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キッコウハグマ(亀甲白熊)
 キッコウハグマ(亀甲白熊)は、キク科モミジハグマ属の多年草です。日本、朝鮮半島に分布します。日本では、北海道、本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、葉の形が亀甲の形状で、花の形をハグマ(白熊=ヤク1))の白い尾毛に例えたもの。

 キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。双子葉植物の中で最も進化した植物群と言われています。モミジハグマ属(Ainsliaea DC. (1838))は、日本や朝鮮、中国に約30種が分布します。

 山地の木陰に自生します。葉は根生して輪生状につきます。5角形の亀甲形状で、長さ1~3cm、幅1~2.5cm。葉柄は1~5cmで、葉の両面に毛があります。葉形変異があり、心臓形や腎臓形、卵形もあります。花茎は、高さ10~30cm程になり、毛があります。

 花期は9月から10月。花茎頂に数個の頭花を総状につけます。頭花は、白色の小花3個の集合体です。小花は筒状花(管状花)で、5深裂します。裂片の幅は0.4~0.6mmで、先端は鉤状に巻いて右横に向き、全体で一輪状となります。頭花裂片の合計は15枚で、花冠径は7~8mm。総包葉は長さ10~15mmの筒状。雄しべ先熟で、先端は2裂します。雄しべは合着して淡赤褐色の葯筒となります。

 総苞片に包まれたままの閉鎖花をつけることがあり、閉鎖花は自家受粉します。果実は痩果2)です。倒披針形3)で、長さは4~5mm。長さ7~10mmの淡褐色で羽状の冠毛があります。風で種子散布する風散布型です。染色体数は、2n=24。核型4)は、K=24=3Asm+2B1tr+4B2st+3C1m+3C2sm+3D1tr+3D2m+3Em. (H.Arano, 1957)

 同属でよく似た花は多数ありますが、葉の形状が異なります。卵状鉾型の、テイショウソウ(禎祥草)Ainsliaea cordifolia Franch. et Savat. や、掌状で静岡県と愛知県に分布する、エンシュウハグマ(遠州白熊)Ainsliaea dissecta Franch. et Savat. 、変種で、紅葉(モミジ)のような形状の葉をつける、オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)Ainsliaea acerifolia Sch.Bip. var. subapoda Nakai 等があります。

脚注:
1)ヤク(Yak):ウシ科ウシ属の動物。Bos grunniens Linnaeus, 1766。ヤクの尾毛を兜や槍の装飾品とした。軍帽では色によって黒熊(こぐま)、白熊(はぐま)、赤熊(しゃぐま)がある。
2)痩果(そうか:achene):種子が堅い果皮に包まれ熟すと乾燥する果実。1室に1個の種 子がある。
3)倒披針形(とうひしんけい):披針形を逆さにした形。細長く、基部よりも先端の方が広い形状。
4)核型(かくけい):karyotype(カリオタイプ)、染色体の数と形状の類型

参考文献:
・Hisao ARANO : The karyotype analysis and its karyotaxonomic considerations in tha tribe Mutisieae. Jap. Jour. Genet. 32(1957):293-299

Japanese common name : Kikkou-haguma
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Ainsliaea apiculata Sch.Bip.

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左:葉は根生して輪生状 右:雄蘂は合着して淡赤褐色の葯筒となり雌蘂先端は2裂
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頭花は管状花が3個の集合体。裂片の先端は鉤状に巻いて右横に向く


キッコウハグマ(亀甲白熊)
キク科モミジハグマ属
学名:Ainsliaea apiculata Sch.Bip.
花期:9月~10月 多年草 草丈:10~30cm 花冠長:10~15mm 花冠径:7~9mm

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【学名解説】
Ainsliaea : Whitelaw Ainslie (1767-1837)に因む/モミジハグマ属
apiculata : apiculatus(短突起のある)
Sch.Bip. : Carl (Karl) Heinrich Schultz Bipontinus (1805-1867)

撮影地:静岡県静岡市
高山(牛ヶ峰 Alt.717m) 2008.10.27 2014.10.30
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture]

15 December 2010
Last modified: 19 November 2015
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by pianix | 2010-12-15 00:00 | | Comments(2)
Commented by itotonbosan at 2013-12-21 09:32 x
キッコウハグマは
小さくて素通りしてしまう花ですが,
花弁の先端が風車のようにねじれ,
しかも,3本の赤橙の蘂がアクセントをつけている
奇麗な花なので見とれてしまいました。
Commented by pianix at 2013-12-21 22:40
itotonbosan さん
小さな花の造形は美しいですね。
山の薄暗い雑木林で、おまけに息が少し上がっていて、
写真をうまく撮れませんでした。
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