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ケナフ(Kenaf)
 ケナフ(Kenaf)は、アオイ科フヨウ属の1年草です。アフリカ、あるいはインドが原産と言われていますが不明です。アジア、オーストラリア、北アメリカに移入分布します。日本には第二次世界大戦の頃に移入されたと言われています。製紙原料の繊維を取るために栽培されています。また、栽培逸出して野生化する事もありますが帰化状態ではありません。名の由来は、kenab(麻)から。中国名は、ヤンマ(洋麻)。

 アオイ科(Malvaceae Juss. (1789))は、熱帯から冷帯にかけて、250属(AGP)が分布します。クロンキスト体系(Cronquist system)では、約75属、約1500種でした。フヨウ属(Hibiscus L. (1753))は、約250種が分布します。

 栽培種です。播種後は、夏以降に急速に成長します。根はゴボウ状で真下に伸びます。茎は、円柱状で径1~5cm、まばらに棘があり、直立します。草丈は3~4mになります。葉は、互生します。葉柄は6~20cm。掌状深裂します。茎上部になるほど裂片数が増え、3、5、7深裂となり、茎頂付近では槍形となります。掌状裂片は長さ2~12cmの被針形で、鋸歯があります。

 花期は、10月から11月頃。早朝に花を横向きに開きます。一日花です。ごく短い花柄の先に花を単生させます。総苞片(萼状総苞)は7~10個あり、長さ6~8mm。萼は、鐘形で長さ約5cm、萼片は5裂し被針形で、先端は鋭突。花冠は5枚の花被片からなり、薄黄色。中心部は農赤色の楕円形で長さ約6cm。花径は8~15cm。両性花で虫媒花です。雄しべは筒状の単体雄蕊1)で、花糸の長さは1.5~2cm。花柱は5個で、柱頭先端は3裂します。

 果実は蒴果です。径約15mm~20mmで、先端がくちばし状になり棘を密生させます。5室があり、各室に3~5個の種子を含みます。種子は、アサガオの種子に似た茶色の腎臓形で、約5mm。染色体数は、2n=36。

 成長が早く栽培が容易ですが、風、農薬に弱い弱点があります。また、蜜線も多いので虫を呼び寄せやすいようです。葉の表と裏に気孔が多数ある事から、二酸化炭素、二酸化窒素の単位面積当たりの吸収率が高い事が知られています。若葉には、カルシウム、カロチン、鉄分が豊富です。茎から繊維、種子から乾性油が採取されます。繊維は、製紙原料として使われ、麻袋や網、炭等にも利用されます。畑地では連作障害に注意を要します。

※大麻取締法で栽培が規制されているアサ(麻)と間違えられやすい植物です。アサの茎は4稜があり、本種の丸形とは異なります。

1)単体雄蕊(たんたいゆうずい):雄しべが合着して筒状になるもの。monadelphous stamen。

Japanese common name : Kenafu
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Hibiscus cannabinus L.

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ケナフ(Kenaf)
アオイ科フヨウ属
学名:Hibiscus cannabinus L.
花期:10月~11月 1年草 草丈:3~5m 花径:8~15cm

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【学名解説】
Hibiscus : 由来不明、ゼニアオイ属の古名/フヨウ属(ヒビスクス属)
cannabinus : Cannabis(麻)+anus(ラテン語形容詞化)/麻のような
L. : Carl von Linne (1707-1778)

撮影地:静岡県静岡市
静岡県立大学薬用植物園 2006.10.19
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 20 December 2015
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by pianix | 2015-12-22 08:00 | 静岡県立大学薬用植物園 | Trackback | Comments(0)
トロロアオイ(土呂呂葵、黄蜀葵)
 トロロアオイ(土呂呂葵、黄蜀葵)は、アオイ科トロロアオイ属の1年草です。中国原産で、栽培や園芸用途として用いられています。江戸時代までには渡来していたと言われています。名の由来は、根や果実が粘液質であるトロロに似たアオイである事から。別名のハナオクラは、花がオクラ(Okra) 1) に似る事から。黄蜀葵は中国名で、オウショクキ。英名は、Aibika。

 アオイ科(Malvaceae Juss. (1789))は、熱帯から冷帯にかけて、250属(AGP)が分布します。クロンキスト体系(Cronquist system)では、約75属でした。トロロアオイ属(Abelmoschus Medik. (1787))は、アジアやオーストラリアに約15種が分布します。旧分類では、フヨウ属(Hibiscus L. (1753))でした。

 根茎は紡錘形に肥大し、長さ約20cm。草丈は30~200cmで、茎に剛毛があり直立します。葉は、互生します。長い柄があり、掌状に5~9深裂します。花期は、8~9月頃。茎頂に淡黄色の5弁花を横向きにつけます。花径は15~20cm。花冠中央部は紅紫色。柱頭先端は紅紫色で5裂します。茎の下部から上へと順に開花します。一日花で、朝開き、夜には落下します。果実は、蒴果です。楕円形で5稜に尖り、剛毛があり、茶色に熟します。種子は、長さ4.5~5mm、幅3~3.5mm。染色体数は、2n=68(桑田晃 1960)。

 花弁をサラダにして食べる事もありますが、果実は食用に用いられません。根から抽出される粘液を和紙を漉く糊料のネリ(糊)として用います。成分は、ガラクツロン酸2)です。コウゾ(楮)の表皮から内側白色部分だけを取り出し粉砕した繊維と混ぜ合わせて和紙を漉きます。漉いた和紙を板で天日干しするか熱した鉄板で乾かします。その為、接した部分は平滑になるので和紙には裏表があります。手間暇かけた高級和紙のできあがりです。

 現在は化学薬品のポリアクリルアミド(polyacrylamide)を用いる場合が多くなりました。栽培最盛期は、昭和40年の1,600haでしたが、現在は5ha程に激減しています。乾燥根を生薬の黄蜀葵根(オウショクキコン)として、咳止めや胃腸薬に用います。

 他に、沖縄諸島に分布する、リュウキュウトロロアオイ(琉球土呂呂葵)Abelmoschus moschatus Medik.、変種として尖閣諸島固有種で、絶滅危惧ⅠA類(CR)の、センカクトロロアオイ(尖閣土呂呂葵)Abelmoschus moschatus Medik. var. betulifolius (Mast.) Hochr. があります。

1) Abelmoschus esculentus (L.) Moench
2) ガラクツロン酸(galacturonic acid, C6H10O7)

Japanese common name : Tororo-aoi
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Abelmoschus manihot (L.) Medik
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花径は15~20cm。花冠中央部は紅紫色。柱頭先端は紅紫色で5裂する。

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左:萼片5、下から咲く一日花。 右:長い柄があり、掌状に5~9深裂する


トロロアオイ(黄蜀葵)
別名:ハナオクラ
アオイ科トロロアオイ属
学名:Abelmoschus manihot (L.) Medik
花期:8~9月 1年草 草丈:30~200cm 花径:15~20cm 果期:10月

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【学名解説】
Abelmoschus : abul-mosk(香りの父)/トロロアオイ属
manihot : イモノキ(芋の木)、キャッサバ、タピオカ/ブラジル名maniocに由来
L. : Carl von Linne (1707-1778)
Medik. : Friedrich Kasimir Medicus (1736-1808)
---
moschatus : 麝香の香りのする
---
var. : varietas(変種)
betulifolius : カバノキ属(Betula)のような葉(folium)の
Mast. : Maxwell Tylden Masters (1833-1907)
Hochr. : Benedict Pierre Georges Hochreutiner (1873-1959)
---
esculentus : 食用の
Moench : Conrad Moench (1744-1805)

撮影地:静岡県藤枝市
石谷山(びく石) Alt.526m/笹川八十八石コース 2010.08.10, 2012.09.02
[Location : Fujieda City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 15 December 2015
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by pianix | 2015-12-15 08:00 | | Trackback | Comments(0)
キバナハナネコノメ(黄花花猫の目)
 キバナハナネコノメ(黄花花猫の目)は、ユキノシタ科ネコノメソウ属の多年草です。シロバナネコノメソウ(白花猫の目草)を母種とする変種で、東海地方(静岡県、愛知県、岐阜県)、長野県に分布する日本固有種です。静岡県と岐阜県では準絶滅危惧(NT)、愛知県では絶滅危惧Ⅱ類(VU)、長野県では絶滅危惧IA類(CR)。名の由来は、花弁状の萼片が黄色いネコノメソウであることから。ネコノメソウは、果実が熟して割れた形状を猫の瞳孔に例えたもの、あるいは漢名の猫児目晴草から。

 ユキノシタ科(Saxifragaceae Juss. (1789))は、温帯から寒帯にかけて約17属500種があります。以前は約80属1200種が属する大きな科でしたが、近年に幾つかの科が分離され減少しました。ネコノメソウ属(Chrysosplenium L. (1753))は、世界に約55種、日本に14種が分布します。葉が対生するネコノメソウ節と、互生するヤマネコノメソウ節の2節に分類されます。キバナハナネコノメは、葉が対生するネコノメソウ節です。

 山地の谷や渓流沿いに自生します。草丈は5~10cm。茎は紅紫色を帯び、白色の軟毛があります。。花後に走出枝(runner)を伸します。葉は対生します。根出葉は1~2対を対生させ、花期に枯れます。茎葉は短い柄があり、長さ2~8mm、幅3~9mmの扇形単葉で、丸い鋸歯が3~5個あります。

 花期は4月から5月頃。黄色の4裂した広卵形の萼片が花弁状になり半開します。花径は、4~8mm。雄しべは8個。葯は黄色や橙赤色で、萼片から突出します。花柱の先端はくちばし状。子房上位。果実は蒴果です。

 シロバナネコノメソウ(白花猫の目草)Chrysosplenium album Maxim. var. albumを母種とする変種は次の3種があります。
ハナネコノメ(花猫の目)Chrysosplenium album Maxim. var. stamineum (Franch.) H.Hara
・キイハナネコノメ(紀伊花猫の目)Chrysosplenium album Maxim. var. nachiense H.Hara
・キバナハナネコノメ(黄花花猫の目)Chrysosplenium album Maxim. var. flavum H.Hara

※参考:レッドデーターブック・カテゴリー(分野図)

Japanese common name : Kibana-hana-mekonome
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Chrysosplenium album Maxim. var. flavum H.Hara


キバナハナネコノメ(黄花花猫の目)
ユキノシタ科ネコノメソウ属
学名:Chrysosplenium album Maxim. var. flavum H.Hara
花期:4月~5月 多年草 草丈:5~10cm 花径:4~8mm

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【学名解説】
Chrysosplenium : chrysos(金の)+spleen(脾臓)/ネコノメソウ属
album : albus(白色の)
Maxim. : Carl Maximowicz (1827-1891)
var. : varietas(変種)
flavum : flavus(黄色、山吹色、黄金色の)
H.Hara : 原寛 Hiroshi Hara (1911-1986)

撮影地:静岡県静岡市
貴重種位置情報非公開 2009.03.05
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 18 August 2014
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by pianix | 2014-08-18 00:00 | | Trackback | Comments(0)
バショウ(芭蕉)
 バショウ(芭蕉)は、バショウ科バショウ属の多年草です。温帯地域を中心に自生分布しています。中国経由で日本に入ってきたと考えられていて、日本では、本州中部以南、四国、九州で観賞用として露地栽培されています。名の由来は、詳細不明です。中国でバナナを芭蕉と当て字し、日本では漢名を音読みしたもの。漢名の一説に、芭は葉の形状が腹ばいに横たわっている状態を表し、蕉は焦がすの意味で黒色を表しているとされています。語源として南方系の言語からとの説もあります。英名は、Japanese Fiber banana、Hardy banana。

 バショウ科(Musaceae Juss. (1789))は、熱帯を中心に3属約50種が分布します。バショウ属(Musa L. (1753))は、約40~50種が分布します。

 澱粉を含む塊状で宿根性の塊茎(Rhizome)があり、新しい塊茎を側生して繁殖します。茎は葉鞘(Sheath)が発達した偽茎(Pseudostem)で、径約20~25cm。中心部に花茎があり径約4cm、高さ2~5m程になります。偽茎から繊維を取り出し、芭蕉布(ばしょうふ/バシャギン)が作られます。

 長さ1~3m、幅30~80cm程になる広楕円形の葉を互生してつけます。葉柄は30cm程、葉先は鈍頭です。主脈がU字形に深く湾曲して溝となり、裏面へと隆起します。強風にあおられると支脈に沿って裂けますが、風の抵抗を減らす為と考えられています。冬季に枯れ、3月後半頃から新葉を展開します。円筒形に巻いた葉を直立させた後、ほぐしながら左右に広げます。枯れると黒褐色となります。乾燥させた葉を、生薬「芭蕉」として用います。

 花期は7~9月頃。葉心から果軸(Peduncle)を伸ばして下垂し、黄緑色の苞(Bract)をつけます。黄色で卵状形の苞を次々に開き、果軸の先に花穂を出して薄黄色で唇形の花冠をつけます。雌雄異花で雌性先熟(Protogyny)。自家受粉を避ける為、初めに雌花をつけ、時期を遅らせてから、雄花をつけます。

 雌花花序は螺旋状につく果房(Cluster)の先端に出します。多くは不稔性で偽果ですが、希に結実して長さ6cm程の四稜があるバナナ状の果実を付けます。果実は液果(漿果)。種子は暗褐色。

 果軸先端で苞を開き、雄花花序を段状に出します。花は筒状唇状で、雄しべは長さ約5cm。苞は径約8cm。染色体数は、2n=22(x=11)。

◆ ◆ ◆

 安倍城跡(Alt.435.2m)の西ヶ谷登り口付近に、何本かのバショウが植えられています。訪れた人はバナナだと思って実をつけるのを楽しみにしているようです。多分、実が成ったらよじ登って食べる気でいるからなのでしょう。ところが、いつの時期も実ったバナナを目にする事はありません。たまに実を付けても大変小さく、いつ大きくなるだろうと思って待っていても、そのままで終わってしまいます。このバナナは実を付けない駄目なバナナだと、ののしられる結果となります。・・・だから、バナナ(実芭蕉)ではないって。大変可哀想なバショウです。

参考:ミズバショウ(水芭蕉) 芭蕉の名が付けられているが異なる科属

Japanese common name : Bashou
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Musa basjoo Siebold ex Iinuma
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台風15号通過後 2011.09.23
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台風によって痛んだ葉 2011.09.23
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苞 2012.05.16

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左:2012.02.28 黒化した果実 2012.06.08 新しい果実

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左:2008.07.11 《先端の苞が開いて雄花が出てくる》 右:2012.09.20
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雄花 2012.09.13

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円筒形に巻いた状態で新しい葉が出てくる。 2012.06.24

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左:2012.09.13  《葉は互生する》  右:2012.09.20

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左:葉表          右:葉裏
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葉の主脈が裏面にU字形に隆起し、羽状の支脈が平行に並ぶ。 2012.12.27



 ある秋の日、このバショウのほとんどが切り倒されました。70歳代の地主に話を伺うと、このバショウは先代からあったようです。偽茎に鋸を半分ほど入れれば簡単に倒す事ができ、またすぐに生えてくると話してくれました。巨大な「草」が伸びてくるのを心待ちにしました。
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伐採後の切り株 2012.12.27

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左:偽茎切り株、中心部に花茎 2013.01.05   右:葉柄の断面2012.12.27
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【成長の過程】切口から花茎が伸びてきた 2013.03.21
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【成長の過程】葉を展開して大きくなった。2013.06.04


バショウ(芭蕉)
バショウ科バショウ属
学名:Musa basjoo Siebold ex Iinuma
花期:7~9月 草丈:4~5m 多年草 雄しべ長:約5cm

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【学名解説】
Musa : バナナのアラビア名(mawza)/ローマのアウグスト大帝の侍医Antonio Musaに因む/バショウ属
basjoo : バショウ
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
ex : ~による
Iinuma : 飯沼慾斎 Yokusai Iinuma (1782-1865)
---
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848)

撮影地:静岡県静岡市葵区
安倍城跡(Alt.435m) 2008.07.11 - 2013.06.04
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 30 March 2013
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by pianix | 2013-03-30 00:00 | | Trackback | Comments(2)
ミヤマキケマン(深山黄華鬘)
 ミヤマキケマン(深山黄華鬘)は、ケシ科キケマン属の越年草です。本州(近畿地方以東)に分布する在来種です。名の由来は、フウロケマン(風露華鬘)1)の変種で、山に生えるキケマン(黄華鬘)2)であることから。華鬘は、仏教で使われる透かし彫りの飾り。

 APG体系、新エングラー体系ではケシ科(Papaveraceae Adans., 1763)に分類されます。北半球に43種820種が分布します。日本には7種20種、日本固有種は1属4種3変種があるとされています。クロンキスト体系では、ケマンソウ科(Fumariaceae A.P. de Candolle, 1821)に分類され、世界に約16属450種が分布します。キケマン属(Corydalis A.P. de Candolle, in Lamarck & A.P. de Candolle, 1805)は、世界に約200種、日本では約20種が分布します。

 山地の林縁に自生します。茎は叢生し、斜上させて草丈20~45cmになります。褐色で無毛、軟弱で多汁質。折ると汁を出し、悪臭を放ちます。葉は、互生します。1~2回羽状複葉3)で、小葉は羽状に深く裂けます。ただし、発芽時の葉は切れ込みが深くはなく、褐色を帯びる事があります。

 花期は4月から6月。茎の先に、長さ4~10cmの総状花序を出します。花序に8~30個ほどの花を付けます。花柄は長さ5~12mm。苞は広披針形。萼片は2個で小さい。花は、花弁4の筒状で黄色、長さ20~23mm。先端が唇状、後部に緩やかに屈曲した距があります。母種であるフウロケマンの距は長くて大きく屈曲します。花弁は外側に2個、内側に2個あります。外側花弁は上下にあり(上下弁)、花弁先端は緑色で、やがて褐色を帯びて反り返ります。内側花弁は側面にあり(側弁)、先端で外側花弁から出て合着します。両性花です。雄しべ2本で、平形の花糸先端が3裂して1本につき3個の葯をつけます。虫媒花です。

 果実は蒴果です。弓なりになった線形で、長さ2~3cmの波打った数珠状。熟すと二裂して10前後の種子を出します。種子は1.5~1.7mmで小突起が多数あり、黒色。エライオソーム(Elaiosome)が付着していて、蟻によって運ばれます。

 全草にアルカロイド4)を含む毒草です。主成分はプロトピン5)で、誤食によって、嘔吐、麻痺が起こります。食べてはいけません。また、茎を折ったりした時に悪臭がしますが、これを吸い込むと人によっては気持ちが悪くなったりします。臭いを強く吸い込んではいけません。

★  ★  ★

 花の観察のために再訪すると跡形もなく消えているという事が時たまあります。里山では、キンラン(金襴)やササユリ(笹百合)がそれでした。ササユリの場合、翌年に見に行くと1本もありませんでした。それでも山頂に数本あり、誰かが添え木までしてくれてあったので楽しみは残りました。やがてつぼみを持ち開花という時期、山頂へあがって驚きました。掘り返した跡があり一つ残らず消えていました。よくよく見ると、イノシシが荒らし回ったようでした。これにはがっかりしました。

 そして今年、ミヤマキケマンを撮り直そうと出かけたら、これも消えていました。一瞬、時期を間違えたかと思いました。登り口付近にたくさんあったのに、今は草ぼうぼうとして以前と比べて荒れ果てています。おかしいと思い、しばらく登って行きましたが見つからず、雨が降りそうな天候だったので、あきらめて下りました。小川を隔ててカモシカが、じっと動かずこちらを伺っていました。付近の山肌では伐採工事が行われて雰囲気が変わっていました。

 いつも咲く花が今年も咲くという保証はありません。山の道でさえ、倒木1本で道筋が変わり、崩落して廃道となります。それでなくても人が入らなくなった山道は消えてしまいます。それを復活させるには並々ならぬ努力が必要となります。話を生物に戻せば、ありふれた人なつこいアホウドリしかり、トキしかり。例え人為的でなくても自然界は流動していることを実感させられました。失って初めて大切さが分かるものです。

 ※ササユリは、少し離れた場所で咲きました。2012.06.13に確認、翌日、蕾を持つものも見つかりました。「お前達、よく生きていたな」と思いながら撮影しました。何となく、「山に生きる私たちは、そんなにヤワじゃないわ」と聞こえてくるようでした。

1)フウロケマン(風露華鬘):Corydalis pallida (Thunb.) Pers. var. pallida
2)キケマン(黄華鬘):Corydalis heterocarpa Siebold et Zucc. var. japonica (Franch. et Sav.) Ohwi
3)羽状複葉(うじょうふくよう):葉の軸から小葉が左右に鳥の羽のように並ぶ葉の形態。pinnate compound leaf。二回羽状複葉は、再複葉(decompound leaf)のひとつで、羽状複葉の小葉が羽状になっているもの。bipinnate compound leaf。
4)アルカロイド(alkaloid):窒素原子を分子内に含む塩基性成分の総称。植物毒のひとつで、薬用として用いられるものもある。
5)プロトピン(protopine):C20H19NO5
 ミヤマキケマンの成分:protopine, capauridine, capaurimine, capaurine, l-tetrahydropalmatine(以上、フウロケマンと同じ), sanguinarine (金子・成戸 1970) 。

Japanese common name : Miyama-ki-keman
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Corydalis pallida (Thunb.) Pers. var. tenuis Yatabe
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先端が唇状、後部に緩やかに屈曲した距がある黄色花

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咲き始めは上向きに花を密集させる。

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褐色で無毛、軟弱で多汁質の茎。茎先に総状花序をつける。

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左:葉は、1~2回羽状複葉で、小葉は羽状に深く裂ける。 右:茎は叢生する。


ミヤマキケマン(深山黄華鬘)
ケシ科キケマン属
学名:Corydalis pallida (Thunb.) Pers. var. tenuis Yatabe
花期:4月~6月 越年草 草丈:20~45cm 花冠長:20~23mm 花序長:4~10cm

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【学名解説】
Corydalis : Korydallis(雲雀)/キケマン属
pallida : pallidus(淡白色の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Pers. : Christiaan Hendrik Persoon (1761-1836)
var. : varietas(変種)
tenuis : 軟質の
Yatabe : 矢田部良吉 Ryokichi Yatabe (1851-1899)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.716.9m) 2008.03.29
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 22 June 2012
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by pianix | 2012-06-16 00:00 | | Trackback | Comments(6)
キバナアキギリ(黄花秋桐)
 キバナアキギリ(黄花秋桐)は、シソ科アキギリ属の多年草です。本州・四国・九州に分布する在来種です。名の由来は、花色が黄色で、秋に咲き、葉がキリ(桐)に似る事から。別名のコトジソウ(琴柱草)は、葉の形状を琴柱(和琴や箏の楽器で弦を支え音高を調節するもの)に例えたもの。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。新エングラー体系でのシソ科の学名Labiataeは、Labea(唇)に基づいた名称で、戦前は唇形科とされていました。英名ではMint familyと言われるように、香気を持つものが多くあります。アキギリ属(Salvia C. Linnaeus, 1753)は熱帯から温帯にかけて分布し500~900種以上があると言われ、日本には10種程が自生します。

 山地の林縁に自生します。茎は、シソ科植物によく見られる四角形で、分岐せずに立ち上がり、草丈20~40cmになります。葉は対生します。長さ5~10cm、幅4~7cmの三角状鉾形で基部が張り出します。両面に毛があります。

 花期は8月から10月。茎頂に薄黄色の唇形花を穂状につけます。唇形花とは筒状の合弁花で、先端が唇のように上下に分かれるものを言います。花冠は長さ2.5~3.5cm。上唇は筒部から真っ直ぐに立ち上がり、下唇は先が3裂して丸みを帯び、下垂します。花冠は大きく「く」の字形に開きます。

 虫媒花です。上唇に雄しべが隠れていて、基部に退化した暗紫色の雄しべが繋がっています。退化雄しべに虫が乗ると上にある雄しべが出てきて花粉をスタンプします。葯は2個。雌しべは暗紫色で、上唇から長く突きだし、柱頭は2裂します。萼は2裂して長さ約8mm。マルハナバチ等が媒介します。果実は4分果で、長さ約2.5mm。

 変種として、長野県の木曽地方から岐阜県付近に分布する、キソキバナアキギリ(木曽黄花秋桐)Salvia nipponica Miq. var. kisoensis K.Imai 、紫色がまだらになった花冠の、シボリミヤマアキギリ(絞り深山秋桐)Salvia glabrescens (Franch. et Sav.) Makino var. purpureomaculata (Makino) K.Inoue があります。交雑種として、キバナアキギリとシナノアキギリの交雑である、サクキバナアキギリ(佐久黄花秋桐)Salvia x sakuensis Naruh. et Hihara があります。

 よく似た学名で日本産のサルビアとされるものに、アキノタムラソウ(秋の田村草)Salvia japonica Thunb.があります。

Japanese common name : kibana-akigiri
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Salvia nipponica Miq.
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茎頂に薄黄色の唇形花を穂状につける。

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暗紫色の退化雄しべの上に雄しべ。雌しべは上唇から長く突き出し、柱頭は2裂する。

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葉は対生し、三角状鉾形で基部が張り出す。


キバナアキギリ(黄花秋桐)
別名:コトジソウ(琴柱草)
シソ科アキギリ属
学名:Salvia nipponica Miq.
花期:8~10月 多年草 草丈:20~40cm 花冠長:25~35mm

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【学名解説】
Salvia : sage(セージ)の古名|salvare(治療)・salveo(健康)/アキギリ属
nipponica : nipponicus(日本本州の)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)

撮影地:静岡県静岡市
竜爪山(Alt.1051m) 2008.09.25
高山(牛ヶ峰 Alt. 716.7m) 2015.09.21
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

3 October 2010, 22 September 2015
Last modified: 2 July 2016
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by pianix | 2010-10-03 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ヤセウツボ(痩靫)
 ヤセウツボ(痩靫)は、ハマウツボ科ハマウツボ属の1年草で、寄生植物です。地中海沿岸が原産と言われていて、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南北アメリカ等の寒帯から熱帯にかけて分布します。日本では、1937年に千葉県で発見されてから本州、四国に広がり、帰化しています。牧草に混入した非意図的移入と考えられています。外来生物法で「多様な植物に寄生するので、在来種や牧草の生育を抑制するおそれがある」との理由から生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。名の由来は、ハマウツボ(浜靫)よりも花序が細く痩せている様に見える事から(Kitamura,1937)。靫は、矢を入れる容器。英名は、Common broomrape、あるいはClover broomrape。

 ハマウツボ科(Orobanchaceae Ventenat 1799)は、アジアとヨーロッパの温帯地方に、クロンキスト体系では約15属180種、APG植物分類体系では約87属1680種が分布します。ハマウツボ属(Orobanche L. 1753)は、日本では2種が自生します。

 光合成機能を欠いた全寄生植物 (holoparasitic plant)です。マメ科、キク科、セリ科、フウロソウ科、ナス科植物に寄生し、寄生根によって宿主の根から養分を吸収します。根茎は径28mm内外で、寄生根は径2mm程。茎は茶褐色で径3~9mm程。腺毛が密生し、分枝せずに直立して、草丈15~45cmになります。葉は退化した鱗片葉で、互生します。長さは約20mmで、披針形、先は尖り、斜め上向きにつきます。

 花期は5月から6月頃で、野原や道端などに自生します。茎の上部に、下部から順に唇形花を穂状につけます。萼片は先端が尖ります。花冠は上下に2裂し、淡黄色で紫色の筋や斑点があり、腺毛が密生します。花冠長は約16mm、花冠径は12~15mm。両性花です。雌しべ柱頭は赤紫色で、先端で二裂し中央がへこんだ半球状となり、雄しべは長短2本ずつ計4本があり葯は黒色。子房上位で、長さ約11mm、幅約3.5~4mmの紡錘状。果実は蒴果です。染色体数は、2n=38。種子は微小で長さ0.3mm程。風雨、動物によって散布されます。宿主からの発芽可能範囲は5mm程で、それに満たない場合は長期間休眠します。湿地及び肥沃な畑地での生育は良くないとの報告があります。

 よく似た花に、同属で花が薄紫色のハマウツボ(浜靫)Orobanche coerulescens Stephan ex Willd.、ヤセウツボの変種で色素が抜けたアルビノ個体のキバナヤセウツボ(黄花痩靫)Orobanche minor J.E. Smith var. flava Regelがあります。

 [1] 静岡市の安倍川流域土手8km左岸周辺では、2009年に初めて確認しました。土手側面などに広範囲に点在し、主にノアザミ(野薊)に寄生していました。今後は急速に勢力を拡大するものと思われます。
 [2] 2010年5月、勢力の拡大を確認しました。
 [3] 2016年、賤機山、池ヶ谷農道脇で群生を確認しました。里山にも上がってしまっています。

Japanese common name : yase-utubo
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Orobanche minor J.E. Smith
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先端で二裂し半球状になった赤紫色の雌しべ柱頭。
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花冠の長さは約16mm。花冠横の萼片は上向きに反り上がる。

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左:若い花冠の側面 右:褐色の腺毛が密生した茎の下部に鱗片葉が互生する。

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左:小さな個体 右:根茎
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花冠。赤紫色の雌しべ柱頭の奥側に見える黒色は雄しべの葯。(罫線の間隔は5mm)
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ノアザミに寄生している。

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左:花冠は淡黄色で紫色の筋や斑点があり、腺毛が密生する。右:子房。



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2010.05.17


ヤセウツボ(痩靫)
ハマウツボ科ハマウツボ属
学名:Orobanche minor J.E. Smith
花期:5~6月 1年草(寄生) 草丈:15~45cm 花冠径:12~15mm

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【学名解説】
Orobanche : orobos(マメの一種)+anchein(絞め殺す)/ハマウツボ属
minor : minus(より小さい)
J.E. Smith : James Edward Smith (1759-1828)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から8.5km 左岸 2009.05.01-05.12 / 2010.05.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 22 June 2010
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by pianix | 2009-08-08 00:00 | | Trackback | Comments(2)
チャボホトトギス(矮鶏杜鵑草)
 チャボホトトギス(矮鶏杜鵑草)は、ユリ科ホトトギス属の多年草です。東海地方から九州にかけて分布する日本固有の在来種です。名の由来は、花にある斑紋が鳥のホトトギス(杜鵑)にある胸の斑紋に似ている事から。チャボは、本種がキバナノホトトギスの矮性種である事から、鶏の矮性種チャボ(矮鶏)に例えたもの。チャボの語源は、ベトナムの地名チャンパ(Champa)によります。地域によっては絶滅危惧II類(VU)に指定されています。

 ユリ科(Liliaceae Juss. 1789)は、世界の温帯と熱帯に約240属4000種が分布します。ホトトギス属(Tricyrtis Wallich, 1826)は、日本・台湾・朝鮮半島等の東アジアに19種が分布します。日本には、ジョウロウホトトギス節、キバナノホトトギス節、ホトトギス節、ヤマホトトギス節から計13種が分布しています(変種、品種を除く)。内10種は日本固有種です。チャボホトトギスは、キバナノホトトギス節に属します。

 山地の林下に自生します。草丈は2~10cm程で、直立します。茎には毛が散生します。花柄は1.5cm程で、開出毛があります。葉は互生し、基部は茎を抱き、倒披針形で長さ5~15cm。紫褐色の斑紋(油点状斑紋1))があり、上面は無毛で艶があり、裏面には毛があります。

 花期は8月下旬から9月上旬頃で、茎頂や葉脇に黄色の花を上向きに1~2個付けます。花被片は内花被片3と外花被片3の計6枚で、長さ2~2.5cmの倒披針形。花被片内側に紫褐色の斑点がまばらにあります。花被片下部には、黄橙色の蜜標である環状の斑紋があります。3枚の外花被の基部には袋状に曲がった3つの距があります。これはホトトギス属の学名Tricyrtis=treis(三)+cyrtos(曲)の由来となっています。

 雄しべ6があり、花糸先端に葯を付けます。突出した花柱は3裂し、先端は2裂します。蜜を求めて訪れた虫が花被に乗った時に花粉を着けやすくする構造になっています。雌しべ柱頭は腺毛状突起が密生します。一日花です。雌雄同花、雄性先熟の虫媒花。果実は朔果で、種子繁殖します。染色体数は、2n=26。

※チャボホトトギスは、「国立公園、国定公園の特別地域内において許可を受けなければ採取、又は損傷してはならない高山植物その他これに類する植物」に含まれます。

 1)油点:細胞間隙または細胞内に油成分が蓄積され点状に見えるもの。色素のあるものを黒点、ないものを明点と言う。

Japanese common name : chabo-hototogisu
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Tricyrtis nana Yatabe
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花糸は6本。花柱は3裂し、先端は2裂する。腺毛状突起が密生する

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外花被片先端は尖っている。外花被片の基部には袋状に曲がった3つの距がある

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左:花被片は内花被片3と外花被片3の6枚。花径は4cm程/右:葉は互生し、倒披針形

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左:紫褐色の油点状斑紋 右:窮屈そうに咲くチャボホトトギス


チャボホトトギス(矮鶏杜鵑草)
ユリ科ホトトギス属
学名:Tricyrtis nana Yatabe
花期:8月~9月 多年草 草丈:2~15cm 花径:約4cm

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【学名解説】
Tricyrtis : treis(三)+cyrtos(曲)/ホトトギス属
nana : nanus(小さい・低い・小人)/ギリシャ語νᾱνος, nano(十億分の一)の語源
Yatabe : 矢田部良吉 Ryokichi Yatabe (1851-1899)

撮影地:静岡県静岡市
安倍城跡 (Alt. 435m)
竜爪山 (薬師岳 Alt. 1051m)
2008.08.26, - 2008.09.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

21 June 2009
Last modified: 23 June 2009
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by pianix | 2009-06-21 00:00 | | Trackback | Comments(2)
キンラン(金蘭)
 キンラン(金蘭)は、ラン科キンラン属の多年草です。日本、中国、朝鮮半島に分布し、国内では東北地方以西に分布する在来種です。環境省レッドデータブックでは、絶滅の危険が増大している種である、絶滅危惧II類(VU)に指定(1997年)されています。名の由来は、花色の黄色を金に見立てた蘭である事から。

 ラン科(Orchidaceae Juss. (1789))は、熱帯から亜寒帯に約700属、15000種以上が分布します。キンラン属(Cephalanthera L.C.Richard, (1818))は、東アジアやヨーロッパに約15種が分布します。

 山地の林下に自生します。根は細く、菌根(ectomycorrhiza)を形成し、樹木の根に共生する外菌根菌(ベニタケ科やイボタケ科の外菌根との説もあります)から栄養を摂取します。菌に寄生する依存度が高い共生関係にある為、栽培困難種の一つとされています。それで、根こそぎの盗掘を防ぐ目的で花茎を折ってしまう人が多いようです。草丈は30~50cmで、直立し、茎に稜があります。葉は5~8枚が互生します。長楕円形で長さ8~10cm、幅3cm程で平行脈があり、先端は尖り、基部は茎を抱きます。

 花期は4月から6月で、茎頂に総状花序を付け、3~12個の花を付けます。花冠は黄色で上向きに咲き、半開きになります。萼片(外花被片)は3個。花弁(内花被片)は3個で、側花弁(side lobe)2個と唇弁(lip)で構成されます。唇弁の基部は筒状で小さな距があり、先端は3裂し、黄褐色の筋が隆起します。

 雄しべと雌しべは合着して蘂柱(ずいちゅう : column)になります。蘂柱の頭にある大きな葯は、キンラン属Cephalantheraの由来「cephalos(頭)+anthera(葯)」となっています。花粉塊を形成します。子房下位。果実は朔果です。種子は、種皮と胚のみで構成され、極微小で多数あり、風によって散布されます。染色体数は、2n=34(2n=6L+28s=34 Mizuno T.), 68 。

 類似種に、品種のシロバナキンラン(白花金襴)Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume f. albescens S.Kobay. 、茨城県に分布する、ツクバキンラン(筑波金襴)Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume f. conformis Hiros.Hayak. et J.Yokoy. 、変種で花色が白のギンラン(銀蘭)Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume var. elegans Masam. 、花色が白で葉が笹に似ているササバギンラン(笹葉銀蘭)Cephalanthera longibracteata Blume があります。

※写真のキンランは、雑木林の山道にぽつんと咲いていました。あたりを明るくするような雰囲気がありました。後日様子を見にいった所、花茎から折られて持ち去られていました。観察ができなくなったのは勿論、人の手によって減少に拍車をかけている事を残念に思いました。

Japanese common name : kin-ran
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Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume

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2008.05.17


キンラン(金蘭)
ラン科キンラン属
学名:Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
花期:4月~6月 多年草 草丈:30~70cm 花径:1cm

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【学名解説】
Cephalanthera : cephalos(頭)+anthera(葯)/キンラン属
falcata : falcatus(鎌状の)
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
Blume : Carl Ludwig von Blume (1796-1862)

撮影地:静岡県静岡市
安倍城跡(Alt.435m) 2008.05.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: August 13, 2008
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by pianix | 2008-08-13 00:00 | | Trackback | Comments(3)
カキノハグサ(柿の葉草)
 カキノハグサ(柿の葉草)は、ヒメハギ科ヒメハギ属の多年草です。本州の東海地方以西から近畿地方北部あたりまでに分布する日本固有種です。地域によっては準絶滅危惧種になっています。名の由来は、葉が柿の葉に似る事から。

 ヒメハギ科(Polygalaceae Hoffmanns. & Link, 1809)は、約18属800種以上があり、日本にはヒナノカンザシ属、ヒメハギ属の2種が分布します。ヒメハギ属(Polygala L. (1753))は、東アジア、北アメリカ、南アフリカに400種以上があります。

 山地の林内木陰に自生します。根は淡褐色でくびれがあり、サポニン(saponin)1)が含まれます。茎は直立し、草丈は20~30cm。葉は葉柄があり互生します。長さ8~15cm、幅3~5cm程の倒卵状楕円形で、葉質は薄く鋸歯はありません。冬に黄色となり落葉します。

 花期は5月から6月頃。茎頂に総状花序を付けます。花冠長は1~2cm。一見するとマメ科の蝶形花のようですが構造が異なります。萼片は薄黄色で5個あり、内2個の側萼片が立ち上がり、残り3個は花弁を包み込みます。花弁は橙黄色で3個あり、合着して舟形となり、下に位置する竜骨弁2)の先端には付属体のフリンジ(fringe)3)があります。

 付属体内部に雄しべ8本、雌しべ1本がある両性花です。子房は上位で2室、楕円形で毛があります。果実は蒴果です。種子は円形で細かく、付属体のカルンクル(caruncle/種沈)があり、蟻によって運ばれます。

 品種として葉が細長い、ナガバカキノハグサ(長葉柿の葉草)Polygala reinii Franch. et Sav. f. stenophylla Yonek. があります。

1)サポニン (saponin) : 配糖体の総称で、水に溶解し界面活性作用がある。
2)竜骨弁(りゅう こつべん): 蝶形花にある下側の2花弁で、左右が接して舟形となり、雄しべ、雌しべを包込む。
3)フリンジ(fringe):房毛

Japanese common name : kakinoha-gusa
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Polygala reinii Franch. et Sav.

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花期は5月から6月

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左:蕾 右:葉は互生する

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左:花冠の長さは2cm程 右:ナガバカキノハグサ(長葉柿の葉草)

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左:横から  右:後ろ部分
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カキノハグサ(柿の葉草)
ヒメハギ科ヒメハギ属
学名:Polygala reinii Franch. et Sav.
花期:5月~6月 多年草 草丈:20~30cm 花冠長:1~2cm

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【学名解説】
Polygala : polys(多)+gala(乳)/ヒメハギ属
reinii : Johannes Justus Rein (1835-1918)の
Franch. : Adrien Rene Franchet (1834-1900)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&に同じ)
Sav. : Paul Amedee Ludovic Savatier (1830-1891)
---
ナガバカキノハグサ(長葉柿の葉草)
Polygala reinii Franch. et Sav. f. stenophylla Yonek.
synonym : Polygala reinii Franch. et Sav. f. angustifolia Ohwi
f. : forma(品種)
stenophyllus : sten(狭い)+phyllos(葉)/狭い葉の
Yonek. : 米倉浩司 Koji Yonekura (1970- ) Tohoku University
---
synonym : (シノニム) 同意語、異名:同物異名
angustifolia : angustatus(狭くなった)+foliatus(葉の)
Ohwi : 大井次三郎 Jisaburo Ohwi (1905-1977)

撮影地:静岡県静岡市
牛ヶ峰(高山)Alt.717m
八十岡ルート 2008.05.28/谷沢ルート 2008.06.06
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

12 August 2008, 13 August 2008
Last modified: 07 April 2016
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by pianix | 2008-08-12 00:00 | | Trackback | Comments(0)