ツノトンボ(角蜻蛉)は、夏休みになると問い合わせが多くなる昆虫です。「蝶のような長い触角を持った変なトンボを発見したけど、これは何か」と言うものです。一見するとトンボのようで、よく見ると長い触角に違和感を覚えてトンボとは違うと気が付きます。トンボの触角は極短いからです。
「触角のあるトンボ」は、結論から言えば、トンボではありません。ウスバカゲロウの仲間です。日本や朝鮮半島、台湾、中国に分布します。日本では本州から九州に分布します。名の由来は、長い触角を角に例え、トンボの様な形状から。中国名は、黄脊蝶角蛉(huáng jǐ dié jiǎo líng)。ちなみに、学名Hybris subjacensの読みは「ヒブリス・スブヤケンス」です。 5月から9月頃、平野部から丘陵地の草地に現れます。体は細長く、体長は3cm前後、翅を広げて7cm程です。雄は赤褐色で尾に2つの鋏状の付属物があります。雌は雄より太く、黄色の模様が並んでいて鋏状付属物はありません。触角が長く3cm程あり、先端には膨らんだ球桿(きゅうかん)があります。触角は、節足動物にあり、臭いや振動を感じる感覚器官です。 翅は2枚2対、計4枚あり、透明、翅脈は網目状です。この翅はトンボと見分ける大切な部分です。トンボの形態的特徴である結節が無いからです。結節とは、翅の中央付近の前縁部にある節の事です。トンボのように上手な飛び方ではありません。少し飛んですぐに止まります。染色体数は、2n=22。 トンボの場合は不完全変態(卵・幼虫・成虫)で、蛹の時期はありません。ツノトンボは蛹の時期があり、完全変態(卵・幼虫・蛹・成虫)します。卵は木や草の茎に産み付けられます。幼虫はアリジゴク(蟻地獄)【ウスバカゲロウ(薄羽蜻蛉)の幼虫】に似ていますが巣は作りません。肉食性で、物陰に隠れて小昆虫を補食します。(保護者様へ:お子さんには分かりやすい言葉で説明してあげて下さい) このツノトンボの仲間に、本州や四国、九州に分布するオオツノトンボ(大角蜻蛉) Protidricerus japonicus (MacLachlan, 1891)、本州や九州に分布し後翅に黄色の筋模様があるキバネツノトンボ(黄羽根角蜻蛉) Ascalaphus ramburi MacLachlan, 1875、沖縄に分布するオキナワツノトンボ(沖縄角蜻蛉)Suphalomitus okinawensis (Okamoto, 1910)がいます。 トンボの仲間は、大きく分類するとトンボ目(蜻蛉目1))になります。ところが、ツノトンボはアミメカゲロウ目(脈翅目2))に分けられます。アミメカゲロウ目には3亜目があります。つまり、ヘビトンボ亜目(広翅亜目3))、ラクダムシ亜目(駱駝虫亜目4))、アミメカゲロウ亜目(扁翅亜目5))です。ツノトンボは、アミメカゲロウ亜目です。アミメカゲロウ亜目には17科約4000種があり、日本には約116種がいます。より詳細に分類すると、ウスバカゲロウ上科(Myrmeleonoidea)の内の、ツノトンボ科(Ascalaphidae Linnaeus, 1758)となります。ツノトンボ科は約200種が分布し、日本には4種が分布します。 脚注: 1)蜻蛉目(せいれいもく)Odonata Fabricius, 1793 2)脈翅目(みゃくしもく)Neuroptera Linnaeus, 1758 3)広翅亜目(こうしあもく)Megaloptera Latreille, 1802 4)駱駝虫亜目(らくだむしあもく)Raphidiodea Burmeister, 1838 5)扁翅亜目(へんしあもく)Planipennia Burmeister, 1839 Japanese common name : Tuno-tonbo ツノトンボ(角蜻蛉) アミメカゲロウ目(脈翅目)ツノトンボ科Hybris属 学名:Hybris subjacens (Walker, 1853) 体長:約30mm/開張:約70mm 出現期:5月~9月 分布:本州、四国、九州 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から11.75km 右岸河川敷 2006.07.27 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 31 July 2006 Last modified: 23 August 2018
by pianix
| 2006-07-31 00:00
| 虫
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Comments(4)
ツノトンボの存在初めて知りました。
珍しい写真を有り難うございます。
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pianix at 2006-08-02 21:30
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Satoru
at 2022-07-21 22:02
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50年位前。
バイクにのり、熊本県の山中で迷いこみ夜になり、山道の一軒家の光で止まり休憩をした時に、珍しいトンボを見つけて捕まえました。 道路地図の裏表紙に乗せ写真を撮り、時あれば調べようと思っていました。 触角が取れてしまい、人に見せても触角が偽物と疑われると思い、今まで他言もしませんでした。 今の今まで蝶とは思いませんでした。 最近始めたインターネットで検索を覚え、ひょっとしてググる。 スッキリ。
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pianix at 2022-08-02 13:48
Satoruさん、こんにちは。
リアルな発見の様子が伝わってきました。 「山中で迷いこみ夜になり」は、心細かったですね。 「今の今まで蝶とは思いませんでした。」 チョウでは無く、カゲロウの仲間です。 「スッキリ。」 名前が分かると、本当にすっきりしますね。 でも、昆虫などは新種の可能性もあるので頭を悩ますかもしれません。
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「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 1月末日現在) 合計677,147人 (前年同月比 -5,763人) 男:329,734人 女:347,413人 世帯数324,434戸 (前年同月比 +1.576戸) 最新のコメント
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