ノアザミ(野薊)
 ノアザミ(野薊)は、キク科アザミ属の多年草です。中国、朝鮮、台湾、ベトナム、ロシアに変種が分布します。日本では、本州、四国、九州に分布する日本固有種です。名の由来は、野に咲く薊から。薊の語源は不明です。幾つかの説があり、あざむ(惘)語源説は、アザムはアサマから転訛したもので、傷むとか傷ましいの意(中村 1980)と説明されています。中国名は、薊(jì)。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。Asteraceaeは、aster(星)の意味。保留名のCompositae Giseke, 1792は、「合成された」との意味から。アザミ属(Cirsium Mill. (1754)は、主に北半球に分布し、世界に300種以上、日本に60種以上があります。

 山野に自生します。茎を直立させ、草丈は50~100cmになります。茎には白毛が密生します。葉は羽状中裂します。根生葉は放射状に広がり、花期にも残ります。茎葉は茎を抱き、互生し、鋭い棘(歯牙)があります。

 花期は5月から8月。茎頂に小花の集まりである頭花を上向きにつけます。蕾には、くも毛があり、先端から開き始め、周囲から中央へと順次開花します。紅紫色で径4〜5cm。筒状花(管状花)は花弁5枚があります。舌状花はありません。一般に両性花とされますが、厳密には、雌株と両性株がある1)雌性両全性異株2)(川窪, 1996)です。

 雄性先熟です。雄性期には、紫色で5本が合着した筒状の雄しべの中に桃色の雌しべがあります。小花が刺激を受けると雄しべの葯筒が花糸によって引き下げられ、白色で粘着性がある花粉と同時に雌しべが飛び出します。この時の雌しべは柱頭が閉じて受粉しません。

 虫媒花です。花粉は訪花した虫3)に付着して運ばれます。花粉や葯は、紫外線の下で蛍光を発します。紫外線からの遺伝子保護と送粉昆虫の誘引(福井, 2007)4)と考えられています。この後は雌性期となり、雌しべが成長、先端の柱頭が2裂して受粉可能となります。

 総苞は球形で、幅2〜4cm。総苞片は6~7列あり、総苞にほぼ密着し、腺体から粘液5)を出します。果実は痩果です。羽毛状の冠毛があり、長さ約1.5cm。種子は長さ約3mm。風散布されます。染色体数は、2n=34。

 根を乾燥させたものを生薬の薊根(薊)6)と称して、利尿、解毒、止血、強壮薬として用いられます。葉は、棘焼きと灰汁出しをして食用とされます。

脚注:
1)Male sterility and gynodioecy in Japanese Cirsium. Nobumitsu Kawakubo. Acta Phytotax. Geobot. 46(2) 153-1641995. 川窪伸光(1959- )
1-2)ノアザミの雌株に関する研究 小豆むつこ 共生のひろば 3号, 29-31, 2008年3月
1-3)Morphological change of florets in the flowering period in Cirsium japonicum Fisch. ex DC. (Compositae) - comparison between female and hermaphrodite florets -, Mutsuko AZUKI, Shizuka FUSE and Akira TAKAHASHI, Humans and Nature 20: 73-79 (2009)
2)雌性両全性異株:雌株と雌雄同株の混在。
3)送粉昆虫は、蝶、蜂、虻、甲虫、等。
4)「むしのめ - 虫が視る花の色と姿?!」、京都薬科大学薬用植物園、2007年. 福井宏至(1941-2013)
5)粘液は、食害昆虫を阻止する役目と考えられています。(川窪伸光)
6)薊根(アザミコン)、薊(ケイ)。成分は、ペンタデセン(1-pentadecene)、アプロタキセン(aplotaxene)、カプロン酸(caproicacid)、ツヨプシン(thujopsene)、シペレン(cyperene)等。(渡辺斉)

参考:
ノハラアザミ(野原薊) フジアザミ(富士薊)

Japanese common name : No-azami
e0038990_18072310.jpg
Cirsium japonicum Fisch. ex DC.

e0038990_18125259.jpge0038990_18130040.jpg
蕾には、くも毛がある。先端から開き始め、周囲から中央へと順次開花する。

e0038990_22055084.jpge0038990_22055313.jpg
総苞は球形、粘液で粘る。総苞片は6~7列で密着し、先端が僅かに浮き上がる。

e0038990_22074637.jpge0038990_22074867.jpg
雄性先熟。左:雄性期、右:雌しべが飛び出した状態。

e0038990_22090333.jpge0038990_22090609.jpg
頭状花の断面。筒状花の集合体。

e0038990_22095629.jpge0038990_22095925.jpg
茎には白毛が密生。中央左に見えるのは種子。葉は羽状中裂して鋭い歯牙がある。


ノアザミ(野薊)
キク科アザミ属
学名:Cirsium japonicum Fisch. ex DC.
synonym : Cirsium japonicum Fisch. ex DC. var. maritimum Konta et Katsuy.
花期:5月~8月 多年草 草丈:50~100cm 花径:4~5cm

e0038990_2122812.gif


【学名解説】
Cirsium : cirsion[静脈腫(cirsos)に効くCarduus pycnocephalus L.]の転用/アザミ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Fisch. : Friedrich Ernst Ludwig von (Fedor Bogdanovic) Fischer (1782-1854)
ex : ~による
DC. : Augustin Pyramus de Candolle (1778-1841)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河川敷 2004(12/24), 2005(5/5, 5/7, 5/10), 2007(5/2, 5/12, 5/22)
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 03 March 2019
e0038990_1703595.gif

# by pianix | 2019-03-04 00:00 | | Comments(0)
ツバメ(燕)
 ツバメ(燕)は、ツバメ科ツバメ属の鳥です。夏鳥として、北海道から九州に飛来して繁殖します。名の由来は、不明です。古名は、ツバクラメ(土喰黒女)。ツバは光沢、クラは黒、メは群れる鳥を指し、ツバクロと変化し、ツバメとなったと言われています1)。あるいは、土を啄んで巣を作る習性により、土くらい、土食みの転訛であるとの説があります。中国名は、燕(yàn, Yān)。英名は、Barn swallow。

 ツバメ科(Hirundinidae Rafinesque, 1815)は、世界に17属74種が分布します。ツバメ属(Hirundo Linnaeus, 1758)は、30種が分布します。日本では3種が分布し、他の属を含めると5種2)がいます。

 成鳥の体長は約17cmで、翼を広げると約32cmになります。体色は藍黒(らんこく)色で、金属光沢があります。喉と額が赤褐色で、腹部は白色。胸部に黒の横帯模様があります。翼後方にある風切羽は、初列風切、次列風切、三列風切があります。初列風切は、尺骨の先に付き10枚、次列風切は尺骨に付き6枚、三列風切は、上腕骨に付き3枚あります。尾羽は、外側が長さ約10cmで二股となり、いわゆる燕尾形となります。雌よりも雄の尾羽のほうが長くなります。

 ツバメの足は短く歩行には適していません。鳥の足指は趾(あしゆび)と書きます。ツバメの場合は片足に4本の趾があります。後ろに1本(後趾)、前に3本(内趾、中趾、外趾)の三前趾足(さんぜんしそく)で、中趾が一番長くなっています。体重は、成鳥が約17g、孵化時は約1.5g。嘴は先が尖り、成鳥が黒色で雛は黄色。

 俊敏に飛行しながら虫を捕獲し、給水します。農作物を害する虫を捕食するため益鳥と認識されています。飛行速度は45km/h~70km/hと言われています。鳴き声は、チュピッ。さえずりは、チュチュビチュチュビジクジクで、最後にビーと濁ります。「土食って虫食って渋い」と聞きなしされます。

 夏鳥として九州以北に飛来します。2月頃に九州、近畿地方に3月上旬に現れます。繁殖期は4~7月頃で2~3回。雌雄共同で行います。人の気配がある建物の軒先などに巣を作ります。巣は泥と枯草を唾液で混ぜて半椀形に作ります。産卵は3~7個。長さ約19mm、幅約14mm。卵を2週間ほど温め(抱卵)、孵化後、餌を与えながら約3週間、雛を育てます。

 人が現れると親は巣を離れて近くに待機し、気配が無くなると戻ってきます。夜は巣の上に親が乗り雛を温めながら眠ります。巣の下に白い糞を落とします。新聞紙や段ボールで対処している方が多いようです。時折、雛が落下していることがあります。巣に戻すのは問題ありませんが、鳥獣保護法によって人による飼育は許可を受けない限り禁じられています。

 巣立った雛や親は河川敷等に多数が集まり集団ねぐらを作ります。日本で育ったツバメは、9月中旬から10月下旬に飛び立って、フィリピン、マレーシアで越冬します。列島移動の飛行距離は、20km~30km/Day、渡りの飛行距離は約300km/Dayと言われています。一部は日本国内で越冬ツバメとして残ることがあります(千葉県、静岡県、京都府、九州南部)。飛来数は、20年前と比べて半減3)したと言われています。

 エストニアとオーストリアが国鳥としています。日本では、3市4町1村4)が市町村の指定鳥として採用しています。

脚注:
1)『日本語語源辞典/学研辞典編集部編』『語源大事典/堀井 令以知編』
2)ツバメ属では、九州から北海道に分布するツバメ(燕)、関東南部以西に分布するコシアカツバメ(腰赤燕)Hirundo daurica Linnaeus, 1771、奄美大島以南に分布するリュウキュウツバメ(琉球燕)Hirundo tahitica Gmelin, 1789。他の属に、イワツバメ属のイワツバメ(岩燕)Delichon urbica (Linnaeus, 1758)、ショウドウツバメ属のショウドウツバメ(小洞燕)Riparia riparia (Linnaeus, 1758)の計5種が分布。ヒメアマツバメ(姫雨燕)Apus nipalensis kuntzi (Deignan, 1958)はアマツバメ科アマツバメ属。
3)全国鳥類繁殖分布調査ニュースレター No. 3 Dec 25, 2015
4)市町村の指定鳥:青森県中泊町、岩手県紫波町、宮城県山元町、茨城県筑西市、千葉県松戸市、山梨県忍野村、三重県川越町、徳島県阿南市。

Japanese common name : Tubame
e0038990_16372785.jpg
Hirundo rustica gutturalis Scopoli, 1786

e0038990_17042467.jpge0038990_17043246.jpg
体色は藍黒色。喉と額は赤褐色で、腹部は白色。

e0038990_17111297.jpge0038990_17111683.jpg
胸部に黒の横帯模様

e0038990_17143241.jpge0038990_17144183.jpg
尾羽は長さ約10cmで燕尾形。羽根は初列風切10枚、次列風切6枚、三列風切3枚。
e0038990_17380773.jpg
鳴き声は、チュピッ。さえずりは、チュチュビチュチュビジクジクビー。
e0038990_17172099.jpg
嘴は先が尖り、成鳥が黒色で雛は黄色。
e0038990_17180125.jpg
巣は泥と枯草を唾液で混ぜて軒先などに半椀形に作る。2017.5.9
e0038990_23232636.jpg
繁殖期は4~7月頃で年2~3回。2016.07.06
e0038990_23233007.jpg
2016.07.06
e0038990_23233677.jpg
2016.07.16
e0038990_17181475.jpg
2018.7.9


ツバメ(燕)
ツバメ科ツバメ属
学名:Hirundo rustica gutturalis Scopoli, 1786
基亜種:Hirundo rustica Linnaeus, 1758

e0038990_2163229.gif


渡り鳥(夏鳥)
全長:約17cm/開長:約32cm
体重:成鳥:約17g 孵化時:約1.5g
繁殖期:4~7月/年2~3回
産卵数:3~7個
食餌:昆虫(蛾、蠅、蚊、羽蟻、蜂、虻、蜻蛉、水生昆虫、等)

撮影地:静岡県静岡市
葵区 2007.8.4, 2013.5.18, 2016.(7/6, 7/16), 2017.(4/13, 5/9), 2018.(3/7, 4/16, 7/8, 7/9)
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

23 February 2019
Last modified: 6 March 2019
e0038990_1703595.gif

# by pianix | 2019-02-23 00:00 | その他の生物 | Comments(0)