マンサク(満作)
 マンサク(満作)は、マンサク科マンサク属の落葉小高木です。本州(太平洋側)、四国、九州に分布する在来の日本固有種です。名の由来は、不明です。東北の方言で「まんずさく=先ず咲く」、枝に多数の花がつく事から「満作」との説があります。語源不明なため万作とも書き、漢字表記も当て字と思われます。中国名は、金縷梅(jīn lǚ méi)で、これはシナマンサク1)(支那満作)を指します。

 マンサク科(Hamamelidaceae R.Br. (1818))は、亜熱帯から暖帯に27属約80~90種が分布します。マンサク属(Hamamelis L. (1753))は、東アジアと北米に約4種が分布します。

 山地に多い落葉小高木で、樹高は2~5m。樹皮は灰色。葉柄は長さ5~15mm。葉は互生します。長さ5~10cm、幅5~7cmの菱状円形から倒卵形で、波状の鋸歯があります。葉裏は脈が隆起して目立ちます。葉柄や葉表に軟毛があるのは、シナマンサクです。

 花期は、2月から3月。葉に先立って花を咲かせます。丸めて収められていた花弁を展開するため、ねじれた細長いリボン状となります。花弁は黄色で4枚。長さ12~15mmで、花径は2~3cm。雌雄同株。雄しべ4個、線形の仮雄しべ4個があります。葯室は2個あり、葯色は黄色。雌しべ花柱は先端が2裂します。萼片は、暗紫色の卵形で4個。

 果期は6月頃。果実は蒴果です。褐色の腺毛がある卵形球状で固く、長さ約1cm。2裂して2個の種子を出します。種子は黒色の長楕円形で、長さ7~9mm。染色体数は、2n=24。

 萼片が黄色のものは、岡山県阿哲地方に自生するアテツマンサク2)(阿哲満作)で、準絶滅危惧(NT)。葉先が丸いのは、マルバマンサク2(丸葉満作)です。他に園芸品種が多数あります。

 樹皮を縄の代用として用いる事があります。虫瘤のマンサクメイボフシ(満作芽疣付子)や、マンサクメイガフシ(満作芽毬付子)が付く事があります。また、葉枯れの病気が発生する場合があり、原因の究明が急がれています。乾燥葉を民間療法や収斂化粧水とする事がありますが、薬用として用いられる事はありません。

脚注:
1)シナマンサク(支那満作)
Hamamelis mollis Oliv.
2)アテツマンサク(阿哲満作)
Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. bitchuensis (Makino) Ohwi[準絶滅危惧](NT)
3)マルバマンサク(丸葉満作)
Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. discolor (Nakai) Sugim. f. obtusata (Makino) H.Ohba

Japanese common name : Mansak
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Hamamelis japonica Siebold et Zucc.

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花弁4枚と雄しべ4個、仮雄しべ4個があり、雌しべ花柱は2裂。萼片は暗紫色。

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左:花後に葉が展開する 右:樹皮
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Japanese common name : Atetu-mansak
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アテツマンサク(阿哲満作)
Hamamelis japonica Siebold et Zucc. var. bitchuensis (Makino) Ohwi


マンサク(満作)
マンサク科マンサク属
学名:Hamamelis japonica Siebold et Zucc.
花期:2月~3月 落葉小高木 樹高:2~5m 花径:2~3cm

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【学名解説】
Hamamelis : hamos(似た)+melis(リンゴ)からの転用/マンサク属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Siebold : Philipp Franz (Balthasar) von Siebold (1796-1866)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Zucc. : Gerhard Zuccarini (1790-1848)
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シナマンサク(支那 満作)
mollis : 軟毛のある
Oliv. : Daniel Oliver (1830-1916)
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アテツマンサク(阿哲満作)
var. : varietas(変種)
bitchuensis : 備中(現岡山県西部)産の
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
Ohwi : 大井次三郎 Jisaburo Ohwi (1905-1977)
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マルバマンサク(丸葉満作)
discolor : 2色の
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)
Sugim. : 杉本順一 Jun'ichi Sugimoto (1901-1988)
f. : forma(品種)
obtusata : obtusatus(鈍頭の)
H.Ohba : 大場秀章 Hideaki Ohba (1943- )

撮影地:岩手県盛岡市
北松園緑地 カモシカ峠(植樹) 2018.03.24
[Location : Morioka City, Iwate Prefecture JAPAN]

Last modified: 16 April 2018
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# by pianix | 2018-04-16 00:00 | | Trackback | Comments(0)
エノキハトガリタマフシ(榎葉尖り玉付子)
 ある里山の休憩地で、草花の手入れをしていた婦人がいました。話を伺うと、勝手にボランティアしていると話してくれました。幾つかの草花を紹介して下さり、解説も交えてくれました。その詳しさに感心していましたが、どうしても分からない木があるから教えて欲しいと問われました。このような人が分からないのだから、私などに分かるはずがありません。葉に実が付いているというのです。私には、ハナイカダ(花筏)しか思いつきませんでした。

 案内されたところにあった木は、エノキ(榎)でした。婦人が言うには、葉に実が成っているから変だと言うのです。そしてそれは盛大に付いています。その瞬間、私の頭にあった名前が消失しました。ど忘れです。家に着く前に思い出すと思うが、後日に名前を記したラベルを付けておくから確かめて欲しいと言い訳をしてその場を去りました。

 後日、約束通りにラベルを枝に取り付けておきました。葉に付いたものは虫瘤で、エノキハトガリタマフシ(榎葉尖り玉付子)でした。その後にお会いした時、「気持ちが悪いと言いながら何度も虫瘤を割って中の虫を見ている女性がいる」と教えてくれました。謎が解けて、興味津々なのでしょう。

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 エノキハトガリタマフシは、エノキトガリタマバエ(榎尖り癭蠅)の虫瘤(gall)です。主に葉に産卵して、円柱形で先が尖る虫瘤を生成します。大きさは、径2~5mm、長さ3~10mm。1虫瘤に一匹の幼虫が住んでいます。エノキハトガリタマフシは、6月頃に葉から落ち、翌年の3月頃からエノキトガリタマバエが羽化します。羽化後は短命です。体長は、約4mm。エノキハトガリタマフシは、オナガコバチ科のTorymus celticolus Matsuo, 2009やTorymus celtidigalla Matsuo, 2009に寄生される事があります。

 エノキトガリタマバエ(榎尖り癭蠅)は、ハエ目(双翅目)タマバエ科の昆虫です。分布域はエノキの分布に準じます。タマバエ科(Cecidomyiidae)は、世界に約4600種以上があります。日本では193種が知られています。

 エノキ(榎)は、アサ科エノキ属の落葉高木です。名の由来は不明です。明るいところを好み、樹高は大きなもので20mになります。葉は互生します。広卵形で、先端部分に鋸歯があります。雌雄同株。果実は核果です。種子は卵形で約5mm。

 アサ科(Cannabaceae Martinov (1820))は、10属約70種があります。クロンキスト及びエングラー体系ではニレ科です。エノキ属(Celtis L. (1753))は、熱帯から温帯の東アジアに約100種が分布します。日本では、本州、四国、九州に分布します。中国名は、朴树(pò shù)。

Japanese common name : Enoki-ha-togari-tama-fusi
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Celticecis japonica Yukawa et Tsuda, 1987

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緑色のエノキハトガリタマフシがエノキの葉に所狭しと盛大に付く。

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葉表・葉裏だけでは無く、葉柄、枝にも付く。時期が来ると茶色に変色する。

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先が尖った円柱形。中にウジ虫のような幼虫が住んでいる。


エノキトガリタマバエ(榎尖り癭蠅)
ハエ目(双翅目)タマバエ科
学名:Celticecis japonica Yukawa et Tsuda, 1987
分布:本州、四国、九州

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【学名解説】
Celticecis : エノキのタマバエ/Celticecis属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Yukawa : 湯川淳一 Junichi Yukawa (1940- )
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Tsuda : 津田良夫 Yoshio Tsuda (1954- )
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エノキ(榎)
アサ科エノキ属
学名:Celtis sinensis Pers.
花期:4月 落葉高木(雌雄同株) 樹高:15~20m 花径:2~3mm

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【学名解説】
Celtis : Gaius Plinius Secundus (23-79)が名付けた想像上の甘い果実/エノキ属
sinensis : 中国の
Pers. : Christiaan Hendrik Persoon (1761-1836)

撮影地:静岡県静岡市
賤機山(Shizuhata-yama) 2016.06.01, 2017.05.03, 2017.05.16
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 2 April 2018
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# by pianix | 2018-04-03 00:00 | | Trackback | Comments(0)