チャボホトトギス(矮鶏杜鵑草)は、ユリ科ホトトギス属の多年草です。東海地方から九州にかけて分布する日本固有の在来種です。名の由来は、花にある斑紋が鳥のホトトギス(杜鵑)にある胸の斑紋に似ている事から。チャボは、本種がキバナノホトトギスの矮性種である事から、鶏の矮性種チャボ(矮鶏)に例えたもの。チャボの語源は、ベトナムの地名チャンパ(Champa)によります。地域によっては絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
ユリ科(Liliaceae Juss. (1789))は、世界の温帯と熱帯に約240属4000種が分布します。ホトトギス属(Tricyrtis Wallich (1826))は、日本・台湾・朝鮮半島等の東アジアに19種が分布します。日本には、ジョウロウホトトギス節、キバナノホトトギス節、ホトトギス節、ヤマホトトギス節から計13種が分布しています(変種、品種を除く)。内10種は日本固有種です。チャボホトトギスは、キバナノホトトギス節に属します。 山地の林下に自生します。草丈は2~10cm程で、直立します。茎には毛が散生します。花柄は1.5cm程で、開出毛があります。葉は互生し、基部は茎を抱き、倒披針形で長さ5~15cm。紫褐色の斑紋(油点状斑紋1))があり、上面は無毛で艶があり、裏面には毛があります。 花期は8月下旬から9月上旬頃で、茎頂や葉脇に黄色の花を上向きに1~2個付けます。花柄は長さ約1.5cm。花被片は内花被片3と外花被片3の計6枚で、長さ2~2.5cmの倒披針形。外花被片先端は緑色で尖っています。花被片内側に紫褐色の斑点がまばらにあります。花被片下部には、黄橙色の蜜標である環状の斑紋があります。3枚の外花被の基部には袋状に曲がった3つの距があります。これはホトトギス属の学名Tricyrtis=treis(三)+cyrtos(曲)の由来となっています。 雄しべは6個で、花糸先端に葯を付けます。突出した花柱は3裂し、先端は2裂します。蜜を求めて訪れた虫が花被片に乗った時に花粉を着けやすくする構造になっています。雌しべ柱頭は腺毛状突起が密生します。雄しべ、雌しべ共に外側に反り返ります。一日花です。雌雄同花、雄性先熟の虫媒花。果実は朔果です。披針形で3稜があり、長さ約2cm。種子は倒卵形です。染色体数は、2n=26。 類似種として、九州に分布するキバナノホトトギス(黄花の杜鵑草)Tricyrtis flava Maxim. があり、高さが10~30cmになります。 ※チャボホトトギスは、「国立公園、国定公園の特別地域内において許可を受けなければ採取、又は損傷してはならない高山植物その他これに類する植物」に含まれます。 脚注: 1)油点:細胞間隙または細胞内に油成分が蓄積され点状に見えるもの。色素のあるものを黒点、ないものを明点と言う。 Japanese common name : chabo-hototogisu チャボホトトギス(矮鶏杜鵑草) ユリ科ホトトギス属 学名:Tricyrtis nana Yatabe 花期:8月~9月 多年草 草丈:2~10cm 花径:約4cm 【学名解説】 Tricyrtis : treis(三)+cyrtos(曲)/ホトトギス属 nana : nanus(小さい・低い・小人)/ギリシャ語νᾱνος, nano(十億分の一)の語源 Yatabe : 矢田部良吉 Ryokichi Yatabe (1851-1899) --- flava : flavus(黄色) Maxim. : Carl Maximowicz (1827-1891) 撮影地:静岡県静岡市 安倍城跡 (Alt. 435m) 2008.8.26, 9.17, 2015.9.15, 09.23 竜爪山 (薬師岳 Alt. 1051m) 2008.9.11 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 21 June 2009, 23 June 2009, 26 September 2017 Last modified: 1 October 2017
by pianix
| 2009-06-21 00:00
| 花
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by pianix カテゴリ
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Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
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