ネナシカズラ(根無葛)は、ヒルガオ科ネナシカズラ属の1年草の寄生植物です。日本、中国、韓国、ベトナムに分布し、アメリカ南部に帰化しています。国内では、全国に分布する在来種です。名の由来は、根が無く伸びる蔓性の植物である事から。カズラ(葛)は蔓性植物の総称。中国名は、金燈藤(jīn dēng téng)。英名は、Japanese dodder。
ヒルガオ科(Convolvulaceae Juss. (1789))は、熱帯から亜熱帯に約58属1650種が分布し、日本には5属10種があります。ネナシカズラの仲間は、寄生生活をし、胚は無子葉で螺旋状に巻く等の特殊性がある事から、クロンキスト体系ではネナシカズラ科として独立させています。ネナシカズラ属(Cuscuta L. (1753))は、世界に約170種があり、日本には4種(ネナシカズラ、ハマネナシカズラ1)、クシロネナシカズラ2)、マメダオシ3))が自生します。 種子の発芽後は、空気中の化学物質の匂いを頼りに宿主を見つけ蔓を伸ばします。他の植物(宿主|寄主)4)に巻き付き、寄生根を差し込んで養分を吸収し始めると主根は枯れていきます。寄生根(parasitic root)の形態には、ハマウツボ型(Orobanche type)、ヤドリギ型(Viscum type)、シオガマギク型(Pedicularis type)があり、この吸盤状の寄生根を、ネナシカズラ型(Cuscuta type)と分類します。 寄生植物には、光合成を行い炭水化物を合成する事ができる「半寄生植物」と、光合成を行わない「全寄生植物」とがあります。ネナシカズラは全寄生植物で、宿主の栄養を頼りに成長します。宿主が枯れれば栄養を絶たれて死滅します。 日当たりのよい山野(垂直分布は低地から1000m位まで)に自生します。茎は黄緑色で紫色の斑点があり、径0.5~2.5mm。葉は退化した鱗片状で先端が3裂し、互生します。花期は8月から10月頃で、0.8~2cmの短い穂状花序を出し、白色の小鐘形筒状花を付けます。花冠は長さ約4mmで、先端が5裂します。 雄しべは5個で長さ約1mm、花柱は1個で柱頭は2裂し、長さ約1.5mm。因みにアメリカネナシカズラ5)、ハマネナシカズラ、マメダオシは花柱が2個あります。萼は5裂片が重なり合い長さ1~1.5mm、点状の突起があります。 果実は蒴果です。卵形で径4~5mm。熟すと上部の蓋が取れて種子を散布します。種子は黒色で2.5~3mm。種子を煎じたものをトシシ(莵絲子)と言い、強壮薬として使われます。種子で越冬します。染色体数は、2n=28,56。 脚注: 1) ハマネナシカズラ(浜根無葛)Cuscuta chinensis Lam. 2) クシロネナシカズラ(釧路根無蔓)Cuscuta europaea L. 3) マメダオシ(豆倒し)Cuscuta australis R.Br. 4) 宿主(しゅくしゅ)・寄主(きしゅ)(host):寄生生物が寄生する相手の生物 5) アメリカネナシカズラ(亜米利加根無葛)Cuscuta campestris Yuncker 参考: カズラと名が付く主なものに、フウトウカズラ(風藤葛)、サネカズラ(実葛)、テイカカズラ(定家葛)があります。その他に、ヘクソカズラ(屁糞葛)、ネナシカズラ(根無葛)、アメリカネナシカズラ(亜米利加根無蔦)、スイカズラ(吸葛)、ホタルカズラ(蛍葛)、ノウゼンカズラ(凌霄花) 等があります。 Japanese common name : Nenasi-kazura ネナシカズラ(根無葛) 学名:Cuscuta japonica Choisy ヒルガオ科ネナシカズラ属 花期:8月~10月 1年草(寄生植物) 草丈:蔓性 花冠径:4mm 【学名解説】 Cuscuta : kassyein(絡み付く、巻き込まれる)/ネナシカズラ属 japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)] Choisy : Jacques Denys (Denis) Choisy (1799-1859) 撮影地:静岡県静岡市 安倍川/河口から9.0km 右岸河川敷 2006.10.30 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 11 November 2006 Last modified: 22 September 2015
by pianix
| 2006-11-11 00:00
| 花
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Comments(3)
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namiheiii at 2006-11-11 17:52
精密な画像に驚きます。宿主となる植物は限られるのでしょうか?どんな植物がありますか?匂いで探すと言うのが興味深いです。
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pianix at 2006-11-11 20:46
namiheiiiさん、こんにちは。
ネナシカズラは、アメリカネナシカズラと同様に宿主を選ばないようです。小麦は苦手のようです。 (河川敷には、圧倒的にアメリカネナシカズラが多いです)。 いわゆる、臭いによって宿主を嗅ぎつける事は、私自身初めて知りました。興味があったら、以下のサイトを参照されて下さい。 http://news.nationalgeographic.com/news/2006/09/060929-smelling-weeds.html ネナシカズラは研究が進んでいます。「ネナシカズラには、ミトコンドリア型や細胞質型のtRNA遺伝子に加えて新しいタイプの細胞質型tRNAリジンが存在する」(富山大・若杉他)というのは面白そうだと思います。でも、このブログの主旨ではないので、難しそうな事は全部カットしています。私自身が分からないからです。
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namiheiii at 2006-11-13 22:23
文献お教え頂き有難うございました。趨化性の一種でしょうが植物が臭いを嗅ぐというのは驚きでした。やった実験も面白いですね。臭い分子は何?受容体は?情報伝達は?これからやる事が山ほどありますね。でも何故か動物に比べて植物の分子レベルの理解は遅れているようですね。
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Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
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