ヒグラシ(蜩)は、セミ科ヒグラシ属の昆虫で、セミの一種です。東アジアに分布し、日本では北海道南部・本州・四国・九州に分布する在来種です。名の由来は、日が暮れる頃に鳴くことが多いことからと言われています。セミは、世界に約2,000種、東南アジア地域に約650種、日本には32種、亜種を含めて36種がいると言われています。
セミ科に共通する特徴は次のようです。頭部は幅が広い三角形で、左右に複眼があり、複眼の間に単眼が3つあります。触覚は短く毛状です。頭の下から後方にまで伸びる針状の口があり、成虫は樹液を吸汁しまます。幼虫は地中の植物の根から汁を吸います。前翅は後翅よりも大きく、雄は大きな声で鳴き、雌を呼び集めます。 ヒグラシは、平地や山間部の林内に生息します。体色は赤褐色で、緑色と黒色の紋様があります。7月~9月にかけて、朝夕や日中の薄暗い時に「カナカナカナ」、あるいは「ケケケケケ」と鳴きます。鳴くのは雄成虫のみです。腹部には発音器官があります。薄い発振膜を振動させて小さな音を出し、空洞の腹部が共鳴室となり増幅されます。雌成虫の場合は腹部に産卵器官があり、発音器官はありません。 セミの体は頭部・胸部・腹部に分かれます。頭部は小さく、両外側につく2つの複眼と、その間に三角形に配置された3つの単眼があります。触覚は毛状で、ごく短く、根元から先端にかけて細くなります。口ばしは管状で、2本の針(大顎刺針・小顎刺針)が納められています。頭部の下から出て前脚の間を通ります。これで樹液を吸います。 胸部には脚と翅があります。脚は、前脚・中脚・後脚の3対6本があります。翅は前翅と後翅の2対4枚があります。前翅が大きく、後翅は膜状です。透明で翅脈が通ります。胸部の背の前中央には緑色の筋があり、腹部は赤味を帯びます。背面は白い帯状になっています。雄には腹弁があり、雌には尾部に短く硬い産卵管があります。 不完全変態をします。卵・幼虫・蛹・成虫の過程を経るものを完全変態といい、蛹の時期が無く、卵・幼虫・成虫を経るものを不完全変態と言います。雌は腹尾部にある産卵管を樹皮に差し込み産卵します。卵は白色で、幼虫になると木から下りて土中に潜ります。幼虫の体色は白色で一部透明感があります。前脚は土を掘り起こしやすいツルハシ状になっていて、これを使って土中を掘り進みます。植物の根から汁を吸い、脱皮しながら成長します。その期間は3~4年と言われていますが、生態を含めて詳しく解明されていません。 長い土中生活を終え終齢幼虫となり、土中から這い出します。草や木にしがみ付き、夕方頃から羽化をはじめます。背中部分が縦に割れ、頭部から出ます。細い紐状のものも出てきますが、幼虫の腹部に数個ある呼吸用の穴の脱皮跡です。羽化直後は体色が白色を帯びていますが、体が乾く朝頃には色も着き飛びまわれるようになります。 デジタルカメラのビデオ機能を使ってヒグラシの鳴き声を収録しながら観察をしました。晴れの日の真昼でしたが、薄暗い林内はヒグラシの声が響き渡っていました。杉の幹を横歩きで移動しながら鳴いていました。鳴く時に場所を変えるのを渡り鳴きと言うようです。セミはどの種類もそうですが、近くで聞くと耳をつんざくような甲高い声です。カナカナカナと鳴いて間を空け、他のヒグラシの声に呼応するように順序良く鳴いていました。 Japanese common name : Higurasi ヒグラシ(蜩/茅蜩/秋蜩/日暮) 別名:カナカナ/カナカナゼミ カメムシ目(半翅目)セミ科セミ亜科ヒグラシ属 学名:Tanna japonensis Distant, 1892 体長:♂28~38mm/♀21~25mm 出現期:7月~9月 分布:日本(北海道・本州・四国・九州)・中国 撮影地:静岡県静岡市 千代山(Alt. 226m) 2007.08.10 高山(牛ヶ峰)Alt.717m/谷沢ルート 2008.08.08 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] Last modified: 11 September 2007
by pianix
| 2007-09-11 00:00
| 虫
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Comments(2)
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nenemu8921 at 2007-09-11 23:34
こんばんわ。久しぶりの更新、嬉しいです。(*^_^*)
すごいクリアな画像ですね。ブルーのライン、透き通った羽、木の実みたいな目、魔法のレンズのようです。 ヒグラシは決まった時間に全員がピタッと鳴き止むことはないのでしょうか?? ハルゼミは10時になるとピタッと黙るんです。びっくりしました。でも道路を挟んだ隣のブナ林ではルールが違うとばかりになき続けていましたが。
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pianix at 2007-09-29 17:35
nenemu8921さん
今日はブログを書けるかなと思っていると、雑用が舞い込みます。 ブログを書く時間は睡眠時間を削って作っています。最近、眠いので駄目みたいです。 ここに植物や昆虫を掲載していると、「花や虫が」好きなんだねと言われます。 残念ながら虫は特に苦手です。 昆虫採取はまったくしませんが、今年は日本自然保護協会のイベントに沿ってセミの抜け殻採取をしました。
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Introduction
「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
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