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ヤマノイモ(山の芋)
 ヤマノイモ(山の芋)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の蔓性多年草です。日本、中国、朝鮮半島に分布します。日本では、本州から沖縄にかけて分布する在来種です。名の由来は、山に生える芋である事から。里芋に対する名称との説もあります。別名は、ジネンジョ(自然薯)、ジネンジョウ(自然生)、ヤマイモ(山芋)等。中国名は、日本薯蕷(Rìběn shǔyù)。英名は、Yam。

 ヤマノイモ科(Dioscoreaceae R.Br. (1810))は、熱帯及び暖温帯に8属約800種が分布します。ヤマノイモ属(Dioscorea L. (1753))は、東アジア北部に広く分布します。ヤマノイモ科の内、約600種がヤマノイモ属です。約40種が食用とされ、約15種が栽培されていて、日本には13種があります。珠芽があり根茎の根が肥厚するヤマノイモの仲間と、根茎の根が肥厚しないオニドコロの仲間に分ける事ができます。

 日当たりの良い山地の林縁などで自生します。ひげ根がある肥厚した長い担根体(地下茎)があります。地中深くに伸び、長さ1m以上、太さ3cm程になります。食用とされ、粘りが強い事から、「とろろ」として利用されます。栽培では、パイプや波板シートに設置して掘り出しやすいようにしています。

 葉は、対生します。基部が心形の三角状披針形で、長さ5~10cm、幅3~5cm。無毛で鋭尖頭、全緑。葉腋に径1cm内外で腋芽が肥大した偏球形のムカゴ(零余子)を付けます。幅25~28mm。ムカゴは栄養繁殖器官で、落下後に芽を出します。これは食用となります。

 花期は、7月から8月。雌雄異株。葉腋から雄花序と雌花序を出します。雄花序は立ち上がり、花は白色でほとんど開かず、花被片は外花被片3個、内花被片3個の計6個。無柄で径約2mm。雄しべは6個。雌花序は下垂し、基部から順に咲きます。雌しべは3個、柱頭は2裂します。果実は、蒴果です。3つの陵に3室があり、長さ約15mm、幅約25mm。種子は、薄膜状の翼があり、10~15mmの扁平円形。染色体数は、2n=40。

 根茎(担根体)の周皮を取り除き乾燥させたものを、生薬の山薬(第十七改正日本薬局方)として滋養強壮、止瀉、鎮咳に用います。

 ヤマノイモ属は種類が多く、またよく似ているので注意を要します。代表的なものを列挙します。
 ヤマノイモと同じように葉が対生する、帰化種のナガイモ(長薯)Dioscorea polystachya Turcz. 。別名ツクネイモ、中国名は薯蕷。栽培種の逸出で野生する時があります。
 葉が互生するものに、トコロ(野老)の仲間があります。
 オニドコロ(鬼野老)Dioscorea tokoro Makino 別名トコロ(野老)、中国名は山萆薢。山野に多くあり、ヤマノイモと混生している場合があります。雌花は黄緑色。
 タチドコロ(立野老)Dioscorea gracillima Miq. 中国名は纖細薯蕷。本州と九州(2n=20)、四国(2n=40)に分布します。雌花は淡橙黄色。
 ヒメドコロ(姫野老)Dioscorea tenuipes Franch. et Sav. 別名エドドコロ(江戸野老)、中国名は細柄薯蕷。雌花は黄緑色。本州中部以西に分布します。
 カエデドコロ(楓野老)Dioscorea quinquelobata Thunb. 雌花は橙色で、葉が3~9裂します。
 キクバドコロ(菊葉野老)Dioscorea septemloba Thunb. 別名モミジドコロ(紅葉野老)。雌花は黄緑色や暗紫色で、葉は5〜9裂します。
 帰化種のニガカシュウ(苦荷首烏)Dioscorea bulbifera L.f. spontanea (Makino) Makino et Nemoto 別名マルバトコロ、中国名は黃獨。ムカゴがつきます。

Japanese common name : Yama-no-imo
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Dioscorea japonica Thunb.

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左:雄花はほとんど開かない 右:雌花と果実

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左:ムカゴが着生。 右:葉は基部が心形の三角状披針形。

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果実は蒴果。3室あり、円形の薄膜状の翼がある種子を出す。

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左:ヤマノイモ栽培農地     右:梱包状態の販売商品



ヤマノイモ(山の芋)
別名:ジネンジョ(自然薯)、ヤマイモ(山芋)
ヤマノイモ科ヤマノイモ属
学名:Dioscorea japonica Thunb.
花期:7月~8月 多年草 草丈:蔓性 花径:約2mm

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【学名解説】
Dioscorea : Pedanius(Pedanios) Dioscorides (ca.40-ca.90 AD)に因む/ヤマノイモ属
japonica : 日本の[japonicus(男性形)/japonica(女性形)/japonicum(中性形)]
Thunb. : Carl Peter Thunberg (1743-1828)
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ca. : circa(およそ)
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ヒメドコロ(姫野老)Dioscorea tenuipes Franch. et Sav.
tenuipes : 細い柄のある
Franch. : Adrien Rene Franchet (1834-1900)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Sav. : Paul Amedée Ludovic Savatier (1830-1891)
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タチドコロ(立野老)Dioscorea gracillima Miq.
gracillima : gracillimus(非常に細長い)
Miq. : Friedrich Anton Wilhelm Miquel (1811-1871)
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カエデドコロ(楓野老)Dioscorea quinquelobata Thunb.
quinquelobata : quinquelobatus(五浅裂した)
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キクバドコロ(菊葉野老)Dioscorea septemloba Thunb.
septemloba : septemlobus(種の中の真正のもの)
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ニガカシュウ(苦荷首烏)Dioscorea bulbifera L.f. spontanea (Makino) Makino et Nemoto
bulbifera : 鱗茎のある
L.f. : Carolus Linnaeus filius (1741-1783)
spontanea : spontaneus(野生の、自生の)
Makino : 牧野富太郎 Tomitaro Makino (1862-1957)
et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ)
Nemoto : 根本莞爾 Kwanji Nemoto (1860-1936)/日本植物総覧共著者

撮影地:静岡県静岡市
葵区内牧 2006.08.18, 2006.10.27, 2006.10.30, 2006.11.24
葵区昭府町(茶臼山) 2017.12.21
葵区新伝馬 2017.12.30
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

26 December 2017, 31 December 2017
Last modified: 2 January 2018
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by pianix | 2017-12-26 00:00 | | Trackback | Comments(0)
スイフヨウ(酔芙蓉)
 スイフヨウ(酔芙蓉)は、アオイ科フヨウ属の落葉低木です。日本、中国、台湾に分布します。日本では、沖縄、九州・四国に自生します。栽培種として観賞用に関東地方以西に分布します。名の由来は、中国名の木芙蓉(mù fú róng)の略名。中国での芙蓉は、ハスのことで、フヨウがハスの花に似ていることから。スイフヨウは、フヨウの花色が変化する様子を酒に酔った顔色に例えたもの。中国名は、醉芙蓉(zuì fú róng)。

 アオイ科(Malvaceae Juss. (1789))は、熱帯から冷帯にかけて、250属(APG)が分布します。クロンキスト体系(Cronquist system)では、約75属、約1500種でした。フヨウ属(Hibiscus L. (1753))は、約250種が分布します。

 フヨウの1品種として栽培されています。耐寒性がやや弱く、四国・九州・沖縄で自生、暖地で路地植えが可能です。樹高は、150~300cm。葉柄は長さ5~12cm。葉は、互生します。先が浅く3~7裂した五角形状で、基部は心形。長さ幅共に、10~20cm。冬に落葉します。葉や葉柄、萼と副萼片、果実には星状毛と腺毛があります。

 花期は、7月から10月。萼は5裂し、副萼片は線形で10個。花冠は基部で合着し、花径は10~15cm。雄しべが花弁化する八重咲きがほとんどですが一重や半八重もあります。咲き始めは白色で、夕方には紅色へと変化します。1日花です。

 色の変化は、アントシアニン1)(シアニジン-3-サンブビオシド2)、シアニジン-3-グルコシド3))によります。低温下での生合成は弱く、気温25℃以上で進みます。アントシアニン合成酵素のメッセンジャーmRNA 4)の発現量が増加し、アントシアニン色素が花弁液胞内に蓄積して赤色になっていきます5)。紫外線の影響ではありません。

 果実は蒴果です。球形で径25~27mm、裂開して径約32mm。子房上位で5室があります。種子は腎臓形で長さ約2~3mm。背面に長い剛毛があります。八重咲き種は不稔性です。よって繁殖は、挿し木が一般的です。

脚注:
1)Anthocyanin : 植物色素アントシアン(Anthocyan)の一つ。酸性で紅色、アルカリ性で青色にな る。
2)Cyanidin 3-sambubioside(C26H29O15)
3)Cyanidin 3-glucoside(Cl C21H21O11)
4)messenger RNA : 伝令RNA。DNAの遺伝情報を写しとって伝えるRNA(Ribonucleic acid)で、タンパク質合成させる機能をもつ。
5)花色変化メカニズムに関する研究(第3報)—スイフヨウ—(奥尚枝、三島鮎美、石黒京子)武庫川女大薬学部 : 日本薬学会年会要旨集(2011.03.05)

Japanese common name : Sui-fuyou
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Hibiscus mutabilis L. 'Versicolor'

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左:葉は3~7浅裂した掌状。花色が赤に変わっていく<2017.10.11> 右:幹

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果実は蒴果。星状毛と腺毛で覆われている。縦に5裂して多数の種子を出す。

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種子は腎臓形で、背面に長毛がある。


スイフヨウ(酔芙蓉)
アオイ科フヨウ属
学名:Hibiscus mutabilis L. 'Versicolor'
花期:7月~10月 落葉低木 樹高:150~300cm 花径:10~15cm 果期:10月

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【学名解説】
Hibiscus : 由来不明、ゼニアオイ属の古代ギリシャ及びラテン古名/フヨウ属
mutabilis : 変化しやすい、不安定な、色々に変わる
L. : Carl von Linne (1707-1778)
Versicolor : 斑入り、変色、種々の色のある

撮影地:静岡県静岡市
賤機山 2017.10.11, 2017.11.27, 2017.12.14
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

19 December 2017
Last modified: 20 January 2018
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by pianix | 2017-12-19 00:00 | | Trackback | Comments(0)
ショウジョウカ(猩猩花)
 ショウジョウカ(猩猩花)は、アオイ科イチビ属の常緑低木です。グアテマラ、ウルグアイ原産の栽培種です。多くの品種があり、世界の広くで栽培されています。名の由来は、花を中国の伝説上の動物である猩々の赤ら顔に例えたもの。中国名は金铃花で、日本にはオミナエシ科オミナエシ属に同名のキンレイカ(金鈴花)があります。

 アオイ科(Malvaceae Juss. (1789))は、約240属3700種。旧分類では約75属1500種が分布します。イチビ属(Abutilon Mill. (1754))は、アジアからヨーロッパにかけての温帯から熱帯に約100種があります。日本には3属があり、2種が自生します。

 水はけの良い明るいところを好みます。幹は灰褐色で、横長の疣状突起があり、高さ2~3mになります。葉は互生します。葉柄は3~5cm。掌状形に3~5中裂し、長さ5~15cm。葉に黄班が入るものがあります。

 花期は6月から11月。温暖な地域では四季咲きとなります。越冬気温は3~5℃。葉腋から長い花柄を出し、橙色の花をつけます。萼は筒状で緑色、星状毛があり、先が5裂します。5枚の花弁は交互に重なり合い、暗赤色で血管のような脈状模様が入ります。花冠は鐘状形で径2~4cm。花弁長は、4~5cm。下向きに咲き、雄しべと雌しべが花冠から突き出ます。雄しべは合着して筒状となり、葯色は黄色。その先端に5本の雌しべ花柱が伸び、柱頭は赤色。果実は、蒴果です。

★  ★  ★

 里山を歩くと家庭菜園としての農耕地が点在しているのが目に付きます。野菜を作られている方が多いのですが、傍らにきれいな花が咲いている時があります。そのような場合は、必ずと言って良いほど女性の方が作業をされています。作業する農地に彩りを与えるための、女性の細やかな心遣いなのでしょう。掲載した木が植えられている山の農地は、男性の姿しか見たことがありません。草花と異なり、樹木は男性の趣味かもしれません。はたして女性が植えた物なのかどうか、興味があります。

Japanese common name : Syouzyou-ka
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Abutilon pictum (Gillies ex Hook.) Walp.

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葉腋から長い花柄を出し、橙色の花をつける。

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花冠は鐘状形。雄しべは合着して筒状、先端に5本の雌しべがつく。

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萼には星状毛がある

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左:花後は花冠ごと落下する。花柱最下部に子房 右:花柱を取り除いた子房

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左:子房は白毛に覆われている 右:子房断面 胚珠

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左:成熟した果実断面 右:種子

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葉は掌状形で3~5中裂する。幹は灰褐色。


ショウジョウカ(猩猩花)
旧別名:アブチロン・ストリアツム
アオイ科イチビ属
学名:Abutilon pictum (Gillies ex Hook.) Walp.
synonym : Abutilon striatum Dicks. ex Lindl.
花期:6月~11月 常緑低木 樹高:2~3m 花冠径:約4cm

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【学名解説】
Abutilon : a(否定)+ bous(牡牛)+tilos(下痢)/イチビ属
pictum : pictus(有色の、色彩ある)
Gillies : John Gillies (1792-1834)
ex : ~による
Hook. : William Jackson Hooker (1785-1865)
Walp. : Wilhelm Gerhard Walpers (1816-1853)
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synonym : (シノニム)同物異名
striatum : striatus(線条のある、線溝のある)
Dicks. : James (Jacobus) J. Dickson (1738-1822)
Lindl. : John Lindley (1799-1865)

撮影地:静岡県静岡市
賤機山(昭府町) 2017.11.23, 2017.12.06, 2017.12.28, 2018.01.15, 2018.02.05
[Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN]

12 December 2017, 31 December 2017
Last modified: 11 February 2018
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by pianix | 2017-12-12 00:00 | | Trackback | Comments(0)