F.Dietr.

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左:雌花 右:雄花

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左:雄花に小さな虫が媒介する 右:全体

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左:雌花拡大。花径は4~5mm 右:花後、花弁が脱落

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果実は液果 2014.06.09
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果実は紫黒色に熟す 2015.06.30


ハナイカダ(花筏)
ハナイカダ科ハナイカダ属 (APG植物分類体系)
学名:Helwingia japonica (Thunb.) F.Dietr.
花期:4月~6月 落葉低木 樹高:1~2m 花径:約4mm 果期:8~10月

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【学名解説】
Helwingia : Georg Andreas Helwing (1668-1748)の名に因む/ハナイカダ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
F.Dietr. : Friedrich Gottlieb Dietrich (1768-1850)
※japonicaは、ジャポニカではなくヤポニカと発音します。

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Sendai-yama Alt.226) 2007.04.26 - 2007.05.08
安倍城跡(Alt.435m) 2014.05.07, 2014.06.09, 2015.06.30
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

26 April 2007, 8 May 2007, 10 May 2014, 10 June 2014
Last modified: 16 July 2015
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by pianix | 2007-04-26 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ヒトリシズカ(一人静)
 ヒトリシズカ(一人静)は、センリョウ科チャラン属の多年草です。東アジアの温帯に分布し、国内では北海道から九州にかけて分布します。名の由来は、1本の花穂を磯禅師の娘で源義経の愛妾である静御前(Ca.1165-1211)が一人で舞う姿に見立てたもの。別名のヨシノシズカ(吉野静)は吉野山で舞う静御前の事で、マユハキソウ(眉掃草)は花穂の形状を白粉をつけたあとで眉を払う化粧道具のブラシに見立てたものです。中国名はギンセンソウ(銀線草、yín xiàn cǎo)。

 センリョウ科 (Chloranthaceae R.Br. ex Sims, 1820) は、熱帯地方を中心に5属約60種が分布します。日本には1属4種があります。花被が無い、雄しべ1~3個と雌しべ1個の花を付けます。チャラン属(Chloranthus Swartz)は、日本には3種1)があります。

 山地の林内に自生します。茎は直立して叢生し、高さ20~30cmになります。紫褐色で節があり、節に鱗片状の葉がつきます。葉は、茎の先端に対生し、4枚を輪生状につけます。この様に、葉の節間が短縮して輪生に見えるものを偽輪生(false verticillate)と言います。濃緑色で光沢があり、長さ6~10cmの楕円形から卵状楕円形で、先端は尖り、周囲には細かな鋸歯があります。

 花期は、4月から5月頃。茎頂に1個の穂状花序をつけます。花序の長さは1~3cm程度です。花は萼片や花弁は無く、雌しべと雄しべだけがあります。雌しべは短く柱頭は透明感があります。雄しべは長さ3~5mmで、雌しべの根元下方に付きます。白色の糸状で3分岐し、中央を除いた外側の雄しべ花糸(かし・filament)基部に黄色の葯(やく・anther)を1個ずつ計2個付けます。葯は、花粉をつくる袋状の器官です。花糸先端に付くものが多い中、本種は根元につきます。夏以降に、茎の節から細い花序を出し閉鎖花をつけます。果実は核果です。緑色の広倒卵形で長さは3mm程。染色体数は2n=30。

 類似種に、絶滅危惧II類(VU)に指定されているキビヒトリシズカ(吉備一人静)があります。花糸がヒトリシズカよりも長く、葯が花糸の基部中央に2個、両外側に1個ずつの計4個をつけます。

1)日本のチャラン属3種
キビヒトリシズカ(吉備一人静)Chloranthus fortunei (A.Gray) Solms
ヒトリシズカ(一人静)Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama
フタリシズカ
(二人静)Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult.

Japanese common name : Hitori-shizuka
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Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama

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左:輪生状に付く葉と穂状花序。 右:白い雄しべ花糸の基部に黄色の葯が付く

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左:葉には鋭い鋸歯がある 右:茎の節には鱗片状の葉が付く
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果実は核果


ヒトリシズカ(一人静)
別名:ヨシノシズカ(吉野静)/マユハキソウ(眉掃草)
センリョウ科チャラン属
学名:Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba et S.Akiyama
synonym : Chloranthus japonicus Siebold
花期:4月~5月 多年草 草丈:20~30cm 花穂長:1~3cm

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【学名解説】
Chloranthus : chloros(黄緑)+ anthos(花)/チャラン(茶蘭)属
quadrifolius : 四葉の
A.Gray : Asa Gray (1810-1888)
H.Ohba : 大場秀章 Hideaki Ohba (1943- )
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
S.Akiyama : 秋山 忍 Shinobu Akiyama (1957- )
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synonym : (シノニム) 同意語、異名
japonicus : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
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fortunei : Robert Fortune (1812-1880)の
Solms : Hermann Maximilian Carl Ludwig Friedrich zu Solms-Laubach (1842-1915)
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ca. : circa(約、およそ)

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Sendai-yama, Alt.226m) 2007.04.04 / 04.05 / 04.06 / 04.26
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

20 April 2007
Last modified: 15 July 2015 (Scientific name update)
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by pianix | 2007-04-20 00:00 | | Trackback | Comments(4)
スルガテンナンショウ(駿河天南星)
 スルガテンナンショウ(駿河天南星)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、日本原産の在来種です。国内分布は、中部地方の太平洋側山地で、東海地方特産です。マムシグサ(蝮草)の仲間で、ムロウテンナンショウ(室生天南星)の亜種です。名の由来は、旧国名の駿河(静岡県)で見出されたテンナンショウであることから。天南星1)は漢名で、白色星を意味し、白色の球茎を見立てたものと言われています。英名は、Jack in the pulpit。

 サトイモ科(Araceae Juss. 1789)は、115属2000種以上が熱帯を中心に分布します。テンナンショウ属(Arisaema C.F.P. von Martius, 1831)は、東アジア、東南アジア、北米、メキシコ、アフリカ東部などの熱帯や温帯に約150種、日本には約30種が分布します。テンナンショウ属は12節に分類されます(Murata 1992)。

 山の林内に生えます。地下部に球茎があります。茎は直立し、高さは最小で15cm、普通は50cm程です。細い茎の回りを、1~2枚の葉鞘からなる偽茎が取り巻いています。偽茎にはマムシ(蝮)のような紫褐色のまだら模様があります。筒状の苞葉頂部から葉と花序を展開します。葉は2個つき、小葉は鳥足状複葉2)です。葉に斑が入る場合もあります。

 花期は3月から4月頃。仏炎苞3)は淡緑色で白い筋が先端に向かって走り、前方に折れ曲がって舌状の舷部となり附属体を覆います。仏炎苞の内側には乳状突起があります。ホソバテンナンショウ(細葉天南星)に外観が似ています。それらの附属体は棍棒状あるいは棒状ですが、本種の附属体は先端が膨らみ前方に傾斜するのが大きく異なる部分です。附属体の下に附属体の柄があり、花は附属体の柄の下にあります。肉穂花序で、花軸に密着してつきます。

 雌雄異株で、環境によって性転換します。性は地下にある球茎の重さによって決まります。テンナンショウの場合、球茎が4g以下が無性、21gまでが雄、それ以上は雌。球茎にはシュウ酸カルシウムが含まれていて有毒です。雄花と雌花の花被はありません。虫媒花で、媒体の多くはハエ類です。仏炎苞の形状によって虫を内部に閉じ込め、受粉確率を高めていると考えられています。雄性の仏炎苞には下部に開口部があり脱出できますが、雌性の仏炎苞では閉じこめられます。秋に仏炎苞が枯れて、朱赤色の果実(液果)が現れます。

1)竜骨座(Carina)のα星・カノープス(Canopus)
2)鳥足状複葉=とりあしじょうふくよう(pedately compound leaf):葉身が2個以上に全裂した小葉があり、柄が鳥の足のように分かれている
3)仏炎苞(spathe):肉穂花序(花軸に密集してつく小花)を囲むように発達した苞葉。形状が仏像の光背の炎形に似るため。

参考:ウラシマソウ(浦島草)

Japanese common name : Suruga-ten'nansyou
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Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata

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左:(1) マムシ模様の偽茎が立ち上がる。 右:(2) 葉が開く前。
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▲上から見た鳥足状複葉

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左:附属体は先端が膨らみ傾斜する。 右:仏炎苞合わせ目の一部が開いている雄株。

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左:雌株   右:雄株
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斑が入る葉もある

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左:果実は液果の集合果2007.10.05 右:冬に赤く熟した果実が脱落 2006.11.28


スルガテンナンショウ(駿河天南星)
サトイモ科テンナンショウ属
学名:Arisaema yamatense (Nakai) Nakai subsp. sugimotoi (Nakai) H.Ohashi et J.Murata
花期:3月~4月 多年草 草丈:20~100cm 雌雄異株

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【学名解説】
Arisaema : Arum(植物名)の一種(aris)+haima(血)/テンナンショウ属
yamatense : ヤマトの
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)
subsp. : subspecies(亜種)
sugimotoi : 杉本順一 Junichi Sugimoto (1901-?) 杉本氏の
H.Ohashi : 大橋広好 Hiroyoshi Ohashi (1936- )
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&に同じ)
J.Murata : 邑田仁 Jin Murata (1952- )
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Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836)
C.F.P. von Martius : Carl (Karl) Friedrich Philipp von Martius (1794-1868)

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Sendai-Yama, Alt.226m) 2007.03.07
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

First draft: 4 April 2007
Last modified: 8 April 2014
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by pianix | 2007-04-04 00:00 | | Trackback(1) | Comments(2)