ヤセウツボ(痩靫)
 ヤセウツボ(痩靫)は、ハマウツボ科ハマウツボ属の1年草で、寄生植物です。地中海沿岸が原産と言われていて、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南北アメリカ等の寒帯から熱帯にかけて分布します。日本では、1937年に千葉県で発見されてから本州、四国に広がり、帰化しています。牧草に混入した非意図的移入と考えられています。名の由来は、ハマウツボ(浜靫)よりも花序が細く痩せている様に見える事から(Kitamura,1937)。靫は、矢を入れる容器。英名は、Common broomrape、あるいはClover broomrape。

 外来生物法で「多様な植物に寄生するので、在来種や牧草の生育を抑制するおそれがある」との理由から生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)に指定されています。

 ハマウツボ科(Orobanchaceae Vent. (1799))は、アジアとヨーロッパの温帯地方に、APG植物分類体系では約87属1680種(クロンキスト体系では約15属180種)が分布します。ハマウツボ属(Orobanche L. (1753))は、日本では2種が自生します。

 光合成機能を欠いた全寄生植物 (holoparasitic plant)です。マメ科、キク科、セリ科、フウロソウ科、ナス科植物に寄生し、寄生根によって宿主の根から養分を吸収します。根茎は径28mm内外で、寄生根は径2mm程。茎は茶褐色で径3~9mm程。腺毛が密生し、分枝せずに直立して、草丈15~45cmになります。葉は退化した鱗片葉で、互生します。長さは約20mmで、披針形、先は尖り、斜め上向きにつきます。

 花期は5月から6月頃で、野原や道端などに自生します。茎の上部に、唇形花を穂状につけます。下部から順に咲く無限花序です。萼は左右2片があり、それぞれ2裂します。萼裂片は先端が線状となり尖ります。萼には変異があります。花冠は上下に2裂し、淡黄色で紫色の筋や斑点があり、腺毛が密生します。花冠長は約16mm、花冠径は12~15mm。

 両性花です。雌しべ柱頭は赤紫色で、先端で2裂し中央がへこんだ半球状。雄しべは長短2本ずつ計4本がある2長雄しべ。葯は黒色。子房上位。子房は長さ約11mm、幅約3.5~4mmの紡錘状。

 果実は蒴果です。染色体数は、2n=38。種子は微小で、表面にひび割れ模様があり長さ0.3mm程。風雨、動物によって散布されます。宿主から分泌される発芽刺激物質(dl-strigol等)に反応して発芽します。宿主からの発芽可能範囲は5mm程で、それに満たない場合は長期間休眠します。発芽前に高温(30℃/2 Days)に遭遇すると発芽率が低下1)します。湿地及び肥沃な畑地での生育は良くない2)との報告があります。

 よく似た花に、同属で花が薄紫色のハマウツボ(浜靫)Orobanche coerulescens Stephan ex Willd.、ヤセウツボの変種で色素が抜けたアルビノ個体のキバナヤセウツボ(黄花痩靫)Orobanche minor Sm. var. flava Regelがあります。

脚注:
1)ヤセウツボ (Orobanche minor Smith) 種子のコンディショニングにたいする高温障害 : 雑草研究 / 45 巻 (2000) Supplement 号 p. 72-73, 蔡 相憲, 竹内 安智, 小笠原 勝, 米山 弘一, 杉本 幸裕
2)国立環境研究所 侵入生物データベース 日本の外来生物 > 維管束植物 > ヤセウツボ/環境省 要注意外来生物に係る情報及び注意事項 2-54P

状況:
 [1] 2009年に静岡市の安倍川流域土手8km左岸周辺で初めて確認しました。土手側面などに広範囲に点在し、主にノアザミ(野薊)に寄生していました。今後は急速に勢力を拡大するものと思われます。
 [2] 2010年5月、勢力の拡大を確認しました。
 [3] 2016年、賤機山、池ヶ谷農道脇で群生を確認しました。里山にも上がってしまっています。
 [4] 2018年5月、安倍川河川敷でムラサキツメクサに多数寄生しているのを確認しました。

Japanese common name : Yase-utubo
e0038990_19492750.jpg
Orobanche minor Sm.
e0038990_21390404.jpg
先端で二裂し半球状になった赤紫色の雌しべ柱頭。
e0038990_21400954.jpg
花冠の長さは約16mm。花冠横の萼片は上向きに反り上がる。

e0038990_21485270.jpge0038990_21492308.jpg
左:花冠の腺毛 右:腺毛が密生した茎の下部に鱗片葉が互生する。

e0038990_2092876.jpge0038990_21305109.jpg
左:小さな個体 右:根茎

e0038990_21254277.jpge0038990_21255162.jpg
花冠。赤紫色の雌しべ柱頭の奥側に見える黒色は雄しべの葯。
e0038990_201231100.jpg
ノアザミに寄生している。

e0038990_2015298.jpge0038990_20185981.jpg
左:花冠は淡黄色で紫色の筋や斑点があり、腺毛が密生する。右:子房。

e0038990_19390921.jpge0038990_19391306.jpg
果実は蒴果。種子は約0.3mm。


ヤセウツボ(痩靫)
ハマウツボ科ハマウツボ属
学名:Orobanche minor Sm.
花期:5~6月 1年草(寄生) 草丈:15~45cm 花冠径:12~15mm

e0038990_1095350.gif


【学名解説】
Orobanche : orobos(マメの一種)+anchein(絞め殺す)/ハマウツボ属
minor : minus(より小さい)
Sm. : James Edward Smith (1759-1828)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から8.5km 左岸 2009.05.01-05.12 / 2010.05.17
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

22 June 2010
Last modified: 24 May 2018
e0038990_1703595.gif

[PR]
by pianix | 2009-08-08 00:00 | | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : https://pianix.exblog.jp/tb/10797500
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by 小夜月 at 2009-08-09 16:42 x
こんにちは
わたしもヤセウツボ見つけました
裏の草はら
マメ科に寄生するとのこと
近くにコメツブツメクサが生えていたので
これに寄生していたのかなと思います
さすが詳しく調べられていますね
助かります♪
             小夜月
Commented by pianix at 2009-08-10 21:12
小夜月さん、こんにちは。
ヤセウツボは、瞬く間に広がりそうですね。
小夜月さんのBlogを読んでいて笑い転げる箇所があり、コメントを残し忘れました。
ちなみに、私は元ヤセニンゲンでした。今は脳みそだけが痩せています。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< イワタバコ(岩煙草) ホトトギス(杜鵑草) >>