ウメ(梅)は、バラ科スモモ属の落葉高木です。中国原産で、四川省、湖北省に原生分布が見られます。日本では全国に分布します。日本へは遣唐使が持ち帰った、中国の僧が持ち込んだ、あるいは日本原産とも考えられていますが、はっきりしません。ウメの名は、万葉集に登場する事から、古い時代からあった事は確かです。
名の由来は、中国生薬名の鳥梅を「ウメイ」と音読みし、それが変化したと言われています。梅(méi)は中国の国花です。梅を県木としているのは、茨城県、大阪府、和歌山県、福岡県、大分県です。英名はJapanese apricot。「松竹梅」と言われるように、春を知らせる花として縁起物に加えられています。万葉集に登場するウメの歌は118首で、サクラは44首です。 バラ科(Rosaceae Juss. (1789))は、ほぼ全ての大陸(南極を除く)に、107属3100種が分布します。スモモ属(Prunus L. (1754))は、12種があります。(アンズ属(Armeniaca J.P. de Tournefort)は、北半球の温帯から熱帯にかけて約40種ほどが分布します。) ウメは、3系9性分類に従えば、野梅(やばい)系、緋梅(ひばい)系、豊後(ぶんご)系に分けられます。約400種の登録園芸品種が存在し、内訳は花梅300種と実梅100種です。花梅は観賞用、実梅は実の採取用で、豊後系がそれにあたります。 樹高は、大きなもので約10m。葉は互生します。長さ5~8cmの卵形で、先端は尖ります。落葉樹なので花期に葉はありません。萼は褐紫色で5裂します。花弁は通常5枚で、それ以上の八重咲き品種もあり、25mm程の大きさになります。花色は、白色・桃色・紅色があります。雄しべは40本程度。自家不和合の虫媒による他家受精を行います。染色体数は、2n=16,24。 果実は核果です。熟す前の青梅にはアミグダリン(amygdalin)という青酸配糖体が含まれていて、胃の酸で分解されるとシアン化水素(青酸ガス HCN)を発生し、中毒を起こします。致死量は成人で300個、子供で100個です。 先日、梅園へ行きました。寒さの為に開花が遅れています。ほとんどが蕾ばかりです。梅園の外に1本の早咲きを見つけました。そこには、古枝を剪定している初老の男性がいました。その方のお気に入りの梅で、幼稚園児を配置した写真が写真展で入選したとの事でした。写真を撮る為の前準備として剪定しているのだそうです。話を伺っていると戦争の話になりました。空襲の話から、近い将来あるかもしれない徴兵制の話へと移っていきます。身勝手だが孫が兵に採られるような時代になって欲しくないと吐露していました。気が付くと、1時間も話を聞いていました。梅の木の下で戦争の話は合わないと思ったのですが、南條歌美作詞の「梅と兵隊」という歌がある事を後で知りました。当然の如く、彼はそれを念頭に話をしていたのでしょう。 Japanese common name : Ume ウメ(梅) バラ科スモモ属 学名:Prunus mume Siebold. et Zucc. synonym : Armeniaca mume (Siebold et Zucc.) de Vriese 花期:1月~3月 落葉高木 樹高:5~10m 花径:20~25mm 果期:6~7月 【学名解説】 Prunus : plum(スモモ)のラテン古名/スモモ属(広義) mume : ウメ(日本名) Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866) et : 及び(命名者が2名の時など・&に同じ) Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848) --- Armeniaca : armeniacus(杏色の、赤みがかった黄色の)/アンズ属 de Vriese : Willem Hendrik de Vriese (1806-1862) --- Juss. : Antoine Laurent de Jussieu (1748-1836) J.P. de Tournefort : Joseph Pitton de Tournefort (1656-1708) 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から14.25km 左岸土手 2006.02.13 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 13 February 2006, 30 June 2014 Last modified: 8 October 2020
by pianix
| 2006-02-13 00:00
| 花
|
Comments(6)
Commented
by
surugaki at 2006-02-14 17:59
私も先日、梅を写しましたが、これほどきれいには撮れませんでした。それに
梅についての解説が的確で勉強になります。甚だ勝手ではございますが、 TB させていただきました。
0
こんなに綺麗にアップできたら最高ですね。青空によく映えてます。
オシベの数が40本も有るなんて知りませんで改めて数えてみました
Commented
by
pianix at 2006-02-15 19:30
surugakiさん
梅も桜も、撮影しにくいですね。全体の雰囲気を撮るのか、マクロで撮るのか、いつも迷うところです。
Commented
by
pianix at 2006-02-15 19:36
Y.Iさん
梅の花色で、雰囲気が随分と変わりますね。 白は清楚で、紅は豪華、薄紅は柔らかな感じがします。 どれが好きかとなると、個人的には薄紅が良いような感じがしています。 しかし、花を愛でるでもなく、花より団子でもなく、 一つの生物と見ている私は、皆さんと感覚が異なるのだと思います。 変なおっさんです。
Commented
by
winter-cosmos
at 2006-03-06 12:40
x
初めまして、梅の分布を検索して、こちらの記事をみつけました。
どの記事も、いろいろ詳しく書かれていて、ゆっくり読ませていただきたいものばかりです。 TBがうまく送れませんでしたので、URLを紹介させていただいています。 http://winter-cosmos.cocolog-nifty.com/first/2006/03/post_ce34.html
Commented
by
pianix at 2006-03-06 17:10
winter-cosmosさん
初めまして 「※トラックバック送信元記事にこのブログ( http://pianix.exblog.jp/)へのリンクが存在しない場合はトラックバックを受け付けません。」という設定を有効にしてあり、ご迷惑をお掛けしました。解除しました。 「緑の森を楽しく歩いた」を拝見させて頂きました。
|
by pianix カテゴリ
タグ
白色系(136)
紫色系(80) 黄色系(75) 赤色系(67) キク科(64) チョウ目(鱗翅目)(50) シソ科(33) マメ科(23) バラ科(22) 赤い実(22) カメムシ目(半翅目)(18) 緑色系(16) 茶色系(14) アオイ科(14) ナス科(13) タテハチョウ科(13) ユリ科(11) ヒガンバナ科(11) ヒルガオ科(11) 多色系(10) 記事ランキング
Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
以前の記事
2023年 11月
2023年 06月 2022年 12月 2022年 08月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 05月 2020年 07月 2020年 04月 2020年 01月 more...
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||