夏の暑い盛りの日。山道を汗を流して登り詰め、山頂で休息をしていました。ヒカゲチョウがやってきて、私の手に止まりました。チョウは長い管状の口器である口吻を伸ばして私の肌に当て、汗を吸い始めました。それは私の予想に反した、しっかりとした感触でした。小さく細い口吻を押しつけられると、小さな鞭で叩かれているような刺激がありました。
口吻(Proboscis)は、口先の事で、蝶では吸収管の事です。口吻は、溝のある小顎外葉2本が重なり合って管状となり、毛細管現象で吸い上げをします。普段は巻かれて収納されます。口吻を伸ばした時に曲がる点を屈折点と言い、屈折点から先端までを前後に動かす事ができます。この僅かな部分の動きの刺激なのです。 蝶の給水行動は、体温調整とか栄養補給をしているのではないかと推測されています。水分によって体温を下げる事と、汗などに含まれるナトリウム等のミネラルの摂取です。普段は逃げる蝶が、自ら近寄り摂取するというのは、ある意味、危険を冒しているわけで、そうしなければならない強い事情があるのは確かです。給水行動は危険回避を上回るという本能があるのでしょう。 大群で来られると恐れをなしてしまいますが、1匹程では親しみが湧くのではないでしょうか。ただ、蝶が嫌いな人も少なからずいるので、汗を吸いに来る蝶に恐怖を感じて逃げる事もあるかもしれません。私の場合は、汗を吸わせてあげるから写真を撮らせてもらうという交換条件を付けます。しばらくの時間を蝶と過ごし、私も給水して、初めての道を下り始めました。 ※開張:かいちょう(Wing span)。前翅を広げた時の左右端までの幅。 ※前翅長:ぜんしちょう(Forewing length)。前翅の根元から先端までの長さ。 ※ヒカゲチョウ(日陰蝶)についてはこちらをご覧下さい Japanese common name : Hikage-chou ヒカゲチョウ(日陰蝶) チョウ目(鱗翅目)タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科ヒカゲチョウ属 学名:Lethe sicelis (Hewitson, [1862]) 体長:(前翅長)25~34mm/(開張)48~62mm 出現期:5月~10月(年2回) 分布:本州・四国・九州 食草:樹木・タケ類(メダケ・マダケ)・ササ類(クマザサ) 撮影地:静岡県静岡市 安倍城跡(Alt. 435m) 2008.08.26 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] Last modified: 26 June 2010
by pianix
| 2010-06-14 00:00
| 虫
|
Comments(5)
Commented
by
kobosss at 2010-08-20 15:47
ヒカゲチョウの写真を上げようと、調べているうちにここに辿りつきました。詳細なデータ大変参考になりました。ありがとうございました。リンクさせて頂いてよろしいでしょうか?
0
Commented
by
pianix at 2010-08-26 19:51
kobosssさん、こんにちは。
コメントを頂きましてありがとうございます。 リンク、勿論の事構いません。光栄です。 ご丁寧に連絡を頂きましてありがとうございます。 kobosssblogを拝見しました。 凄い写真のオンパレードでした。
Commented
by
kobosss at 2010-08-27 03:12
Commented
by
Cobucim(コブシム)
at 2010-08-28 17:23
x
こんにちは、はじめてお邪魔します。私の住まいは大阪ですが実家は静岡です。先日も盆の時に帰省しました。これからもお邪魔してよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
Commented
by
pianix at 2010-08-28 22:39
Cobucim(コブシム)さん、こんにちは。
Blogを拝見しました。何と美味しそうな……キノコ。 私はホコリタケをいじめるのが好きです。 で、気になったのは沢登りの写真。 高所恐怖症擬きの私は悲鳴を上げる所でした。 里山歩きをしています。今年はまだ92回しか出掛けていません。 怖い所を通った時は、「二度と来るものか~」と捨て台詞を吐いて下りてきます。軟弱・なんちゃってハイキングと言った所です。それと、アキレス腱周辺炎症が痛くて仕方ありません。 写真はたくさん撮り貯めてあるのですが、このBlogは全く更新していません。困ったもんです。 今後ともよろしくお願いいたします。
|
by pianix カテゴリ
タグ
白色系(136)
紫色系(80) 黄色系(75) 赤色系(67) キク科(64) チョウ目(鱗翅目)(50) シソ科(33) マメ科(23) バラ科(22) 赤い実(22) カメムシ目(半翅目)(18) 緑色系(16) 茶色系(14) アオイ科(14) ナス科(13) タテハチョウ科(13) ユリ科(11) ヒガンバナ科(11) ヒルガオ科(11) 多色系(10) 記事ランキング
Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
以前の記事
2023年 11月
2023年 06月 2022年 12月 2022年 08月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 05月 2020年 07月 2020年 04月 2020年 01月 more...
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||