ツタバウンラン(蔦葉海蘭)
 ツタバウンラン(蔦葉海蘭)は、オオバコ科ツタバウンラン属の蔓性多年草です。ヨーロッパの地中海沿岸地方が原産です。園芸用途として大正12(1823)年に移入され、逸出した帰化植物です。日本では、北海道、本州、四国、九州に帰化しています。名の由来は、花がウンラン(海蘭)に、葉がツタ(蔦)に似る事から。英名は、coliseum ivy、Ivy-leaved Toadflax。

 オオバコ科(Plantaginaceae Juss. (1789))は、約90属1700種が分布します。日本には15属43種が自生分布します。旧分類ではゴマノハグサ科1)で、世界に約220属3000種の分布でしたが、現在は約56属2100種に減少しました。ツタバウンラン属(Cymbalaria Hill (1756))は、ヨーロッパ西部、地中海からイランに約10種が分布します。

 石垣や斜面等に自生します。糸状の細い茎を10〜60cmに伸ばし、不定根を出しながら石垣などに絡みつきます。茎は無毛の紫褐色で、径約1mm。もろく、簡単に引きちぎれます。葉柄は10~17mm。葉は互生します。円形や扁円形で、掌状に5〜7浅裂し、長さ1~3cm、幅1.5~4cm。裂片は幅が広く、先端は小型葉が鋭頭、大型葉は微鋭頭の傾向があります。

 花期は、5月から10月頃まで。葉腋から紫色を帯びた10~17mmの花柄を出し、先端に花をつけます。花冠は唇形花2)で、白色や淡紫色。上唇は暗紫色の縦筋が入り、斜めか直立して2裂します。下唇は3浅裂して、基部は背面から押されて湾曲し隆起します。2個の凸部の上部が黄色の蜜標3)になり、内部への通路を塞ぐ形状になります。虫媒花で、訪れた虫が下唇に乗ると開く構造です。後端に長さ約3mmの距があります。花冠の幅は7~10mm、長さは7~10mm。萼は5裂します。萼片は線状披針形で長さ約3mm。

 両性花です。雄しべは長2短2の計4本で、葯は薄黄色。雌しべは1本で、花柱は紫色を帯びます。花冠内部に腺毛があります。子房上位。花後は果柄を25~45mmに伸ばし、下垂します。果実は蒴果です。球形で2室あり、径5~6mm。熟すと裂開します。種子はヒダ状のシワがあり径約1mm。染色体数は、2n=14。

 同属のCymbalaria aequitriloba (Viv.) A.Chev.が、ヒメツタガラクサ(姫蔦唐草)の園芸名で流通しています。花冠が似た種として、ムラサキサギゴケ(紫鷺苔)、トキワハゼ(常磐爆/常盤黄櫨)、カキドオシ(垣通し)、マツバウンラン(松葉海蘭)等があります。

脚注:
1)Scrophulariaceae Juss. (1789)
2)唇形花(しんけいか):合弁花で、筒状の花冠が唇のように上下に分かれる形状の花(lip)
3)蜜標(みつひょう) : 昆虫に蜜の所在を示す標識(nector guide)

Japanese common name : Tutaba-unran
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Cymbalaria muralis G.Gaertn., B.Mey. et Scherb.

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白色花冠。上唇は2裂、下唇は3浅裂。右:背面は大きく窪(くぼ)む。
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紫色花冠。後部に距がある。萼は5裂。

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雄しべは長2短2の計4本。葯色は薄黄色。花冠内部には腺毛がある。

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萼は5裂して萼片は長さ約3mmの線状披針形。葉腋から紫色を帯びた花柄を出す。

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葉は大小があり掌状に5〜7浅裂。裂片は小型葉が鋭頭、大型葉は微鋭頭の傾向。

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花期は長い。

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細い茎を斜面に這わせる。果実は蒴果で下垂し径5~6mm。

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左:若い果実の内部。 右:種子はヒダ状のシワがあり径約1mm。


ツタバウンラン(蔦葉海蘭)
別名:ツタガラクサ(蔦唐草)、ウンランカズラ(海蘭葛)
オオバコ科ツタバウンラン属
学名:Cymbalaria muralis G.Gaertn., B.Mey. et Scherb.
synonym : Linaria cymbalaria (L.) Mill
花期:5月~10月 多年草 草丈:蔓性 花冠長:7~10mm

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【学名解説】
Cymbalaria : kymbalon(シンバル)のような/ツタバウンラン属
muralis : 壁に生える
G.Gaertn. : (P.Gaertn.) Philipp Gottfried Gaertner (1754-1825)
B.Mey. : Bernhard Meyer (1767-1836)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Scherb. : Johannes Scherbius (1769-1813)
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Cymbalaria aequitriloba (Viv.) A.Chev.
aequitriloba : aequalis(同形の)+trilobus(三片の)
Viv. : Domenico Viviani (1772-1840)
A.Chev. : Auguste Jean Baptiste Chevalier (1873-1956)

撮影地:静岡県静岡市
葵区池ヶ谷 2018.05.16, 2018.06.19
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

Last modified: 25 June 2018
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# by pianix | 2018-06-25 00:00 | | Trackback | Comments(0)
オオミスミソウ(大三角草)
 オオミスミソウ(大三角草)は、キンポウゲ科ミスミソウ属の多年草です。北半球温帯(ヨーロッパ、ロシア、中国、朝鮮半島、日本、北米)に分布し、日本では北陸地方の日本海側に分布します。ミスミソウの品種で日本固有変種です。岩手県では、絶滅危惧II類。名の由来は、ミスミソウより大型である事から。ミスミソウは、葉が三角状である事から。葉先が丸いものをスハマソウ(州浜草)と言います。

 キンポウゲ科(Ranunculaceae Juss. (1789))は、世界に62属2500種が分布します。日本には22属149種が分布します、日本固有種は、1属80種(9亜種26変種)があるとされています。ミスミソウ属(Hepatica P. Miller (1754))は、温帯に約9種が分布します。日本には2変種3品種があるとされています。

 低山の落葉広葉樹林や、その斜面等に自生します。葉は根生し、10cm程の葉柄を出します。三角状で3浅裂し、基部が心形で、裂片は全縁で鋭頭か鈍頭。革質で光沢があり、長さ5~6cm、幅6~8m。根生葉の葉腋から白色の長毛がある花柄を出します。草丈は10~20cm。

 花期は、3月から4月。花は茎頂に単生します。花弁は無く、花弁状の萼片が6~10個あります。裂片は卵状披針形から線状披針形で、長さ11~15mm、幅3~6mm。花径は2~3cm。両性花。 雄しべと雌しべは多数あります。萼片に見えるのは総苞片で3枚が輪生します。

 交雑しやすい事から花色の変異が大きく、白色、淡紅色、赤紫色、青色等があり、葯色も白色から淡紅色と多彩です。園芸種も多くあり、雪割草の名で出回っています。花後に花柄を下に向けます。果実は痩果です。総苞片に囲まれて残存花柱がある集合果となります。染色体数は、2n=141)

 本州中部以西、四国、九州に分布し、染色体数が2n=14のミスミソウ(三角草)2)、花色が黄色のエチゼンミスミソウ(越前三角草)3)[福井県県域絶滅危惧I類]、東北から関東の太平洋側に分布するスハマソウ(州浜草)4)があります。近畿以西と四国に分布し、染色体数が4倍体の2n=28, 42で、葉の両面に白毛があるケスハマソウ(毛州浜草)5)があります。それぞれは、一般的に言われている分布域だけでは判別できない事があり、形状も中間型があるなど、注意を要します。

脚注:
1)Nuclear DNA amounts in angiosperms: targets, trends and tomorrow - Annals of Botany Page 1 of 124
2)ミスミソウ(三角草)Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai f. japonica (Nakai) Yonek.
3)エチゼンミスミソウ(越前三角草)Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai f. lutea Kadota
4)スハマソウ(州浜草)Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai f. variegata (Makino) Nakai
5)ケスハマソウ(毛州浜草)Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai f. pubescens (M.Hiroe) Kadota

Japanese common name : Oo-misumi-sou
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Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai f. magna (M.Hiroe) Kitam.

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葉は3浅裂し、基部が心形。花柄に白色の長毛がある。

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萼片に見えるのは総苞片で3枚。花後に花茎は下向く。花弁に見えるのは萼片。


オオミスミソウ(大三角草)
別名:雪割草
キンポウゲ科ミスミソウ属
学名:Hepatica nobilis Schreb. var. japonica Nakai f. magna (M.Hiroe) Kitam.
花期:3月~4月 多年草 草丈:10~20cm 花径:2~3cm

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【学名解説】
Hepatica : hepaticus(肝臓)/ミスミソウ属
nobilis : nobilius(より気高い)
Schreb. : Johann Christian Daniel von Schreber (1739-1810)
var. : varietas(変種)
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Nakai : 中井猛之進 Takenoshin Nakai (1882-1952)
f. : forma(品種)
magna : magnus(大きい)
M.Hiroe : 廣江美之助 Minosuke Hiroe (1914-2000)
Kitam. : 北村四郎 Shiro Kitamura (1906-2002)
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Yonek. : 米倉浩司 Koji Yonekura (1970- ) Tohoku University
lutea : luteus(黄色の)
Kadota : 門田裕一 Yuichi Kadota (1949- )
variegata : variegatus(斑紋がある)
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
pubescens : 細軟毛がある

撮影地:岩手県盛岡市
新庄字下八木田 2018.03.25
[Location : Morioka City, Iwate Prefecture JAPAN]

Last modified: 17 June 2018
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# by pianix | 2018-06-17 00:00 | | Trackback | Comments(0)