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イカリソウ(碇草)
 イカリソウ(碇草/錨草)は、メギ科イカリソウ属の多年草です。本州の太平洋側に分布します。日本固有種です。名の由来は、花の形状が船舶のイカリ(碇)に似ることから。中国名は、长距淫羊藿(cháng jù yín yáng huò)。

 メギ科(Berberidaceae Juss. (1789))は、北半球の温帯を中心に約15属570種が分布します。日本には22種が自生します。イカリソウ属(Epimedium L. (1753))は、ヨーロッパからアジアにかけて約25種が分布します。日本には4種3亜種があると言われています。

 山地の明るい林床や斜面に自生します。塊状の地下茎があり木質化します。細長く硬い茎を数本叢生し、20~40cmに斜めに立ち上がります。1本の茎に長い葉柄を出し葉を付けます。葉は2~3回3出複葉です。

 複葉(compound leaf)は、全裂して2以上に分かれている葉の事です。その分かれた葉を小葉(leaflet)と呼びます。両側に出ている小葉が側小葉(lateral leaflet)で、先端にある小葉は頂小葉(terminal leaflet)です。この小葉が3枚付くものを3出複葉(ternate leaf)と呼びます。

 この3出複葉がさらに複葉となるものを再複葉(decompound leaf)と呼びます。3回繰り返されるものが3回3出複葉です。この名称は、葉の付き方の形式を複数組み合わせたものである事が分かります。

 小葉の長さは3~8cmで、基部が心形となり、ゆがんだ卵形をしています。葉の縁には小さな刺毛、葉裏には開出毛があります。

 花期は、4月から5月頃。茎の途中から長い花柄を出して総状花序を付けます。萼片は2重になり、外萼片と内萼片のそれぞれに4枚、計8枚があります。外萼片は開花前に脱落します。

 花の径は2cm内外。花色は紅紫色、淡紅紫色、桃色、淡桃色、白色等があります。花弁は4枚で基部に15~20mmの長い距があります。両性花で雄しべ4個、雌しべ1個があります。他の株の花粉が必要な自家不稔性で、他家受粉によって結実します。子房上位。染色体数は、2n=12。

 果実は袋果です。長さは5mm~30mmで、裂開して5~8個の種子を出します。種子には白色の種枕(しゅちん・caruncle)があり、これを好む蟻などに運ばれ種子が散布されます。

 母種は、ヤチマタイカリソウ(八衢碇草)Epimedium grandiflorum C.Morren var. grandiflorumで、本州から九州にかけて分布します。日本海側には、葉が常緑のトキワイカリソウ(常磐碇草)Epimedium sempervirens Nakai、淡黄色の花をつけるキバナイカリソウ(黄花碇草)Epimedium koreanum Nakaiがあります。

 生薬の淫羊霍(いんようかく)は、ホザキノイカリソウ(穂咲の碇草)Epimedium sagittatum (Siebold et Zucc.) Maxim.の全草を乾燥させたもの。中国原産。有効成分はフラボノイド配糖体のIcariinで、強壮・強精剤として用いる。

Japanese common name : Ikari-sou
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Epimedium grandiflorum C.Morren. var. thunbergianum (Miq.) Nakai

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花弁は4枚で基部に15~20mmの長い距がある。両性花で雄しべ4個。

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左:花期の萼片は4枚。 右:葉の縁に刺毛がある

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ホザキノイカリソウ(穂咲の錨草)
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Epimedium sagittatum (Siebold et Zucc.) Maxim.


イカリソウ(碇草)
メギ科イカリソウ属
学名:Epimedium grandiflorum C.Morren var. thunbergianum (Miq.) Nakai
花期:4月~5月 多年草 草丈:20~40cm 花径:約2cm

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【学名解説】
Epimedium : 地名のMediaに由来するepimedion/イカリソウ属
grandiflorum : grandiflorus(大きい花の)
C.Morren : Charles Francois Antoine Morren (1807-1858)
var. : varietas(変種)
thunbergianum : Carl Peter Thunberg (1743-1828)氏の
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)
---
*Epimedium sagittatum (Siebold et Zucc.) Maxim.
sagittatum : sagittatus(やじり形の)
Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Zucc. : Gerhard Zuccarini (1790-1848)
Maxim. : Carl Maximowicz (1827-1891)

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/千代山(Sendai-yama, Alt.226m) 2007.04.05
静岡県立大学薬草園 2006.04.06
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

17 May 2007
Last modified: 9 January 2019
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by pianix | 2007-05-17 00:00 | | Comments(4)
Commented by nenemu8921 at 2007-05-20 02:31
わぁー。白い花は、Fairy wingsという英名がピッタリですね。
宮沢賢治の作品にイカリソウは見かけませんが、もし妖精のつばさというこの言葉を知っていたら、きっと作品に取り上げたでしょうに。
ホザキイカリソウは初めて拝見しました。
Commented by pianix at 2007-05-30 22:28
nenemu8921さん

名前からイメージが相当に変わりますね。
トケイソウも時計と見るかPassion Flowerのように受難と見るかで迷わされます。
Commented by namiheiii at 2007-05-31 21:52
どうしてすべての花にピントが合っているのだろう。三脚をお使いですね。
Commented by pianix at 2007-06-04 14:58
namiheiiiさん

観察と称した散歩には、愛称「野草3号」というバイクで出かけています。
したがって、三脚は荷物になるので使用していません。時々、カメラさえも忘れたりします(!?)。
シャッターを押すたびに汗が流れるのは、カメラをホールドするために息を止めるからです。実に感度が低くピントが合わないカメラを使用しています。現在手元になく、3回目の修理に出しています。家内からはカメラを新調したらと言われていますが、いかにお金をかけないで趣味を実現できるかと頑固に考えています。予算ゼロが理想です。
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