ハタケニラ(畑韮)は、ヒガンバナ科ステゴビル属の多年草です。北アメリカ原産で、移入時期は明治の中期とされています。園芸愛好家が移入したものが逸出したと考えられています。日本では近年増え始め、関東以南、四国の一部に広がっている帰化植物です。名の由来は不明ですが、葉がニラ(韮)に似ていて畑に生えるからと考えられます。しかし、ニラはネギ属であり、本種とは別属です。英名は、Fragrant false garlic、あるいはOnion weed。中国名は、假韭(jiǎ jiŭ)。
ヒガンバナ科(Amaryllidaceae J.St.-Hil. (1805)) は、世界の熱帯から温帯にかけて約59属860種(約79属2100種)が分布します。クロンキスト体系ではユリ科(Liliaceae Juss. (1789))で、世界の熱帯と温帯に約280属4000種が分布します。属名のステゴビル(Nothoscordum Kunth, 1843)は、一見外国語風ですが、「捨て小蒜」で和名です。約86種があります。以前はハタケニラ属とされていました。 野や畑、道端などで自生します。地下に鱗片状の子球をつけた白色の鱗茎があり、栄養繁殖します。繁殖力が強く、農地では強害草とされます。茎は無毛で断面は円形。葉は根生します。扁平な線形で、全縁、鈍頭、長さ約30cm、幅4~8mm。ニラ臭はありません。 花期は5月から6月頃。状況によっては夏の終わり頃まで続きます。30~60cmに伸ばした茎の先に総苞を付けます。苞葉1)は膜質で2枚。そこから細い無毛の花茎を伸ばし、散形花序に6花被片の小さな花を10(~21)前後つけます。花被片は白色で、花被片外側に暗赤色の筋が入り、長さ約1cm。半開し、花径約1.5cm。 雄しべは6本で、花糸に翼があり、基部は緑色。葯は黄色。子房上位。果実は朔果です。3稜がある卵形で、長さ7~9mm。3裂して約15個の光沢がある黒色の種子を出します。尖った部分がある楕円形でシワがあり、長さ2~3mm。染色体数は、2n=19。 野草観察の出先で、畑仕事をしている農家の方と話をする事が良くあります。ハタケニラを見つけて観察していると、困った顔で話しかけてきました。「困ったもんでなあ、そりゃあ抜いても抜いても駄目だ」と言います。「どうして?」「しっかり抜いたつもりでも鱗茎がポロポロとこぼれるし、それですぐに出てくるんだ」。抜いて私に見せてくれました。「名前は知らんが、困った奴だ」「ハタケニラです」「ハタケニラっていうのか? ニラじゃあねえだ、違うぞ」。名前は知らなくても、戦う相手の特徴を的確に把握しています。生活がかかっているからです。畑では強害草です。 脚注: 1)苞葉:花芽を包む葉。これの小さなものは鱗片葉と言う。 参考: ハナニラ(花韮) タマスダレ(玉簾) Japanese common name : Hatake-nira ハタケニラ(畑韮) ヒガンバナ科ステゴビル属 学名:Nothoscordum gracile (Aiton) Stearn synonym : Nothoscordum fragrans (Vent.) Kunth 花期:5月~6月 多年草 草丈:30~60cm 花径:1~1.5cm 【学名解説】 Nothoscordum : nothos(偽)+scordon(ニンニク)/ステゴビル属 gracile : gracilis(細い) Aiton : William Aiton (1731-1793) Stearn : William Thomas Stearn (1911-2001) --- synonym : (シノニム)同物異名 fragrans : 芳香のある Vent. : Etienne Pierre Ventenat (1757-1808) Kunth : Carl Sigismund Kunth (1788-1850) --- Dryand. : Jonas Carlsson Dryander (1748-1810) 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から12.50km(左岸土手に隣接する畑)2005.05.20, 2006.05.10, 2006.05.29 賤機山 2018.05.10, 2018.05.14, 2018.05.21, 2018.06.14 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 15 June 2006, 19 March 2015, 14 September 2015, 22 May 2018, 31 May 2018, 23 June 2018 Last modified: 17 September 2023
by pianix
| 2006-06-15 00:00
| 花
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Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
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