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シタキソウ(舌切草)
 シタキソウ(舌切草)は、キョウチクトウ科シタキソウ属の蔓性常緑小高木です。千葉県以西から九州、沖縄に分布する在来種です。和名は、江戸時代の本草学者である井岡冽(Retu Inooka, 1778-1837)氏が命名、シタキリソウを略してシタキソウ。名の由来は不明です。中国名は、黑鰻藤(hēi mán téng)、舌瓣花(shé bàn huā)。

 キョウチクトウ科(Apocynaceae Juss. (1789))は、熱帯・温帯に分布し、215属2100種に及ぶ大きな植物群です。旧分類のガガイモ科(Asclepiadaceae R.Brown (1810))は、熱帯から亜熱帯に約250属2700種が分布し、日本には6属、数十種類があります。シタキソウ属(Jasminanthes Blume (1850)) は、世界に15種が分布します。

 海に近い山地に自生します。葉は単葉で対生します。柄の長さは1.5~3cm。葉の形状は、卵形から卵状楕円形で長さ6~12cm、幅5~11cm。基部は心臓形で、先端は鋭頭、革質で厚みがあり、鋸歯はありません。茎は蔓となり、他の物に絡みついて立ち上がります。若い茎は緑色で淡褐色の毛があり、茶褐色の木質化した古い茎の途中から分枝します。若い茎や葉には乳液が含まれます。

 花期は6月から7月頃。葉腋から集散花序を出します。花冠は白色。基部は筒状で、先が深く5裂し開出する筒状花です。強い芳香があります。裂片は肉厚で、分岐部で交互に重なります。筒部の長さは約1cm。花冠の径は4~6cm。萼片は5全裂し先端が丸く、長さ約7mm。両生花で、雄しべと雌しべが合着した蕊柱(ずいちゅう:gynostemium)があります。子房上位。

 果実は袋果です。基部からハの字形となる莢(さや)状で長さ13~20cm程。基部に5個の萼片が残ります。種子は袋果にぎっしりと詰込まれ、卵形で扁平、長さ約10~12mm。先端に2.5cm程の冠毛があり、風によって散布されます。

 よく似た園芸種にステファノティス属の、アフリカシタキヅル(マダガスカルジャスミン)Stephanotis floribunda (R.Br.) Brongn.があります。

※分類は、APG分類体系(Angiosperm Phylogeny Group)によります。

【謝辞】市内在住の寺内氏から自生地と開花の情報を提供して頂き、本種を河川敷で撮影する事ができました。ご厚意に感謝し、お礼申し上げます。

Japanese common name : Sitaki-sou
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Jasminanthes mucronata (Blanco) W.D.Stevens et P.T.Li

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左:花冠裂片は分岐部で交互に重なる      右:筒部の長さは約1cm

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右:基部が筒状で先が深く5裂する 左:葉は単葉で対生
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葉は、卵状楕円形で長さ6~12cm、幅5~11cm、先が尖る

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左:茎の下部 右:茎の上部

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ハエの仲間(左)や、蟻(右)などが媒介する

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左:花冠基部 萼は5全裂し先端は丸い  右:花冠基部内部

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左:果実は袋果で、全体の長さは約30cm。2013.08.19 右:種子 2013.03.29
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袋果内の種子。扁平で冠毛がある。縦に切れ目が入って裂開する。2017.01.31


シタキソウ(舌切草)
別名:オキナワシタキヅル(沖縄舌切蔓)
キョウチクトウ科シタキソウ属
学名:Jasminanthes mucronata (Blanco) W.D.Stevens et P.T.Li
synonym : Stephanotis lutchuensis Koidz. var. japonica (Makino ex Nakai) Hatus.
花期:6月~7月 蔓性常緑低木 草丈:蔓性(~12m) 花径:40-45mm

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【学名解説】
Jasminanthes : Jasminum(ジャスミン)+anthos(花)/シタキソウ属
mucronata : mucronatus(微凸頭の)
Blanco : Francisco Manuel Blanco (1778-1845)
W.D.Stevens : Warren Douglas Stevens (1944-)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
P.T.Li : Ping-t'ao Li (1936-)
---
synonym : (シノニム) 同意語、異名
Stephanotis : stephanos(冠)+otis(耳)/ステファノティス属
lutchuensis : 琉球産の
Koidz. : 小泉源一 Koidzumi Genichi (1883-1953)
var. : varietas(変種)
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
ex : ~による
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)
Hatus. : 初島住彦 Sumihiko Hatusima (1906-2008)
※小泉源一:日本植物分類学会創立者

撮影地:静岡県静岡市
安倍川/河口から11.75km 右岸河川敷 2008.06.05, 2008.06.06
安倍城跡(Alt.435m) 2008.07.11, 2013.03.29, 2013.08.19
賤機山(Alt. 171m) 2016.05.31
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

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Last modified: 31 January 2017
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by pianix | 2008-12-18 00:00 | | Comments(2)
Commented by 晃ちゃん祐ちゃん父さん at 2011-06-17 19:59 x
はじめまして、この花を今日初めて見付けました。名前が分からず検索をしていたら、こちらのブログに着きました。

お陰様で名前も分かり、ブログにアップ出来ます。

お書きになられている方が市内の方とは驚きました。
Commented by pianix at 2011-06-19 15:23
晃ちゃん祐ちゃん父さん、こんにちは。

Blogにコメントを頂き感謝いたします。
お茶がないと生きていけそうもない茶爺です。
幾つかの写真を拝見して、はて?どこかで見た景色と思いきや、
ごくお近くだったのですね。
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