マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡)は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草です。日本、台湾、中国等に分布し、日本では関東以西から四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、ヤマゴボウ(山牛蒡 Phytolacca acinosa Roxb.)に対して、分果を作らない球果(丸い実)である事から。中国名は、日本商陆(rì bĕn shāng lù)。
ヤマゴボウ科(Phytolaccaceae R.Br. (1818))は、世界に22属120種が分布し、日本にはヤマゴボウ属の1属があります。ヤマゴボウ属(Phytolacca L. (1753))は、熱帯・亜熱帯に約35種が分布します。日本には2種1)が自生し、1種2)が帰化しています。 山地の林縁に自生します。根は太く塊根状。茎は丸く緑色で、100~150cmに直立します。葉は互生します。長い柄があり、長さ10~15cm、幅5~10cmの長楕円形から卵状長楕円形で、全縁、鋭尖頭、無毛。 花期は6月から9月。円錐花序を直立してつけます。ヨウシュヤマゴボウと異なり、花序は果期にも下垂しません。花序長は10~20cm。花茎は薄緑で、果期には濃紅色になります。1~3cmの柄の先に花を多数付けます。花は花弁はなく5個の萼片のみで、径約8mm。白から淡紅色で、やがて濃紅色になります。両性花。心皮3)は7~10個で合生(ヤマゴボウは離生)します。葯色は白色です。 果実は液果です。多心皮の雌しべ7~10個が合着した扁平な球形で、径約8mm。熟すと黒紫色になります。種子は約3mmの腎臓形で光沢がある黒色、同心円状の細い横条線があります。染色体数は、2n=72。 生薬名をショウリク(商陸)と言い、民間療法で乾燥根を利尿に用います。商陸は、ヤマゴボウの中国名で、古くはイオスキと呼ばれていました。根には硝酸カリウム(potassium nitrate (KNO3))が含まれます。硝酸塩摂取による急性毒性症状は、腹痛を伴う急性胃腸炎、血尿、血便が急激に起こるとされ、反復投与の副作用では消化不良、精神的抑圧、頭痛、虚弱等の症状が現れると報告されています4)。 脚注: 1)日本のヤマゴボウ属 ヤマゴボウ(山牛蒡) Phytolacca acinosa Roxb. synonym : Phytolacca esculenta Van Houtte マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡) Phytolacca japonica Makino 2)日本に帰化したヤマゴボウ属 ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡) Phytolacca americana L. 3)心皮 (carpel):雌しべ(pistil)を構成する特殊な葉。複数の雌しべの集合体。 多心皮の雌しべ:不特定多数の心皮で作られる 4)日本医薬品添加剤協会「硝酸塩」による 参考:ゴボウ(牛蒡) Japanese common name : Marumino-yamagobou マルミノヤマゴボウ(丸実の山牛蒡) ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属 学名:Phytolacca japonica Makino 花期:6月~9月 多年草 草丈:100~150cm 花径:約8mm 【学名解説】 Phytolacca : phyton(植物)+lacca(深紅色の顔料)/ヤマゴボウ属 japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)] Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957) 撮影地:静岡県静岡市 高山(牛ヶ峰 Alt.716.9m) 2008.05.28, 2008.07.22, 2008.08.08 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] Last modified: 17 March 2012
by pianix
| 2012-03-17 00:00
| 花
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Comments(4)
こんにちは。
ヨウシュヤマゴボウは良く見掛けるのですが、これは初めて見ました。 関東以西ということなら、多摩のどこかにあるかも知れませんね。一度、実物を見てみたいものです。
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pianix at 2012-03-19 07:57
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関東人
at 2019-06-05 12:35
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先日、この花を山で見かけてからずっと名前を調べており、色や形状で検索してもまったく出てこなかったのですが、詳しい葉の形の名称を含めて検索したらこちらの記事がヒットしました。
手持ちの図鑑にも載っていない植物だったので、とても助かりました。ありがとう。
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pianix at 2019-06-05 22:35
関東人さん
コメントを頂きありがとうございます。 同定作業は難儀する時がありますね。 それでも判明したのは、関東人さんの執念が実った訳ですから、 凄いです。自分を褒めてやって下さい。 どの辺の山を登られているのでしょうか。 これからは梅雨時となり、またマダニに注意を要する季節となります。 十分に御注意下さい。 今日は車で出かけていました。 バイパス高架橋下に見たことの無い花が咲いていました、 何だろうあれは?と関東人さんと同じ思いになっていました。 花より団子の私ですが、確認したくなるんですね、困った事に。
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「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 1月末日現在) 合計677,147人 (前年同月比 -5,763人) 男:329,734人 女:347,413人 世帯数324,434戸 (前年同月比 +1.576戸) 最新のコメント
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