ヒメコウゾ(姫楮)は、クワ科コウゾ属の落葉低木です。日本、中国、朝鮮半島に分布します。日本では、本州、四国、九州に分布する在来種です。名の由来は、カゾ(紙麻)、カミソ(神衣)、カミソ(紙麻)の転訛との説があります。ヒメは小型との意味で、コウゾと区別するために後に付けられたと言われています。中国名は、楮(chǔ)。
クワ科(Moraceae Link (1831))は、熱帯と亜熱帯に約40属、1000種以上が分布します。コウゾ属(Broussonetia Ortega (1798))は、約11種が分布します。日本には4種1)があります。 山野の林縁、傾斜地に自生します。樹高は、2~5m。樹皮は褐色。幹は径約5cmで、これよりも太くなるものもあります。枝先は細く、径1.2~1.5mmで、しなります。葉は、互生します。卵形や2~3裂葉があり、長さ10~20cm、幅2~5cm。鈍鋸歯があり、先端は尾状となって鋭頭。葉質は柔らかく、折れた枝先を水に差しても、すぐに萎れます。葉柄は、長さ5〜10mmで軟毛はまばら。 葉柄が長さ3cm以上で軟毛が密生しているのはカジノキと推測されます。葉柄の長さの違いは次の通りです。ヒメコウゾ(0.5~1cm)<コウゾ(1~3cm)<カジノキ(3~10cm)。 花期は、4月から5月。雌雄同株異花。集合花で、雌花の花序径は4~8mm。花柄は3~5mm。球状にまとまり、花柱2)を5mm程に伸ばします。雄花序は、新枝の基部に付き、球状で径約1cm。果実は球形にまとまって集合果となり、赤く熟します。一つの果実に一つの核果を含みます。染色体数は、2n=26, 39。 和紙の原料として、コウゾ(楮)、ミツマタ(三又)、ガンピ(雁皮)が利用されます。コウゾの場合は、新しい枝の内樹皮が使われます。害虫として、ヨコバイ、メイガ幼虫、カミキリムシ幼虫が知られています。 脚注: 1)日本に分布する4種のコウゾ属:ヒメコウゾ(姫楮)、ツルコウゾ(蔓楮)Broussonetia kaempferi Siebold、コウゾ(楮)Broussonetia x kazinoki Siebold、カジノキ(梶の木)Broussonetia papyrifera (L.) Vent. の4種。コウゾは、ヒメコウゾとカジノキの交雑種です。 2)花柱(かちゅう):子房から伸びる柱状の管。先端に柱頭が付く。花粉が柱頭に付き、花柱内部の花粉管を通って子房内部の胚珠に至り受精する。 Japanese common name : Hime-kouzo ヒメコウゾ(姫楮) 別名:ナンゴクコウゾ(南国楮) クワ科コウゾ属 学名:Broussonetia monoica Hance synonym : Broussonetia kazinoki auct. non Siebold 花期:4月~5月 落葉低木 樹高:2~5m 花序径:約1cm 果期:7~8月 【学名解説】 Broussonetia : Pierre Marie Auguste Broussonet (1761-1807)氏に因む/コウゾ属 monoica : monoicus(雌雄同株の) Hance : Henry Fletcher Hance (1827-1886) --- x : 二種間交配種 kazinoki : カジノキ(梶の木) Siebold : Karl (Carl) Theodor Ernst von Siebold (1804-1885) --- auct. non : auctorum(著者らの)+non(否定)/著者の命名では無い 撮影地:静岡県静岡市 福成山 2020.05.15, 2020.05.24, 2020.05.27, 2021.05.13 賤機山(大段) 2021.06.11 大平(おおびら)農道 2021.06.15, 2022.04.27, 2022.05.18 富士市立歴史民俗資料館(製紙関係) 2023.08.11 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 19 November 2020, 22 May 2021, 29 June 2021, 29 April 2022, 21 May 2022 Last modified:17 August 2023 #
by pianix
| 2021-05-10 00:00
| 花
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キブシ(木五倍子)は、キブシ科キブシ属の落葉低木です。東アジアからヒマラヤにかけて分布します。日本では、北海道、本州、四国、九州に分布する日本固有種です。名の由来は、果実をフシ(五倍子)1)の代用としたことから。別名のキフジ(木藤)は、花序をフジ(藤)に見立てたもの。
キブシ科 (Stachyuraceae J.Agardh (1858))は、キブシ属の1属のみがあります。キブシ属(Stachyurus Siebold et Zucc. (1836))は、約5種があり、日本にはキブシのみの1種5品種2)があります。 林縁や谷沿い斜面、崩壊地に自生します。斜上して分枝し、高さ3~5mになります。樹皮は赤褐色や灰褐色。花後に葉を出します。葉は互生します。長卵形または楕円形で、長さ6~12cm、幅3~5cm。側脈は5~7対で、鋸歯があり、鋭尖頭。葉柄は長さ1〜3cm。 花期は3月〜4月。葉に先立ち花をつけます。葉腋から穂状花序を下垂させます。花序は長さ3~20cm。花は鐘形で、淡黄色。長さ6〜9mm。黒褐色の萼片4枚。花弁4枚。雌雄異株。雄株、雌株、両性株があります。雄しべ8本、雌しべ1本。雌株は花序が短く、雄しべは退化し短くなります。子房が花冠からやや突き出ます。子房上位、4室。胚珠は側膜胎座3)につき多数あります。 果実は液果です。径1cm程の楕円形で、黄褐色に熟します。長さ約2mmの多数の種子を含みます。タンニン( tannin)が含まれ、染料として利用します。染色体数は、2n=24。 脚注: 1)フシ(五倍子)は、ヌルデ(白膠木)の葉に寄生したヌルデシロアブラムシ(白膠木白油虫)Schlechtendalia chinensis (Bell, 1851)の虫瘤。長さ8cm、幅1~6cmになる。 2)品種に、ニシキキブシ(錦木五倍子)Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. bicolor Sakata、ケキブシ(毛木五倍子)Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. leucotrichus (Hayashi) H.Hara、フクリンキブシ(覆輪木五倍子)Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. marginatus Hiyama、コバノキブシ(小葉の木五倍子)Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. microphyllus (Nakai) H.Hara、マルバキブシ(丸葉木五倍子)Stachyurus praecox Siebold et Zucc. f. rotundifolius (Tuyama) Tuyama ex H.Hara があります。 3)側膜胎座(そくまくたいざ・parietal placentation): 胚珠が子房壁に縦列に付くもの。胎座のひとつで、子房内部での胚珠の付き方や並び方を言う。胚珠が中軸生の中軸胎座や、独立中央胎座、側壁生の側膜胎座、等がある。 Japanese common name : Kibusi キブシ(木五倍子) 別名:キフジ(木藤)/エノシマキブシ(江ノ島木五倍子) キブシ科キブシ属 学名:Stachyurus praecox Siebold et Zucc. 花期:3~5月 落葉低木 樹高:3~5m 花冠長:6〜9mm 花序長:3~20cm 果期10~12月 【学名解説】 Stachyurus : stachyus(穂)+oura(尾)/キブシ属 praecox : 早咲きの、早熟の、早期の Siebold : Philipp Franz von Siebold (1796-1866) et : et alii(及び・命名者が2名の時など・&(and)に同じ) Zucc. : Joseph Gerhard Zuccarini (1797-1848) 撮影地:静岡県静岡市 安倍城跡(Alt.435m) 2008.03.28, 2013.03.21 林道横山線 2019.03.08 林道慈悲尾線 2023.05.10 [Location : Shizuoka City, Shizuoka Prefecture JAPAN] 2 July 2020 Last modified: 22 May 2023 #
by pianix
| 2020-07-02 00:00
| 花
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「草花と自然Blog」へお越し下さってありがとうございます。このブログは2005年8月1日に開始しました。
自然体験活動指導者 《静岡県》 森林環境教育指導者 環境学習指導員 ◆専門的なことをなるべく排除して、さらに必要な知識を得るための基礎となる内容を心がけています。少しでも生物についての興味を持って頂けたら幸いです。 ◆私の趣味は、アマチュア無線・競歩等です。興味のあるものは、天文学・理論物理学等です。残念ながら花には深い思い入れがありません。名前を覚えるのが苦手なので、せめて目にした野草の名前の幾つかを覚えようと観察を始めました。もっとも、聖書に書かれている「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。」(マタイ 6:28-30抜粋・新共同訳)に触発されたのが根底にあります。 【見にくい場合】スマホでレイアウトが乱れて見にくい場合は、ご利用のブラウザアプリでPC版に切り替えて下さい。PC版で最適化しています。 【検索する】和名はカタカナ表記です。漢字やひらがなで検索しないほうが良好な結果が得られます。 【写真を拡大する】写真をクリックすると拡大されます。その写真をクリックすると元に戻ります。ブラウザの設定によっては動作しません。 【コメントする】記事タイトルをクリックすると「コメントする」ボタンが最下部に現れます。パスワードは削除する時に必要なものです。投稿者のあなたが決めて下さい。 【トラックバックする】[停止中]承認制としさせて頂いていますので、確認後に有効にさせていただきます。問い合わせの必要はありません。 【間違いの指摘】コメント欄の「非公開コメント」にチェックを入れて書き込んで頂ければありがたいです。 【注意】民間療法、生薬などは、使い方を誤ると重大な結果を招きます。知識無く利用する事は危険です。専門家の指導無しに利用する事は避けてください。 ・このブログに掲載されている写真・画像・イラスト・文章を無断で使用することを禁じます。 ・写真にリンクを貼ることは固くお断りします。 ・当Blogを利用することで生じる損害その他一切の不利益について、作者は責任を負いません。 ・種子等の配布、及び栽培方法、生育地の詳細、民間薬としての使い方等を問い合せされてもお応えできません。 静岡県の推計人口 (2024年 2月 1日現在) 総数3,544,597人 (前月比 -3,553人) 世帯数1,515,983世帯 (前月比 -292世帯) 静岡市の人口・世帯数 (2024年 2月末日現在) 合計676,607人 (前年同月比 -5,483人) 男:329,454人 女:347,153人 世帯数324,388戸 (前年同月比 +1.770戸) 最新のコメント
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