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オオカナダモ(大カナダ藻)
 オオカナダモ(大カナダ藻)は、トチカガミ科オオカナダモ属の沈水性多年草です。南アメリカ(アルゼンチン)が原産です。世界の広くに移入分布します。日本では、大正中期に観賞、実験用途で移入され、1940年代(昭和)に野生化しました。生態系被害防止外来種の重点対策外来種に指定されています。日本では、本州から九州に帰化しています。名の由来は、カナダモ(カナダ藻)より大型である事から。中国名は、水蘊草(shuǐ yùn cǎo)。英名は、Brazilian elodea, Large-flowered Waterweed等。

 トチカガミ科(Hydrocharitaceae Juss. (1789))は、世界の熱帯から温帯にかけて18属約120種が分布します。日本には6属約10種程があります。オオカナダモ属(Egeria Planch. (1849))は、世界に2種が分布します。日本に自生種はありません。

 淡水性の沈水植物です。沈水植物とは、水生植物のひとつで、水中に生える植物の事です。全体が水中にあり、根は水底に固着します。流れが滞った池などに自生します。土中に根を張ります。茎の節部から白色の糸状の水根を出します。茎の太さは2~3mmで、草丈は約1m。葉は輪生します。輪生葉は4~5枚で、茎に密に付けます。鮮やかな緑色で、長さ1.5~3cm,幅3~6mm。広線形で鋸歯があり鋭頭。常緑。

 花期は、5月から10月頃。長さ3~5cmの花柄の先に雄花をつけます。萼片は3個あり淡緑色。花弁は3個で白色。倒広楕円形で、稜があり、長さ9~11mm、幅7~8mm。花径は約1.5cm。雄しべは9個。雌雄異株。日本では雄株のみが定着、殖芽,茎葉切片により栄養繁殖します。染色体数は、2n=46。

 日本の侵略的外来種ワースト100に指定されています。金魚藻としての水草、室内アクアリウムや、原形質流動1)の実験等で不要になったものは水辺へ破棄してはいけません。

 類似種として、コカナダモ(小カナダ藻)Elodea nuttallii (Planch.) H.St.John 、在来種のクロモ(黒藻)Hydrilla verticillata (L.f.) Royle 、外来種のクロモモドキ(黒藻擬)Lagarosiphon major (Ridl.) Moss があります。

1)原形質流動:細胞内部で原形質(細胞膜に包まれた核と細胞質)が流れるように動く現象。オオカナダモでは。葉の細胞が観察材料となる。

Japanese common name : Oo-kanada-mo
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Egeria densa Planch.

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雄花。花弁は白色で3個。雄しべ9個。

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花柄の先に雄花を出す。葉は4~5枚が輪生し茎に密に付ける。


オオカナダモ(大カナダ藻)
別名:アナカリス(Anacharis)*
トチカガミ科オオカナダモ属
学名:Egeria densa Planch.
synonym : Elodea densa (Planch.) Casp.
花期:5月~10月 草丈:約100cm 花径:約1.5cm

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【学名解説】
Egeria : ローマ神話の水の精霊/オオカナダモ属
densa : densus(密生する)
Planch. : Jules Emile Planchon (1823-1888)
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synonym : (シノニム)同物異名
*Anacharis : Anacharis L.C. Richard (1814) /旧属名
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Elodea : 湿地 (Elodea Michx. (1803))
Casp. : Johann Xaver Robert Caspary (1818-1887)
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nuttallii : Thomas Nuttall (1786-1859)に因む
H.St.John : Harold St. John (1892-1991)
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Hydrilla : ギリシャ神話の水に棲むヒドラ(Hydra)の縮小形/クロモ属
verticillata : verticillatus(輪生の)
L.f. : Carolus Linnaeus the Younger (1741-1783)
Royle : John Forbes Royle (1798-1858)
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Lagarosiphon : Lagaro(細い)+siphon(水管)/クロモモドキ属
major : 巨大な
Ridl. : Henry Nicholas Ridley (1855-1956)
Moss : Charles Edward Moss (1870-1930)


撮影地:静岡県静岡市
葵区千代(Sendai) 2007.06.20
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 18 July 2019
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# by pianix | 2019-07-31 00:00 | 水辺の植物 | Comments(0)
ハス(蓮)
 ハス(蓮)は、ハス科ハス属の多年草です。アジア(イラン、インド、中国、日本)やオーストラリアに分布します。インド原産と言われています。日本では全国に分布します。名の由来は、古名のハチス(蜂巣)からと言われています。中国名は、蓮(lián)。英名は、Indian lotus。

 ハス科(Nelumbonaceae A.Rich. (1827))は、1科1属です。ハス属(Nelumbo Adanson, 1763)は、アジア種のハス(蓮)Nelumbo nucifera Gaertn.とアメリカ種であるキバナハス(黄花蓮)Nelumbo lutea Willd.の2種が分布します。

 抽水植物です。水辺に生育する植物は水生植物(Aquatic Plant)と言われ、淡水域に生育する植物の総称です。水生維管束植物は世界に約1000種、日本に約100種あると言われています。
 抽水植物は、根が水底の土中にあり、一定期間、葉や茎の一部が水面に出る植物を言います。根が水に浸かった地に張り、茎や葉の一部が水上に出る植物の事です。当然ながら根は水没しているわけで、根に酸素を供給する必要があるため、茎には通気組織があります。水質の浄化機能、生物の繁殖・生育に役立つとされています。
 他に、葉を水面に浮かせる浮葉植物、水底に根を張らずに浮く浮漂植物、全てが水中にある沈水性植物があり、湿地や湿原に生育するものも含まれます。

 沼地で生育します。地下茎は太く長い多節の根茎で、レンコン(蓮根)として食用にします。根茎や茎には空気を通すための中空洞があります。葉柄を水面より上に出し、径25~90cm程の撥水性のある楯形葉 1)を単生させます。葉柄は葉の中央につき、葉脈を放射状に伸ばします。葉は微細な突起があり水を弾きます。

 花期は、7月から8月頃。花茎を50~100cmに伸ばし、茎頂に直径10~20cm程の花を1個つけます。萼片は2~5個。花弁は10~30個で舟形。花色は薄桃色。両性花です。花弁中央部に花托があり、黄色の雄しべを花托下の周囲に多数付けます。柱頭は黄色。朝開夕閉の傾光性2)があり、数日繰り返します。 染色体数は 、2n=16。ハスの花をレンゲ(蓮華)とも言います。

 花弁を落とした後に蜂の巣状の果托3)が残ります。果実は堅果です。始め緑色で茶色に熟します。熟すと果托は項垂れて種子を落します。種子は楕円形状。澱粉を多く含みます。種子や地下茎で繁殖します。乾燥果実を生薬のレンニク(蓮肉)として、鎮静、滋養強壮に用いられます。日本の侵略的外来種ワースト100に指定されています。

1) 楯形葉(じゅんけいよう):葉身の中央に葉柄がつく葉(peltate leaf)。
2) 傾光性(photonasty):光に対する植物の反応のひとつ。色素タンパク質であるフィトクロム(phytochrome)の関与が知られている。
3) 果托(かたく):花弁の土台になるのが花托(receptacle)で、種子の土台になるのが果托(fruit receptacle)。時期によって異なる名称になるが、花柄の先が肥大した植物の器官で同じ部分。

参考:オオガハス(大賀蓮)

Japanese common name : Hasu
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Nelumbo nucifera Gaertn.

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萼片は2~5個。花弁は10~30個で舟形。花色は薄桃色。

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黄色の雄しべを花托下部の周囲に多数付ける。

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花弁を落した後。果実は堅果。始めは緑色で、やがて種子が現れる。

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左:茶色に熟した果托。 右:撥水性のある楯形葉。


ハス(蓮)
ハス科ハス属
学名:Nelumbo nucifera Gaertn.
花期:7月~8月 多年草(水性) 草丈:50~100cm 花径:15~20cm

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【学名解説】
Nelumbo : ハスを意味するタミル語/ハス属
nucifera : nuciferum(堅果を持った)
Gaertn. : Joseph Gaertner (1732-1791)

撮影地:静岡県静岡市
麻機遊水地第1工区 2018.08.09, 2018.08.21, 2018.08.30
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 9 July 2019
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# by pianix | 2019-07-24 00:00 | 水辺の植物 | Comments(0)