人気ブログランキング | 話題のタグを見る
マツバウンラン(松葉海蘭)
 マツバウンラン(松葉海蘭)は、オオバコ科マツバウンラン属の1~2年草です。北アメリカが原産です。日本では1941年に京都で発見され、西日本から広がった帰化植物です。現在は本州から九州にかけて自生分布します。名の由来は、松葉のような線形の葉を付け、海辺に咲くウンラン属の在来種であるウンラン(海蘭)Linaria japonia Miq.の花に似ている事から。但し、蘭と名が付いていてもラン科ではありません。英名は、Blue toadflax。

 オオバコ科 (Plantaginaceae Juss. (1789)) は、約90属1700種が分布します。マツバウンラン属(Nuttallanthus D.A.Sutton, (1988))は、約270種が分布します。(旧ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae Juss. (1789))は、世界に約220属3000種があり、旧ウンラン属(Linaria P.Miller, (1754))は、北半球に約150種が分布します。)

 茎は束生1)し、細く無毛で、直立します。葉は互生します。多肉質で、幅1~2mmの線形となります。根元はロゼット状になります。

 花期は5月から6月。花茎を20~60cm程に伸ばし、3mm程の柄の先に青紫色の合弁花を総状花序に数個付けます。左右相称の唇形花冠で、上部は2裂して立上がり、下部は3裂します。花弁の中央部に白色の隆起部分があります。このような下唇がせり上がって喉元を塞ぐ形状を仮面状花冠2)といいます。雄しべは長短2本ずつの計4本、雄しべ1本。花冠内部に細毛があります。尾状の距があり、長さ3~4mm。萼は5深裂して線形。

 果実は蒴果です。3mm程の卵形をしていて2室あり、長さ0.5mm程で変形直方体の角ばった種子を出します。マツバウンランの細胞には銅イオンに対する耐性があるとの報告3)があります。染色体数は、2n=12。

 静岡市でも、ここ数年の内に急速に勢力の拡大が見られ、群生箇所が増えてきました。生育期間が11月から5月にかけてで、草刈り時期を逃れる事と、農家の方も可愛らしい風情を好み、残しておく事が多いのが原因のようです。

 類似種として、花が大型で花冠全体に筋模様があるオオマツバウンラン(大松葉海蘭)Nuttallanthus texanus (Scheele) D.A.Sutton があります。

脚注:
1)束生(そくせい):茎や花茎等が根ぎわから束になって付いていること、株立ちしていること(ascicled)
2)仮面状花冠 (personate corolla) : 唇がせり上がって喉元を塞ぐ形状の唇形花冠。訪花昆虫が下唇に乗ると僅かに開き内部に侵入できる。
3)和田洋、西岡洋、熊谷哲「マツバウンランの重金属耐性について」第14回環境化学討論会 P240 (2005)

Japanese common name : Matuba-unran
マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_08035936.jpg
Nuttallanthus canadensis (L.) D.A.Sutton

マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_11193776.jpgマツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_11194228.jpg
下唇がせり上がって喉元を塞ぐ仮面状花冠。細い茎を立ち上げ群生する。
マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_11315060.jpg
目立たない短く細い尾状の距が花冠後方から出る。

マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_1058043.jpgマツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_20362730.jpg
左:葉は多肉質で互生。右:茎は束生し根は細い。

マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_08040331.jpgマツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_08100674.jpg
果実と種子

マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_20410695.jpgマツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_11404914.jpg
果実の長さは約3mm。種子は変形直方体で長さ約0.5mm。


マツバウンラン(松葉海蘭)
オオバコ科マツバウンラン属
学名:Nuttallanthus canadensis (L.) D.A.Sutton
synonym : Linaria canadensis (L.) Dum.Cours.
花期:5月~6月 1~2年草 草丈:20~60cm 花冠長:7~10mm

マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_12135938.gif


【学名解説】
Nuttallanthus : Nuttall*氏の+anthus(花)/マツバウンラン属
*Thomas Nuttall (1786-1859) /英国生まれで米国で活動した植物・動物学者
canadensis : カナダ(Canada)の
L. : Carl von Linne (1707-1778)
D.A.Sutton : David Andrew Sutton (1952-)
---
Linaria : linon(糸|アマ=亜麻)に似る事に由来の古名/ウンラン属
Dum.Cours. : George(s) Louis Marie Dumont de Courset (1746-1824)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から2.75km 右岸土手 2005.06.01, 2006.04.28
安倍川/河口から6.50km 左岸土手 2016.04.26, 2016.05.04, 2018.04.10
賤機山(Shizuhata-yama) 2018.05.01
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

01 May 2006, 02 April 2016, 27 April 2016,19 June 2018
Last modified: 6 May 2019
マツバウンラン(松葉海蘭)_e0038990_1703595.gif

by pianix | 2006-05-01 00:00 | | Comments(9)
Commented by canproyoshikawa at 2006-05-02 14:47
surugakiさんからこちらへうかがいました。先日撮った花の名前がわからずにいた所へ、こちらのブログに伺ってマツバウンランと判明しました。
私の撮った写真をTBさせていただきます。
尚、勝手ながらリンクさせていただきました。今後ともよろしくお願いします。
Commented by mico at 2006-05-02 19:41 x
ご無沙汰してました。
マツバウンラン先日見かけて感動しました。
野の花好いですね。
Commented by pobby777 at 2006-05-03 00:24
はじめまして。トラックバックさせていただきました。
Commented by pianix at 2006-05-03 15:57
canproyoshikawaさん

はじめまして。
「環プロものづくり日記」を拝見しました。
こちらこそよろしくお願いいたします。
Commented by pianix at 2006-05-03 15:58
micoさん

ご無沙汰しています。お久しぶりですね。
「りんどうのつぶやき」を拝見しました。
相変わらずたくさんの花に囲まれていますね。
先日、micoさんを思い出し、
豪快な話を展開しているかなと想像していました。
私は変わりありませんが、毎日の用事をこなしていくと、
どうしても皆さんのHPやBlogを拝見する時間が持てません。
ご勘弁下さい。
Commented by pianix at 2006-05-03 15:58
pobby777さん

「ポビーの日記」を拝見しました。
今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by pobby777 at 2006-05-03 21:36
当方へのコメントありがウございました。
素敵で綺麗な花の写真がいっぱいで心が洗われます。
Commented by canproyoshikawa at 2006-05-05 12:35
マツバウンランの隣の小さい黄色い花はオニタビラコでした。TBさせていただきました。
Commented by pianix at 2006-05-05 17:55
canproyoshikawaさん
私が余分な興味を抱いた為に、ご苦労をお掛けしました。
毎日のようにオニタビラコを撮影しているのですが、ご多分に漏れず今日も撮ってきました。
モニャモニャとたくさんの小花が付くので、まともに写らず、ホツ写真が貯まります。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< ワスレナグサ(忘れな草/勿忘草) アメリカフウロ(亜米利加風露) >>