ナギナタコウジュ(薙刀香薷)
 ナギナタコウジュ(薙刀香薷)は、シソ科ナギナタコウジュ属の1年草です。日本、アジア温帯域に分布します。日本では、北海道から九州にかけて分布する在来種です。名の由来は、花穂(かすい)が薙刀状の香需である事から。薙刀は、長い柄の先に刀を付けた武具で、香薷は、香りが強く薬草となるもの全般を指します。中国名は、香薷(xiāng rú)。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。オドリコソウ属Lamiumに由来する名です。ナギナタコウジュ属(Elsholtzia Willdenow (1790))は、アジアに約35種が分布し、日本には2種が自生します。

 日当たりの良い山地に自生します。強い香りがあります。茎は四角柱状で毛が多くあり、分枝しながら長さ30~60cmになります。葉は、対生します。基部がくさび形の卵形から長卵形で長さ3~9cm、幅1~4cm。先が尖り、鋸歯があります。毛が散生し、葉裏に腺点があります。葉柄は有毛で約2cm。

 花期は9月から10月。茎頂や葉腋から長さ5~10cmの総状花序を出します。花は花穂の片側だけにつき、反対側は縁に短毛がある苞に覆われます。対になった苞から数個の花を出します。花は淡紫色の唇形花で、長さは約5mm。縁が裂けて毛状になります。雄しべ4個が突き出て、雌しべは内部にあります。萼は長さ約4mmで毛が密生し、先端は5裂します。苞と萼は花後も宿存します。果実は、分果1)です。倒卵形で4個あり、長さ約1~1.5mm。染色体数は、2n=32。

 全草を乾燥させたものを生薬の香薷(土香薷)として用います。基原は、海州香薷(hǎi zhōu xiāng rú)、和名ニシキコウジュ(錦香薷)Elsholtzia splendens Nakai ex F.Maek. で、日本ではナギナタコウジュが用いられます。口臭改善、利尿消腫、発汗、解熱(胃腸型感冒・急性胃腸炎)の効能があるとされます。使い方を誤ると嘔吐等の副作用が出ます。

 類似種として、花穂が太いフトボナギナタコウジュ(太穂薙刀香薷)Elsholtzia nipponica Ohwi [日本固有種]、白花の品種として、シロバナナギナタコウジュ(白花薙刀香薷)Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hyl. f. leucantha (Nakai) T.B.Lee ex W.T.Lee があります。香薷の名がつくものに、イヌコウジュ(犬香薷)ミゾコウジュ(溝香薷)があります。

1)分果:分離果。裂開果のひとつで、心皮数だけの複数分果ができる。1分果に1種子が含まれる。

Japanese common name : Naginata-kouju
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Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hyl.

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左:茎頂や葉腋から総状花序を出す。 右:花穂の背面は苞に覆われる。

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左:茎は毛がある。 右:葉は対生し、基部がくさび形の長卵形で鋸歯がある。


ナギナタコウジュ(薙刀香薷)
シソ科ナギナタコウジュ属
学名:Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hyl.
花期:9月~10月 1年草 草丈:30~60cm 花冠長:約5mm

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【学名解説】
Elsholtzia : Johann Siegesmund Elsholtz (1623~1688)に因む/ナギナタコウジュ属
ciliata : ciliatus(縁毛のある)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Hyl. : Hjalmar Hylander (1877-1965)

撮影地:静岡県静岡市
牛ヶ峰(Alt. 717m) 2008.10.27
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 09 February 2017
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# by pianix | 2017-02-09 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ゴマダラチョウ(胡麻斑蝶)
 ゴマダラチョウ(胡麻斑蝶)は、タテハチョウ科ゴマダラチョウ属の蝶です。東アジアに分布します。日本では、北海道の一部から九州までに分布します。名の由来は、黒色の翅に白紋が散在する胡麻状まだら模様の蝶である事から。胡麻斑の名が付くものに、昆虫ではゴマダラカミキリ(胡麻斑天牛)があり、同じ漢字でも読みが異なるゴマフアザラシ(胡麻斑海豹)があります。英名は、Siren Butterfly。ちなみに、Sirenはギリシャ神話の美声の魔女。

 タテハチョウ科(Nymphalidae Rafinesque, 1815)は南極を除く世界の大陸に約6,000種が分布し、日本には約52種が生息すると言われています。タテハチョウ科の特徴は、翅の斑紋が裏表で異なり、前脚が退化して短くなっている事です。後翅の中室は開き、触覚に鱗粉があります。ゴマダラチョウ属(Hestina Westwood, 1850)は、日本には本種とアカボシゴマダラ奄美大島亜種1)の2種があります。近年、人為的移入と考えられるアカボシゴマダラ原名亜種2)が拡大して、生態系被害防止外来種(緊急対策外来種)に指定されています。

 完全変態(卵・幼虫・蛹・成虫)をします。幼虫は頭部に一対の角を持ち、背中の突起は、2対3列あります。エノキ(榎)3)、寒冷地ではエゾエノキ(蝦夷榎)4)を食草とします。幼虫(4~5齢)で越冬します。越冬場所は、エノキの樹下で、枯れ葉の中です。時期が来ると樹を登って葉に取り付き、逆さにぶら下がる垂蛹型の蛹となり、羽化します。

 成虫は5月から8月頃に、雑木林の周辺に現れます。暖地では9月~10月にも現れる事があります。前翅長は、35~50mm、開張は60~85mm。翅は黒褐色の地に白斑と帯状の斑模様があります。退化した前肢、中肢、後肢の、それぞれ1対があります。クヌギ等の樹液や、腐果、獣糞を吸汁します。口吻は淡黄色。複眼は暗黄色で、瞳のような偽瞳孔があります。滑空するように飛翔します。エノキの葉に産卵します。

1)アカボシゴマダラ(赤星胡麻斑)奄美亜種
Hestina assimilis shirakii Shirozu, 1955 [準絶滅危惧(NT)]
2)アカボシゴマダラ(赤星胡麻斑)原名亜種
Hestina assimilis assimilis (Linnaeus, 1758) [生態系被害防止外来種(緊急対策外来種) 旧要注意外来生物]
3)エノキ(榎)Celtis sinensis Pers. [アサ科エノキ属]
4)エゾエノキ(蝦夷榎)Celtis jessoensis Koidz. [アサ科エノキ属]

参考:ヒカゲチョウ(日陰蝶)の給水

☆  ☆  ☆

 夏の盛り時期、キャンプ場にいました。付近を歩き回っていた時、何か変だと気付きました。トレッキングパンツに蝶が止まっているのです。例の如く、汗を吸いに来たのだと推測しました。気にしない事にして足早に歩きました。ところが、どんな動作をしても懸命にしがみついているようで、蝶は離れてくれません。蝶に好かれても嬉しくありません。付近にいる子供たちに引き渡そうかと思いましたが、蝶に何も興味がないようでした。何十分か経ったところで強引に引き剥がしました。何事もなかったかのように夏の空に飛び立って行きました。ここまで強引に張り付いていた蝶は初めてでしたので印象に残りました。

Japanese common name : Gomadara-tyou
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Hestina persimilis japonica (C.Felder et R.Felder, 1862)
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ズボンにしがみつくの、止めてくれない?
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汗を吸うのに忙しいようで、振り落とそうとしても離れてくれない
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葉の上で休憩 2007.09.27
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地表で給水 2009.07.22


ゴマダラチョウ(胡麻斑蝶)
チョウ目(鱗翅目)タテハチョウ科ゴマダラチョウ属
学名:Hestina persimilis japonica (C.Felder et R.Felder, 1862)
※日本本土亜種

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体長:(前翅長)35~50mm/(開張)60~85mm
出現期:5月~6月/7月~8月/(9月~10月)
分布:北海道・本州・四国・九州
食草:エノキ、エゾエノキ

【学名解説】
Hestia : ギリシア神話の炉の女神/ゴマダラチョウ属
persimilis : 非常に類似
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
C.Felder : Baron Cajetan von Felder (1814-1894)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
R.Felder : Rudolf Felder (1842-1871)

撮影地:静岡県静岡市
清水区西里 静岡市清水森林公園 黒川キャンプ場 2015.08.14
安倍川/河口から6.5km 河川敷 2007.09.27
賤機山 2009.07.22
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 26 January 2017
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# by pianix | 2017-01-26 00:00 | | Trackback | Comments(0)