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シモバシラ(霜柱)
 シモバシラ(霜柱)は、シソ科シモバシラ属の多年草です。関東以西の本州から九州にかけて分布する日本固有種です。名の由来は、初冬に枯れた茎の根元から染み出た水分が凍り、氷柱ができるのを霜柱と見立てたもの。別名のユキヨセソウ(雪寄草)も同様に、氷柱を雪に見立てたものです。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。保留名である新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。シモバシラ属(Keiskea Miquel, 1865)は、1属2種で、中国に1種、日本にシモバシラの1種が分布します。

 山地の林下に自生します。茎はシソ科によく見られる4稜形(断面四角形)で、やや木質化し、上部で分枝して長さ40~90cmになります。葉は対生します。5~30mmの葉柄があり、長さ8~20cm、幅3~5.5cmの長楕円形で、先端は尖り、浅い鋸歯があります。表面の脈上には細毛があり、裏面には腺点があります。

 花期は9月から10月。上部の葉腋から総状花序を出します。花穂は長さ5~12cmで、一方向に偏って(偏側生)、短い柄の先に小花が横向きに多数付きます。萼片は長さ約3mmで5深裂し、果時には5~6mmになります。花冠は白色の唇形花で、長さ約7mm。上唇は浅く2裂し、下唇は3裂します。雄しべは長短2個ずつの4本で、先端が2裂した雌しべと共に花冠より突出します。子房は上位。果実は分離果(schizocarp)で1種子を含み、種子は1.5~2mmの球形です。染色体数は、2n=20。

 品種に、神奈川県に分布し花冠が薄紅色を帯びる、ウスベニシモバシラ(薄紅霜柱)Keiskea japonica Miq. f. rubra Kigawa があります。

 冷えた冬の朝に氷結現象を起こし、地表近くの枯れた茎に氷華を形成します。地上部のやや木質化した茎が枯れて残り、木部に二次的にできた水の通路(0.1~0.5mm)に毛細管現象で吸い上げられた水分が滲み出ます(犀川2007)。地表が急激に冷えると押し出してくる水で氷が鰭(うろこ)状にせり出し(前川1995)、氷の膨張によって表皮が破れます。幾つかの植物で同様の現象が起きます。シソ科ではヒキオコシセキヤノアキチョウジ、キク科ではカシワバハグマ、シロヨメナ等があります。

【参考文献】
SAIKAWA, M. : Secondary water path formation in frost column formation in the xylem of Keiskea japonica. Bull. Tokyo Gakugei Univ. Natur. Sci., 59: 55-59 (2007)
SAIKAWA, M. : Some new findings on frost column formation by Keiskea japonica. Bull. Tokyo Gakugei Univ. Natur. Sci., 58: 151-161 (2006)

Japanese common name : Shimo-bashira
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Keiskea japonica Miq.

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葉腋から総状花序を出し、花穂は長さ5~12cm 竜爪山2008.09.25 安倍城跡10.09

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花穂は一方向に偏って小花が横向きに多数付き、萼片は長さ約3mmで5裂する

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葉は対生し、長楕円形で先が尖る(千代山 2007.10.05)
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果実は分離果 2012.10.29



シモバシラの氷華

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左:表皮が破れて横に広がり、霜柱状になる 右:初期段階は氷柱となる

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竜爪山(Alt. 1051m) 2008.12.27


シモバシラ(霜柱)
別名:ユキヨセソウ(雪寄草)
シソ科シモバシラ属
学名:Keiskea japonica Miq.
花期:9月~10月 多年草 草丈:40~90cm 花冠長:約7mm

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【学名解説】
Keiskea : 伊藤圭介 Keisuke Ito (1803-1901)の名に因む/シモバシラ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
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rubra : 赤色の

※伊藤圭介:シーボルトに師事、1888年(明治21)に日本初の理学博士。日本における近代植物学の祖で、「泰西本草名疏(たいせいほんぞうめいそ)1828-29」、「日本産物誌1873年(明治6)」などの著作がある。彼の名が付く植物には、シモバシラの他に、アシタバ(Angelica keiskei (Miq.) Koidz)、イワチドリ(Amitostigma keiskei Miq.)、スズラン(Convallaria keiskei Miq.)等がある。

撮影地:静岡県静岡市
千代山(Alt. 226m) 2007.10.05
安倍城跡(Alt. 435m) 2008.09.27, 2008.10.09, 2012.10.29
竜爪山(Alt. 1051m) 2008.09.25, 2008.12.27
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

10 February 2011
Last modified: 20 December 2014
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by pianix | 2011-02-10 00:00 | | Trackback | Comments(2)