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オオホシカメムシ(大星亀虫)
 オオホシカメムシ(大星亀虫)は、オオホシカメムシ科オオホシカメムシ属の昆虫1)です。日本、南西諸島、台湾、中国、オーストラリアに分布します。日本では、本州、四国、九州、沖縄に分布します。

 オオホシカメムシ科(Largidae Amyot et Serville, 1843)は、世界に25属225種、日本に1属4種が分布します。オオホシカメムシ属(Physopelta Amyot et Serville, 1843)は、世界に4亜属30種2亜種、日本に1亜属4種が分布します。

 出現期は4月から10月。多くはアカメガシワに棲息します。幼虫と成虫は、アカメガシワの花穂や柑橘類の果実を吸汁します。

 オオホシカメムシの体長は15~19mmで、細長い体形です。全体に暗朱色。腹部腹面は朱色(ヒメホシカメムシは黒色)。頭部は三角状。複眼が左右端に一対あります。単眼はありません。

 触角は黒色で第4節まであり、第4節は黄白色になる部分があります。胸腹に吸汁のための鋭い口吻が折りたたまれています。

 胸部は、前胸、中胸、後胸の3部があります。胸部には三対の脚があり、計6本があります。前脚の内側には棘状突起が数個あります。

 臭腺孔は成虫の場合、胸部腹面(中脚と後脚の付け根付近)にあります。カメムシ特有の強烈な悪臭は出しません。雌は第7腹板が正中線に沿って裂けます。

 中胸に前翅、後胸に後翅が一対ずつあり、計4枚があります。前翅中央に円状の黒斑紋が一対あります。小楯板も黒色。

 共生細菌のバークホルデリア属(Burkholderia Yabuuchi et al. 1993)2)を腸管上皮細胞内に細胞内共生させている事が知られています。

 産卵は、6月〜7月の早朝に行われます。1〜2週間で孵化し、約1ヶ月で成虫になります。不完全変態(卵・幼虫・成虫)します。成虫のまま枯葉の下で越冬します。寿命は、約1年半と言われています。染色体数は、2n=17=(12A+2m+X1X2Y )4)

 類似種として、体長12mm程のヒメホシカメムシ(姫星亀虫)Physopelta cincticollis (Stål, 1863)がいます。

 本種は、前翅中央に黒斑紋が一対あり、頭部を下にしてみると黒斑紋が目のように、前胸背板(前葉と後葉)が分厚い唇、小楯板が鼻、膜質部が頭に見え、まるでおとぎ話に出てくるような細長い顔の人物として認識されます。これはパレイドリア3)と呼ばれる錯覚現象です。

脚注:
1) 昆虫の体は、頭部、胸部、腹部に分れ、脚が6本、翅が4枚あります。これに当てはまらない虫は昆虫ではありません。具体的には、クモ、ダニ、サソリ、ダンゴムシ、ワラジムシ、ムカデ、ゲジ、ヤスデ、カタツムリ、ナメクジ、等は昆虫ではありません。ノミは昆虫です。
2) Yabuuchi : 薮内英子 Eiko Yabuuchi (1927- )
3) パレイドリア(Pareidolia):認知心理学の心理現象の一種である錯覚現象。その内の、シミュラクラ現象(simulacra phenomenon)(類像現象)。3点が逆三角形に配置されていると「人間の顔」に見えてしまうという錯覚や本能のこと。
4) Vikas Suman, Harbhajan Kaur, Devinder Singh, Rajdeep Kaur : Species-specific sex chromosome behaviour and banding patterns in three Largid species (Heteroptera), Chromosome Science 15: 31-37, 2012

参考文献:
北隆館 新訂 原色昆虫大圖鑑 第Ⅲ巻

Japanese common name : Oo-hosi-kamemusi
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Physopelta gutta (Burmeister,1834)


オオホシカメムシ(大星亀虫)
カメムシ目(半翅目)オオホシカメムシ科オオホシカメムシ属
学名:Physopelta gutta (Burmeister,1834)

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体長:15~19mm
分布:本州、四国、九州、沖縄/南西諸島、台湾、中国、オーストラリア
出現期:4月~10月
食草:アカメガシワ(赤芽槲)

撮影地:静岡県静岡市
葵区桜峠 2022.07.24
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

26 November 2022, 11 November 2023
Last modified: 9 December 2023
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# by pianix | 2023-11-12 00:00 | | Comments(0)
タニジャコウソウ(谷麝香草)
 タニジャコウソウ(谷麝香草)は、シソ科ジャコウソウ属の多年草です。本州の南関東以西に分布します。日本固有種で、準絶滅危惧種(NT)。名の由来は、ジャコウソウ(麝香草)1)に似ていて、谷沿いに咲く事から。麝香臭2)はありません。

 シソ科(Lamiaceae Martinov (1820))は、北半球の地中海沿岸や中央アジアを中心に約250属7000種が分布します。日本には約28属90種があります。ジャコウソウ属(Chelonopsis Miq. (1865))は、東アジアに15種があり、日本に3種、中国に12種が分布します

 山地の谷沿いに自生します。茎は立ち上がり、上部が斜上します。草丈は50~100cm。茎には下向きの開出毛があります。葉は対生します。広披針形から長楕円形で、長さ8~15cm、幅2.5~5cm。基部が耳状心形で、鋸歯があり、鋭頭。葉柄は5~10mm。葉と葉柄には毛があります。

 花期は、9月から10月。葉腋から葉柄よりも長い2~5cmの花序柄を出します。これが種名longipes(長柄の)に採用されています。その先に2~3個の花を付け、集散花序を出します。花は淡紅紫色の唇形花で、長さ約4cm。二唇の筒状で、先端は3裂します。上唇、側裂片は反り返ります。

 雄しべ、雌しべは、上唇に沿って付きます。雄しべは2長2短の4本(二長雄しべ)3)で先端は微毛状です。雌しべは1本で、先端は2裂します。萼は緑色の鐘形で、先が浅く5裂し、長さ約8mm。果期に卵球形に膨らみ、長さ15~18mmになります。

 果実は、分果です。楕円形で、長さ約1cm。種子は4個。翼が付いた仮種皮に包まれ、縦皺があり、長さ約9mm。種子は楕円形で、長さ5~6mm。種子の排出後も薄褐色の宿存萼が長く残ります。染色体数は、2n=32。

脚注:
1)ジャコウソウ(麝香草)Chelonopsis moschata Miq.
2)麝香(ジャコウ):ジャコウジカ(麝香鹿)の香嚢(こうのう)から採れる分泌物を乾燥させた香料。ムスク(musk)。主な成分は、ムスコン(muscon) C16H30O。
3)二長雄しべ (didynamous stamen):4本の雄しべの内、2本が他よりも長い形態。異形雄しべ (heteromorphic stamen) のひとつ。二強雄しべ、二長雄蘂(にちょうゆうずい)。他に、四長雄しべ (tetradynamous stamen):6本の雄しべの内、4本が他よりも長い形態。四強雄しべ、四長雄蘂(しちょうゆうずい)。五長雄しべ (pentadynamous stamen):10本の雄しべの内、5本が他よりも長い形態。五強雄しべ、五長雄蘂(ごちょうゆうずい)がある。

Japanese common name : Tani-jyakou-sou
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Chelonopsis longipes Makino

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唇形花で先端は3裂。雄しべと雌しべは上唇に沿う。

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左:雄しべは2長2短の二長雄しべで先端は微毛状 右:雌しべ先端は2裂する

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左:葉表 【葉は対生 花序柄は葉柄より長い】 右:葉裏

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左:葉表面 右:葉裏面

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左:果実 右:仮種皮に包まれた種子

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左:種子 右:種子排出後も果実の萼が残る(2023.1.19)


タニジャコウソウ(谷麝香草)
シソ科ジャコウソウ属
学名:Chelonopsis longipes Makino
花期:9月~10月 多年草 草丈:約100cm 花冠長:約4cm

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【学名解説】
Chelonopsis : Chelone(亀)+opsis(似た)/ジャコウソウ属
longipes : longus(長い)+pes(足)[長柄の]
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)

撮影地:静岡県静岡市
葵区 林道門屋線 2022.10.08, 10.20, 11.30, 2023.01.19, 04.18
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

26 February 2023
Last modified: 31 May 2023
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# by pianix | 2023-06-01 00:00 | | Comments(0)